第 4 章 関数の極限
1.2 関数の極限の性質
定理1.7. (関数の極限と数列の極限の関係)
aとαを実数とする.このとき,lim
x→af(x) =αとなる必要十分条件は,lim
n→∞an=a, an =\ aを満たす任意の 数列{an}∞n=1 について lim
n→∞f(an) =αとなることである.
a=±∞,α=±∞のときにも,これと同様の主張が成り立つ.
証明. lim
x→af(x) =αとする.このとき,任意のε >0 に対して,あるδ(ε)>0 が存在して 0=\ x−a < δ(ε) =⇒ f(x)−α < ε
が成り立つ.ここで,lim
n→∞an =a, an=\ aを満たす任意の数列{an}∞n=1をとると,上で決めたδ(ε)>0 に対し て,ある自然数N(ε)が存在して
n≧N(ε) =⇒ 0=\ an−a < δ(ε) が成り立つ.よって
n≧N(ε) =⇒ 0=\ an−a < δ(ε) =⇒ f(an)−α < ε となるから,lim
n→∞f(an) =αである.
逆に lim
n→∞an=a, an=\ aを満たす任意の数列{an}∞n=1 について lim
n→∞f(an) =αが成り立つとする.このと き,lim
x→af(x)=\ αと仮定して矛盾を導く.x→aで f(x)が αに収束しないので,ある ε0>0 が存在して,任 意のδ >0に対して,あるxで
0=\ x−a < δ, f(x)−α ≧ε0
を満たすものが存在する.
任意の自然数nをとり,上式でδ= 1
n としたときのxをan とおく.このとき 0=\ an−a < 1
n, f(an)−α ≧ε0
となるので
an−a < 1
n −→ 0 (n→ ∞)
より,はさみうち法から lim
n→∞an =aとなる.従って,lim
n→∞an =a, an =\ aをみたすので,仮定より lim
n→∞f(an) =α が成り立つ.ゆえに,ある自然数N(ε0)が存在して
n≧N(ε0) =⇒ f(an)−α < ε0
となるが,一方anの決め方からすべての自然数nに対して f(an)−α ≧ε0であったので,これは矛盾である.
従って,lim
x→af(x)=\ αが成り立つ.
この定理から関数の極限と数列の極限が結び付いたので,これらは似たような性質をもつことがわかる.
定理1.8. (関数の極限の性質)
x→aのとき,f(x), g(x)は収束し
xlim→af(x) =α, lim
x→ag(x) =β とおくとき,次が成り立つ.
(1) λ, µ∈Rに対して,lim
x→a{λf(x) +µg(x)}=λα+µβ (2) lim
x→af(x)g(x) =αβ (3) β= 0\ ならば,lim
x→a
f(x) g(x) = α
β (4) lim
x→a|f(x)|=|α|
これはa=±∞の場合にも成り立つ.
証明. 仮定と定理1.7より, lim
n→∞an =a, an =\ aを満たす任意の数列 {an}∞n=1 について
nlim→∞f(an) =α, lim
n→∞g(an) =β が成り立つから,第3章定理2.1より
nlim→∞{λf(an) +µg(an)}=λα+µβ となる.よって,再び定理1.7よりlim
x→a{λf(x) +µg(x)}=λα+µβ が成り立つ.
他の主張の証明も同様である.
このように,関数の極限を定理1.7を用いて数列の極限に直すことにより,第3章で証明した数列の極限に関す る性質と同様のものが関数の極限についても成り立つことがわかる.証明は同じような議論の繰り返しになるの で省略する.
定理1.9. x→aのときにf(x), g(x)が収束し,あるδ >0 に対して f(x)≦g(x) (x∈Uδ(a), x=\ a) が成り立つならば
xlim→af(x)≦ lim
x→ag(x) が成り立つ.
a=±∞のときも同様の主張が成り立つ.
定理1.10. (はさみうち法)
関数f, g, hがある δ >0 に対して
f(x)≦h(x)≦g(x) (x∈Uδ(a), x=\ a) を満たし,かつ lim
x→af(x) = lim
x→ag(x) =αであれば,lim
x→ah(x) =αが成り立つ.
a=±∞のときも同様の主張が成り立つ.
定理1.11. (合成関数の極限)
点a の近傍で定義された関数f(x)が lim
x→af(x) =b をみたし,さらに点y=b の近傍で定義された関数g(y) が lim
y→bg(y) =g(b)をみたすならば,合成関数g f(x)
の極限について lim
x→ag f(x)
=g(b)が成り立つ.
証明. 任意のε >0 に対して,あるδ1(ε)>0 が存在して
0< y−b < δ1(ε) =⇒ g(y)−g(b) < ε
が成り立つ.ここで,y=b のときにも当然 g(y)−g(b) = 0< εは成り立つから,これは y−b < δ1(ε) =⇒ g(y)−g(b) < ε
と書くことができる.
さらに,lim
x→af(x) =b だから,上のδ1(ε)>0に対して,あるδ2(δ1(ε))>0が存在して 0< x−a < δ2(δ1(ε)) =⇒ f(x)−b < δ1(ε)
が成り立つ.よって,δ(ε) =δ2(δ1(ε))とおけば
0< x−a < δ(ε) =⇒ f(x)−b < δ1(ε) =⇒ g(f(x))−g(b) < ε となり,lim
x→ag(f(x)) =g(b)が成り立つ.
注意1.12. 一般に『lim
x→af(x) =b, lim
y→bg(y) =β =⇒ lim
x→ag f(x)
=β』が成り立つとは限らない.
例えば,a= 0とし
f(x) =xsin 1
x (x= 0),\ g(y) =
y2
|y| (y= 0)\
1 (y= 0) とする.このとき,x= 0\ ならば
|f(x)|= xsin 1
x =|x| sin 1
x ≦|x| −→ 0 (x→0) であるから,lim
x→0f(x) = 0 となる.よって,上の記号でb= 0である.また,y= 0\ ならば g(y) = y2
|y| = |y|2
|y| =|y| −→ 0 (y→0) より,lim
y→0g(y) = 0となる.よって,上の記号でβ = 0である.
次に,極限 lim
x→0g f(x)
について考える.まずan = 1
2nπ とおくと f(an) =ansin 1
an =ansin 2nπ = 0 ∴ g f(an)
=g(0) = 1 より,lim
n→∞g f(an)
= 1となる.次にbn= 1 2n+ 12
π とおくと
f(bn) =bnsin 1 bn
=bnsin
2n+ 1 2
π=bn ∴ g f(bn)
=g(bn) =|bn| より,lim
n→∞g f(bn)
= 0 となる.
ゆえに,0に収束する数列{an}∞n=1,{bn}∞n=1 に対して lim
n→∞g f(an)
\
= lim
n→∞g f(bn)
であるから,定理1.7 より極限 lim
x→0g f(x)
は存在しない.従って,特に lim
x→0g f(x)
\
=β となっている.
数列の極限に関する定理として,Cauchy列の収束定理があった.この主張の関数の極限版は以下のようになる.
定理1.13. (Cauchyの収束判定法)
極限 lim
x→af(x) が存在するための必要十分条件は,任意の ε > 0 に対して,ある δ(ε)> 0 が存在して,0 <
x−a < δ(ε), 0< y−a < δ(ε)をみたす任意のx, y に対して, f(x)−f(y) < εが成り立つことである.
証明. 極限 lim
x→af(x)が存在するとし,その極限値をαとおく.任意のε >0をとる.ε∗= ε
2 >0 に対して,
あるδ(ε∗)>0 が存在して
0< x−a < δ(ε∗) =⇒ f(x)−α < ε∗ が成り立つ.よって,0< x−a < δ(ε∗), 0< y−a < δ(ε∗)ならば
f(x)−f(y) ≦ f(x)−α + α−f(y) < ε∗+ε∗=ε が成り立つ.
逆に,任意のε >0 に対して,あるδ(ε)>0 が存在して
0< x−a < δ(ε), 0< y−a < δ(ε) =⇒ f(x)−f(y) < ε (1.1) が成り立つとする.ここで,{an}∞n=1 を
an=\ a, lim
n→∞an=a (1.2)
をみたすような任意の数列とする.このとき,上で与えたδ(ε)>0 に対して,ある自然数N(ε)が存在して n≧N(ε) =⇒ an−a < δ(ε)
が成り立つ.よって,m≧N(ε), n≧N(ε)ならば
0< am−a < δ(ε), 0< an−a < δ(ε) であるから,仮定(1.1)より
f(am)−f(an) < ε
となる.ゆえに,数列{f(an)}∞n=1 はCauchy列である.従って,極限 lim
n→∞f(an)は存在する.
後は定理1.7を適用するために,(1.2)をみたす数列{an}∞n=1 をどう決めても極限 lim
n→∞f(an)がすべて同じ値 であることを示せばよい.そこで,{an}∞n=1と{bn}∞n=1 を(1.2)をみたすような任意の数列とする.このとき,上 の議論より極限値を
lim
n→∞f(an) =α, lim
n→∞f(bn) =β
とおける.ここで,新しい数列{cn}∞n=1をc2n−1=an, c2n=bn とおけば,第3章命題2.13より,数列{cn}∞n=1
も条件(1.2)をみたす.よって,再び上の議論より極限 lim
n→∞f(cn)は存在するから,その極限値をγ とおく.す ると,{an}∞n=1 は {cn}∞n=1 の奇数番目の項を並べたものだからもう一度第3章命題2.13よりα=γであり,同 様に{bn}∞n=1 についてもβ =γとなるから,α=β である.従って,定理1.7より 極限 lim
x→af(x)は存在し,そ の極限値はこの一定値αである.
練習問題1.2. 定理1.8の残り,および定理1.9と定理1.10を証明せよ.定理1.7を用いてもよいし,直接ε−δ 論法で示してもよい.