第 3 章 数列の極限
5.3 漸化式から一般項を求めるのが困難な数列の極限 その2
(解答) 数学的帰納法を用いて,an≦3であることを証明する.
(i) n= 1のとき,a1= 1≦3であるから成り立つ.
(ii) n=k(k≧1)のときに,不等式
ak ≦3 が成り立つと仮定する.このとき,漸化式と関数y=√
x+ 6の単調増加性より ak+1=√
ak+ 6≦√
3 + 6 =√ 9 = 3 が成り立つから,n=k+ 1のときも成り立つ.
(i),(ii)より,すべての自然数nについて,an≦3 が成り立つ.よって,数列{an}∞n=1 は上に有界である.
次に,すべての自然数nに対して an+1−an=√
an+ 6−an= an+ 6−an2
√an+ 6 +an
=−(an+ 2)(an−3)
√an+ 6 +an
となる.ここで,a1 = 1>0 と an+1 =√
an+ 6より,帰納的に an >0 (n∈N)となるから,前の結果と合わ せて
0< an≦3 (n= 1,2,3, . . .) である.よって
an+ 2>0, 3−an≧0, √
an+ 6 +an >0 となるので
an+1−an = (an+ 2)(3−an)
√an+ 6 +an
≧0 が成り立つ.ゆえに,すべての自然数nに対して
an ≦an+1
が成り立つから,数列{an}∞n=1 は単調増加である.
以上より,{an}∞n=1 は上に有界な単調増加数列なので収束する.そこで,極限値を lim
n→∞an = α とおくと,
a1≦an≦3 より,1≦α≦3である.このとき,漸化式 an+1=√
an+ 6 において,n→ ∞とすると
α=√ α+ 6 となる.この両辺を2乗すると
α2=α+ 6 ∴ (α−3)(α+ 2) = 0 よって,1≦α≦3 より,α= 3である.従って,求める極限値は lim
n→∞an = 3となる.
(解答終)
例題5.8. 次の漸化式で定義された数列 {an}∞n=1 がある.
a1= 2, an+1= 1
4 (a2n+ 3) (n= 1,2,3, . . .) この数列{an}∞n=1の収束・発散について調べ,収束するときはその極限値 lim
n→∞an を求めよ.
(解説) この漸化式から一般項 an を求めることはできないので,まず極限値の候補をさがしてみる.そこで {an}∞n=1 がαに収束すると仮定してみると,漸化式でn→ ∞として
α= α2+ 3
4 ∴ (α−1)(α−3) = 0 であるから,極限値 lim
n→∞an の候補は1または3となる.この段階ではまだどちらが極限値となるかはわからな いし,これはまだ候補に過ぎないから,『数列{an}∞n=1が収束すること』を示す必要がある.
そこで,次に
f(x) = x2+ 3 4
とおけば,an+1=f(an)であることに注目する.このことを利用して,数列{an}∞n=1 の様子を調べる.
y=x
0 x
y y=f(x)
1 3
a 2 a 3
a 2 a 1 =2
まずa1 = 2であるから,a2=f(a1)より,a2 の y 軸上の位置は上図のようになる.これを直線 y=xに関 して折り返せば,青色の矢印のようにa2は x軸上に移る.次に a3=f(a2)であるから,a3 のy 軸上の位置は 上図のようになる.これを繰り返せば,an は赤線のように動いていくことになる.これより,{an}∞n=1は単調減 少,かつan≧1 であり,最終的に1に収束すると考えられる.
上の考察はグラフを用いた直観的なものだから数式で示さなければならない.もし an≧1 が示されたとして,
単調減少を示そうとしてみると
an+1−an= a2n+ 3
4 −an= 1
4 (a2n−4an+ 3) = 1
4 (an−1)(an−3)
となる.ここで,an ≧1を示しておけばan−1≧0であるが,an−3の符号がわからない.ここでグラフでの考 察を振り返るとan ≦3 となりそうだから,まとめて1≦an≦3を最初から示しておけばうまくいきそうである.
そこで,上の考察を式にまとめると次の解答のようになる.
(解答) 数学的帰納法を用いて,1≦an ≦3 であることを証明する.
(i) n= 1のとき,a1= 2より,1≦a1≦3 であるから成り立つ.
(ii) n=k(k≧1)のときに,不等式
1≦ak ≦3 が成り立つと仮定する.このとき,漸化式と関数y= x2+ 3
4 のx≧0での単調増加性より ak+1= a2k+ 3
4 ≧ 12+ 3
4 = 4
4 = 1 ak+1= a2k+ 3
4 ≦ 32+ 3 4 = 12
4 = 3 より1≦ak+1≦3が成り立つから,n=k+ 1 のときも成り立つ.
(i),(ii)より,すべての自然数nについて,1≦an ≦3 が成り立つ.よって,数列{an}∞n=1 は有界である.
次に,すべての自然数nに対して an+1−an= a2n+ 3
4 −an= 1
4 (a2n−4an+ 3) = 1
4 (an−1)(an−3) となる.ここで,前の結果より
1≦an≦3 であるから
an+1−an = 1
4 (an−1)(an−3)≦0 が成り立つ.ゆえに,すべての自然数nに対して
an ≧an+1 が成り立つから,数列{an}∞n=1 は単調減少である.
以上より,{an}∞n=1 は下に有界な単調減少数列なので収束する.そこで,極限値を lim
n→∞an = α とおくと,
1≦an≦a1 より,1≦α≦2である.このとき,漸化式 an+1= 1
4 (a2n+ 3) において,n→ ∞とすると
α= α2+ 3
4 ∴ (α−1)(α−3) = 0 よって,1≦α≦2 より,α= 1である.従って,求める極限値は lim
n→∞an = 1となる.
(解答終)
もちろんすべての数列が単調数列というわけではないから,この手法でいつも解決できるわけではない.その 場合には例題3.6のようにはさみうち法で考えることになる.
そこでこの例題5.7の別解の概略を挙げておく.
(別解) 極限値α= lim
n→∞an が存在すると仮定する.このとき,漸化式 an+1=√
an+ 6 でn→ ∞として
α=√
α+ 6 ∴ α= 3 なので,極限値の候補は3である.
以下,lim
n→∞an= 3であることを証明する.
an+1−3 =√
an+ 6−3 = (an+ 6)−9
√an+ 6 + 3 = √ an−3 an+ 6 + 3 より,√
an+ 6 + 3≧3だから
an+1−3 = an−3
√an+ 6 + 3 ≦ 1
3 an−3 となる.この不等式を繰り返し用いると
an−3 ≦ 1
3 an−1−3 ≦1 3
2
an−2−3 ≦· · ·≦1 3
n−1
a1−3 = 2 1
3 n−1
より
0≦ an−3 ≦2 1
3 n−1
が成り立つ.ゆえに,はさみうち法より
nlim→∞ an−3 = 0 であるから,求める極限値は lim
n→∞an = 3となる.
(別解終)
この解法は簡単そうに見えるが,もし極限値 a= lim
n→∞an が存在したと仮定したときに漸化式でn→ ∞ とし て得られるaについての方程式が複数個解をもつと,そのうちのどれが適するかの判定が難しいことがある.も し複数個の解をもつならば,実数の連続性を利用した前の解答のようにグラフを描いて考察することになる.
例題5.9. 数列 {an}∞n=1 と{bn}∞n=1 は以下の条件を満たすとする.
0< b1< a1, an+1= an+bn
2 , bn+1=p
anbn (n= 1,2,3, . . .) このとき,数列{an}∞n=1 と{bn}∞n=1 はともに収束し,その極限値は等しいことを示せ.
(解答) まず,0< b1< a1と漸化式から,数学的帰納法により an>0, bn>0 である.よって,相加相乗平均より
an+1= an+bn
2 ≧p
anbn=bn+1
となり,an ≧bn がすべての自然数nについて成り立つ.よって,すべての自然数nに対して an−an+1=an− an+bn
2 = an−bn
2 ≧0
より,an ≧an+1が成り立つ.ゆえに,数列{an}∞n=1 は単調減少である.また,an ≧0であるから,{an}∞n=1は 下に有界である.
従って,数列{an}∞n=1 は下に有界な単調減少数列なので収束する.そこで,その極限値を lim
n→∞an=αとおく.
漸化式より,bn= 2an+1−an だから
nlim→∞bn= lim
n→∞(2an+1−an) = 2α−α=α よって,数列{an}∞n=1 と {bn}∞n=1 は同じ値に収束する.
(解答終)
この問題では極限値の具体的な予想ができないので,『有界な単調数列は収束する』という事実に頼るしかない.
このような抽象的な論法に慣れておくと,直感的に正しそうなことを数学的に厳密に議論できるようになる.
練習問題5.4. 次の漸化式で定まる数列の極限を求めよ.
a1= 2, an+1=√
2an+ 8 (n= 1,2,3, . . .)
練習問題5.5. 次の漸化式で定まる数列の極限を求めよ.
a1= 3
2, an+1= a3n+ 6
7 (n= 1,2,3, . . .)
練習問題5.6. 次の漸化式で定まる数列の極限を求めよ.
a1= 1, an+1=p
4an−an2 (n= 1,2,3, . . .)
発展問題5.7. 次の漸化式で定まる数列の極限を求めよ.
a1= 2, an+1= 1
an+ 1
(n= 1,2,3, . . .)