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政府予算と公共支出

ドキュメント内 2003 3 (ページ 79-95)

第 2 章   ネパール政府の取組み

2.2. 貧困問題をめぐる諸政策

2.2.2 政府予算と公共支出

こうした動きに加えて、公共支出評価委員会(Public Expenditure Review Commission)の 勧告を受けて、政府は、地方レベルにおける開発プロジェクト実施において、重複を避 け、効率を高めるために、飲料水、灌漑、住宅、都市計画をそれぞれ管轄する地方局を 統合し、地方開発官のもとに郡技術局(DT O: District Technical Office)を設置した。

地方分 権化 に向け た組 織強 化につ いて は、 国連 開発計 画(UNDP: United Nation Development Programme)、 英 国 国 際 開 発 省 (DfID: Department for International

Development)、ドイツ技術協力公社(GT Z)等のドナーが支援を行っている。

地方分権化に向けての枠組み作りは進められているものの、地方レベルにおける実施に おいてはさまざまな問題が山積している。地方分権化がネパールの開発において機能し、

成果をあげるにあたっては、以下の課題を克服することが求められる。

i) 地方行政、財政、開発にかかわる組織能力の向上 ii) 地方財政の透明性の確保

iii) 中央官僚の既得権益の開放

こうした課題に加え、2002 年10 月に国王により首相が解任され、主要閣僚の入れ替え が行われたことから、今後実態として地方分権化が進められるかどうかについては、懐 疑的な見方が出てきている。地方自治に民主化の基礎となる地方選挙が見送られている ことに加え、中央官僚の抵抗が根強い。そのため、PRSP / 第10次計画の実施体制にお いて、地方政府がどのように位置付けられるのか、注目されている。

表 2-14 予算費目構成

経常予算費目 開発予算費目

・ 職員の給与、手当、退職金等

・ 助成金・補助金

・ 債務返済

・ 予備費(あらかじめ予算計上されない費目 のための予備費)

・ その他運営費

・ 各セクターのプロジェクトおよびプログラ ムの実施にかかる投資・直接経費

〔出所〕World Bank, (2000), Nepal Public Expenditure Review Volume I: PER Overview- The Main Reportより作成

ネパール財政の問題点として、予算策定過程と歳出管理が指摘されている。すでに見た とおり、ネパールにおいては5 ヵ年の開発計画が策定されており、その実施計画の一部 として予算策定が行われている。しかしながら、ネパール政府の財源は限られているに もかかわらず、目標達成に多額の財政投入を必要とする開発計画の実施を前提に予算が 組まれていた。その一方で、ドナーからの資金を含め、歳入予測が甘く、結果として予 算不足となるため計画実施の阻害要因となり、政府歳出の実績額が予算額を著しく下回 るといった状況が続いている。そこで、計画に対して3ヵ年の中期歳出枠組を策定し、

年度ごとに見直しを行うという制度を導入することで、予算と実績の乖離を縮小させる よう改善が図られている。

1996 年度の予算は前年度比 33%増であったのに対し、実績は前年度比 19%に過ぎず、

差異は14 ポイントであった。1999 年度には改善が見られ、予算は前年度比21%増に対 し、実績は12%と差異は9 ポイント未満となった。予実の差異は、特に開発予算で大き く、1996年度では予算49%増に対し実績26%増で、その差は23ポイントと非常に乖離 している。1997 年度以降も、予算では前年比20%以上が見込まれていたものの、実績で は前年比6〜9%と低く、多数の開発プロジェクトの実施に大きく影響している。

財源を見ると、1996 年度の政府歳入は、予算額が前年比29%であったのに対し、実績は 前年比 13%と実績が大きく下回った。また、海外借入も実績が予算を22 ポイント下回 っていた。1999年度の政府歳入では、予算が前年比20%増に対し実績は13%増と、その 差は縮まっている。予算策定の改善が図られていることから、財源においても予算・実 績の差異は縮小してきている。

従来は、経常予算は財務省、開発予算はNPCが所管しており、別々に策定されていた。

ネパールは深刻な財政危機に直面しているといった状態にはないが、歳出管理が適切に 行われず、偶発的な支出や赤字が発生するといった問題を抱えていたため、IMFおよび WB のアドバイスを受け、予算策定を財務省に一元化し、偶発的な支出を抑制する改善 策が採られた。

表 2-15 予算実績の差異(対前年度比)

(単位:%)

1996年度 1997年度 1998年度 1999年度 2000年度 予算 実績 予算 実績 予算 実績 予算 実績 予算 政府歳出 32.6 18.9 23.2 9.0 21.2 10.6 20.7 12.3 22.6     経常 16.6 11.9 13.0 12.0 13.2 12.4 15.4 17.3 10.9     開発 48.9 26.3 32.6 6.0 28.7 9.1 25.7 7.5 34.6 財源

  政府歳入 28.6 13.4 21.3 9.0 18.7 8.2 20.4 13.0 19.7   海外借入 49.6 27.6 36.8 4.9 38.7 10.0 36.6 13.2 46.1   国内借入 23.8 37.5 36.4 18.2 13.3 7.7 38.5 6.7 -8.3

〔出所〕World Bank, (2000), Nepal Public Expenditure Review Vol.I: PER Overview- The Main Report, p.11, Table 2.3

b. 政府財政の動向

ネパールの政府財政は、常に歳出が歳入を上回っている歳出超過の状態にある。歳出額 に対する歳入額の割合は、1990年47%から2001年59%に増加している。こうした歳出 超過は、楽観的な歳入見通しに基づいて歳出が行われていることに起因している。また ネパールの歳入基盤の脆弱性にも課題があるが、近年では改善の兆しも見られている。

0 10,00 0 20,00 0 30,00 0 40,00 0 50,00 0 60,00 0 70,00 0 80,00 0 90,00 0

19 90 1991 1 992 199 3 1994 19 95 1996 1 997 199 8 1999 2 000 200 1 (100万ルピー)

歳入 歳出

〔出所〕ADB, (2002), Key Indicators of Developing Asian and Pacific Countries 2002年版より作成

図 2-10 政府財政の動向

政府歳入は税収と税外収入76で構成されている。政府歳入に占めている割合は、税収が 1990 年度76%から 1999 年度 84%に増加している一方で、税外収入は同期比 24%から 16%に低下している。税収のうち、大きな割合を占めているのが間接税である。間接税 が政府歳入に占める割合は、1990 年度から 1999 年度までの間、ほぼ6 割前後で推移し ており、安定的な政府財源となっている。税収の比率が上昇した要因は、直接税の割合 が増加したことにある。政府歳入に占める直接税の割合は、1990年度8%から1999 年度 18%と10 ポイント拡大している。歳入レベルに見合った歳入が確保されているとはいえ ないものの、税金の徴収基盤は徐々に強化されている。

表 2-16 歳入構造の推移

(単位:%)

  1990/91 1991/92 1992/93 1993/94 1994/95 1995/96 1996/97 1997/98 1998/99 1999/00

税収  76.22 73.08 76.99 78.50 79.90 77.68 80.41 78.75 77.19 83.88  関税  28.38 24.86 26.04 26.84 28.52 26.27 27.36 25.81 25.55 28.34  消費 税・ 売上 税・

サービス税等  35.09 36.42 37.50 37.08 35.73 34.72 35.48 34.15 31.46 34.95  土地収入・登記料  5.02 4.71 4.98 4.25 3.81 3.82 3.34 3.05 2.69 2.44  資産 税・ 法人 税・

所得税  7.74 7.10 8.46 10.33 11.83 12.87 14.24 15.74 17.48 18.15 税外収入  23.78 26.92 23.01 21.50 20.10 22.32 19.59 21.25 22.81 16.12 歳入合計  100.00 100.00 100.00 100.00 100.00 100.00 100.00 100.00 100.00 100.00

〔出所〕CBS, (2001), Statistical Year Book of Nepal 2001より作成

政府歳出の内訳を見ると、1990年代前半は開発支出の比率が高く、1994年度までは政府 歳出の6 割以上を占めていた。1995〜1998 年度は50%台で推移し、1999 年度以降は48% にまで低下している。すでに見たとおり、政府の歳入不足から開発支出はドナーからの 援助や海外借入に依存している。

開発支出とは逆に、1995年以降、経常支出の割合が増加しているが、これは開発支出に よって実施された開発プロジェクトに係る人件費、補助金、国営企業などへの移転支出 が増加したことによるものである。WBのレポート77によれば、こうした経常支出の拡大 は、

i) 歳入の伸びが見込めないため、開発支出に振り向ける財政的な余裕がなく なった、

ii) 経常支出のうち、85〜90%が人件費および債務返済で占められるようにな った、

76税外収入には、公共料金収入、政府貸付金の返済金・利子、罰金、配当金等が含まれる。

77 World Bank, (2000), Nepal: Public Expenditure Review Vol.I

という結果を招いたとしている。また、歳入不足にもかかわらず、人件費および債務負 担が重くなったことで、既存のインフラや施設の運営費や維持管理費が捻出できなくな り、インフラや施設の利用が低下し、公共サービスの提供が十分に行えないといった事 態を引き起こしている。

0%

10%

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100%

1990 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001

  開発支出   経常支出

〔出所〕ADB, (2002), Key Indicators of Developing Asian and Pacific Countries 2002より作成

図 2-11 政府歳出の内訳の推移

以下に、セクター別の政府歳出の内訳を見てみる。

(2) セクター別政府歳出

政府歳出のセクター別支出の内訳を見ると、経済分野の占める割合が特に高くなってい る。1991 年をピークに年々低下しているものの、2001 年で依然として40%を超える水 準である。経済セクターでは、農業開発関連支出の占める割合がもっとも高く、ネパー ル政府の政策において、貧困削減を目的として農業開発に重点が置かれていることが財 政面からも確認できる。2001年度の農業関連支出は91億3,000万ルピーで、経済セクタ ーの支出に占める割合で35%、政府歳出に占める割合でも12%であった。経済セクター では他に、電気・ガス・水の公共セクターへの支出および道路整備など運輸・通信分野 への支出も高い割合となっている。2001 年度の電気・ガス・水および運輸・通信の経済 セクターへの支出に占める割合は、それぞれ30%、26%となっている。こうしたインフ ラセクターへの支出は、農業開発を進めるにあたって、灌漑に必要な電力や水供給の拡 大、農道の整備の必要性が高まっていることから、農村インフラの整備を中心に充当さ れている。

社会セクターへの政府歳出では、教育分野が目立っている。教育支出は経済分野につい で高く、2001年の歳出額は約188億ルピーで、政府歳出に占める割合は約15%である。

第9 次計画において、教育の普及が貧困削減の根本的な方策として位置付けられたこと から、教育への予算配分が拡大されている。また、教育分野には及ばないものの、保健 分野の政府歳出に占める割合も拡大している。政府歳出に占める割合は、1990年代半ば までは3〜4%であったが、1997年以降5%台に増加している。政府の保健支出拡大の背 景には、教育分野と同様、国家開発計画において、健康の向上が所得機会の向上と世帯 の保健支出の削減につながり、貧困削減に貢献するとして保健分野の重要性が高まった ことがあげられる。

0 10 20 30 40 50 60

1 99 0 19 91 1 99 2 1 99 3 19 94 1 99 5 1 99 6 19 97 1 99 8 1 99 9 20 00 2 00 1

( %)

軍事 教育 保健

社会保障・福祉 住宅

経済

〔出所〕ADB, (2002), Key Indicators of Developing Asian and Pacific Countries 2002年版より作成

図 2-12 政府歳出に占める各セクターへの支出の割合

マオイストの反政府活動は、政府歳出にも影響を与えている。政府歳出に占める軍事費 の割合は、1990年代前半5.9%前後であったが、1990 年代半ばに4.9%程度に削減された。

しかし、1990年代後半に入り、マオイストの活動が活発化し、その勢力範囲が拡大する につれて、治安維持のための軍事費が増加している。2001年にはネパール政府との対話 が行われ、一時的に活動が停止されたものの、国王暗殺事件による混乱に乗じて再び活 動を活発化させている。財源が限られている中での軍事費の増加によって、社会経済開 発に必要な他のセクターへの支出を抑制せざるを得なくなっている。そのうえ、マオイ ストによる破壊活動は、農村部における学校やヘルスポストなど社会サービスを提供す る施設を対象としている。財源不足から、新規投資や破壊された施設の再建が十分に行 えず、こうした地域における社会サービスの提供に支障をきたしている。マオイストの 勢力が強い西部地域は貧困率も高く、貧困削減対策を最も必要としている地域であるが、

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