第 5 章 微分法
5.2 微分法の応用その 2 :関数の増減と凹凸
定理5.9. (導関数と関数の増減)
関数f(x)は閉区間[a, b]で連続,開区間(a, b)で微分可能とする.
(1) f(x) が[a, b] 上単調増加であるための必要十分条件は
f′(x)≧0 (a < x < b) となることである.
(2) f′(x)>0 (a < x < b)ならば,f(x)は [a, b]上狭義単調増加である.
(3) f(x) が[a, b] 上単調減少であるための必要十分条件は
f′(x)≦0 (a < x < b) となることである.
(4) f′(x)<0 (a < x < b)ならば,f(x)は [a, b]上狭義単調減少である.
証明. すべて平均値の定理から証明できる.証明は同様なので(1),(2)だけ証明する.
(1) f(x)が [a, b]上単調増加であるとすると,h >0 とh <0のどちらでも f(x+h)−f(x)
h ≧0 (a < x < b) が成り立つから
f′(x) = lim
h→0
f(x+h)−f(x)
h ≧0 (a < x < b)
逆にf′(x)≧0 (a < x < b)であるとする.a≦x1< x2≦bとなる任意の x1, x2 をとる.このとき,平 均値の定理より
f(x2)−f(x1) x2−x1
=f′(c), x1< c < x2
となるc が存在する.ここで,定理の仮定よりf′(c)≧0 であるから,
f(x2)−f(x1) =f′(c)(x2−x1)≧0 よって,f(x1)≦f(x2)が成り立つので,f は[a, b]上単調増加である.
(2) a≦x1< x2≦b となる任意のx1, x2 をとる.このとき,平均値の定理より f(x2)−f(x1)
x2−x1
=f′(c), x1< c < x2 となるc が存在する.ここで,定理の仮定よりf′(c)>0 であるから,
f(x2)−f(x1) =f′(c)(x2−x1)>0 よって,f(x1)< f(x2)が成り立つので,f は[a, b]上狭義単調増加である.
注意5.10. 定理5.9(2)の逆である
fは[a, b]上狭義単調増加 =⇒ f′(x)>0 (a < x < b)
は成り立たない.例えばf(x) =x3は狭義単調増加だが,f′(x) = 3x2 であるからf′(0) = 0となる.このときで も,f′(x)≧0 は当然成り立つ.また,1点x=pでf′(p)>0 でも,x=pの近くで関数f(x)が増加している とは限らない.ある区間でf′(x)≧0 となることが重要である.
次に関数の増減を利用した極値の求め方について復習する.
定義5.11. (極大・極小)
関数f(x)は点aの近傍で定義されているとする.ある正の数δが存在して 0=\ x−a < δ =⇒ f(x)< f(a) が成り立つとき,f(x)は点aで極大であるといい,f(a)を極大値という.
また,ある正の数δが存在して
0=\ x−a < δ =⇒ f(x)> f(a) が成り立つとき,f(x)は点aで極小であるといい,f(a)を極小値という.
極大値と極小値をまとめて極値という.
前にも述べたが,重要なのでもう一度繰り返しておくと
定理5.12. 関数 f(x)は点aで極値をとり,かつ点 aで微分可能ならば,f′(a) = 0 である.
証明. 定理5.1(Rolleの定理)とほとんど同様であるから,練習問題とする.
注意5.13. 上の定理は f(x)が点aで微分可能ならば f′(a) = 0 ということを主張しているのであって,一般
には微分不可能な点で極値をとることがある.
例えば,f(x) =|x|はx= 0で極小値f(0) = 0をとるが,x= 0で微分可能ではないから,もちろんf′(0) = 0 などは成り立たない.
例題5.14. 関数f(x) = 4x2+ 2x+ 4
x2+ 1 の極値および最大値,最小値があれば求めよ.
(解答) 導関数を計算すれば
f′(x) = (8x+ 2)·(x2+ 1)−(4x2+ 2x+ 4)·2x
(x2+ 1)2 = −2x2+ 2
(x2+ 1)2 = −2(x+ 1)(x−1) (x2+ 1)2 より,f′(x) = 0となるのはx=±1のときである.また,極限を計算すると
x→±∞lim f(x) = lim
x→±∞
4 + 2 x + 4
x2 1 + 1
x2
= 4
となる.以上のことより,増減表は
x (−∞) · · · −1 · · · 1 · · · (∞)
f′(x) − 0 + 0 −
f(x) (4) & 3 % 5 & (4) となる.ゆえに
x= 1のとき極大値 5, x=−1のとき極小値3 をとる.また,このときそれぞれが最大値,最小値にもなっているから
x= 1のとき最大値 5, x=−1のとき最小値3
(解答終)
例題5.15. 関数f(x) = log√
x2+ 1−√
3 Tan−1xの極値を求めよ.
(解答) f(x) = 1
2 log(x2+ 1)−√
3 Tan−1xなので,導関数を計算すれば f′(x) = 1
2 · 1
x2+ 1 ·2x−√ 3· 1
1 +x2 = x−√ 3 x2+ 1 より,f′(x) = 0となるのはx=√
3のときである.ここで f(√
3 ) = log√ 4−√
3 Tan−1√
3 = log 2−√ 3· π
3 = log 2− √π 3 であるから,増減表は
x (−∞) · · · √
3 · · · (∞)
f′(x) − 0 +
f(x) (∞) & log 2− √π
3 % (∞)
となる.ゆえに
x=√
3 のとき,極小値 log 2− √π 3 をとる.
(解答終)
例題5.16. 関数f(x) = Sin−1x−2√
1−x2 の区間I= [−1,1]における最大値と最小値を求めよ.
(解答) −1< x <1のときに関数 f(x)は微分可能で,その導関数は f′(x) = √ 1
1−x2 −2· 1 2√
1−x2 ·(−2x) = √1 + 2x 1−x2 であるから,f′(x) = 0 を解くとx=−1
2 である.また f(1) = Sin−11 = π
2 , f(−1) = Sin−1(−1) =−π 2 f
−1 2
= Sin−1 −1
2 −2
r 1− 1
4 =−π 6 −√
3 と合わせて,f(x)の増減表は
x −1 · · · −1
2 · · · 1
f′(x) − 0 +
f(x) −π
2 & −π 6 −√
3 % π
2 となる.ゆえに
x= 1のとき,最大値 π
2 , x=−1
2 のとき,最小値 − π 6 −√
3
(解答終)
練習問題5.1. 定理5.12を示せ.
定義5.17. (凸関数)
区間I で定義された関数f(x)が凸関数であるとは,I の任意の2点 a, b(a < b)に対して,a < x < bならば f(x)−f(a)
x−a ≦ f(b)−f(x)
b−x (5.1)
が成り立つことである.このとき,f(x)は下に凸であるという.
さらに,a < x < bならば
f(x)−f(a)
x−a < f(b)−f(x)
b−x (5.2)
が成り立つとき,f(x)は狭義の凸関数という.
また,−f(x)が下に凸であるとき,f(x)は上に凸であるという.
注意5.18. 凸関数の定義式(5.1)においてx= (1−t)a+tbとおくと,条件式は次のように表せる.
I の任意の2点a, b(a < b)に対して,0< t <1ならば f (1−t)a+tb
≦(1−t)f(a) +tf(b) (5.3)
が成り立つとき,f(x)をI における凸関数という.
これを凸関数の定義式としている本も多い.この条件式の図形的な意味を考えると,凸関数とはy=f(x)のグ ラフ上のどの異なる2点をとっても,その2点を結んだ線分がy=f(x)のグラフの下側にはこないということで ある.
例 5.19. 凸関数の例や凸関数でない例を挙げ,以下では数式による説明を示す.各自で関数のグラフを描いて
どのような様子を表しているかを確認すること.
f(x) =x2は R上の凸関数であり,特に狭義の凸関数である.実際,a < x < bに対して f(b)−f(x)
b−x − f(x)−f(a)
x−a = b2−x2
b−x − x2−a2
x−a = (b+x)−(x+a) =b−a >0 であるから(5.2)が成り立つ.
g(x) =|x| はR上の凸関数であるが,狭義の凸関数ではない.実際,a < bと 0< t <1 に対して,三角不等 式より
g (1−t)a+tb
= (1−t)a+tb ≦|(1−t)a|+|tb|= (1−t)|a|+t|b|= (1−t)g(a) +tg(b) であるから(5.3)が成り立つ.等号はaと bが同符号ならば成り立つから,狭義の凸関数ではない.
h(x) =x3 はR上の凸関数ではない.実際,a=−2, x= 0, b= 1とするとa < x < bであるが h(b)−h(x)
b−x − h(x)−h(a)
x−a = 1−0
1−0 − 0−(−8)
0−(−2) = 1−4<0
であるから(5.1)をみたさない.ただし,h(x)は[0,∞)上の狭義の凸関数である.実際,0≦a < x < bならば h(b)−h(x)
b−x − h(x)−h(a)
x−a = b3−x3
b−x − x3−a3
x−a = (b2+bx+x2)−(x2+ax+a2) = (b−a)(b+x+a)>0 であるから(5.2)が成り立つ.
このように関数が凸かどうかはその定義域によって変化しうる.また,上で述べた2種類の不等式(5.1)と(5.3)
定理5.20. (2次導関数と凸関数)
関数f(x)が区間I で連続で,I の端点を除いた開区間I˜で2回微分可能であるとする.
(1) f(x) がI で凸関数であるための必要十分条件は,開区間 I˜でf′′(x)≧0 となることである.
(2) 開区間 I˜でf′′(x)>0 ならば,f(x)は I で狭義の凸関数である.
証明.
(1) f(x)が Iで凸関数であるとする.I˜の任意の2点 a, b(a < b)に対して,a < x < bならば f(x)−f(a)
x−a ≦ f(b)−f(x)
b−x (5.4)
が成り立つ.ここで,f(x)は微分可能だから,(5.4)においてx→b−0 とすると f(b)−f(a)
b−a = lim
x→b−0
f(x)−f(a)
x−a ≦ lim
x→b−0
f(b)−f(x)
b−x =f−′(b) =f′(b) であり,またx→a+ 0とすると
f′(a) =f+′ (a) = lim
x→a+0
f(x)−f(a)
x−a ≦ lim
x→a+0
f(b)−f(x)
b−x = f(b)−f(a) b−a となる.よって,これらをまとめると
f′(a)≦ f(b)−f(a)
b−a ≦f′(b) ∴ f′(a)≦f′(b)
が成り立つ.つまり,I˜においてf′(x)は単調増加であるから,f′′(x)≧0 が成り立つ.
逆に,開区間I˜でf′′(x)≧0 であるとする.このとき,f′(x)は I で単調増加である.区間I の任意の 2点 a, b(a < b)をとる.任意の点a < x < bに対して,平均値の定理より
f(x)−f(a)
x−a =f′(c1), a < c1< x, f(b)−f(x)
b−x =f′(c2), x < c2< b (5.5) となるc1, c2 が存在する.ここで,c1< c2 であるから
f(x)−f(a)
x−a =f′(c1)≦f′(c2) = f(b)−f(x) b−x より(5.1)が成り立つので,f(x)は凸関数である.
(2) 開区間I˜で f′′(x)>0 ならば,f′(x)は I で狭義単調増加である.区間I の任意の2点 a, b(a < b)を とる.任意の点a < x < b に対して,平均値の定理より(5.5)を満たすような c1, c2 が存在する.ここで,
c1< c2であるから
f(x)−f(a)
x−a =f′(c1)< f′(c2) = f(b)−f(x) b−x より(5.2)が成り立つので,f(x)は狭義の凸関数である.
例題5.21. 関数f(x) = 4x2+ 2x+ 4
x2+ 1 の凹凸を調べよ.
(解答) 導関数を計算すれば
f′(x) = (8x+ 2)·(x2+ 1)−(4x2+ 2x+ 4)·2x
(x2+ 1)2 = −2x2+ 2 (x2+ 1)2 より
f′′(x) = −4x·(x2+ 1)2−(−2x2+ 2)·2(x2+ 1)·2x
(x2+ 1)4 = 4x(x2−3)
(x2+ 1)3 = 4x(x+√
3 )(x−√ 3 ) (x2+ 1)3 であるから,f′′(x) = 0となるのはx= 0,±√
3 のときである.よって x (−∞) · · · −√
3 · · · 0 · · · √
3 · · · (∞)
f′′(x) − 0 + 0 − 0 +
f(x) ⌢ ⌣ ⌢ ⌣
より
(−∞,−√
3]および[0,√
3]で上に狭義の凸, [−√
3,0]および[√
3,∞)で下に狭義の凸
(解答終)
練習問題5.2. 次の関数の増減・凹凸を調べ,グラフをかけ.
(1) y=x+√
4−x2 (2) y= x2−3x+ 2 x2+ 3x+ 2
例題5.22. 関数f(x)は R上の凸関数でf(x)≧0, f(0) = 0とする.さらに,f(x)が上に有界ならば,f(x) は恒等的に0と等しいことを示せ.
(解答) 関数 f(x)は上に有界なので,ある正の定数M が存在して f(x)≦M (x∈R) が成り立つ.よって,t >1とすれば,任意の実数xに対して
f(x) =f 1
t ·tx+
1− 1 t
0
≦ 1
t f(tx) +
1− 1 t
f(0) = f(tx)
t ≦ M
t が成り立つから,この不等式より
0≦f(x)≦ M
t −→ 0 (t→ ∞)
が得られるので,f(x) = 0となる.
(解答終)