第 4 章 関数の極限
3.4 双曲線関数
例題3.18. 次の値を求めよ.
(1) sinh(log 2) (2) tanh(log(√
5−2))
(解答)
(1) sinh(log 2) = elog 2−e−log 2
2 =
2− 1 2
2 = 3
4
(2) tanh(log(√
5−2)) = elog(√5−2)−e−log(√5−2) elog(√5−2)+e−log(√5−2) =
(√
5−2)− √ 1 5−2 (√
5−2) + √ 1 5−2
=
√5−2−(√ 5 + 2)
√5−2 + (√
5 + 2) =−√2 5
(解答終)
例題3.19. 関数f(x) = coshx (x≧0)の逆関数を求めよ.
(解答) y= coshx= ex+e−x
2 とおくと,相加相乗平均より y= 1
2
ex+ 1 ex
≧ 1 2 ·2
r ex· 1
ex = 1 である.また,ex についての方程式とみて
(ex)2−2yex+ 1 = 0 と整理すれば,ex について解くと
ex=y±p y2−1 となる.ここで,x≧0 よりex≧1である.また,y≧1であったから
y+p
y2−1≧1, y−p
y2−1 = 1 y+p
y2−1 ≦1 より
ex=y+p y2−1 が適する.よって
x= log(y+p y2−1 ) となるから,xとy を入れ替えれば求める逆関数は
f−1(x) = log(x+p
x2−1 ) (x≧1)
(解答終)
練習問題3.1. 双曲線関数の逆関数について次の等式を示せ.
(1) sinh−1x= log(x+√
x2+ 1 ) (x∈R) (2) tanh−1x= 1
2 log 1 +x
1−x (|x|<1)
4 関数の一様連続性
ここでは連続関数の 連続性の度合い について考察する.
例えばf1(x) =xや f2(x) = sinxおよびf3(x) =x2はR上の連続関数である.これをイプシロン・デルタ論 法で確認してみる.
(f1(x) =xについて)
任意のa∈Rと ε >0 に対して,δ(a, ε) =εとおけば, x−a < δ(a, ε)となる任意の実数xに対して f1(x)−f1(a) = x−a < δ(a, ε) =ε
となるから,確かにf1(x) =xはR上の連続関数である.
(f2(x) = sinxについて)
任意のa∈Rと ε >0 に対して,δ(a, ε) =εとおけば, x−a < δ(a, ε)となる任意の実数xに対して sinx−sina = 2 cos x+a
2 sin x−a
2 ≦2·1· x−a
2 = x−a < δ(a, ε) =ε となるから,確かにf2(x) = sinxはR上の連続関数である.
(f3(x) =x2 について)
δをどうおくか決めるために,とりあえず x−a < δ としてみると
x2−a2 = x+a x−a < x+a δ= (x−a) + 2a δ≦( x−a + 2|a|)δ <(δ+ 2|a|)δ δは小さくとってもいいから,0< δ <1 とすれば
x2−a2 <(δ+ 2|a|)δ <(1 + 2|a|)δ=ε より,δ= ε
1 + 2|a| とおけばよい.
そこで,任意のa∈Rと ε >0に対して,δ(a, ε) = min
1, ε 1 + 2|a|
とおけば, x−a < δ(a, ε)となる任 意の実数xに対して
x+a = (x−a) + 2a ≦ x−a + 2|a|< δ(a, ε) + 2|a|≦1 + 2|a| なので
x2−a2 = x+a x−a <(1 + 2|a|)δ(a, ε)≦(1 + 2|a|) ε
1 + 2|a| =ε となるから,確かにf3(x) =x2は R上の連続関数である.
以上の結果を見ると,あることに気付くかもしれない.連続関数の定義でも述べたように,定義域の任意の点 aと与えられた許容誤差ε >0 に応じて,aの近傍の半径 δ(a, ε)をその近傍内では f(x)−f(a) < εと許容誤 差をみたすように決めればよいのだが,f1(x) とf2(x)ではδ(a, ε) =ε とδ(a, ε) はa とは無関係に決めること ができる.一方,f3(x)ではδ(a, ε) = min
1, ε
1 + 2|a|
と確かにaにも依存してδ(a, ε)が決まっている.た だし,δ(a, ε)の決め方は人によって異なりうるのでこれだけではaに無関係に決められる可能性が残っているが,
後で示すようにf3(x)についてはδ(a, ε)をaに無関係に決めることができない.
このことはxがhだけ変化したときの y の変化量 f(x+h)−f(x) を考えると,xによらず f1(x+h)−f1(x) =|h|, f2(x+h)−f2(x) ≦|h|
なのに対して,f (x)については
このように連続関数といっても関数の値の変化がおとなしいものから激しいものまでたくさんある.このうち,
おとなしい方に関しては有用な性質が多く得られるので,以下のように用語を定義する.
定義4.1. (一様連続)
区間I で定義された関数 f(x)が次の条件『任意のε >0 に対して,あるδ(ε)>0が存在し, x−y < δ(ε) をみたす任意のx, y ∈Iについて
f(x)−f(y) < ε
となる』という条件をみたすとき,f(x)はI 上で一様連続であるという.
関数f(x)が I上で一様連続であるとは,連続関数の定義におけるδ(a, ε)をaによらず 一様に 決められる ということである.例えば,f1(x) =x, f2(x) = sinxはR上の一様連続な関数である.f3(x) =x2が R上で一 様連続でないことは背理法で示すことができる.
例題4.2. 次の関数f(x)が区間I で一様連続でないことを示せ.
(1) f(x) =x2, I=R (2) f(x) = 1
x, I= (0,∞)
(解答)
(1) f(x) =x2が R上で一様連続であると仮定すると,ε= 1に対して,あるδ=δ(1)>0が存在して x−y < δ =⇒ x2−y2 <1
が成り立つ.そこで,自然数nに対してx=n+ δ
2, y=nとおけば,x−y = δ
2 < δ であるから x2−y2 =
n+ δ
2 2
−n2 =δn+ δ2 4 <1 が成り立つことになるが,lim
n→∞
δn+ δ2 4
=∞であるから,この数列が上に有界となることは矛盾であ る.ゆえに,f(x) =x2 はR上で一様連続でない.
(2) f(x) = 1
x がI= (0,∞)上で一様連続であると仮定すると,ε= 1に対して,あるδ=δ(1)>0が存在 して
x, y∈I, x−y < δ =⇒ 1 x − 1
y <1 が成り立つ.そこで,自然数nに対してx= 1
n, y= 1 n + δ
2 とおけば, x−y = δ
2 < δ であるから 1
x − 1
y = n− 2n
2 +δn = δn2 2 +δn <1 が成り立つことになるが,lim
n→∞
δn2
2 +δn =∞ であるから,この数列が上に有界となることは矛盾である.
ゆえに,f(x) = 1
x はI 上で一様連続でない.
(解答終)
関数f(x)が一様連続かどうかは定義域I に依存して決まる.例えば,f(x) =x2 の定義域をJ = [−R, R]と すれば,f(x)は J 上で一様連続である.実際,任意のε >0 に対して,δ(ε) = minn
1, ε 1 + 2R
oとおけば
x, y∈J, x−y < δ(ε) =⇒ x2−y2 < ε
が成り立つことが示せる.前ページと同様の計算となるので各自確かめてみよ.また,それを通してなぜJ 上な らば一様連続となるかの理由を考えてみよ.その答えの一部は以降のページで述べる定理である.
一様連続な関数についても連続関数と同様に次が成り立つ.
定理4.3. (一様連続な関数の性質)
関数f(x), g(x) がI 上で一様連続ならば,λ, µ∈Rに対してλf(x) +µg(x) もI 上で一様連続である.
証明. λ=µ= 0ならば明らかなので,(λ, µ)= (0,\ 0) とする.
任意のε >0 をとる.このとき,ε′= ε
|λ|+|µ| >0 に対して,あるδ1(ε′), δ2(ε′)>0が存在して x, y∈I, x−y < δ1(ε′) =⇒ f(x)−f(y) < ε′
x, y∈I, x−y < δ2(ε′) =⇒ g(x)−g(y) < ε′
が成り立つ.そこで,δ(ε) = min{δ1(ε′), δ2(ε′)}とおけば, x−y < δ(ε)となる任意のx, y∈I に対して (λf(x) +µg(x))−(λf(y) +µg(y)) ≦|λ| f(x)−f(y) +|µ| g(x)−g(y) <(|λ|+|µ|)ε′ =ε であるから,λf(x) +µg(x)はI 上で一様連続である.
一般にf(x), g(x)が I上で一様連続であっても,積f(x)g(x)は I上で一様連続とは限らない.
例えば,f(x) =g(x) =xは R 上で一様連続であるが,f(x)g(x) =x2 は R上で一様連続ではない.たとえ f(x)やg(x)が有界でも一様連続であるとは限らない.次の例を参照すること.
例題4.4. 関数 f(x) =xsinxがR上で一様連続でないことを示せ.
(解答) f(x) =xsinxがR上で一様連続であると仮定すると,ε= 1に対して,あるδ=δ(1)>0が存在して x−y < δ =⇒ xsinx−ysiny <1
が成り立つ.そこで,自然数nに対してx= 2nπ+ δ
2, y= 2nπ とおけば, x−y = δ
2 < δ であるから xsinx−ysiny =
2nπ+ δ 2
sin
2nπ+ δ 2
=
2nπ+ δ 2
sin δ
2 <1 が成り立つ.しかし,sin δ
2 = 0\ となるようにδを小さく取り直しておけば,lim
n→∞
2nπ+ δ 2
sin δ
2 =∞で あるから,この数列が上に有界となることは矛盾である.ゆえに,f(x) =xsinxはR上で一様連続でない.
(解答終)
区間上の連続関数が有界であっても,一様連続とは限らない.
例題4.5. 関数 f(x) = sin 1
x が I= (0,1]上で一様連続でないことを示せ.
(解答) f(x) = sin 1
x がI 上で一様連続であると仮定すると,ε= 1に対して,あるδ=δ(1)>0が存在して x−y < δ =⇒ sin 1
x −sin 1 y <1 が成り立つ.そこで,自然数nに対してxn= 1
2n+ 1 2
π
, yn = 1
2nπ とおけば,n > 1
δπ ならば
0< xn< yn< δ
2 ∴ xn−yn <|xn|+|yn|< δ となるから
sin 1
xn −sin 1
yn = 1−0 = 1<1
が成り立つことになり矛盾である.ゆえに,f(x) = sin 1 は I上で一様連続でない.
定義から一様連続な関数は連続関数である.しかし,一般に連続関数が一様連続であるとは限らず,それを定義 に基づいて判定するのは大変である.そこで,次の定理が有用となる.
定理4.6. (有界閉区間上の連続関数の一様連続性)
有界閉区間上で連続な関数は一様連続である.
証明. 背理法で示すため,有界閉区間I= [a, b]上の連続関数f(x)が一様連続ではないと仮定する.このとき,
ある正の数ε0が存在して,任意の δ >0に対して,あるxδ, yδ ∈I が存在して xδ−yδ < δ, f(xδ)−f(yδ) ≧ε0
となる.そこで,各自然数nに対してδ= 1
n とおけば
a≦xn≦b, a≦yn ≦b, xn−yn < 1
n, f(xn)−f(yn) ≧ε0
となる数列{xn}∞n=1,{yn}∞n=1 を選ぶことができる.
I は有界なので{xn}∞n=1 は有界な数列であるから,定理6.8(Bolzano-Weierstrassの定理)より収束する部分 列{xnk}∞k=1が存在する.この極限値を lim
k→∞xnk=cとおくと,a≦c≦bとなる. また,xn−yn < 1
n とは
さみうちの定理より lim
k→∞ynk=cも成り立つ.
よって,f(x)の連続性より
lim
k→∞ f(xnk)−f(ynk) = f(c)−f(c) = 0
が得られるが,これは f(xn)−f(yn) ≧ε0 とε0 が正の定数であることに矛盾する.従って,f(x)はI 上の一 様連続な関数である.
もし位相空間論でコンパクト集合などの概念を学習すれば,上の定理は背理法でなく直接証明できるようにな る.また,一様連続かどうか判定するのに役に立つ命題を述べておく.
命題4.7. 関数 f(x)は有界な区間 I= (a, b] 上で連続とする.このとき,f(x)が I 上で一様連続であるため の必要十分条件は右極限 lim
x→a+0f(x)が収束することである.
命題4.8. 関数f(x)は無限区間 I= [a,∞)上で連続であり,極限 lim
x→∞f(x)が収束するならば,f(x)はI 上 で一様連続である.
この逆の命題『f(x) がI 上で一様連続ならば,極限 lim
x→∞f(x)が収束する』は一般に成り立たない.例えば,
sinxはR上の一様連続な関数であるが,lim
x→∞sinxは存在しない.
5 章末問題
練習問題5.1. 次の極限値を求めよ.
(1) lim
x→0
1−cos 4x
xsin 2x (2) lim
x→∞
1− log 2 x
x
(3) lim
x→∞(√
x2−x+ 2−x) (4) lim
x→0
sinhx
x (5) lim
x→∞xTan−1 1
x (5) lim
x→+0xsinx
練習問題5.2. 次の値を逆三角関数を用いずに表せ.
(1) Sin−1
√3
2 (2) Cos−1(−1) (3) Tan−1
−√1 3
(4) Sin−1
√3−1 2√
2 (5) 2 Tan−11
3 + Tan−11
7 (6) 4 Tan−11
5 −Tan−1 1 239
練習問題5.3. 逆三角関数に関する次の関係式を示せ.
(1) sin(Cos−1x) = cos(Sin−1x) =√
1−x2 (2) Tan−1x= Sin−1√ x 1 +x2 (3) Tan−1|x|= 1
2 Cos−11−x2 1 +x2
練習問題5.4. 関数 f(x) = lim
n→∞
x2n+1−x
x2n+ 1 のグラフをかけ.
練習問題5.5. 関数 f(x)は閉区間[0,1]上の連続関数で,f(0) = 1, f(1) = 0 であるとする.このとき f(c) =c, 0< c <1
となるc が存在することを示せ.
発展問題 5.6. 0< C <1とする.閉区間 I 上で定義された関数f(x)が f(I)⊂I をみたし,任意の x, y∈I に対して
f(x)−f(y) ≦C x−y が成り立つとする.このとき,数列{an}∞n=1 を
a1∈I, an+1=f(an) (n= 1,2,3, . . .) で定める.
(1) f(x)は I で連続であることを示せ. (2) {an}∞n=1 はCauchy列であることを示せ.
(3) 方程式f(x) =xの解は I でただ一つだけ存在することを示せ.
発展問題5.7. 関数f(x)は区間 [0,∞)上の一様連続関数で,f(0) = 0 であるとする.このとき,定数a >0 で
|f(x)|≦ax+ 1 (x >0)