第 6 章 結論
6.2 発見事項のまとめ
6.2.4 MRQ の答え
MRQ: 学 生の 科 学技 術コ ミュ ニケ ーシ ョン 活 動 はい か に 行 われ てい るの か?
本節 では SRQsへ の解 答を 踏 まえ て 、MRQ の 解 答 を 示 す 。三 つの 事 例 から、学 生に よる 科学 技術 コ ミュ ニケ ーシ ョン では 、「 学習 する 」→「反
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省す る 」→「 表 現 す る 」 とい う 3 つの フェ イズ をス パ イラ ルに 繰り 返す 中 で 、主 体 が 持 つ知 識が 変化 し 、その 知識 の変 化が 表 現を 変化 させ る こ と が 明ら かに なっ た 。
ここ で用 いて いる 「学 習 す る」と は、事 例 分析 の結 果に 基づ い て導 き 出さ れた 概念 であ り 、そ の主 体 が 持っ てい なか った 知 識 を 獲得 する こと を 意 味す る 。資 料や 人々 の間 で 明 示的 に 共 有さ れて い るよ うな 既存 の知 識 を 獲得 す る こと と 、新 たに 創造 され た 形 式知・暗黙 知 を 獲得 する こ と の双 方 を 含ん でい る 。ま た、「 反 省 する 」は 事後 に行 わ れる 省察(reflection after action)であ る。「 表現 する 」とは 、科学 技術 コミ ュニ ケ ーシ ョ ンに 関わ る表 現、すな わち スピ ー チ、図と 言葉 を含 む資 料 を作 るこ と、ある いは 修正 する こと を 指し てい る 。これ は 、科学 に 関わ る形 式知 や暗 黙知 を 含 ん だ 知 識 の 総 体 を 他 者 に 伝 達 す る た め に 形 式 知 に 表 す 行 為 で あ る 。
これ ら の 3 つ のフ ェ イズ は 、 準備 段 階 ・実 践 段 階・反省 段階 とい う 具 体的 な活 動プ ロセ ス とは 対応 しな い。むし ろ 、準 備 段 階中 に 何 度 も スパ イラ ル 状 に フ ェイ ズ を 繰 り返 して いた 。
実 践 プロ セス を要 約 する と次 のよ うに なる 。ま ず 、学 生た ち は 研 究 や 過去 の企 画、大 学で の学 び( 学習 ) の 後に 、研 究 や実 践 の 前提 であ る 自 ら の 問題 意識 や信 念 を自 覚し て 、目標 を設 定し(反 省)、それ を達 成 する ため の 企 画を 提案 し た ( 表 現 )。
準備 段階 では 、過 去の 経験 を 参照 し、他 の 資料 を調 べ て 、あ るい は デ ィス カッ ショ ンを し なが ら 互 いに アイ デア や意 見を 出 し合 い(学 習 )、ど うし たら わか りや す い表 現に なる のか 、ど こ がわ かり にく いの か を 考え
( 反 省 )、 設 定し た目 標に 合 う よ うな 説明 資料 を作 成 した ( 表 現 )。
さ ら に 、 発 表 練 習 を 行 い ( 表 現 )、 他 の 学 生 の 意 見 を 聞 い た ( 学 習 )。
そし て自 分の 発表 の 何が わか りに くい のか を考 えて( 反 省 )、修 正 を 行っ た(表 現 )。学生 以 外の 他者 の意 見 を聞 いた り、聴衆 につ いて の知 識 を 獲 得 し たり して ( 学 習 )、自分 の認 識を 改め (反 省 )、そ れ ら に 基づ いて 発 表資 料を 修正 す る こ とも あっ た( 表 現 )。修 正の 過程 では 、自 分の 研 究に 対す る理 解の 曖昧 さ に気 づく こと もあ った (反 省 )。
そし て、実践 段階 では 、聴 衆の 前 で発 表を 行っ た( 表現 )。実 践 中あ る いは 実践 後に 、支援 者 や 聴 衆や 聴 衆に つい て学 ぶこ と もあ った( 学 習 )。
反省 段階 では、反 省会 が実 施さ れ、学生 ら が 反省 点を あ げ て 共有 した(反 省 )。
この よう に 、「学 習す る 」→「反 省 する 」→「表 現 す る 」→「 学 習す る 」
→…と いう 流 れが あり 、 その 中 で 伝え る 形 式知 が 表 現 を変 えな がら 発展 し て い た 。 こ れ ら の 3 つ の フ ェ イ ズ の 最 中 に は 「 行 為 の 中 の 省 察
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(reflection in action)」も 行わ れ て いる と考 えら れる 。
ま た 、 科 学 技 術 コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン の 形 式 知 が 創 造 さ れ る 過 程 で は 、 表現 以外 の知 識も 創 造さ れて いた 。以 下 で は 、主 に観 察 可能 な形 式 知を 示し てい るが 、暗黙 知の 創造 が 推 論さ れる 場合 には 、それ ら も 含 め てい る 。3 つの 事例 で創 造さ れ た知 識 は以 下の よう に分 類 でき る 。
1) 知 識の表 現
創造 され た知 識の 一 つ は 、伝 える ため の知 識の 表現 で ある 。具 体的 に は 、ス ピ ーチ とス ライ ドプ レ ゼン テー ショ ン資 料、配布 物で あ る。学生 が伝 える 科学 的知 識 は、教科 書や 学会 発表 と同 じで は なく 、比 喩が 多用 さ れ る、言葉 遣い が変 わる 、デ ザ イン が変 わる など 、目 的に 合 わせ て 表 現 の 形 式 が 変 化 し て い た 。 ま た 、 さ ら に は 観 衆 を 惹 き つ け る た め の 話 、 科学 的知 識と とも に 伝え たい メッ セー ジな どの 対社 会 的な 表現 、科 学的 な 補 足説 明 や 研究 上 の推 論 な ど科 学的 知識 を取 り巻 く 文脈 が作 られ 、表 現 が 作ら れて いた 。さら には 、何 が伝 える べき 科学 的 知識 であ るか に つ いて の理 解 も 準備 の 過程 で変 化し た。
2) 表 現方 法についての知識
いか にわ かり やす く 、興 味 を 引 く よう に 表 現す るか の 方法 につ いて の 知識 が創 造さ れて い た。特に 、練 習会 や反 省会 での 他 の学 生ら の意 見を 契機 とし て 、発 表の 中心 とな る 学 生が 発表 上の 課題 と その 解決 方法 に つ いて 省察 し 知 識を 創 造し てい た。
3) 他 者 についての知識
他 者 がど うい う特 徴 を持 ち 、研 究 に対 して どう 思っ て いる のか に関 す る知 識 も 獲得 ある い は創 造さ れて いた 。た と えば 事 例 1 で は準 備 過 程の X1氏 との 対話 によ り 、聴 衆の ニー ズや 思い を知 り 、事例 2 では 聴衆 は 何 がわ から ない かな ど を、練習 会 と 本番 での 学生 らや 生 徒の 反応 をみ て学 習し てい た。
4) 自 分についての知識
3 つの 事例 にお いて 、自 分 自身 に つい ての 知識 を創 造 して い た 。自 分 がど のよ うな 信念 や 目標 を 持 って いる のか 、ある いは 自分 の目 標 の 前提 は何 か 明 確化 した 。また 、科 学 的 知識 を 自 分は どの よ うに 理解 して いる の か 、自 分 たち の教 育方 法 は ど の よう な 特 徴 を 持 っ て いる の か とい う知 識 も 創ら れて いた 。
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5) 運 営に関する知 識
運営 上の 知識 も創 造 され た。主に 反省 会に おい て 、募 集を 早く 行う べ きで ある など の 意 見 が出 され 、報 告書 にま とめ られ た 。こ れら は運 営に 関す るノ ウハ ウと し て、 学生 グル ープ に 蓄 積さ れた 。
以 上 の 5 種類 の創 造 され た知 識の 多く は 、他 の学 生や 支援 者 の助 言 が 契機 にな った り 、デ ィス カッ ショ ン の 中で 創造 され た りし てい た。し た がっ て 、本 事例 研 究に おけ る知 識 の創 造は「 共創 」で ある と考 えら れ る。