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発光閾値電圧以下および以上における測定結果の物理 的解釈的解釈

3εµV0S δ k=0k+ 3Γ(ψ+k+ 2) δ

なるインピーダンスを得ることができる (付録C参照).ここでdは有機半導体の膜 厚,εは有機半導体の誘電率,µは微視的移動度,V0は印加直流電圧,Sは素子面積,

Ω(= ωtt)は走行角,ttは局在準位が存在しない場合の走行時間である.ψおよびδは 局在準位に関する量であり,それぞれ次式で与えられる。

δ =

[

1 +

Ec

Ev

γc(E) γt(E)dE

]1

(4.5) ψ(ω) =

[

1 +

Ec

Ev

γc(E) γt(E) +iωdE

]

δ (4.6)

ここでγt(E)はエネルギーEにおける局在準位からの放出率,γc(E)dEはエネルギー Eにおける局在準位の捕獲率,EcおよびEvはそれぞれ伝導帯下端および価電子帯上 端のエネルギーである.

詳細に関しては第7章にて述べるが,このインピーダンスに連続分布した局在準位を入 力した場合の等価回路は図4.10と一致する.従って,ITO/PEDOT:PSS/F8/LiF/Ca/Al 有機EL素子の等価回路に含まれるR-C直列成分はF8中に形成した捕獲準位であると 考えられる.なお,温度を変化させて誘電率の周波数依存性を測定したが,不純物イ オンの影響 [5]は現れなかった.

発光閾値電圧以上の等価回路の解釈に関しては,局在準位を考慮して複注入モデル を解析する必要があるが,第3章で説明した単層構造素子と同様の機構で誘導成分が 現れていると考えられる.誘導成分の解釈については第8章で詳しく述べる.

0 2 4 6

Re[Z] (k Ω )

0 2

-I m [Z ] (k Ω )

5.0 V 5.5 V 6.0 V

ITO/PEDOT:PSS/F8 (130 nm)/LiF/Ca/Al

Applied dc bias

0 1 2

Re[M] [1/nF]

0 0.5 1 1.5 2

Im [M ] [1 /n F ]

ITO/PEDOT:PSS/F8 (130 nm)/LiF/Ca/Al Applied dc bias : 5.0 V

(a)

(b)

4.11 ITO/PEDOT:PSS/F8/LiF/Ca/Al有機EL素子の発光閾値電圧以 上における(a)Zプロット,(b)Mプロット.点は実験結果,実線は 図4.13に示す等価回路によるフィッティング結果.

10-2 10-1 100 101 102 103 104 105 106

Frequency (Hz)

-4 -2 0

R e [ ε ] (n F /c m )

ITO/PEDOT:PSS/F8 (130 nm)/LiF/Ca/Al Applied dc bias : 5.0 V

102 103 104 105 106

Frequency (Hz) 0

1

Re[ε] (pF/cm)

10-2 10-1 100 101 102 103 104 105 106

frequency (Hz)

10-3 100 103

-I m [ ε ] (n F

ITO/PEDOT:PSS/F8 (130 nm)/LiF/Ca/Al Applied dc bias : 5.0 V

(a)

(b)

/c m )

4.12 ITO/PEDOT:PSS/F8/LiF/Ca/Al有機EL素子の発光閾値電圧以 上における複素誘電率.点は実験結果,実線は図4.13に示す等価 回路によるフィッティング結果.

R S

R b

C b

R 1

R 2

L 1

L 2

. . .

R

p1

C

p1

R

p2

C

p2

4.13 ITO/PEDOT:PSS/F8/LiF/Ca/Al素子の発光閾値電圧以上におけ る等価回路.Rs, Rb,Cbは,それぞれ電極等の接触抵抗,有機半導 体バルク層の抵抗,バルク層の容量.Rpi, Cpi(i = 1,2,· · ·)は,時 定数が分布した誘電分散成分.R1,L1,R2,L2は,低周波域の誘導 成分に対応する.

RS

RS

Rb

Cb

Rb Cb

R1 R2

L1 L2

RS

RS

Rb

Cb

Rb Cb

R1 R2

L1

L2

. . . . . .

Rp1 Cp1 Rp2 Cp2 Rp1 C

p1

Rp2 C

p2

ITO/F8/LiF/Ca/Al ITO/PEDOT:PSS/F8/LiF/Ca/Al

発 光 閾 値 電 圧 以 下

発 光 閾 値 電 圧 以 上

4.14 F8有機EL素子の等価回路.

4.5 まとめ

PEDOT:PSSを陽極バッファ層として用いたITO/PEDOT:PSS/F8/LiF/Ca/Al有機 EL素子のIS測定を行い等価回路を決定した.得られた知見を以下にまとめる.

1. 単層構造有機EL素子とは異なり,時定数の分布していない成分と時定数の分布 した成分の二成分が検出された.

2. PPV有機EL素子で報告されているようなMプロットの電圧依存性 (印加電圧

を増加するにつれ,低電圧において現れる二つの半円が一つになる現象)が見ら れた.

3. F8およびPEDOT:PSSの膜厚に対するMプロットの依存性を調べたところ,低

電圧で見られる二つの半円のいずれの直径もPEDOT:PSSの膜厚には依存せず,

F8の膜厚に比例することが分かり,時定数の分布した成分をPPV有機EL素子 のように,障壁層や界面層では解釈できないことが分かった.

4. モジュラス虚部の周波数依存性の解析によって,二つの成分の時定数が電圧印加 によって一致することを明らかにした.

5. 時定数の分布した成分は,εプロットで見るとDavidson-Cole型となっており,誘 電分散成分としてR-C直列回路で表すことができる.これをF8層を表す等価回 路に並列接続することにより発光閾値電圧以下の等価回路を決定することがで きた.

6. 発光閾値電圧以上では低周波域に誘導成分が現れたので,単層構造有機EL素子 と同様に発光閾値電圧以上の等価回路は,R-L直列回路を発光閾値電圧以下の等 価回路に加えることによって決定することができた.

参考文献

[1] T. Okachi, H. Azuma, T. Nagase, T. Kobayashi, and H. Naito, Proc. 13th Int.

Display Workshops, 2006, p. 1323.

[2] 内藤裕義,M&BE分科会会誌 18, 9 (2007).

[3] M. G. Harrison, J. Gr¨uner, and G. C. W. Spencer, Synth. Met.76, 71 (1996).

[4] D. Poplavskyy, J. Nelson, and D. D. C. Bradley, Appl. Phys. Lett.83, 707 (2003).

[5] 三川礼,艸林 成和 編,高分子半導体(講談社サイエンティフィック,1977).

[6] 犬石嘉雄,中島達二,川辺和夫,家田正之,誘電体現象論(電気学会,1992).

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Rev. B 69, 155216 (2004).

[9] D. Dascalu, Solid-State Electron. 9, 1020 (1966).

[10] D. Dascalu, Int. J. Electon.21, 183 (1966).

[11] D. Dascalu, Solid-State Electron.11, 491 (1968).

[12] R. Kassing and K¨ahler, Solid State Commun. 15, 673 (1974).

[13] R. Kassing, Phys. Status Solidi (a) 28, 107 (1975).

5

インピーダンス分光による移動度評価

5.1 はじめに

有機半導体等の高抵抗膜における移動度を測定する方法としては,IS測定の他に,

Time-of-flight (TOF)法 [1, 2],Dark injection (DI) transient法 [3–6],空間電荷制限電 流(Space-Charge-Limited Current:SCLC)のI-V 特性から求める方法,時間分解EL スペクトル測定[7]等がある.しかし,TOF,DI法を用いて走行時間を正確に評価す るためには,実際の有機EL素子の発光層と比較してかなり厚い膜厚の試料が必要と なる.有機半導体では,膜厚の違いによって,電子物性や光物性が大きく変化するた

め [8],実際の素子と同程度の膜厚において測定を行うべきである.SCLC法では,実

際の素子構造での測定は難しく,移動度の電界依存性が得られない等の欠点がある.ま た時間分解ELスペクトル測定は移動度の正確な評価には不向きである.一方,IS測 定では,実際の有機EL素子における移動度が測定可能であり,移動度の電界依存性も 評価できる.

IS測定による移動度決定法としては,第3章で説明した走行時間効果によるサセプ タンスの変化量に見られる屈曲点から走行時間を求める方法(∆B法)が,PPV有機 EL素子 において報告されている[9–12].この∆B法を概説した後,二種類の移動度 評価法を提案する.これら三種類の移動度評価法の得失を数値計算によって調べた.

5.2.1 走行時間効果によるサセプタンスの屈曲点からの移動度評価法 ( ∆B 法 )

単電荷注入モデルのサセプタンスは第3章でも述べたように,次式で与えられる(付 録A参照).

B1 = gΩ3 6

2

2 + cosΩ1

(ΩsinΩ)2+(22 + cosΩ1)2

(5.1) ここで,gは微分コンダクタンスであり,次式で与えられる.

g = 9 4εµV0

d3 (5.2)

εは有機半導体の誘電率,µは有機半導体のキャリア移動度,V0は印加直流電圧,dは 有機半導体の膜厚である.Ωは走行角であり,印加する交流電界の角周波数ωとキャ リア走行時間ttの積で与えられる.上式より,差分サセプタンス

∆B =ω(C1−Cgeo) (5.3)

の周波数特性を図示すると,図5.1のようになる.ただし,C1 =B1/ω,Cgeo =ε/dで ある.ここで最も低周波側で∆Bが極大となる周波数と走行時間との間には

tt0.72fmax1 (5.4)

の関係があることが式(5.1)より導かれる.従って,インピーダンス測定より,∆B の周波数特性を図示すれば,走行時間が得られ,空間電荷制限における走行時間と移 動度の関係式[13],

µ= 4 3

d2

ttV (5.5)

によって移動度を算出することができる[9–12].ここでV は外部印加電圧ではなく,有 機半導体層に実効的にかかる電圧である.

10

3

10

4

10

5

10

6

Frequency (Hz)

10

-6

10

-5

10

-4

10

-3

- ∆ B = - ω

[C

( ω

)- C

geo

] (S

) f

max

≈ 0.72t

t-1

5.1 式(5.1)および(5.3)より得られた単電荷注入モデルの差分サセプタ ンス (∆B)の周波数特性.fmax∆Bが極大となる周波数のう ち最も低周波の値.ttはキャリア走行時間.計算に使用した物理量 はtt = 105 s,Cgeo = 1 nF.

5.2.2 コンダクタンスに現れる走行時間効果からの移動度評価法 (ω∆G