法 )
6.2 局在準位分布評価の理論
第5章で有機半導体に見られる連続分布した局在準位が存在する場合のインピーダ ンスの数値計算を行い,コンダクタンス,キャパシタンスの周波数特性をそれぞれ図 5.7および図5.8に示した.これから明らかな通り,指数関数分布のエネルギー幅を表 す特性温度が大きくなると,低周波になる程キャパシタンスは大きくなりコンダクタ ンスは小さくなる.これは局在準位分布に関する情報が低周波域の特性に反映されて おり,これらの特性を解析することにより局在準位分布が算出できることを意味して いる.従って,低周波域における局在準位分布を考慮したインピーダンスの式におけ る逆問題を解くことにより,局在準位分布をインピーダンスで表す式を導出する.な お,以下では電子の単電荷注入を考えるが,正孔に対しても同様の結果が得られる.
局在準位を考慮した単電荷注入モデルのインピーダンスは電流の式,ポアソンの式,
局在準位の捕獲・放出を表すレート方程式を微小信号解析することにより次式で与え
られ[11] (付録C参照),これによって単電荷注入素子の実験結果を再現することがで
きる[12, 13].
Z1 = 6ψRi
∑∞ k=0
1 k+ 3
Γ(ψ+ 1) Γ(ψ+k+ 2)
(ψ δ
)k
(−iΩ)k (6.1)
ここでΓはガンマ関数,Ω(= ωtt)は走行角,ωは印加する交流電界の角周波数,tt[=
4d2/(3µV0)]は局在準位が存在しない場合の走行時間,µは微視的移動度,V0は印加直 流電圧である.またRiは低周波における微分コンダクタンスの逆数で,次式で与えら
れる.
Ri = 4 9
d3
εδµV0S (6.2)
上式においてεは有機半導体の誘電率,dは有機半導体の膜厚,Sは素子面積である.
δおよびψは局在準位に関する量でありそれぞれ次式で与えられる.
δ =
[
1 +
∫ Ec
Ev
γc(E) γt(E)dE
]−1
(6.3) ψ(ω) =
[
1 +
∫ Ec
Ev
γc(E) γt(E) +iωdE
]
δ (6.4)
ここでγt(E){=νexp [−(Ec −E)/kT]}はエネルギーEにおける局在準位からの放出 率,γc(E)dE[∼=Nt(E)St(E)vthdE]はエネルギーEにおける局在準位の捕獲率である.
EcおよびEvはそれぞれ伝導帯下端および価電子帯上端である.ν[=NcSt(E)vth]は離 脱周波数,Nt(E)は局在準位密度分布,Ncは伝導帯の有効状態密度,St(E)は局在準 位の捕獲断面積,vthはキャリアの熱速度,kはボルツマン定数,T は測定温度である.
以下ではSt(E)はエネルギー準位に依らず一定であるとして解析を行う.
低周波域(Ω1)では,式(6.1)の第一項が支配的となり,インピーダンスは次式で
与えられる [14].
Z1 =Ri 2ψ
1 +ψ (6.5)
またψをA, Bを用いて ψ(ω) =
[
1 +
∫ Ec
Ev
γc(E) γt(E) +iωdE
]
δ= (1 +A−iB)δ (6.6) と定義すれば,式(6.5)よりコンダクタンスとキャパシタンスは次式でそれぞれ与えら れる.
G(ω) = 1
2Riδ
[ 1 +A
(1 +A)2+B2 +δ
]
(6.7)
C(ω) = 1
2Riδω
B
(1 +A)2+B2 (6.8)
B = ω
∫ Ec
Ev
Nt(E)Stvth 1
γt(E)2+ω2dE (6.10) 式(6.10)より次式が得られる.
∂ωB
∂ω = 2ω
∫ Ec
Ev
Nt(E)StvthhB(ω, E)dE (6.11) ただし,式(6.9)および式(6.11)においてhA(ω, E),hB(ω, E)はそれぞれ次式で与えら れる.
hA(ω, E) = γt(E)
γt(E)2+ω2 (6.12)
hB(ω, E) =
( γt(E) γt(E)2+ω2
)2
(6.13) hA(ω, E)およびhB(ω, E)は,Eに対して表示するとピークを有するため,以下のよう にデルタ関数で近似することができる.
hA(ω, E) = kT π
2ω δ(E−E0) (6.14)
hB(ω, E) = kT
2ω2δ(E−E0) (6.15)
ここで,
Ec−E0 =kTln
(ν ω
)
(6.16) である.式(6.14), (6.15)を式(6.9)および(6.11)にそれぞれ代入すれば,
A = Nt(E0)StvthkT π
2ω (6.17)
∂ωB
∂ω = Nt(E0)Stvth
kT
ω (6.18)
が得られる.従って,式(6.7), (6.8)および(6.17)より,局在準位分布は次式で与えら れることになる.
Nt(E0) = 2ω StvthδkT π
[ 2RiG(ω)−1
(2RiωC(ω))2+ (2RiG(ω)−1)2 −δ
]
(6.19)
同様に,式(6.7), (6.8)および(6.18)より,局在準位分布を表すもう一つの式を得るこ とができる.
Nt(E0) = 2Riω StvthδkT
∂
∂ω
[ ω2C(ω)
(2RiωC(ω))2+ (2RiG(ω)−1)2
]
(6.20) つまり,IS測定によって得られたコンダクタンスとキャパシタンスを式(6.19)もしく
は(6.20)に代入すれば,輸送エネルギーからの局在準位の深さを表す式(6.16)によっ
て局在準位分布を得ることができる.