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漸近展開

ドキュメント内 微分積分学入門 この (ページ 182-187)

6 Taylor の定理とその応用

6.3 漸近展開

ランダウの記号o(xn)は lim

x0

f(x)

xn = 0となる関数f(x)をすべてまとめて一つの記号で表しているので,o(xn) を通常の関数だと思うような計算はできない.例えば

3x+x2+x3= 3x+o(x) (x0)

−x+ 3x2+ 5x3=−x+o(x) (x0) 2x4x2+x7= 2x+o(x) (x0)

において,それぞれのo(x)が表す関数は異なる.そのため,1本目と2本目の式で辺々引いて 4x2x24x3= 4x

と計算することはできない.この式の左辺と右辺は明らかに関数として異なっている.正しくは,辺々引いても 4x2x24x3= 4x+o(x) (x0)

である.

例題6.11.  次が成り立つことを示せ.

(1) cosx−1 =o(x) (x0) (2) sinx−x=o(x) (x0) (3) 3以上の自然数nf(x) =

Pn k=3

akxk に対して,f(x) =o(x2) (x0)

(解答) 

(1)  xで割って極限をとると lim

x0

cosx−1

x = lim

x0

sin2x

x(1 + cosx) = lim

x0

sinx

x · −sinx

1 + cosx = 1·0 = 0 なので,cosx−1 =o(x) (x→0) が成り立つ.

(2)  xで割って極限をとると

xlim0

sinx−x

x = lim

x0

sinx x 1

= 11 = 0 であるから,sinx−x=o(x) (x→0) が成り立つ.

(3)  x2で割って極限をとると,n≧3 であるから lim

x0

f(x) x2 = lim

x0

Xn k=3

akxk2= lim

x0(a3x+a4x2+· · ·+anxn2) = 0 であるから,f(x) =o(x2) (x0)が成り立つ.

(解答終)

注意6.12.  関数をランダウの記号を用いて

cosx= 1 +o(x) (x0) や

sinx=x+o(x) (x0) のように表すこともある.

関数がn回微分可能よりもさらによい性質をもてば,ランダウの記号を用いて次のように表せる.

定理6.13. (漸近展開)

 関数f(x)は点0 を含む開区間ICn級関数であるとする.このとき f(x) =

Xn k=0

f(k)(0)

k! xk+o(xn) (x0) が成り立つ.

証明.  マクローリンの定理より,各x∈I に対して,ある0< θ <1 が存在して f(x) =

nX1 k=0

f(k)(0)

k! xk+ f(n)(θx) n! xn と表せる.これより

f(x) = Xn k=0

f(k)(0)

k! xk+ f(n)(θx)−f(n)(0)

n! xn

となる.

ここで,h(x) = f(n)(θx)−f(n)(0)

n! xn とおくと,f(x)はCn級だからn次導関数f(n)(x)は連続なので

|θx|<|x| −→0 (x0) とあわせると

lim

x0

h(x) xn = lim

x0

f(n)(θx)−f(n)(0)

n! = f(n)(0)−f(n)(0)

n! = 0

が得られる.よって,h(x) =o(xn) (x0) であるから f(x) =

Xn k=0

f(k)(0)

k! xk+o(xn) (x0) が成り立つ.

マクローリンの定理はn回微分可能という仮定だが,もしn次導関数が連続(Cn級)ならば上のようにn次 多項式と「xn より高次の微小項o(xn)」の和で表せる.

漸近展開の o(xn)の部分が具体的にどのような形かはこの定理からはわからない.あくまで,関数 f(x) と n 次近似多項式のずれがo(xn) であることのみを主張している.そのため,漸近展開を利用して誤差評価付きの近 似計算はできない.ただし,剰余項の具体的な表示を必要としない場合には扱いやすい.例えば,次に紹介する 不定形の極限計算には便利である.

定理6.13より,初等関数の漸近展開について次の公式が成り立つ.

命題6.14. (初等関数の漸近展開)

x→0のときに,すべての自然数n に対して以下が成り立つ.

(1) ex= Pn k=0

xk

k! +o(xn) (x0) (2) sinx=

Pn k=0

(1)kx2k+1

(2k+ 1)! +o(x2n+2) (x0) (3) cosx=

Pn k=0

(1)kx2k

(2k)! +o(x2n+1) (x0) (4) log(1 +x) =

Pn k=1

(1)k1xk

k +o(xn) (x0) (5) (1 +x)α=

Pn k=0

α k

xk+o(xn) (x0)

最初の2〜3項までの漸近展開はよく使われるので,すぐに書けるようにしておくこと.x0のときの漸近展 開をいくつか具体的に書いておく.問題に応じて必要な次数までの公式を用いればよい.

ex については

ex= 1 +x+o(x) (x0)

ex= 1 +x+ x2

2 +o(x2) (x0) ex= 1 +x+ x2

2 + x3

6 +o(x3) (x0) となる.

sinxについては,奇数次数しか現れないので

sinx=x+o(x2) (x0) sinx=x− x3

6 +o(x4) (x0) となる.cosxについては,偶数次数しか現れないので

cosx= 1 x2

2 +o(x3) (x0) cosx= 1 x2

2 + x4

24 +o(x5) (x0) となる.次数が1つとびで現れるので,ランダウの記号の次数に注意すること.

log(1 +x)については

log(1 +x) =x+o(x) (x0)

log(1 +x) =x− x2

2 +o(x2) (x0) log(1 +x) =x− x2

2 + x3

3 +o(x3) (x0) となる.定数項はなく1次の項から始まり,分母が階乗ではないので注意すること.

また,ランダウの記号に関しては次が成り立つことがわかる.

定理6.15. (ランダウの記号の演算)

x→0とするとき,以下が成り立つ.

(1) o(xn)o(xm) =o(xn+m) (x0) (2) xno(xm) =o(xn+m) (x0)

(3) mnならば,o(xn)±o(xm) =o(xn) (x0) (4) 定数C に対して,Co(xn) =o(xn) (x0) 証明.  いずれもランダウの記号の定義を確認すればよい.

(1)   lim

x0

o(xn)o(xm) xn+m = lim

x0

o(xn)

xn · o(xm)

xm = 0·0 = 0 (2)   lim

x0

xno(xm) xn+m = lim

x0

o(xm) xm = 0 (3)   lim

x0

o(xn)±o(xm)

xn = lim

x0

o(xn)

xn ± o(xm) xm ·xmn

= 0±0·0 = 0

(4)   lim

x0

Co(xn) xn = lim

x0C o(xn)

xn =0 = 0

大雑把に言えば,積については指数法則のようなものが成り立ち,x→0 のときは和について次数の低い方に まとまる.以下でx→0のときのランダウの記号の計算例を示すので,上の公式と照らし合わせてみること.感 覚的には(とりあえずべき乗関数を考えずに)o(xn)とはxn+1 以上の次数をもつ項のこととイメージすれば,計 算法則が理解しやすい.

1 +x+ 3x3+o(x3)

2x6x2+o(x2)

= 1−x+ 6x2+ 3x3+o(x3)−o(x2)

= 1−x+ 6x2+o(x2)

ランダウの記号については次数の低いものにまとまる.例えばo(x2) +o(x3) =o(x2) (x0)である.また上の 例ではx3=o(x2) (x0)であるから,この項もランダウの記号にまとまってしまう.従って,o(xn)という項 がある和や差については,次数がnの項まで計算すればよく,n+ 1 次以上の項は気にしなくてもよい.普段は

1 +x+ 3x3+o(x3)

2x6x2+o(x2)

= 1−x+ 6x2+o(x2) と計算すればよい.積については,まじめにやれば

1 +x+x2+o(x2)

2x−x2+o(x2)

= 2x−x2+o(x2) + 2x2−x3+xo(x2) + 2x3−x4+x2o(x2) + 2xo(x2)−x2o(x2) +o(x2)o(x2)

= 2x−x2+o(x2) + 2x2−o(x2) +o(x3) +o(x2)−o(x3) +o(x4) +o(x3)−o(x4) +o(x4)

= 2x+x2+o(x2)

であるが,かなり無駄が多い.ランダウの項が絡む積で次数が一番低い項に着目すればo(x2)であるから,3次以 上の項はすべてo(x2)にまとまるので2次以下の項のみについて計算すればよく

1 +x+x2+o(x2)

2x−x2+o(x2)

= 2x+ (1 + 2)x2+o(x2) = 2x+x2+o(x2)

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