第 3 章 貧困削減へ向けた国際協力
3.2. 貧困削減に向けた取り組み
3.2.3 NGO の活動
NGOの活動は、従来から政府やドナーの支援が届きにくい分野・地域などに重点が置か れている。近年では、より住民・市民参加を重視する活動をしており、貧困削減のため の主要なパートナーとして世界的に認識されている。
ネパールで活動するNGOは、ローカルおよび 国際NGO(IN GO)とも、1990年代に急 激に増加した。これには、1980年代の民主化運動や、1990年のパンチャヤット王制崩壊・
憲法改正などを通じて、政治・社会運動の意義が広く認識され、新たな市民組織が形成 されたことが挙げられる。また、パンチャヤット王制などの下で、従来から存在したコ ミュニティー組織(CBO: Community-Based Organization)が、1990年代の地方分権化を 通じて政府から公式に認可されるようになったことも要因である。さらに国際機関や二 国間ドナーが、NGOを重要な開発協調のパートナーと認識して、直接的な資金援助をは じめたことが、国内NGOの急激な増加を助長してきたといえる。
このうち、特に急増したのは、国内の比較的小規模の NGO であり、多種多様な活動を 行っている。1991 年には全国レベルで市民運動を促進させる目的で、2000 以上の国内 NGOによりネパールNGO連合(N GO Federation of Nepal)が組織された。SWCによれ ば、国内 NGO の半数以上が「コミュニティー開発」の分野で活動をしているが、情報 が不足しており具体的な活動内容について知ることは難しい。その他の分野では、青少 年や女性を対象とする NGO が比較的多く、資金規模は依然として微小なものの、SWC や関係省庁との協調が比較的進展している。また、これまで疎外されてきた少数民族や、
下層カーストへ焦点を絞る NGO も増えており、地方政府と協調して広範なサービス提 供を可能にすることが期待されている。しかし、現時点では地方政府と NGO を所管す るそれぞれの法律に整合性がないことが指摘されており、この方面でUNDPをはじめと する主要ドナーが支援を行っている。(表3-8)
2000年現在SWCに登録されているINGOについては、主にコミュニティーレベルでの 地域開発や保健セクターで活動する団体が最も多く、それに続いて児童に焦点をあてた 活動が多くなっている。これらのセクターへの援助額は総額(約2,000 万ドル)の80% 以上を占めている。例えば、Save the Childrenは、1991 年よりUSAIDやオランダ大使館 などからの支援を受け、主に母子保健、HI V/AIDS 予防、女性を対象としたマイクロフ ァイナンス、基礎教育・ノンフォーマル教育などのプロジェクトをコミュニティーレベ ルで行ってきた。ActionAidは、子供、女性、そして社会的、経済的に疎外されたカース トのエンパワーメントを通じて貧困削減を主要目標に掲げ、主に DfID などからの支援 を受けながら保健、教育、マイクロファイナンスのセクターでプロジェクトを実施して いる。他の代表的な INGO に、Oxfam、CARE International、ルーテル世界連盟(LWF:
Lutheran World Federation)などがある。
現在ネパールでは、INGO に対する様々な問題点が挙げられている。その一つに、ネパ ール政府に対する説明責任(アカウンタビリティー)の欠如が指摘されている。INGO は、二国間ドナーと協調関係を強めており大規模な資金を動員しているが、正確な情報 が把握されていない。例えば、ネパール政府の情報では、2001年にSWCへ登録されて いたINGOは96団体、総援助額が1,980万ドルであったのに対して、UNDPの情報によ ると1999年には21のINGOが存在し、合計4.2億ドル相当の援助を行っていたことに なっている。この相違は、大規模なINGOがSWCを通さず、国内NGOや CBOなどへ
直接資金援助を行っていることが原因だと思われる。今後ネパールにおける NGO 活動 の潜在的な貧困削減効果を高めるために、ネパール政府による適切な協調体制が整備さ れることが期待されている。
表 3-8 国内・国際NGOのセクター別分布 (2000年)
国内NGO 国際NGO セクター・分野 組織の数 数の割合
(%) セクター・分野 組織の数
援助総額に 占める割合
(%)
コミュニティ開発 4,646 52.7 コミュニティ開発 28 38.1
児童 202 2.3 児童 18 34.2
保健 199 2.3 保健 28 11.4
障害者 125 1.4 障害者 6 3.2
女性 841 9.5 女性 2 2.7
教育 82 0.9 教育 6 1.9
環境 574 6.5 農業 2 0.8
モラル 210 2.4 その他 6 7.7
HIV/AIDS、麻薬 36 0.4
青少年 1906 21.6
合計 8821 100.0 合計 96 100.0 [出所] SWC, (2000), List of Non-Governmental Organizations Affiliated with Social W elfare Council Vol. I, II
別 添
別添1: 主要な貧困指標と不平等指標
別添2: UNDPの貧困指標の定義と算出方法
別添3: 本文中に掲載されている図表の原データ 別添4: 地形区分による貧困層の作付パターン
別添5: ADBのセクター別協調マトリックス(2003年)
別添6: 実施中のプロジェクト(UNDP、WB、ADB、GTZ)
別添7: 参考文献・資料
別添8: 社会経済データマトリックス
別添1:主要な貧困指標と不平等指標
指標タイプ 指 標 定義または解説 特 徴
貧困者比率
(Head-count ratio)
貧困ライン未満の人数の対象人口 全体の人数に対する比率
n H = q
q: 貧困層の人数 n: 集団全体の人数
貧 困 の規 模 を最 も分 か り 易く表示。
貧困ギャップ比率
(Poverty gap ratio)*3
貧困ライン未満人口の平均所得と 貧困ラインとの格差の貧困ライン に対する比率の平均値
∑
<
= −
z yi
i
z y z P n1
1
n: 集団全体の人数 z: 貧困ライン yi: 各人の所得
貧 困 の乖 離 度あ るい は 深 度(depth)を表示。
貧困指標 (P overty indicators) *1
2乗貧困ギャップ比率
(Squared poverty gap ratio)*3
貧困ライン未満人口の平均所得と 貧困ラインとの格差の貧困ライン に対する比率の2乗値の平均値
2
2 1
∑
<
= −
z yi
i
z y z
P n
n: 集団全体の人数 z: 貧困ライン yi: 各人の所得
貧困の重度(severity)を表 示。
ジニ係数
(Gini coefficient)
ロ ー レン ツ 曲線*5と完 全 公平 線
(45°直線)に囲ま れる面 積が、
45°直線を斜辺とする横軸を含む 三角形の面積に占める割合
対 象 人口 全 体の 所得 分 配 が完全公平の場合は0に、
完全不公平の場合は 1 に なる。
不平等指標 (Inequality indicator) *1
タイル指数
(Theil index)*4
y y y y
Z n i
n
i
ilog
) 1 1 (
∑
1=
=
n: 集団全体の人数 yi: 各人の所得
y: 各人の所得の算術平均値
対象人口全体(N)の所得 分 布 が完 全 に公 平の 場 合 は0に、完全不公平の場合 は ln(N)となる。ただし、
経 験 的に タ イル 指数 が 1 を超えることは稀である。
収入源の分散の程度
(Income diversification) (明確な一般的定義なし)
農 村 では 収 入源 を分 散 さ せるよりも、リスクの低い ひ と つの 収 入源 に集 中 さ せ る 方が リ スク 低減 に 効 果的との批判がある。
貧困リスク (Vulnerability) *2
相 互 扶助 ネッ ト ワー ク の構築の程度
(Links to networks)
(明確な一般的定義なし)
こ の 項目 を 含む 世帯 調 査 は ほ とん ど 実施 され て い ない。
別添2:UNDPの開発指標の定義と算出方法
1. 人間開発指数(HDI: Human Development Index)
HDI とは、i) 余命指数、ii) 教育指数(識字率、就学率)、iii) 所得指数(一人当り実質 GDP)、の平均である。それぞれの指数の算出方法は、以下のとおりである。(定数項に ついては、人間開発報告書の2000年度版を参照。)
i) 余命指数=(出生時平均余命-25)÷50
ii) 教育指数=(2×識字率指標+就学率指標)÷3
① 識字率指数= 成人識字率÷100
② 就学率指数=小・中・高等レベルの合計粗就学率÷15 iii) 所得指数=[log(一人当たり実質GDP)-log(100)]÷[log(40,000)-log(100)]
2. ジェンダー開発指数(GDI: Gender Development Index)
GDI の算出方法は、i) 余命指数、ii) 教育指数(識字率、就学率)、iii) 所得指数(一人
当り実質 GDP)、の平均であるが、それぞれの指数は、男女の格差を反映する。算出方
法は、以下のとおりとなる。
i) 余命指標=
男性余命指数 男性人口比率
+ 女性余命指数
女性人口比率 )]1
[ ÷ ÷ −
女性余命指数=(女性出生時平均余命+27.5)÷60 男性余命指数=(男性出生時平均余命+22.5)÷60 ii) 教育指数=
男性教育指数
男性人口比率 女性教育指数
女性人口比率 ] 1
[ ÷ + ÷ −
(男女の教育指数の算出方法は、上記のHDIの教育指数と同様)
iii) 所得指数=
]-1
[女性労働人口比率×女性所得指数 + 男性労働人口比率×男性所得指数
(男女の所得指数の算出方法は、上記のHDIの所得指数と同様)
3. ジェンダーエンパワーメント測定値(GEM: Gender Empow erment Measure)
GEMは、政治的・経済的活動における男女の相対的格差を示す指標を合成したものであ る。指標は、国会議員指標、管理職指標、専門職と技術職指標、所得指数(GEM)が用 いられる。算出方法は、以下のとおりである。
GEM = [国会議員指標+管理職指標+専門・技術職指標+所得指標(GEM)]÷3
i) 国会議員指標=
50 ] [女性人口比率 ÷国会議員の女性比率 + 男性人口比率 ÷国会議員の男性比率 −1 ÷ ii) 管理職指標=
100 ]
[女性人口比率 ÷管理職の女性比率 + 男性人口比率 ÷管理職の男性比率 −1 ÷
iii) 専門職と技術職指標=
100 ] [女性人口比率÷専門・技術職の女性比率 + 男性人口比率÷専門・技術職の男性比率 −1 ÷
iv) 所得指数(GEM)=
50 ] [女性労働力比率 ÷女性所得指数 + 男性労働力比率 ÷男性所得指数 -1÷
(男女の所得指数の算出方法は、上記のHDIの所得指数と同様)
4. 人間貧困指数(Human Poverty Index)
HPI は、多角的な「人間の開発」を示す HDI とは逆に、「人間の貧困」を指標化したも のであり、算出式は以下の指標の平均である。
i) 40歳未満で死亡する人口比率
ii) 成人識字率
iii) 保健指標=
口比率 歳未満で栄養失調の人
スがない人口比率+
安全な水のへのアクセ 5 ÷2
別添3:本文中に掲載されている図の原データ
第1章 ネパールの貧困概要
図 1-1 貧困の分布 (本文 p.10) (WFP作成。原データは入手不可)
図 1-2 ネパールのローレンツ曲線(全国) (本文 p.13)
(単位:%)
Q1 Q2 Q3 Q4 Q5 Q6 Q7 Q8 Q9 Q10 支出シェア(1995/96年) 3.3 7.9 13.4 19.8 27.1 35.5 45.4 57.4 73.0 100.0 支出シェア(2000/01年) 4.0 9.2 15.3 22.3 30.3 39.3 49.7 61.8 76.6 100.0
図1-3 性別・10歳以上の識字率の推移 (本文 p.25)
(単位:%)
1952/54 1961 1971 1981 1986 1991 1995/96 国全体 5.3 8.9 14.3 23.5 34.8 39.6 37.8 男性 9.5 16.3 24.7 34.9 51.8 54.5 52.2 女性 0.7 1.8 3.7 11.5 18 25 24.4
図1-4 総支出に対する食糧支出の割合の推移 (本文 p.32)
(単位:%)
Q1 Q2 Q3 Q4 Q5 Q6 Q7 Q8 Q9 Q10 支出シェア(1995/96年) 4.2 9.9 15.8 23.7 32.2 41.6 52.4 63.5 78.4 100.0 支出シェア(2000/01年) 4.8 10.8 17.7 25.4 34.1 44.1 54.8 67.3 81.5 100.0
図1-5 非食糧支出のローレンツ曲線(農村部) (本文 p.33)
(単位:%)
Q1 Q2 Q3 Q4 Q5 Q6 Q7 Q8 Q9 Q10 支出シェア(1995/96年) 2.2 5.6 9.7 14.5 20.9 28.8 38.1 50.2 67.1 100.0 支出シェア(2000/01年) 2.8 6.7 11.7 17.9 24.9 32.6 42.4 53.9 69.2 100.0