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数値計算による分解能の確認

法 )

6.3 数値計算による分解能の確認

同様に,式(6.7), (6.8)および(6.18)より,局在準位分布を表すもう一つの式を得るこ とができる.

Nt(E0) = 2Riω StvthδkT

∂ω

[ ω2C(ω)

(2RiωC(ω))2+ (2RiG(ω)−1)2

]

(6.20) つまり,IS測定によって得られたコンダクタンスとキャパシタンスを式(6.19)もしく

は(6.20)に代入すれば,輸送エネルギーからの局在準位の深さを表す式(6.16)によっ

て局在準位分布を得ることができる.

Nt(E) =N0exp

(

−Ec−E kT0

)

(6.21)

2. ガウス分布

Nt(E) =N0exp

[

(Ec−E Eσ

)2]

(6.22)

3. 指数関数分布にガウス分布が重畳した分布 Nt(E) =N0exp

(

−Ec−E kT0

)

+NGexp

[

(EG−E Eσ

)2]

(6.23)

ここでN0は輸送エネルギーにおける局在準位密度,T0は指数関数分布のエネルギー 幅を表す特性温度,NGは指数関数分布に重畳したガウス分布のピーク位置での局在準 位密度,EGは指数関数分布に重畳したガウス分布のピークでのエネルギー準位,Eσ

はガウス分布のエネルギー幅である.

6.3.3 数値計算結果

特性温度T0の指数関数分布を仮定した場合のコンダクタンス,キャパシタンスの周 波数特性を図6.1(a), (b)にそれぞれ示す.計算に用いた物理量は表6.1に示す.コンダ クタンス,キャパシタンス共に,高周波側で走行時間効果による振動構造が現れてい ることが分かる.従って第5章で述べたように∆B法やω∆G法によってドリフト移 動度を決定することができる.図6.2(a), 6.2(b)にキャパシタンスの周波数特性の高周 波側を拡大した図と∆Bの周波数特性をそれぞれ示す.図6.2(a)および6.2(b)中の 矢印はそれぞれ走行時間の逆数および,−∆Bが極大を示す周波数を示している (移動 度の決定法については第5章参照).

6.1  数値計算に用いた物理量.

測定温度 T (K) 300

有機半導体層膜厚 d (nm) 100

素子面積 S (mm2) 4

有機半導体層の比誘電率 εr 2.82

伝導帯の有効状態密度Nc (cm3) 1020 輸送エネルギーにおける局在準位密度 N0 (cm3eV1) 1021 指数関数分布の特性温度 T0 (K) 100–700 ガウス分布のエネルギー幅 Eσ (eV) 0.15–0.25 指数関数分布に重畳したガウス分布のピーク密度 NG (cm3eV1) 2×1015–5×1016 指数関数分布に重畳したガウス分布のエネルギー準位 Ec −EG (eV) 0.7 指数関数分布に重畳したガウス分布のエネルギー幅 Eσ (eV) 0.05 捕獲断面積 St (cm2) 1015 キャリアの熱速度 vth (cm/s) 107

離脱周波数 ν (K) 1012

微視的移動度 µ(cm2/Vs) 103

印加直流電圧 V0 (V) 10

10

-3

10

0

10

3

10

6

Frequency (Hz)

10

-9

10

-6

10

-3

10

0

C o n d u ct a n ce ( S )

T0

150 K 400 K 200 K 500 K 250 K 600 K 300 K 700 K

(a)

10

-3

10

0

10

3

10

6

Frequency (Hz)

10

0

10

3

10

6

10

9

C a p a ci ta n ce ( n F )

T0

150 K 400 K 200 K 500 K 250 K 600 K 300 K 700 K

(b)

6.1 式(6.1)–(6.4)および(6.21)によって計算した特性温度T0の指数関数 分布した局在準位を仮定した場合の(a)コンダクタンス,(b)キャパ シタンスの周波数特性.数値計算に使用した物理量は表6.1に示す.

10

3

10

4

10

5

10

6

10

7

10

8

Frequency (Hz)

0.8 0.9 1 1.1

C a p a ci ta n ce ( n F )

(a)

10

4

10

5

10

6

10

7

10

8

Frequency (Hz)

10

-8

10

-7

10

-6

10

-5

10

-4

10

-3

10

-2

10

-1

10

0

- ∆ B ( S )

T

0

150 K 400 K 200 K 500 K 250 K 600 K 300 K

(b)

6.2 (a)図6.1(b)の高周波側拡大図.矢印は走行時間の逆数.(b)(a)よ り計算した∆Bの周波数特性.矢印は∆Bが極大となる周波数.

使用した物理量は図6.1と同じ.

T0が測定温度である300 K以上であれば,入力した分布を再現できているが,それ以 下では入力した分布を再現できず,全て傾きがT0 = 300 Kになっていることが分かる.

一方,図6.3(b)では特性温度が150 Kであっても入力した分布を再現できていること

が分かる.

図6.4に測定温度300 Kにおいて式(6.19)および式(6.20)より算出した指数関数型 の局在準位の特性温度と,数値計算に用いた特性温度の関係を示す.再現可能な最低 の特性温度を,指数関数型の局在準位分布に対する分解能と定義すると,この分解能 は温度に伴って変化し,式(6.19)ではT0 = T,式(6.20)ではT0 =T /2となる.この 分解能は単峰性関数の式(6.14)および(6.15)の半値全幅によって決まっている.離散 準位を仮定したコンダクタンス,キャパシタンスから同様に局在準位分布を算出した 場合,図6.5に示すように,得られる局在準位分布の半値全幅は式(6.19),(6.20)でそ れぞれ2.64kT, 1.76kT まで広がる.

これまでに局在準位分布を評価する方法として提案されているTime-of-flight (TOF) 過渡光電流波形や過渡光伝導測定(Transient Photoconductivity : TPC)からラプラス 変換法やフーリエ変換法を用いて局在準位分布を算出する方法[15]では,測定温度が Tであると,指数関数分布の場合,測定出来る特性温度はT であり,図6.5に示すよう に離散準位の場合は半値全幅で3.54kT である.従って式(6.20)の指数関数分布に対す る分解能T /2および離散準位に対する半値全幅1.76kT は非常に高いエネルギー分解能 であると言える.

式(6.20)はエネルギー分解能が高いものの,データの微分操作が必要で,これには

少し数値的テクニックが必要である.反面,式(6.19)は比較的容易に局在準位分布を 計算することができるため,エネルギー分解能を高く取る必要がない時には有用であ る.評価する材料によって式(6.19)と式(6.20)を使い分けることが望ましい.

0 0.5 1

Energy below E

c

(eV)

10

-3

10

0

10

3

10

6

10

9

10

12

10

15

10

18

10

21

N

t

(E ) (a rb . u n its )

0 0.5 1

Energy below E

c

(eV)

10

-3

10

0

10

3

10

6

10

9

10

12

10

15

10

18

10

21

N

t

(E ) (a rb . u n its )

Input distributions T0

150 K 400 K 200 K 500 K 250 K 600 K 300 K 700 K

(a)

0 0.5 1

Energy below E

c

(eV)

10

-3

10

0

10

3

10

6

10

9

10

12

10

15

10

18

10

21

N

t

(E ) (a rb . u n its )

0 0.5 1

Energy below E

c

(eV)

10

-3

10

0

10

3

10

6

10

9

10

12

10

15

10

18

10

21

N

t

(E ) (a rb . u n its )

Input distributions T0

150 K 400 K 200 K 500 K 250 K 600 K 300 K 700 K

(b)

6.3 図6.1(a), (b)より,(a)式(6.19)と(6.16),(b)式(6.20)と(6.16)を 用いて求めた局在準位分布.使用した物理量は図6.1と同じ.

0 200 400 600 800

Input T

0

(K)

0 200 400 600

E xt ra ct e d T

0

( K Eq. (6.20)

6.4 測定温度300 Kにおける式(6.19)と(6.20)から算出した特性温度 と入力した特性温度の関係.横軸は入力した特性温度,縦軸は得ら れた特性温度.数値計算に使用した物理量は表6.1に示す.

0.3 0.4 0.5 0.6 0.7

0 2×1015 4×1015 6×1015 8×1015 1×1016 1.2×1016

N

t

(E ) (a rb . u n its )

Eq. (6.19)

Eq. (6.20) LT method for TPC

Energy below E

c

(eV)

6.5 輸送エネルギーから0.5 eVのエネルギー準位に離散準位を仮定し たインピーダンスの計算結果から式(6.19), (6.20)によって得られ た局在準位分布.比較として同様の局在準位を仮定した場合に過渡

光伝導 (TPC)のラプラス変換 (LT)法により得られた局在準位分

布を示す.

図6.6は,ガウス分布した局在準位を仮定した場合に(a)式(6.19)と(6.16)もしくは,

(b)式(6.20)と(6.16)によって得られた局在準位分布である.分解能の低い式(6.19)を 用いた(a)では,ガウス分布のエネルギー幅がEσ 0.20 eVの場合には入力した分布 を正しく再現することができていないことが分かる.一方,高分解能の式(6.20)を用 いた(b)においては入力したガウス分布のエネルギー幅がEσ = 0.15 eVでも再現でき ていることが分かる.

また,図6.7はT0 = 500 Kの指数関数型の局在準位分布に,ガウス分布した局在準

位が重畳した場合に(a)式(6.19)と(6.16)もしくは,(b)式(6.20)と(6.16)によって得 られた局在準位分布である.分解能の低い式(6.19)を用いた(a)では,得られた局在準 位分布は,ガウス分布の局在準位密度が大きくなると,入力した局在準位とのピーク エネルギー準位や密度のずれが大きくなってくることが分かる.またピークを示すエ ネルギー準位よりも深いエネルギー準位の局在準位分布は ほとんど再現できていない ことが分かる.

一方,高分解能の式(6.20)を用いた(b)においては,ガウス分布の局在準位密度が 大きくなっても,ピークエネルギー位置,密度共によく再現できていることが分かる.

またピークを示すエネルギー準位よりも深いエネルギー準位の局在準位分布も正しく 再現できていることが分かる.

図6.7のような局在準位分布が得られた場合,局在準位がピークとなる周波数をアレ ニウスプロットすることによって局在準位の離脱周波数νを求めることができ,エネ ルギー軸を正確に決定することができる[9, 16].

(a)

(b)

0 0.5 1

Energy below E

c

(eV)

10

12

10

15

10

18

10

21

N

t

(E ) (c m

-3

eV

-1

)

Input distributions E

σ

0.15 eV 0.20 eV 0.25 eV

0 0.5 1

Energy below E

c

(eV)

10

12

10

15

10

18

N

t

(E ) (c m

-3

eV

-1

)

Input distributions E

σ

0.15 eV 0.20 eV 0.25 eV

6.6 ガウス分布した局在準位分布を仮定して得られたインピーダンス の数値計算結果より(a)式(6.19)と(6.16)もしくは(b)式(6.20)と

(6.16)を用いて求めた局在準位分布.数値計算に使用した物理量は

表6.1に示す.

(a)

(b)

0.4 0.6 0.8 1

Energy below E

c

(eV)

10

10

10

11

10

12

10

13

10

14

10

15

10

16

10

17

10

18

N

t

(E ) (c m

-3

eV

-1

)

Input distributions E

σ

=0.05 eV

N

G

2 × 10

15

cm

-3

eV

-1

1 × 10

16

cm

-3

eV

-1

5 × 10

16

cm

-3

eV

-1

0.4 0.6 0.8 1

Energy below E

c

(eV)

10

10

10

11

10

12

10

13

10

14

10

15

10

16

10

17

10

18

N

t

(E ) (c m

-3

eV

-1

)

Input distributions E

σ

=0.05 eV

N

G

2 × 10

15

cm

-3

eV

-1

1 × 10

16

cm

-3

eV

-1

5 × 10

16

cm

-3

eV

-1

6.7 指数関数分布にガウス分布が重畳した局在準位分布を仮定して得ら れたインピーダンスの数値計算結果より(a)式(6.19)と(6.16)もし くは(b)式(6.20)と(6.16)を用いて求めた局在準位分布.数値計算 に使用した物理量は表6.1に示す.

ここまでに述べてきた手法を用いてSumationTM製の発光材料であるGreen Kの局 在準位分布と移動度の同時評価を行った結果について説明する.2.3節で述べたように 測定試料は電子オンリー素子(EOD)であるAl/Green K/Ba/Alおよび正孔オンリー素 子(HOD)であるITO/PEDOT:PSS/Green K/Auである.EODの測定結果からは電子 移動度と最低空準位(Lowest Unoccupied Molecular Orbital:LUMO)側の局在準位分 布を,HODの測定結果からは正孔移動度と最高被占準位 (Highest Occupied Molecular

Orbital:HOMO)側の局在準位分布を得ることができる.

図6.8および6.9はそれぞれ室温293 KにおけるGreen K EODおよびHODの(a)コ ンダクタンス,(b)キャパシタンスの周波数依存性である.EOD,HODいずれにおい ても低周波域で連続的にキャパシタンスが増加しており,連続分布した局在準位が存 在することを示している[13].

6.4.1 移動度の決定

高周波側を見ると,EOD,HODいずれにおいてもキャパシタンスが電圧印加時に 幾何容量よりも低下していることが分かり,走行時間効果が現れていることが分かる.

従って,第5章で述べた∆B法によって移動度を決定することができる.走行時間効 果が観測されない場合には注入制限状態となっている可能性が高く,その場合には正 しい局在準位分布を算出できない可能性があるので,本手法を適用する前に,走行時 間効果が現れているかを確認しなければならない.図6.8および6.9中の挿入図はそれ

ぞれ図6.8(b)および6.9(b)より得られた∆Bの周波数依存性である.印加電圧が増

加するにつれ,∆Bのピークが高周波側へシフトしている様子が見られ,走行時間を 観測できていることが分かる.図6.10に∆B法によって得られた電子移動度,正孔

10

-9

10

-6

10

-3

C o n d u ct a n ce ( S )

Applied dc bias 0 V 2 V 1 V 3 V

10

-2

10

-1

10

0

10

1

10

2

10

3

10

4

10

5

10

6

Frequency (Hz)

10

-1

10

0

10

1

10

2

10

3

10

4

C a p a ci ta n ce ( n F )

(a)

(b)

103 104 105 106 107

Frequency (Hz)

10-7

10-6 10-5 10-4 10-3

- ∆ B ( S )

1 V 2 V 3 V 4 V 5 V

6.8 GreenK EOD (Al/Green K LEP/Ba/Al)の(a)コンダクタンス,(b) キャパシタンスの周波数依存性.挿入図は(b)より得られた∆B の周波数依存性.

移動度の電界依存性を示す.特に電子移動度は電界にほとんど依存しておらず,連続 分布した局在準位の特性温度は低いことが予想される [17].以上より,走行時間効果 が現れていることから,Green K HOD, EODはいずれも空間電荷制限状態となってお り,本論文で提案する手法を適用できることが分かった.

10

-6

10

-5

10

-4

10

-3

10

-2

C o n d u ct a n ce ( S )

0 V 1 V

2 V 3 V 4 V 5 V 6 V 7 V

10

-2

10

-1

10

0

10

1

10

2

10

3

10

4

10

5

10

6

Frequency (Hz)

10

-1

10

0

10

1

10

2

10

3

10

4

10

5

C a p a ci ta n ce ( n F )

103 104 105 106

Frequency (Hz)

10-7

10-6 10-5 10-4 10-3

- ∆ B ( S )

4 V 5 V 6 V 7 V

(a)

(b)

6.9 GreenK HOD (ITO/PEDOT:PSS/Green K LEP/Au)の(a)コンダ クタンス,(b)キャパシタンスの周波数依存性.挿入図は(b)より 得られた∆Bの周波数依存性.

400 600 800 1000

(Electric field)

1/2

(V/cm)

1/2

10

-6

5

10

-5

5

10

-4

M o b ili ty ( cm

2

/V s)

electron hole

s s

6.10 図6.8および6.9の挿入図より∆B法を用いて求めたGreen Kの 電子および正孔移動度.

ことが予想されたので,式(6.16)および高エネルギー分解能である式(6.20)を用いて 局在準位分布を算出した.まず室温293 Kでの測定結果である図6.9および6.8から得 られた局在準位分布を図6.11(a)に示す.なお,Rif = 102 Hzの値を用いた.解 析に用いた周波数領域は,10 mHz–30 kHz, つまり走行時間効果が現れる周波数より も低周波域である.図6.11では左端を価電子帯上端(Ev),右端を伝導帯下端 (Ec)と し,HOMO側,LUMO側の局在準位をそれぞれEv, Ecを基準として表示している.図 6.11(a)のエネルギー軸は離脱周波数を1012 Hzとして決定したが,図6.11(b)に示すよ うに異なる温度で測定した局在準位分布が良く重なることから仮定した離脱周波数が 正しいことが分かった.

図6.11(a)より,室温での測定結果からHOMO側,LUMO側共に移動度端から0.4–

0.8 eVの範囲の局在準位分布を得られたことが分かる.またHOMO側,LUMO側共

に,二つの指数関数型の局在準位分布を重ねた形で表されることが分かった.特性温 度はHOMO側の浅い準位で170 K,深い準位で480 K,LUMO側は浅い準位で190 K, 深い準位で350 Kとなった.

さらに浅い準位を測定するために,低温下にてIS測定を行った.室温での測定評価 結果である図6.11(a)より,浅い準位の特性温度が低いことが分かったので,T = 200 Kでも局在準位間のホッピングは支配的にならないと考えられるため[18],T = 200 K,

250 Kにて測定した.低温での測定にはLakeShore製の極低温プローブステーション

TTP4型を使用した.結果を図6.11(b)に示すが,室温でのデータに加えてさらに0.1 eV浅いエネルギー領域まで測定でき,HOMO側,LUMO側共に移動度端から0.3–0.8 eVの範囲の局在準位分布を得られていることが分かる.HOMO側,LUMO側ともに 浅い準位ではさらに特性温度が小さくなり,HOMO側で150 K,LUMO側は170 Kと なった.これらの特性温度はいずれも式(6.20)の分解能であるT /2の範囲内である.浅

い準位の特性温度が低く,エネルギー幅の狭い分布を有していることは,前節で得られ た電界依存性のほとんどない移動度とも対応が取れる.つまりGreen Kは電子・正孔 共に非分散型伝導であると推定できる.また図6.11(b)ではT = 319 K, 327 Kにおい ても測定を行い,深い準位のS/N比を改善した.0.5–0.7 eVのエネルギー範囲のS/N 比が改善できたことが図6.11(a)との比較より分かる.

以上のように,実際の実験結果からも移動度と局在準位分布を同時に評価すること ができた.電荷輸送に関する知見を得たり,キャリアバランスを考察する上で必須と も言える移動度と局在準位分布を同時に測定できるということは有機EL素子の電子物 性評価法としてIS法が非常に優れていることを示している.IS法は非破壊検査である ため,駆動によって移動度と局在準位分布がどのように変化するのかを連続的に観測 することによって,局在準位が劣化に及ぼす影響を調べることもできる.

0 0.5 -0.5 0

Energy (eV)

10

6

10

9

10

12

10

15

N

t

(E ) (a rb . u n its )

E

v

E

c

T0=190 K

T0=480 K T0=350 K T0=170 K

~ ~

10

6

10

9

10

12

10

15

10

18

N

t

(E ) (a rb . u n its ) 327 K 319 K

293 K 250 K 200 K

T0=150 K T0=170 K

T0=480 K T0=350 K

10

6

10

9

10

12

10

15

10

18

0 0.5 -0.5

Energy (eV) E

c

E

v

0 0.5 ~ ~ .5 0

~ ~

(b)

6.11 Green Kの局在準位分布.(a)図6.8および6.9に示す室温293 Kで の測定結果より式(6.16)および式(6.20)を用いて算出.(b)温度を 変えて測定・評価した結果.Stおよびδが測定できないので縦軸は 任意単位とした.

6.5 まとめ

本章ではIS測定による局在準位分布評価法を提案し,数値計算によってその有効性 を確かめた.また実際に本手法を用いて高分子有機半導体材料の局在準位分布を評価 した.以下に得られた知見をまとめる.

1. 局在準位を考慮して微小信号解析した結果得られたインピーダンスを元に,逆問 題を解析することによって,インピーダンスの周波数依存性より局在準位分布を 算出する表式を導いた.

2. 数値計算によって本手法の有効性を確認した結果,この方法は,TOF過渡光電 流波形からラプラス変換法やフーリエ変換法により局在準位を評価する方法に比 べ,高いエネルギー分解能を有することが分かった.

3. 本手法は室温において広いエネルギー領域の局在準位分布を測定可能である.

4. 局在準位分布とドリフト移動度を同時に測定することができることを数値計算結 果から示した.

5. フルオレン系高分子発光材料であるGreen K (SumationTM製)の局在準位分布 とドリフト移動度の同時評価を行い,本手法が有機EL素子において非常に有効 な電子物性評価法であることを示した.HOMO側,LUMO側共に移動度端から

0.3–0.8 eVの範囲の局在準位分布が得られた.またHOMO側,LUMO側共に,

二つの指数関数型の局在準位分布を重ねた形で表されることが分かった.HOMO 側の特性温度は浅い準位で150 K,深い準位で480 K,LUMO側は浅い準位で 170 K,深い準位で350 Kとなった.