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ドナー間の協調

ドキュメント内 2003 3 (ページ 119-124)

第 3 章   貧困削減へ向けた国際協力

3.1. 援助の概況

3.1.2 ドナー間の協調

表 3-5 1990年代のドナー協調 ネパール開発フォーラム

(Nepal Dev elopment Forum)

1976年に発足したNepal Aid Groupが名称を変えたもので、

WB が議長となり、一年半ごとにパリで開かれる協議の場 である。ネパールのカウンターパートは国家計画委員会。

ローカル援助グループ会合

(Local Aid Group Meeting)

毎年開催され、主に、ネパール政府がドナーに政策を報告 する場である。

ドナーグループ会合 (Donor’s Group Meeting)

ドナーだけで二ヶ月毎に協議する会合で、UNDPとWBが 共同で議長を努める。

セクター協調会合

(Sector Coordination Meeting)

12の主要セクターでドナーが援助を調整するための会合 である。ネパールのカウンターパートは財務省。

[出所]  UNDP, (1999), Development Partners in Nepalより作成

しかし、その一方で、ドナーによる貧困削減に向けた協調体制は、2000年に至るまで本 格化されなかった。これには、主に2つの理由が考えられる。

第一の理由は、民主化の進行と同時に政治情勢が不安定化したことである。1994年以降 のネパールでは、政権が短期的に連立と分裂を繰り返し、1999年までに合計6 回もの首 相交代があった。また、マオイストが1996 年にネパール政府に対して「人民戦争」を宣 言、主にネパール西部から勢力地域を拡大し、これらの地域には中央政府の行政が届か ない状況となった。こうしたなかで、政府とドナーが長期的な開発政策について協議を 行うのは困難であったと見られる。

第二の理由は、ネパール政府の政策立案能力と実施能力に対し、ドナーの援助資金供給 が過大であったと考えられる。このうち、ネパール政府の問題として、国家開発計画の 策定過程において、NPCと財務省の間で調整が不足していたことが主要な要因であると 指摘されている。当時のネパールでは、NPCがドナー援助の窓口となって国家5カ年計 画を作成する一方、政府の形状予算については財務省が統括していた。ドナーからの莫 大な資金流入の窓口となっていたNPCは、限られた一般予算に対して過剰な開発予算を 組む傾向があり、これが財政赤字増加などのマクロ経済問題や、非効率な援助プロジェ クトの増加などを引き起こしていた。こうした状況は、構造改革プログラムを進めてい たIMFやWBから、ガバナンスにおける構造的な問題として懸念された。

1990年代半ばには、政情不安と政府のガバナンスの脆弱性から、政府とドナーによる政 策合意に進展は見られなかった。IMF は、1995 年に ESAF 融資を停止し、WBは1996 年までに政策枠組書(PFP: Policy Framework Paper)を無効とした。さらに、ADB、WB、 UNDP などのドナーは、ネパール政府の政策策定・実施能力が改善しない場合は、援助 の規模を縮小する意向を表明した。

しかし、第9 次計画(1997〜2002年)が貧困削減を国家の最優先目標に掲げると、DfID、 WB、UNDP を中心として、ネパール政府の政策立案・実施能力の問題だけでなく、ドナ ー間の協調不足が指摘されるようになった。WBは1998年に国別支援戦略(CAS: Country

Assistance Strategy)を作成し、ネパール政府のオーナーシップの欠如とネパール行政の

非効率性を関連した問題として取り上げ、その対策としてドナー間の協調と政府のガバ ナンス強化をネパールへの支援方針として掲げている。

このような流れの中で、2000年4 月にはNDF 2000 がパリで開催され、貧困削減に向け た政府とドナーの本格的な協議が始まった。この会合で、ネパール政府は、国家貧困削 減戦略ペーパー(PRSP: Poverty Reduction Strategy Paper)の作成および包括的な政策策定 の制度化と政策改革92への意志をドナーに示した。一方ドナーは、政策策定過程におけ るネパール政府のオーナーシップの重要性について合意し、また、援助規模を政府の実 績に反映させることを表明した。こうしたネパール政府およびドナー間の協議の結果、

2002 年には NDF をネパール国内で行うこと、第 10 次計画はそれまでに完成予定の

I-PRSP をもとに作成し、これをもってF-PRSP とすることなどを決定した。

その後、2000年9月からマオイストのゲリラ活動がさらに激化し、2001 年11月には過 去最大の攻撃が行われ、マオイスト・警察・政府の間で犠牲者は 3,000 人以上にのぼっ た。マオイストの活動の拡大につれ、その最大の要因はネパールの貧困にあるとの認識 が、DfID、WB、GT Z、IMFなどの主要ドナー、そしてネパール政府の間で形成された。

その結果、貧困削減、ガバナンス改革、そしてドナー協調の緊急性を一層高めることに なった。

2002年2月に首都カトマンズで開催されたNDF 2002は、1990年代後半に水面下で進展 してきたドナーと政府の関係が明示化された。その特徴は、財務省が作成した「外国援

助政策(Foreign Aid Policy)」にまとめられており、政府の政策・運営能力の強化とドナ

ーの協調を条件に、ネパール政府の国家政策に対するオーナーシップが強調されている。

ネパール政府がこのように主導権を発揮した理由として、同政府が1990年代後半に貧困 削減を目標とした国家政策をすでに作成していたこと、そして、ドナー援助の窓口が財 務省に統一されたことなどが挙げられる。また、ドナー協調の欠如が非効率的な援助や 政情不安を助長してきた可能性について、ドナー自身の間で広く認識され始めたことも 大きな要因であるといえる。 

外国援助政策に対しては、主要ドナーも概ね評価しており、同政策の実行可能性が今後 の課題となろう。PRSP / 第10次五ヵ年計画や中期歳出枠組(MT EF: Mid-Term Expenditure

Framework)の実施段階におけるネパールの政治情勢、政府の行政能力、そしてドナー

間の協調が鍵になると見られる。

以下にNDF 2002と外国援助政策について概要する。

(1) ネパール開発フォーラム2002  (NDF 2002)

NDF 2002 は、ネパール政府によってPRSP / 第10次計画の協議プロセスとして位置づけ

られ、WB と政府が共同で議長を務める中、いくつかの主要報告書がまとめられた。こ れらには、会合の事前準備段階で各関係省庁が準備した「分野別・セクター別の改革案

92 改革の優先分野は、i)マクロ経済安定化、ii)公務員改革、iii)腐敗防止、iv)地方分権、v)金融セクタ ー改革と民間セクター開発、vi)援助の効果向上と国家開発における市民社会の参加、である。

(Issue Papers)93」、本協議で財務省がまとめた「改革アジェンダの実施計画(Nepal Implementation of Reform Agenda)」および「外国援助政策(Foreign Aid Policy)」、また国 家計画委員会(National Planning Committee)がまとめた「第10次計画 / PRSP構想(Concept

Paper on Tenth Plan / PRSP)」、そして財務省と国家計画委員会が共同でまとめた「中期歳

出枠組(MTEF)」がある。2002年12月現在、これらの報告書を総合的にまとめあげる

第PRSP / 第10次計画の策定が進行中であるが、本項ではネパール政府とドナーの関係

を明確にするための外国援助政策に焦点を絞る。(図3-1)

ネパール財務省による「外国援助政策」の作成過程では、まず事前協議の一環として主 要ドナーが、従来の政府・ドナー間の協調関係について見直し調査を行っている。これ はDfID、ノルウェー、WBなどの支援のもと、ユガンダ中央銀行総裁を含む専門家パネ ルに委託されたもので、援助の政治的な側面を率直に強調し、開発援助の非効率性や政 府のオーナーシップ不足が多分にドナー側の責任であることを指摘するものとなった。

同調査は、「ネパールにおける開発パートナーシップの見直し」としてまとめられ、開発 計画・実施・評価におけるネパール政府のオーナーシップの強化、地方分権化、市民社 会の参加、ドナーの援助プログラムの改革、援助成果の重視、そしてドナー間のさらな る協調の必要性を呼びかけている。ネパール政府に対してガバナンスの強化を求める一 方、ドナーに対して国家五ヵ年計画に即した援助プログラムとすること、援助資金のバ スケット化を検討することを提言している。 

PRSP / 10次計画

中期歳出枠組(MTEF)

(国家計画委員会、財務省)

外国援助政策

(財務省)

ネパール改革実施アジェンダ

(財務省)

PRSP / 10次計画構想

(国家計画委員会)

開発パートナーシップの見直し

(主要ドナー)

分野別・セクター別 改革案

(関係省庁)

図 3-1  NDF2002における各報告書の相互関係 

これを受けて、ネパール財務省は「外国援助政策」(Foreign Aid Policy)を見直し、今後 はドナーの援助政策と政府の作成する国家計画の協調・融合を通じて、援助の効率化・

93 分野別改革案は、ガバナンス改革プログラム(Ministry of General Administration)、地方分権化(Ministry of Local Development)、金融セクター改革(Ministry of Finance/Nepal Rastra Bank)、民間セクター改革

Ministry of Industry and Commerce)、市民社会パートナーシップ(National Planning Commission)、国営 企業改革(Ministry of Finance)、セクター別改革案は、農村開発(National Planning Commission)、農業 セクター(Ministry of Agriculture)、医療保健セクター(Ministry of Health)、教育セクター(Ministry of Education)、インフラセクター(Ministry of Physical Planning and Works)、水力発電・灌漑(Ministry of Water Resources)、である。

公正化・関係改善を目指す旨を述べている。これによれば従来の援助の問題点には、i) ドナー介入によるオーナーシップの欠如94、ii)ドナー間の協調の欠如95、iii)技術援助 の増加96、iv)タイド援助・コンディショナリティーの押しつけ97、v)ドナーの要求する 援助手続きの非効率性98、vi)国際 NGO のアカウンタビリティー不足99などが挙げられ ている。そしてこれらの問題を解決することが外国援助政策の長期的目的であり、それ に向けて外国援助は原則的に、i)国家目標である貧困削減を共通目標とすること、ii) 国家計画が定める目標に国レベル、セクターレベルで支援すること、が重要であるとし ている。

また、ネパール政府が直面する短期的な課題は、MTEF に対する政治的支援を国内で得 ること、そしてマオイストの活動激化に伴う軍事支出の増加である。こうした中で外国 援助政策は、ドナーのMT EFへの支援、新規プロジェクトの抑制、援助資金のバスケッ ト化、不必要に新規投資を増加させないこと、などを挙げている。また、ネパール政府 は、財政支援に伴うファンジビリティー(資金の流用可能性)問題については、国家金

融監査(CFA: Country Financial Accounting)への支援をWBから受けることで、問題の

解消を試みることを示した。

同時に政府は、多額の援助に対して人材や資源が十分でないことから、長期的にも援助 プロジェクトを国家五ヵ年計画の優先分野に基づいて、注意深く選択していく方針を示 している。これによれば、今後ドナーによって優先されるべきセクターは、i)農村イン フラ(電気・道路の拡充)、ii)小規模灌漑、iii)農産物の多様化、iv)基礎教育・技術 訓練、v)保健、vi)飲料水へのアクセス、vii)人口プログラムであり、セクター横断的 な課題として、ジェンダー、環境、ガバナンスなどの分野に取り組むとしている。

そのほか、ネパール政府は、INGO による農村地域の医療保健分野への貢献を評価しな がらも、その活動の不透明性を改善するために、さらなる管理体制を整えていく計画で ある。同計画では、一元化された窓口として社会福祉委員会(SWC)を指定し、INGO の登録・管理・モニターを管轄することとしている。また、実施段階において、INGO は、活動地域の開発委員会(District/Village Development Committees)と密接な協調関係 を保つことが義務づけられる予定である。 

94 プロジェクト管理能力の不足による不適切な資源配分、ネパール政府の優先分野とのミスマッチ、人々の ニーズとの不一致など。

95 各ドナーの優先分野の相違があり、ネパール政府による優先分野の設定が困難で負担が大きいこと。

96 ネパールに適合しない技術の流入や、特にプロジェクトに付随する技術協力において外国技術への過度な 依存など。

97 ネパールにおける既存の技術・労働力についての考慮不足、政策レベルでのコンディショナリティーの押 し付けなど。

98 ネパール政府の能力不足を考慮しないドナーの援助手続き・計画による非効率性。

99 国際NGOによる援助の優先分野と国家優先分野の不一致、援助活動に関する情報不足。

ドキュメント内 2003 3 (ページ 119-124)