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0 10 20 30

Re[Z] (kΩ)

0 10 20

-Im[Z] (kΩ)

0 100 200 300

Re[Z] (M Ω )

0 100 200

-I m [Z ] (M Ω )

0 V 3.0 V 6.0 V

9.0 V

ないため,図4.4(a), (b)のような挙動が何を表すのか理解し難い.そこで,周波数を 一定にし,印加直流電圧を媒介変数として複素平面上に図示した.

単層構造素子ITO/F8/LiF/Ca/Alにおいて,周波数を50.119 Hzに固定した際のM プロットの結果を図4.5(a)に示す.印加直流電圧を増加させると,50.119 Hzの各デー タ点が印加直流電圧0 Vにおける半円上に沿って原点付近に移動していく様子が見ら れる.これは,印加電圧の増加により,静電容量は一定のまま,抵抗のみが低下する ためであり,図4.5(a)の軌跡は,F8バルク層の緩和周波数が高周波側へシフトしてい る様子を示している.

これに対して図4.5(b)が二層構造素子ITO/PEDOT:PSS/F8/LiF/Ca/Alの結果で ある.1.9953 Hzの点において単層構造素子と同じ挙動が確認できることが分かった.

一方,高周波側の成分ではこのような挙動は見られなかった.

Mプロットの虚軸の周波数特性においても比較を行った.図4.6(a)が単層構造素子

ITO/F8/LiF/Ca/Alの結果である.印加電圧の増加に伴って,緩和周波数が高周波側へ

シフトしている様子が見られるが,ピークの大きさには変化がないことが分かる.図の 縦軸はM プロットにおける半円の半径に対応し,静電容量の逆数に比例する.従って これは,印加電圧に関わらず静電容量が一定であることを示している.また,図4.6(b) が二層構造素子ITO/PEDOT:PSS/F8/LiF/Ca/Alの結果であるが,低周波側の挙動は 単層構造素子のものと同様であることが分かる.それに対して高周波側は電圧を増加さ せても緩和周波数に全く変化が見られないことが分かる.以上のような緩和周波数の 挙動により,低周波側の成分はF8バルク層に対応することが分かった.また図4.6(b)

より,図4.4(b)のMプロットにおいて観測された発光閾値電圧以下で二つに分かれて

いた半円が発光閾値電圧で一つになる現象は,低周波側の緩和が高周波側へシフトす ることで,二つの緩和周波数が一致したためであるということが分かった.

0 0.5 1 1.5 2

Re[M] (1/nF)

0 0.5 1 1.5

Im [M ] (1 /n F )

0 V

0.5 V 1.0 V 1.5 V 2.0 V

ITO/F8 (113 nm)/LiF/Ca/Al

frequency = 50.119 Hz

Applied dc bias

0 0.2 0.4 0.6 0.8

Re[M] 1/nF)

0 0.2 0.4 0.6

Im [M ] (1 /n F )

0 V 1.0 V

1.5 V 2.0 V 2.5 V 3.0 V 3.5 V 4.0 V frequency = 1.9953 Hz

0 0.2 0.4 0.6 0.8

Re[M] ( /nF

0 0.2 0.4 0.6

Im [M ] 1 /n F

5.0 V 5.5 V

6.0 V 7.0 V 8.0 V 9.0 V 0 V 0 V

ITO/PEDOT:PSS/F8 (216 nm)/LiF/Ca/Al

(a)

(b)

Applied dc bias

4.5 ITO/F8/LiF/Ca/Al有機EL素子の印加直流電圧を媒介変数とした M プロット.(b)は図4.4(b)の(A)に示す半円を拡大したもので ある.

10

Frequency (Hz) 0

0. 5

0 V 0.5 V 1.0 V 1.5 V 2.0 V

(a)

(b)

10 10 10 10 10

-1 0 1 2 3 4

Im [M] (1 /n F )

ITO/PEDOT:PSS/F8 (216 nm)/LiF/Ca/Al

10

Frequency (Hz)

0

-1

10

0

10

1

10

2

10

3

10

4

0.8

0.6

0.4

0.2

Applied dc bias 0 V 1.0 V 2.0 V 3.0 V 4.0 V 5.0 V 6.0 V 7.0 V

Im [M] ( 1 /n F )

4.6 モジュラス虚部の周波数特性による比較.(a)ITO/F8/LiF/Ca/Al 有機EL素子,(b)ITO/PEDOT:PSS/F8/LiF/Ca/Al有機EL素子.

次に高周波成分であるが,図4.7(a), (b)に示す様に複素誘電率から,高周波側から 低周波側に向かって誘電率が増加していく様子が見られた.また,誘電損率はその遷 移周波数で極大となっていることが分かる.これは,この周波数域の交流電界に対し て時間遅れで形成される分極の存在を示していると考えられる[5, 6].従って高周波成 分は誘電分散を示していると考えられる.

10-1 100 101 102 103 104 105

Frequency (Hz)

0 0.5 1 1.5

Re[ε] (pF/cm)

ITO/PEDOT:PSS/F8(216 nm)/LiF/Ca/Al

10-1 100 101 102 103 104 105

Frequency (Hz)

-2

-1

0

Im[ε] (pF/cm)

ITO/PEDOT:PSS/F8(216 nm)/LiF/Ca/Al (a)

(b)

4.7 ITO/PEDOT:PSS/F8/LiF/Ca/Al有機EL素子の(a)誘電率,(b) 誘電損率.図中の点は実験結果,実線は図4.10に示す等価回路に よるフィッティング結果である.

は一定で,現象は簡単かつ明快である.しかし,微小信号を加えることを考えると,分 極が電場の時間変化に完全には追随しないので,誘電率も時間的に変化すると考えなけ ばならない.従って,電圧の変化に対して分極が完全に追随しないような誘電体を挟ん だ図4.8(a)のようなコンデンサを考え,時間的に変化する電圧V(t) =V1exp(jωt)が印 加されるとき,この誘電体の誘電率εを定義することを考えなければならない.この コンデンサでは印加電圧に対して充放電に時間遅れが生じる.図4.8(b)のように,分 極が瞬時に起こるような誘電率ε0の誘電体を挟んだコンデンサと抵抗Rが直列になっ ているような構成を考えると,このコンデンサは電圧が増加するとRを通して徐々に 充電され,電圧が減少すればやはり徐々に放電する.すなわち,(a)と(b)の等価回路 は同等であると考えることができる.従って,εR,ε0およびω等で表すことがで きる.

C= d ε S *

C= d ε S

0

R

(a) (b)

4.8 電界に対して時間遅れで形成される分極を表す等価回路.

図4.8(a), (b)の等価回路に交流電界を印加することを考えると,それぞれ次式のよ うな関係がある.

(Q

S d

) =V1exp(jωt) (4.1)

RdQ

dt + Q

(0S d

) =V1exp(jωt) (4.2)

ここでQはコンデンサの蓄積電荷量,Sは素子面積,dは誘電体の膜厚である.上式 よりQを消去し,ε0S/d=Cとすれば(このCは図4.8(b)のコンデンサの容量),

ε = ε0

1 +R2C2ω2 −i ε0RCω

1 +R2C2ω2 (4.3)

と表せる.つまり,時間遅れで形成される分極をR-C直列回路で表現した場合,ε 0) =ε0であるから,分極の大きさは静電容量Cで決まり,時間遅れの大きさは抵抗R と静電容量Cにそれぞれ比例する.これをBode線図で図示すると,図4.9のようにな る.誘電率が変化する周波数域で誘電損率が極大となっており,交流電界に対して時 間遅れで形成される分極を表すことができている.

Frequency (Hz)

Frequency (Hz)

Re[ε] (F/cm)-Im[ε] (F/cm)

(a)

(b)

4.9R-C直列回路の(a)誘電率,(b)誘電損率.

に対する抵抗Rも並列に加えなければならない.従って時間遅れの分極を含む有機EL 素子の等価回路は図4.10のようになる.ただし,図4.2からわかるように,測定を行っ たITO/PEDOT:PSS/F8/LiF/Ca/Al有機EL素子の分極部分の緩和時間に Davidson-Cole型の分散が見られたので [6],複数のR-C直列回路を並列に加えている.この等 価回路でフィッティングを行った結果が図4.1, 4.2, 4.7中の実線である.高周波側から 低周波側まで実験結果によく一致していることが分かり,この等価回路が妥当なもの であることが分かった.

R S

R b

C b

. . .

R

p1

C

p1

R

p2

C

p2

4.10 ITO/PEDOT:PSS/F8/LiF/Ca/Al素子の発光閾値電圧以下におけ る等価回路.Rs, Rb,Cbは,それぞれ電極等の接触抵抗,有機半導 体バルク層の抵抗,バルク層の容量Rpi, Cpi(i= 1,2,· · ·)は,時定 数が分布した誘電分散成分に対応する.