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理論的含意

ドキュメント内 JAIST Repository https://dspace.jaist.ac.jp/ (ページ 153-157)

第 6 章 結論

6.3 理論的含意

5) 運 営に関する知 識

運営 上の 知識 も創 造 され た。主に 反省 会に おい て 、募 集を 早く 行う べ きで ある など の 意 見 が出 され 、報 告書 にま とめ られ た 。こ れら は運 営に 関す るノ ウハ ウと し て、 学生 グル ープ に 蓄 積さ れた 。

以 上 の 5 種類 の創 造 され た知 識の 多く は 、他 の学 生や 支援 者 の助 言 が 契機 にな った り 、デ ィス カッ ショ ン の 中で 創造 され た りし てい た。し た がっ て 、本 事例 研 究に おけ る知 識 の創 造は「 共創 」で ある と考 えら れ る。

モデ ルの 3 つの フェ イズ と は、(1) い まま で持 って い なか った 形式 知 や暗 黙知 を獲 得す る「学 習 する」、(2) 表現 上の 問題 や その 解決 方法 、前 提に ある 科学 に関 す る、ある いは 他者・自 分に 関 する 知識 を行 為の 後に 自覚 し 、問 い直 す「反 省す る」、(3) 形 式知 や暗 黙知 を 言葉 や絵 で伝 える ため の形 式知 とし て 表す、「表 現す る」で あ る。ま た、これ らの す べ ての フェ イズ にお いて 、行 為の 最 中に 知識 の 問 い直 しを 行 う「省 察 する 」が 行わ れて いる 。こ れ ら の 3 つ の フ ェイ ズが スパ イラ ル に 展 開 し 、送 り手 の知 識が 変化 し て 表 現が 変化 する1。以 下に 各フ ェイ ズ を説 明す る。

フェ イズ 1. 学習 する

企画 が立 案さ れる 前 、知 識の 送り 手は 研究 を行 う 、他 の企 画を 経験 す る、ある いは 新 聞や 雑誌 など から 科学 につ いて 知る な ど、何ら かの 知識 を 獲 得し てい る。この よう な 企画 前の「 学 習す る」と い うフ ェイ ズ があ った 上で 、ど の よう な企 画が よい か、自分 の研 究 はど う役 立つ のか など を反 省的 に思 考し 、 実践 を立 案す る。

企画 の立 案後 には 、送 り手 は「 表 現す る」のフ ェイ ズを 経て 他 者に 知 識を 伝え 、感 想 や意 見な どを 聞く 。こ れら の反 応 から 送り 手は 科学 に関 わる 知識 、他 者に 関す る知 識、伝 える スキ ル、創造 的ア イデ ア など の知 識を 獲得 する 。 資 料 から 科学 的知 識 を 追加 で学 習す る 場合 もあ る。

学 習 され た 暗 黙知 や 形式 知 は、「反 省す る」の フェ イ ズを 経て 個人 の 中 で既 存の 知識 に結 合 され、「表 現 する 」を 経て 形式 知 に反 映さ れる 。

フェ イズ 2. 反省 す る

立案 の段 階で は 、送 り手 は 研究 や 企画 の前 提に ある 知 識と 信念 を 反 省 し 、 企画 の 目 的を 考 える 。

また 、練 習会 な どで 「 学 習す る 」のフ ェイ ズを 経る と 、何 が表 現上 の 問題 なの か、ど のよ うに して 問題 を解 決す るの がよ い のか 、そ もそ もの 前提 に誤 りが ない か とい うこ とを 反省 する 。 こ こで 送り 手は 、科 学・研 究 が 社会 とど う関 わ って いる のか 考 え 、科 学 的知 識 の 理解 の仕 方 を 変化 さ せ 、ど のよ う な表 現が よい のか 考え る 。他者 や 自分 に関 する 知識 を得 た場 合に は、新 しい 知識 に従 って 聴衆 の 理 解 を 変化 さ せ、自分 の中 で 想

1 実 際 に は フ ェ イ ズ が 一 つ ず つ 順 番 に 進 む の で は な く 、 同 時 並 行 に 進 む こ と が あ る 。 ま た 、1つ の フ ェ イ ズ が 、 次 の フ ェ イ ズ に つ な が ら な い こ と も あ る 。 こ の モ デ ル で 重 要 な の は 、 実 際 の 実 践 の プ ロ セ ス を 厳 密 に 言 い 当 て る こ と で は な く 、3 つ の フ ェ イ ズ の プ ロ セ ス が 知 識 の 共 有 ・ 活 用 ・ 創 造 と ど う 関 わ る の か を 示 す こ と で あ る 。

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定さ れた 聴衆 と対 話 し、どう し た ら 関 心を 引い て 理 解 して もら える のか 思考 する 。こ の 反省 を通 じて 、こ れま で持 って いた 送 り手 の 暗 黙知 や形 式知 に 学 習で 得ら れ た新 たな 知 識 が結 合 さ れる 。

フェ イズ 3. 表 現 する

「省 察 す る」 で見 直さ れた 、あ る いは 自覚 され た 暗 黙 知・形 式 知 に 基 づ き 、 言 葉 や 図 表 な ど を 形 式 知 と し て 表 現 す る 。 こ こ で 科 学 的 知 識 は 、 論文 や教 科書 など の 科学 技術 の文 脈か ら切 り出 され 、メタ ファ ー 化 やデ フォ ルメ 、言葉 遣い の変 更と い っ た目 的に 合わ せた 表 現形 式で 表現 され る。ま た、相手 の 関 心 を引 き つ け る 情 報、どう 社会 貢献 する か と い う情 報、補 足 すべ き情 報な ど 、科学・ 研究 の対 社会 的な 位 置づ けに 関す る 知 識と 、送 り手 の 科学 的知 識と とも に 解 釈や 推論 が加 え られ 、新 たに 文脈 化さ れた 形式 知が 創 造さ れる 。

一度 作ら れた 形式 知 は、学 習 と省 察を 経て 何度 も修 正 され る。 表現 さ れた 形式 知は 、練 習 会や 対話 、実 践の 本番 で他 者に 伝 達さ れる 。

これ らが 知識 プロ セ スの 3 つ の フ ェイ ズで ある 。また 、シ ョ ーン の 行 為 の 中 の 省 察(シ ョ ー ン 、2007)と い う 考 え 方 を 踏 ま え る と 、 省 察 は 事 後 のみ なら ず、事 中で も生 じる 。省 察は すべ ての フェ イ ズ で 生じ てい ると いう 意味 で、 モデ ル の中 央に 「省 察す る」 を配 置 し て いる 。

こ の 知識 プロ セス で は、科 学技 術 コミ ュニ ケー ショ ン で伝 えら れる 形 式 知 だ け で な く 、 表 現 方 法 に 関 す る 知 識 、 他 者 や 自 分 に つ い て の 知 識 、 運営 につ いて の知 識 とい った 暗黙 知 を 含む 知識 が 創 造 され る。

科学 的知 識を 表現 す ると いう 点に つい て廣 野 (2008)は、 第 2 章 で も 述べ たと おり 、「伝 え るべ きこ と」と「受 け 取る 側の その 対応 物」を 設定 し 、送 り手 側の 文脈 や 受け 取る 側 の文 脈を 明示 化し 、「伝 える べ きこ と」

とそ の文 脈を 切り 出 して 分か りや すい 形に 変奏 し た う えで 、聴 衆 に 伝え、

そ の 後 に 聴 衆 の 理 解 を チ ェ ッ ク し て 評 価 す る と い う プ ロ セ ス と 述 べ て い る 。 一 方、本 研究 で 示し たモ デ ルで は、 廣野 のい うチ ェッ ク や評 価は 必 ず し も 伝 え 終 わ っ た 後 だ け に 生 じ る も の で は な い こ と を 示 し て い る 。 準備 プロ セス や 、表 現 の最 中に も 生じ る と 考え られ る 。また 、廣野 は「伝 える べき こと 」があ った うえ でそ の文 脈を 明示 化し 、それ を変 奏す ると 述べ てい る が 、本研 究の 成果 を踏 まえ ると 、科 学 技術 コミ ュニ ケー ショ ンで は ど の科 学的 知 識を 伝え る べ きか とい う理 解 や 表 現の 形式 、 科 学・

研 究 の対 社会 的位 置 づけ に関 する 知識 、あ る いは 科学 的知 識に 対 す る送 り手 の解 釈や 推論 が 変化 し、「 伝え る べ きこ と 」と その 文 脈 が 変化 す る と

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考え られ る 。こ れら の理 解や 知識 は、検証 を受 け て 一 貫し た様 式を も つ 科学 的知 識よ りも 柔 軟性 を 持 って おり 、伝 え るプ ロセ スの 中で 変 化 する もの であ る。科 学的 知識 を 伝 える 行為 とは 、単 に 伝え るべ き 科 学的 知識 とそ の文 脈 を 明確 化 し、表現 形式 を変 更す る だ けの 行 為 で はな く、送 り 手 の 前提 にあ る知 識 や理 解の 変化 に伴 って、「 伝 える べき こと 」や そ の文 脈自 体も 変化 する 動 的な プロ セス を含 む 行 為 で ある と 考え られ る。

では 、この モデ ルは 科学 技 術コ ミ ュニ ケー ショ ンの こ れま での モデ ル とど う対 応す るの か 。第 2 章 で示 した とお り、藤 垣ら は科 学技 術コ ミュ ニケ ーシ ョン には「伝 える こ との モデ ル」がな いと 指摘 し、欠如 モ デル など の既 存の モデ ル は、い ず れも「受け 取 るこ との モデ ル」であ る と分 類 し て い る(藤 垣 ・ 廣 野 、2008)。 本 研 究 の モ デ ル は 、 以 下 に 示 す 既 存 の

「受 け取 るこ との モ デル 」のい ず れか に対 応し た「伝 え るこ との モ デル」

なの かと いう と、 そ うで はな い 。

本研 究の 対象 とな っ た教 育・啓 蒙 型の 科学 技術 コミ ュ ニケ ーシ ョン は 講義 形式 が多 く 、そ の点 でイ ンタ ラク ティ ブ 性 が少 な い。欠如 モデ ルの よ う に 、 相 手 に 知 識 を 伝 え れ ば 好 き に な っ て も ら え る だ ろ う と 想 定 し 、 一方 的に 知識 を伝 え る可 能性 があ る。実 際、教育 に重 点 を置 く場 合 、そ のよ うな 活動 は多 い と考 えら れる 。こ のた め 、本 研究 のモ デル は 欠 如モ デ ル に 対 応 す る 「 伝 え る こ と の モ デ ル 」 で あ る よ う に 見 え る 。 し か し 、 本研 究で 対象 とす る 活動 は、実 践 段階 のみ に注 目す る と一 方向 的な 性格 が強 いも のの 、準備 過程 を含 めて 検討 する と、対 話や 反応 から の学 びが ある。省 察 し だ い では 、前 提の 仮 定を 修正 する 可能 性 もあ る。活動 を通 じて 欠如 モデ ル的 な 仮定 を省 察し 、変 更し うる 可 能性 をも つ点 で 、欠如 モデ ルに 対応 する 「 伝え るこ との モデ ル」 では ない 。

また 、相 手や 自 分に つい ての 知識 を増 やし 、科 学 的知 識を 表現 する と いう 点で は、科 学技 術コ ミュ ニケ ーシ ョン の文 脈モ デ ルに おけ る「 伝え るこ との モデ ル 」に も近 い。し か しな がら 、文 脈 モデ ルに は、特定 の意 図 を 達 成 す る た め の ツ ー ル と し て 利 用 さ れ て い る と い う 批 判 が あ る よ うに 、意 図や 目 的の 設定 は一 方的 とい う側 面が ある 。本研 究の モデ ル で は 、 目 標 が 聴 衆 や 状 況 に 合 わ せ て 変 更 さ れ る 可 能 性 が あ る と い う 点 で 、 文脈 モデ ルと は異 な って いる 。

本研 究の モデ ルは 、市民 参 加型 モ デル や素 人の 専門 性 モデ ルの よう に、

何ら かの 目的 で積 極 的に ロー カル ナレ ッジ を獲 得し 、ある いは 合 意 を形 成す るわ けで はな い。しか し、聴 衆の 知識 を受 け入 れ、相手 の 反応 から 知識 を得 る点 では 共 通 し て い る。啓蒙・教 育型 の 科学 技術 コミ ュニ ケ ー ショ ンで あっ ても 省 察に よっ て 聴 衆に つい て学 び 、目 標 を 共有 し う る と

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いう 可能 性を 示す モ デル であ る 。これ は 受 け手 のみ に 注目 する モデ ルで は見 過ご され る論 点 であ る 。科 学 技術 コミ ュニ ケー シ ョン を受 け手 と 送 り 手 の 双 方か ら 研 究 する 重要 性を 示し てい る。

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