• 検索結果がありません。

国際金融機関

ドキュメント内 2003 3 (ページ 124-130)

第 3 章   貧困削減へ向けた国際協力

3.2. 貧困削減に向けた取り組み

3.2.1 国際金融機関

(1) 国際通貨基金(IMF) 

IMFが貧困削減に乗り出したのは、1996年に重債務国の債務削減のための重債務貧困国 イニシアティブ(HIPC: Highly Indebted Poor Country Initiative)を始めたのがきっかけで ある。1999年には、さらなる債務削減を含む拡大HIPCを採択し、世界銀行と合同で包 括的開発枠組み(CDF: Comprehensive Development Framework)と貧困削減戦略ペーパー

(PRSP: Poverty Reduction Strategy Paper)を新しい政策枠組みと決定した。IMFはPRSP の作成を債務削減の条件にすると同時に、E SAF が名称を変えた貧困削減・成長融資

(PRGF: Poverty Reduction and Growth Facility)は、各政府が作成するPRSP を基盤とする こととなった。

IMFは、ネパールにおいて1985 年から構造調整プログラムを開始し、1992年から3年

間の ESA F を供与した。ESA Fは、WBとともにネパール政府と合意した政策枠組み書

(PFP: Policy Framework Paper)に基づいていた。しかし、ESAFは1995年10月に期限を 迎え、1996年以降、ネパール政府の構造改革が遅れたことから、その延長合意には至ら なかった。1998年にESAF再開のための協議が行われたが、マクロ経済は安定していた ものの、構造改革が満足なレベルで進んでいないことが指摘され、実現しなかった。 

1999 年からネパール政府は、PRGFの要請を始めている。IMF は、ネパールへの PRGF の基本的な条件として、金融セクター改革、行財政改革、ガバナンスの強化などを求め ている。具体的には不良債権を抱える大規模商業銀行の整理、中央銀行の監査能力の強 化、公務員のリストラ、国営企業の民営化である。しかし、政治情勢の安定が実現する までPRGFの協議を始められないとしている。

(2) 世界銀行 (WB)

WB は、1990 年のいわゆる、「ワシントン合意」をきっかけとして、再び貧困削減を重 視するようになった。1990 年代には、大規模な家計調査や参加型貧困調査(PPA)など を最貧国で実施し、貧困に関する知識を積み上げてきた。2000年に入り、WBの貧困削 減政策の重要項目として、機会(Opportunity)、エンパワーメント、社会保障(Security) を掲げ、それまで蓄積してきた貧困に関する知識を包括的にまとめあげる方向性を示し ている。1999年にはIMFと合同でCDFとPRSP を採択し、PRSP の提出をIDA融資の 条件とする一方、各国政府が作成するPRSP に基づいてCASを作成することを基本方針 としている。

WBは、ネパールにおいて従来からNDF(以前のAid Group Meeting)やドナーグループ 会合の議長を努めており、ネパールの援助協調において中核的な役割を果たしていた。

しかし、1990年代後半、ネパールの政権が不安定化するなか、WBと政府の政策協議は

中断されている100。これを受けて、WBはCA S(1998)の中でドナー協調を課題として とらえ、構造調整プログラム中心の政策から、政府のオーナーシップやドナー協調をよ り重視する政策への転換を明確化している。

CAS(1998)は、ネパールのマクロ経済状態を評価しながらも、政権の不安定性、行財 政の非効率性、金融セクターの脆弱性などが要因で、開発資源が効果的に活用されてい ないこと、これがマオイスト活動激化の最大の要因である可能性を指摘した。そして、

これらの対応策として、i)地方・地域レベルでの利害関係者と民間セクターの参加101、 ii)ネパール政府のガバナンス向上とドナー間の協調、を挙げた。具体的には、農業長期

計画(APP: Agricultural Perspective Plan)がドナー協調の中核に掲げられている。

また、1999 年11月にはCAEを作成し、この中で、投資環境を向上させる為の改革が遅 れていることや、民間セクターの活動が限定されていることが貧困削減政策の主要な問 題であると指摘した。そこで、融資レベルの決定にあたり、ネパール政府のガバナンス、

地方分権、公共管理の向上、金融セクター改革、民営化などの進捗状況を基準に行うこ とを提言した。また、ネパール政府のパフォーマンスを向上させるためには、ドナー間 の協調が不可欠であることを強調している。

その延長として2000年には公共支出評価(PER: Public Expenditure Review)を作成し、

行財政の課題について分析を行った。その中で、i)NPCの開発予算と財務省の経常予算 の二重構造、ii)恒常的な予算過多、iii)予算への優先付けの欠如、iv)プロジェクト管 理や支出管理のための組織能力の不足、などが挙げられている。 

現在、WBはCAS(1998)102に基づき、APPの実施を支援するための農村灌漑プロジェ クトや農村・地方道路の建設・改修などのプロジェクトに貧困削減要素を組み込んでい る。また、社会インフラ分野では、水・衛生、教育セクターなどで貧困削減を重視する プロジェクトを実施している。今後は、教育セクターで地方分権化と行政能力の強化を 目指し、水・衛生セクターでは民間セクターやNGO、コミュニティー組織の役割を一層 重視していく方向である。

さらに、金融セクター改革への支援プロジェクトを予定しているほか、エネルギーセク ターでは電力開発基金(Power Development Fund)を設立し、民間セクターの水力発電開 発を支援するプロジェクトを予定している。ネパール政府の外国援助政策を鑑みると、

これらの支援は国家貧困削減政策に寄与すると考えられる。

100また当時、WB 組織内で国別担当局長が頻繁に交代したことも、ネパール政府との政策レベルの協議を 継続できなかった要因であったことを認めている。

101地方自治法や他のドナーと協調してローカルレベルでの参加型プロジェクトの実施、女性の参加促進、

情報公開の向上など。

102 200212月に作成された最新のCASの経過報告書によれば、IDA融資はネパール政府のパフォーマン スを基準にすることが決定され、引き続き、i) 地方分権化、ii) ガバナンス、iii) ドナー協調を支援して いく方針が示されている。

(3) アジア開発銀行(ADB)

ADB は、1999 年 11 月、新しい貧困の定義を「全ての人に付与されている基本的資産

(Essential Assets)と機会(Opportunity)に対する権利が剥奪されている状態」とし、定

量的な貧困の指標のみに基づく貧困削減の方針を改めた。具体的には、基礎教育や基礎 保健の充足を重視しているが、「参加」する機会の欠如が原因で「エンパワー」されない 個人や社会もまた貧困層の対象に含まれるとしている。また、ADBは「貧困層」の多様 性を認識し、地理、年齢、社会的性差(ジェンダー)、職業、そして各国の価値観や文化 によって貧困の定義が異なるとしている。その支援政策の目標には、i) 貧困削減を重視 した持続可能な経済成長、ii) 社会開発、iii) 良いガバナンスが挙げられており、それに 向けた支援は、i) 比較的大規模なプロジェクトによる中・長期的な貧困削減アプローチ と、ii) 相手国政府への政策改革への支援アプローチに分類されている。

ネパールにおいて、ADBは、国家貧困削減政策の中核に位置づけられた、APP策定を支 援しており、貧困削減へ向けた援助協調でも中核的なドナーとなっている103。2001年7 月には、ネパール政府が作成したI-PRSP(2001年6 月)や第9次計画の内容を盛り込ん で、国別支援プログラム(CSP: Country Strategy and Program)を作成している。このCSP は、貧困削減を唯一の包括的な援助目標に設定し、優先されるべき分野として、i)経済 成長、ii)人間開発、iii)ジェンダーと開発、iv)良いガバナンス、v)民間セクター開 発、vi)環境保護、vii)地域協力などを挙げた。

さらに、ADBは2001年10月にネパール政府と、「貧困削減に関するパートナーシップ 合意」を結んだ。ここでは、貧困削減目標について話し合われ、中期的な目標として、i) 幅広い経済成長による雇用機会創出と農村所得の向上、ii)人間開発を助長するための基 礎的社会サービスの改善、iii)競争的な民間セクター育成のための環境整備、iv)政府、

企業、金融セクターの効率化と良いガバナンスが掲げられた。これらの目標に向けて、

ADBの支援政策は、i)農業・農村開発、ii)基礎的社会サービスとインフラ整備、iii) 女性のエンパワーメント、iv)民間セクター育成と企業・金融セクターの改革、v)政府 のガバナンス改革などを優先分野とした。また、重点を置くセクターには、i) 農業・農 村開発、ii) 運輸、iii) エネルギー、iv) 金融、v) 教育、vi) 水・衛生・都市開発、vii) 環 境管理、を挙げている。

ADB は、パートナーシップ合意やネパール政府の外国援助政策に基づいて、2002 年 7 月に最新のCSP(2003〜2005年)を作成ずみである。それによれば、2005年までにADB が重視する分野として、i)人間開発、ii)ジェンダー、iii)ガバナンス、iv)農業と農村 開発、v)エネルギー、vi)教育、vii)地域協力、などが挙げられている。また、この CSP では、各ドナーのセクター別戦略を調査104しており、貧困削減に向けた援助協調を 促進する姿勢を示している。

現在進行中のプロジェクトで貧困削減に寄与すると思われる代表的なものは、主に農 村・農業セクターに見られ、第2 次農村インフラ開発(Second Rural Infrastructure Sector Development、作物多様化(Crop Diversification)、コミュニティー家畜飼育(Community

Livestock Development)などのプロジェクトがある。その他、間接的に貧困削減に寄与す

103 20012月にカトマンズにおいて、貧困削減に関する高級会合(High Level Forum)を主催し、幅広い開 発パートナーを招待してネパール政府およびADBの貧困削減政策について協議した。

104別添5を参照。

ドキュメント内 2003 3 (ページ 124-130)