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測定方法もさることながら,解析方法も確立されているとは言い難い.複素インピー ダンス平面での解析のみでは,インピーダンスに含まれる情報の全てを得ることはで きない.またFRAを使用すれば簡便に測定することができるが,解析方法が分からな いばかりに,大量に取得したデータの解釈に行き詰まる場合も少なくない.

2.2.1 Cole-Cole プロットによる解析

印加電圧信号の周波数をパラメータとし,得られたインピーダンスを複素平面上に 表示したものをCole-Coleプロットと呼ぶ.インピーダンスより,基本的な伝達関数で あるモジュラス,アドミタンス,誘電率を得ることができる[2].各伝達関数の関係を 表2.1に示す.この四つの伝達関数から解析目的に適した伝達関数が選択される.本研 究では,実軸から抵抗成分が分かるインピーダンス(Z)プロット,容量成分の逆数が 分かるモジュラス (M)プロット,および複素誘電率 (ε)プロットの三つの伝達関数を 選択した.

等価回路を決定するためには少なくとも三つの伝達関数を解析しなければならない.

低周波から高周波までの全周波数域を詳細に解析するためには,ZプロットとMプロッ

い場合でも,M プロットではインピーダンスを倍しているので,高周波側を詳細 に観測することができる.

また等価回路を推定する際に,ZプロットとM プロットだけでは,複数の成分を直 列に接続することしか考えることができない.同様にY プロットとεプロットだけで は,複数の成分を並列に接続することしか考えられない.つまり,ZプロットとMプ ロットに加えてY プロットもしくはεプロットを同時に解析しなければならない.ま た,Y プロットとεプロットに加え,ZプロットもしくはM プロットを同時に解析し なければならない.以上の理由で少なくとも三つの伝達関数が必要となる.

IS法の解析ではCole-Coleプロットの軌跡から素子の等価回路を推定し,その等価 回路から計算したCole-Coleプロットの軌跡と測定データを一致させ,等価回路を決定 することが一般的である.このため,典型的な回路要素のZ,M,εプロットを図2.3 に示しておく.

各回路素子の軌跡は以下のようになる.

抵抗R (Zプロット)

Z =Rであるため,実数軸上の点Rとなる.

(M プロット)

M =jωRであるため,虚数軸上の直線を描き低周波で原点に収束する.

(εプロット)

ε= 1/(jωR)であるため,虚数軸上の直線を描き高周波で原点に収束する.

キャパシタンスC (Zプロット)

Z =−j/(ωC)であるため,虚数軸上の直線を描き高周波で原点に収束する.

R

Imε[F/m]

等価回路 Zプロット M プロット

Re Z[] -ImZ []

high ω low

high ω low

RC f

2π

= 1

εプロット R

C

R C

R C

Re M[1/F]

ImM [1/F]

high ω low high

ω

low

1/C high Re ε[F/m]

high low ω low

Re Z[] -ImZ []

high low

R Re M[1/F]

ImM [1/F]

1/C high low

Imε[F/m]

Re ε[F/m]

high low

ω

RC f

2π

= 1

RC f

2π

= 1 RC f

2π

= 1

2.3 典型的な等価回路とCole-Coleプロット.等価回路とそれに対応す

るCole-Coleプロットは同じ網掛けで示してある.

(M プロット)

M = 1/Cであるため,実数軸上の点1/Cとなる.

(εプロット)

ε=Cであるため,実数軸上の点Cとなる.

R-C直列回路の場合 (Zプロット)

Z =R−j/(ωC)であるため,虚数軸に平行な直線を描き,高周波で実軸上の

Rに収束する.

(M プロット)

M = 1/C +jωRであるため,虚数軸に平行な直線を描き,低周波で実軸上の

点1/Cに収束する.

ε = C

1 +ω2R2C2 −j ωRC2 1 +ω2R2C2 ωを消去すると,

(

Reε C 2

)2

+ Imε2 =

(C 2

)2

従って,原点付近を高周波側とする半円を描く.直径はCとなる.

R-C並列回路の場合 (Zプロット)

 インピーダンスは以下の式で表される.

Z = R

1 +ω2R2C2 −j ωR2C 1 +ω2R2C2 ωを消去すると,

(

ReZ −R 2

)2

+ ImZ2 =

(R 2

)2

従って,原点付近を高周波側とする半円を描く.直径はRとなる.

(M プロット)

 モジュラスは以下の式で表される.

M = ω2R2C

1 +ω2R2C2 +j ωR 1 +ω2R2C2 ωを消去すると,

(

ReM 1 2C

)2

+ ImM2 =

( 1 2C

)2

従って,原点付近を低周波側とする半円を描く.直径はCの逆数に相当する.

(εプロット)

ε =C−j/(ωR)であるため,虚数軸に平行な直線を描き,高周波で実軸上の

Cに収束する.

2.2.2 等価回路定数に関する注意点

微小交流信号に対する等価回路定数は通常微分の形で表されることに留意しなけれ ばならない [21].電流と電圧の関係が関数f(V)を用いて,

I =f(V) (2.1)

で表される素子について考える.素子に加える電圧V を以下の式のように直流成分V0 と微小交流成分V1に分ける.

V =V0+V1exp(jωt) (2.2)

このとき,素子を流れる電流Iはテイラー展開を行い I =f(V0+V1exp(jωt)) =f(V0) +

(df dV

)

V=V0

V1exp(jωt) (2.3) となる.ここで電流Iを以下の式のように直流成分I0と交流成分I1に分ける.

I =I0+I1exp(jωt) (2.4)

式(2.3)と式(2.4)の比較より

I0 = f(V0) (2.5)

I1 =

(df dV

)

V=V0

V1 (2.6)

となる.これより,直流成分に対するコンダクタンスg0g0 = I0

V0 = f(V0)

V0 (2.7)

となり,交流成分に対するコンダクタンスg1g1 = I1

V1 =

(df dV

)

V=V0

(2.8) となる.式(2.8)は,例えば素子がR-C並列回路で表されるとき,抵抗Rは,定常状 態の抵抗ではなく,微分コンダクタンスの逆数であるということを意味している.

各成分の時定数に関する情報が分かりにくい.キャリア輸送の素過程(例えば走行や局 在準位の捕獲・放出)に対応する時定数の変化を知るためには,縦軸に静電容量 (誘電 率),コンダクタンス,誘電損率を,横軸に周波数を表示すればよい.後述するが,例 えばキャリアの電極間の走行や空間電荷の形成[3],局在準位[9, 22],再結合[23]等の 影響がこれらの変化として現れる.また,各成分の時定数の変化を調べるためには,モ ジュラス虚部の周波数依存性が適している[17, 24, 25].

2.2.4 C –V 特性による解析

特に低分子系有機EL素子では複数の層を積層させるため,界面で電荷蓄積が起こ る.界面における電荷蓄積はキャリアバランスや再結合領域等を決定する重要な過程 である.従って,電荷蓄積の解析に適したC–V 測定を行うことが有効である [26–28].