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Taylor の定理

ドキュメント内 微分積分学入門 この (ページ 173-179)

6 Taylor の定理とその応用

6.1 Taylor の定理

同様に,(6.1)の両辺をn回微分すると

f(n)(x) =n!an+ (n+ 1)n· · ·2an+1x+· · · となる.この両辺にx= 0を代入して

f(n)(0) =n!anan= f(n)(0) n!

この計算結果より,どうやら関数f(x)が多項式で表せるとすると f(x) =

X n=0

f(n)(0) n! xn

となりそうであるが,途中で関数を微分したのでf(x)に条件が必要そうである.実際に次の定理が成り立つ.

定理6.1. (Maclaurinの定理)

 関数f(x)は0を含む開区間In回微分可能であるとする.このとき,各x∈Iに対して,あるθ(0< θ <1) が存在して

f(x) =

nX1 k=0

f(k)(0)

k! xk+ f(n)(θx) n! xn が成り立つ.ここで

Rn(x) = f(n)(θx) n! xn とおき,これをLagrangeの剰余項という.

マクローリンの定理をシグマ記号を用いずに表すと f(x) =f(0) +f(0)x+ f′′(0)

2 x2+ f(3)(0)

6 x3+· · ·+ f(n1)(0)

(n1)! xn1+Rn(x)

となる.つまり,マクローリンの定理とは,関数f(x)を「n1次多項式」と「剰余項」の和に表せるというこ とを主張している.また,多項式の部分の係数は前の計算結果と一致している.一見n次多項式に見えるが, xn の係数 が f(n)(θx)

n!xの関数であるからそうではない.剰余項は多項式とは限らない関数 f(x)をn−1次 多項式nP1

k=0

f(k)(0)

k! xk で近似したときのずれを表している,つまり関数とn−1次多項式の誤差をすべて剰余項 に押し込んでいるので,一般にはRn(x)はかなり複雑な形となることが多い.

マクローリンの定理の中に出てくるθは関数f(x)によって決まるものであるが,さらにxnが変わるとそ れに応じて変化する.そのためにθを具体的にこれらの式で表すことは非常に困難である.しかし,その形がわ からなくても0< θ <1であることが重要であり,この情報だけで議論できることは多い.

1次式で打ち切るとx= 0におけるy=f(x)の接線の方程式y=f(0) +f(0)xが得られることからわかるよ うに,0 に十分近い xについては Rn(x)は小さいので f(x)のよい多項式近似を与えていることが期待できる.

もちろん0から離れたxでも剰余項が小さいかどうかは場合による.マクローリンの定理の応用例については次 節以降を参照すること.

説明の都合上マクローリンの定理を先に紹介したが,実際には次に述べるテイラーの定理の特別な場合(a= 0) である.テイラーの定理はx=aの近くで関数を多項式近似した定理なので,こちらがより一般的な状況を考え ている.

定理6.2. (テイラーの定理)

 関数f(x)は点aを含む開区間In回微分可能であるとする.このとき,各x∈Iに対して,あるθ(0< θ <1) が存在して

f(x) =

nX1 k=0

f(k)(a)

k! (x−a)k+ f(n) a+θ(x−a)

n! (x−a)n

が成り立つ.ここで

Rn(x) = f(n) a+θ(x−a)

n! (x−a)n

とおき,これをLagrangeの剰余項という.

証明.  任意のx∈I, x=\ aをとり固定する(xは以下では定数である).定数K

K= 1

(x−a)n (

f(x)−f(a)

n1

X

k=1

f(k)(a)

k! (x−a)k )

とおき,aとxを含む区間上の関数F(t)を F(t) =f(t) +

n1

X

k=1

f(k)(t)

k! (x−t)k+K(x−t)n

により定義する.このとき,F(x) =f(x)である.さらに,定数Kの決め方よりF(a) =f(x)が成り立つ.よっ て,F(x) =F(a)であるから,Rolleの定理よりxaの間の数cF(c) = 0となるものが存在する.

そこで,F(t)を微分すると

F(t) =f(t) +

n1

X

k=1

f(k+1)(t)

k! (x−t)k+ f(k)(t)

k! ·k(x−t)k1·(1)

−nK(x−t)n1

=f(t) + ( n

X

k=2

f(k)(t)

(k1)! (x−t)k1

nX1 k=1

f(k)(t)

(k1)! (x−t)k1 )

−nK(x−t)n1

=f(t) +

f(n)(t)

(n1)! (x−t)n1−f(t)

−nK(x−t)n1

=n(x−t)n1

f(n)(t) n! −K

となる.よって

F(c) =n(x−c)n1

f(n)(c)

n! −K

= 0 となり,x=\ cよりK= f(n)(c)

n! が得られる.ゆえに f(x) =F(a) =

n1

X

k=0

f(k)(a)

k! (x−a)k+ f(n)(c)

n! (x−a)n が成り立つ.ここで,xとaの間の数cはある0< θ <1 を用いて

c= (1−θ)a+θx=a+θ(x−a) と表せるので,定理の主張が成り立つ.

例題6.3.  次の初等関数f(x)について,具体的にマクローリンの定理を適用して

f(x) =

nX1 k=0

f(k)(0)

k! xk+ f(n)(θx)

n! xn (0< θ <1) の形に表せ.また,5次多項式と剰余項の和で表せ.

(1) ex (2) sinx (3) cosx (4) log(1 +x)

(解答) 

(1)  n次導関数はf(n)(x) =ex (n= 0,1,2, . . .)であるから

f(n)(0) = 1 (n= 0,1,2, . . .), f(n)(θx) =eθx なので

ex=

n1

X

k=0

1

k! xk+ eθx

n! xn (0< θ <1) であり,5次の項までの展開はex= 1 +x+ x2

2 + x3 6 + x4

24 + x5

120 + eθx

720 x6となる.

(2)  n次導関数はf(n)(x) = sin

x+ 2

(n= 0,1,2, . . .)であるから

f(n)(0) = sin 2 =

( (1)k1 (n= 2k1)

0 (n= 2k)

となる.そこで,n= 2m+ 1とすると f(2m+1)(θx) = sin

θx++ π 2

= cos(θx+mπ) = (−1)mcosθx なので

sinx= Xm k=1

(1)k1

(2k1)! x2k1+ (1)mcosθx

(2m+ 1)! x2m+1 (0< θ <1) であり,5次の項までの展開はsinx=x− x3

6 + x5

120 cosθx

7! x7 となる.

(3)  n次導関数はf(n)(x) = cos

x+ 2

(n= 0,1,2, . . .)であるから

f(n)(0) = cos 2 =

( 0 (n= 2k1) (1)k (n= 2k) となる.そこで,n= 2m+ 2とすると

f(2m+2)(θx) = cos θx+ (m+ 1)π

= (1)m+1cosθx なので

cosx= Xm k=0

(1)k

(2k)! x2k+ (1)m+1cosθx

(2m+ 2)! x2m+2 (0< θ <1) であり,5次の項までの展開はcosx= 1 x2

2 + x4

24 cosθx

6! x6 となる.

(4)  n次導関数はf(n)(x) = (1)n1(n1)!

(1 +x)n (n= 1,2,3, . . .)であるから

f(0) = log 1 = 0, f(n)(0) = (1)n1(n1)! (n= 1,2,3, . . .) となる.また

f(n)(θx) = (1)n1(n1)!

(1 +θx)n なので

log(1 +x) =

n1

X

k=1

(1)k1

k xk+ (1)n1

n(1 +θx)n xn (0< θ <1) であり,5次の項までの展開はlog(1 +x) =x− x2

2 + x3 3 x4

4 + x5

5 x6

6(1 +θx)6 となる.

(解答終)

6.4.αを実数とするとき,f(x) = (1 +x)αのマクローリンの定理による展開を求めてみる.n次導関数は f(n)(x) =α(α−1)(α2)· · ·−n+ 1)(1 +x)αn (n= 1,2,3, . . .)

であるから

f(0) = 1, f(n)(0) =α(α−1)(α2)· · ·−n+ 1) (n= 1,2,3, . . .) ここで,一般二項係数を

α 0

= 1,

α k

= α(α−1)(α2)· · ·−k+ 1)

k! (k= 1,2,3, . . .) で定める.この記号を用いれば

(1 +x)α=

nX1 k=0

α k

xk+ α

n

(1 +θx)αnxn (0< θ <1) と表せる.

重要な記号なのでもう一度繰り返しておく.

定義6.5. (一般二項係数)

 一般二項係数 α

k

α

0

= 1,

α k

= α(α−1)(α2)· · ·−k+ 1)

k! (k= 1,2,3, . . .) で定義する.これは二項係数nCk の拡張になっている.実際,nを自然数とすると

n k

=nCk (k= 0,1,2, . . . , n) が成り立つ.

マクローリンの定理を用いて次の事実を証明することができる.

例題6.6.  ネイピア数 eは無理数であることを示せ.

(解答) 背理法により証明する.つまり,互いに素な自然数m, n を用いてe= n

m と表せると仮定して矛盾を 導く.eがこのように表されると仮定する.マクローリンの定理よりある0< θ <1が存在して

ex=

m+1X

k=0

xk

k! + eθx

(m+ 2)! xm+2 と表せるから,x= 1を代入すれば

e=

m+1X

k=0

1

k! + eθ (m+ 2)!

となる.この両辺に(m+ 1)! をかけて移項すれば eθ

m+ 2 = (m+ 1)!e

m+1X

k=0

(m+ 1)!

k! = (m+ 1)! n

m

m+1X

k=0

(m+ 1)!

k!

であり,シグマ記号の各項 (m+ 1)!

k! (k = 0,1,2, . . . , m+ 1) がすべて自然数であるから右辺は整数なので,

eθ

m+ 2 も整数となる.一方,2≦e≦3 と0< θ <1およびmが自然数であることより 0< eθ

m+ 2 < e

m+ 2 ≦ 3 m+ 2 ≦1 であるから,0< eθ

m+ 2 <1より eθ

m+ 2 は整数とはなりえない.これは矛盾である.従って,eは有理数では ないから無理数である.

(解答終)

この例題はやや技巧的なマクローリンの定理の応用例となっている.マクローリンの定理の本質的に重要な応 用例は,次節から説明する「関数の多項式近似」を利用した計算である.

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