第 4 章 関数の極限
2.3 有界閉区間上の連続関数
ここでは有界閉区間 [a, b] 上の連続関数に特有の性質を紹介する.既に高校数学IIIで学習したものもあるが,
証明を与えるのは初めてである.
定理2.14. (中間値の定理)
関数 f(x)は閉区間 [a, b] で連続でf(a)=\ f(b) とする.このとき,f(a) と f(b)の間にある任意の実数 µに 対して
a < ξ < b, µ=f(ξ) となる点ξが存在する.
証明. f(a)< f(b)の場合を証明する.f(a)< µ < f(b)となる任意の実数µをとる.このとき g(x) =f(x)−µ
とおくと,g(x)は [a, b]で連続であり,g(a)<0, g(b)>0となる.このとき g(ξ) = 0, a < ξ < b
をみたすξが存在することを示せば,これはf(ξ) =µとなり求めるものとなる.
そこで,数列{an}∞n=1,{bn}∞n=1, {cn}∞n=1を次のように定める.まず a1=a, b1=b, c1= a1+b1
2
とおく.以下帰納的に,g(cn) = 0ならば ξ=cn とすれば証明が終わり,g(cn)= 0\ ならば g(cn)>0 =⇒ an+1=an, bn+1=cn, cn+1= an+bn
2 g(cn)<0 =⇒ an+1=cn, bn+1=bn, cn+1= an+bn
2
と定義する.つまり,g(cn)>0ならば区間[an, bn]の左半分を[an+1, bn+1]とし,g(cn)<0 ならば区間[an, bn] の右半分を[an+1, bn+1]とおく.このとき,もしすべての自然数nに対してg(cn)= 0\ ならば
a1≦a2≦· · ·≦an≦an+1≦· · ·≦bn+1≦bn ≦· · ·≦b2≦b1, g(an)<0, g(bn)>0 が成り立つ.
これより,数列{an}∞n=1 は上に有界な単調増加数列,{bn}∞n=1 は下に有界な単調減少数列なのでともに収束す る.そこで
α= lim
n→∞an, β = lim
n→∞bn
とおけば
bn−an = bn−1−an−1
2 =· · ·= b1−a1
2n−1 −→ 0 (n→ ∞) であるから,β−α= 0 となる.ゆえに,ξ=α=β とおけば,関数g(x)の連続性より
g(ξ) = lim
n→∞g(an)≦0, g(ξ) = lim
n→∞g(bn)≧0
となるので,g(ξ) = 0が成り立つ.従って,このξが求めるものである.f(a)> f(b)の場合も同様に示せる.
この中間値の定理の証明に従って,区間 [an, bn]の幅を絞っていき方程式の解の近似値を計算する方法を2分 法という.収束の精度はあまり良い方でないが,アルゴリズム自体が理解しやすいこと,および方程式を定める関 数が連続ならば必ず収束することが利点である.方程式の解の近似値を計算する方法としては他にニュートン法 と呼ばれるものがあるので,これは微分法の章の最後に応用例として紹介する.
例題2.15. 次の方程式が与えられた区間I に解をもつことを示せ.
(1) 2x−3x−5 = 0 I= [4,5] (2) sinx=xcosx I=
π, 3 2 π
(解答)
(1) f(x) = 2x−3x−5とおくと,これは区間[4,5]で連続である.また
f(4) = 16−12−5 =−1<0, f(5) = 32−15−5 = 12>0 であるから,中間値の定理より
4< ξ <5, f(ξ) = 0 となるξが存在する.このξ が求める解である.
(2) f(x) = sinx−xcosxとおくと,これは区間h π, 3
2 π
iで連続である.また
f(π) = 0−π·(−1) =π >0, f 3
2 π
=−1− 3
2 π·0 =−1<0 であるから,中間値の定理より
π < ξ < 3
2 π, f(ξ) = 0 となるξが存在する.このξ が求める解である.
(解答終)
例題2.16. 奇数次数の方程式
x2n+1+a2nx2n+· · ·+a1x+a0= 0 は実数解をもつことを示せ.
(解答) f(x) =x2n+1+a2nx2n+· · ·+a1x+a0 とおくと,これはR上の連続関数である.また
xlim→∞f(x) =∞, lim
x→−∞f(x) =−∞
であるから,ある実数a, b (a < b)でf(a)<0, f(b)>0 となるものが存在する.よって,区間[a, b]で中間値の 定理を適用すれば
a < ξ < b, f(ξ) = 0 となるξが存在する.これが求める実数解である.
(解答終)
定理2.17. (最大値・最小値の定理)
関数f(x)が閉区間[a, b]で連続であるとき,f(x)の [a, b]における最大値と最小値が存在する.
証明. 2つの段階に分けて最大値が存在することを証明する.最小値については,−f(x)について同様の議論 をすればよい.
(Step1)〜f(x)は [a, b]で有界であること〜
f(x)が [a, b]で有界でないと仮定する.このとき,任意の自然数nは |f(x)|の上界ではない.したがって a≦an≦b, |f(an)|> n
を満たすan が存在する.数列{an}∞n=1は下界 a,上界bをもつので有界である.
よって,第3章定理6.8(Bolzano-Weierstrassの定理)より,収束する部分列{ank}∞k=1が存在する.lim
k→∞ank=c とおくと,a≦c≦b であり,|f(x)| は連続だから,lim
k→∞|f(ank)|=|f(c)|となる.一方,数列{an}∞n=1 の決め 方より
|f(ank)|> nk≧k であるから,lim
k→∞|f(ank)|=∞となる.これは矛盾である.
従って,|f(x)|は上界をもつから,f(x)は [a, b]で有界となる.
(Step2)〜f(x)は [a, b]で最大値をもつこと〜
f(x)の[a, b]における最大値が存在しないと仮定する.(Step1)よりf は上に有界であるから,[a, b]における 上限が存在する.f(x)の[a, b]における上限を
α= sup
x∈[a,b]
f(x) とおくと,αは最大値ではないから
f(x)< α (x∈[a, b]) (2.1)
が成り立つ.
ここで,関数g(x)を
g(x) = 1 α−f(x)
で定める.f(x)は連続で,また(2.1)より分母が0にならないから,g(x)は[a, b]で連続である.よって,(Step1) で証明したことを再び適用すると,g(x)は[a, b]で有界である.ゆえに,ある定数M >0で
g(x) = 1
α−f(x) ≦M (x∈[a, b]) となるものが存在する.これより
f(x)≦α− 1
M (x∈[a, b]) が成り立つ.よって,α− 1
M はf(x)の[a, b]における上界の1つとなる.しかし,これはαが上限,すなわち 上界の最小値であることに矛盾する.従って,αは f(x)の[a, b]における最大値である.