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科学的知識の伝達・移転:マクロな視点から

ドキュメント内 JAIST Repository https://dspace.jaist.ac.jp/ (ページ 42-46)

第 2 章 先行研究レビュー

2.3 科学的知識の伝達・移転:マクロな視点から

科学 技術 コミ ュニ ケ ーシ ョン を知 識科 学か ら検 討す る 際に は 、科 学 的 知 識 の 移 動 ( 移 転 ) と い う 視 点 も 有 用 で あ る 。 本 研 究 の 事 例 研 究 で は 、 学生 と数 十人 の観 衆 とい う ミ クロ な知 識移 転に おけ る 、科 学的 知 識 の送 り 手 によ る知 識創 造 に焦 点を 当て る 。しか しな が ら 、その よう な 活 動が どん な知 識移 転の 一 部な のか 、マ クロ なレ ベル でも 位 置づ ける 必要 があ る 。

本 節 で は 科 学 的 知 識 の 伝 達 ・ 移 転 を マ ク ロ な 観 点 か ら 捉 え て み た い 。

21 た と え ば 東 京 大 学BAP(http://sc.adm.s.u-tokyo.ac.jp/bap/) や Robogals Tokyo

(http://www.robogals.jp/) が あ る 。(い ず れ も 2014 8 1日 ア ク セ ス)

22 た と え ば 柏 の 葉 サ イ エ ン ス エ デ ュ ケ ー シ ョ ン ラ ボ (KSEL)( http://udcx.k.u-tokyo.ac.jp/KSEL/) な ど 。(2014 8 1日 ア ク セ ス)

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2.3.1 科学技術から社会への知識・情報の 流れ

科学 技術 に関 する 情 報・知 識 は、科学 者が 生産 する た め、そ れ らの 社 会へ の普 及の 出発 点 も、基 本 的に は科 学者 であ る。もち ろん 、企 業 で生 産さ れた 知識 など は 、利益 の確 保 が優 先さ れ 、公 表さ れ ない こと も ある。

また、メ ディ アが 介す るこ と もあ る。し か し一 般的 には 、学 問的 な 情報 の出 発点 は科 学者 で あり、科学 者 自身 が保 有す るか 、あ るい は学 術 雑誌・

書籍 等に 保存 され て いる 。

科学 者 に よる 科学 的 な 情 報や 知識 の 公 表 に は 、研 究 仲 間に 向 け た 発 表 と 、科 学 者 以 外の 人々 に向 け た発 表の 二種 類が ある 。科 学者 の、研 究 仲 間に 向け た研 究発 表 をイ ンパ ブリ ッシ ュ、そ うで ない 人に 向け た 発 表を アウ トパ ブリ ッシ ュ と呼 ぶ場 合が ある ( 調 ・川 崎 、1997)。

イン パブ リッ シュ で は、研 究 仲 間 に自 分の 見出 した も のの 正当 性を 主 張し、説 得し よう とす る。アウ ト パブ リッ シュ では 、自 分の 見 出し たも のや 自分 の研 究分 野 の意 味を 、市 民が 理解 でき るよ う に伝 える 。ほ とん ど の 市 民 は 高 度 に 細 分 化 さ れ た 科 学 の 専 門 的 知 識 を 有 し て い な い た め に、イン パブ リ ッシ ュさ れた 情報 や知 識を 直接 理解 す るの は難 しい 。こ のた め、科 学者 から はア ウト パ ブ リッ シュ され た情 報 や知 識を 得る と考 えら れる 。科学 者 の ア ウト パブ リ ッシ ュに つい ては 、教 育 、書 籍・文 献、

講演 、広報 誌や ホー ム ペー ジの 記 事執 筆 、市 民参 加プ ロ グラ ムへ の 参加、

サイ エン スカ フェ な どが ある 。

後者 のメ ディ アに つ いて は、 多様 なも のが 存在 する 。 図 2-3 は、 科 学 と社 会 の コミ ュニ ケ ーシ ョン メデ ィア をま とめ てい る 。こ こで は 、メデ ィア とし て教 育、宣伝・広告 、マ ス メデ ィア 、イ ンタ ーネ ッ ト、図書 館、

科学 博物 館、サー ビス・商 品が 挙 げら れて いる 。メ ディ アの 中 でも 大き なも のは 、教 育と マス メデ ィ アで ある。教 育で は、学 校 にお いて 理 科教 育や 科学 教育 が実 施 され てい る。マス メデ ィア に つ い ては、新聞、放 送、

出版 、映画 、書籍・ 雑誌 、テレ ビ など があ げら れる 。近年 は 、イン ター ネッ トの 影響 も大 き くな って きて いる 。

市民 の側 から 見た と き、科学 技術 に関 する 情報 や知 識 を得 るの は、テ レビ や新 聞、雑 誌な どの ニュ ース から であ り、最 近で はイ ンタ ーネ ット も 増 加し てい る (European Commission、2007;National Science Board、

2012)。 ま た 日 本 で も そ の 傾 向 は 変 わ ら な い と 考 え ら れ る ( 岡 本 ほ か 、

2001)。例 え ば、2010 年 の総 理 府 広報 室「 科学 技術 と 社会 に関 する 世論

調査」によ る と、「 あな たは、ふ だ ん科 学技 術に 関す る 知識 をど こか ら得 てい ます か」と い う質 問に 対し て、テレ ビが 87.1%、新 聞・雑 誌が 58.8%、

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イン ター ネッ ト が 21.8%、ラ ジオ が 12.2%、家 族 や友 人と の会 話な どが

10.1%、書 籍が 9.2%であ った 。 な お、 シン ポジ ウム や 講演 会、 大学 や研

究機 関の イベ ント は 3%であ る( 内閣 府大 臣官 房政 府 広報 室、2010)。こ のよ うに 、マ ク ロな 視点 で見 たと きに は、マス メ ディ アが 圧倒 的に 科学 的知 識の 社会 への 移 転を 担っ てい る。科学 者 は市 民 に 直接 対話 す る 機会 は多 く持 って いな い もの の、メ デ ィア を通 じて 影響 力 を持 って きた と考 えら れる 。

図 2-3 科学 と 社会 のコ ミュ ニケ ー ショ ンメ ディ ア

出 典 : 調 ・ 川 崎 (1997) を 基 に 筆 者 が 作 成

2.3.2 社会から科学技術への知識・情報の 流れ

科学 技術 と社 会の コ ミュ ニケ ーシ ョン とし て考 えら れ るの は 、科 学 技 術か ら社 会へ の知 識・情報 の 普及 だけ では ない 。逆 方向 の流 れ、社 会か らの イン プッ トも 考 えら れる 。

吉岡 は、科学 を 閉じ た系 とし て分 析す る方 法を 批判 し 、社 会に 開か れ た系 とし ての 科学 を 主張 して いる(吉 岡 、1986)。現代 科学 の特 徴 の ひと つは 巨大 科学 (Big Science) 化 し たこ とで ある 。ひ と つの 科学 研究 プロ ジェ クト に 多 くの 科 学者 を動 員し 、巨 額の 研 究費 を必 要と する よ う にな った 。そ のた め 、投 資機 関( 日 本 の場 合は 特に 政府 )と契 約を 結ぶ こと が、研究 を行 う 上で の必 須事 項と なっ た。この こ とは 科学 の研 究の あり 方に 大き な変 化を も たら した 。そ れま での 科学 では 、科学 者が 個人 的な 好奇 心に より 研究 課 題を 設定 し、自然 現象 をひ とつ ひ とつ 解明 し、その

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結果 が新 たな 課題 を 生む とい う試 行錯 誤的 な側 面を も って いた 。し かし なが ら巨 大科 学の よ うな 現代 型の 科学 では 、投資 機関 と契 約を 結 ぶ ため に、あら かじ め 目標 を明 確化 し適 切な 研究 計画 を立 て 、申 請後 には その 計画 にし たが って 研 究を 進め るよ うに なっ た 。そ うな ると 科学 は 目 標に よっ て投 資さ れる か 否か 、す な わ ち研 究で きる かど う かが 決ま って くる よう にな る 。そ の結 果 、科学 は社 会の 要請 を聞 き入 れ ざる を得 なく なる。

上記 のよ うな 現代 型 の科 学 で は 、社会 の ニ ーズ が反 映 され ると いう 点で 社 会 と の コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン が 成 立 し て い る と い う 捉 え 方 が 可 能 で あ る 。

2.3.3 科学者の科学技術コミュニケーション

前述 のよ うに 、知識 移転 は 多く の 場合 マス メデ ィア を 介し て行 われ て おり、科 学者 が直 接対 話す る こと は少 ない よう に見 え る。 で は、 マ スメ ディ アを 介し た 情 報 伝達 や、予算 申請 とい うか たち 以 外で は、科学 者 は どの よう に社 会の 声 を聞 き、 ある いは 発信 して いる の だろ うか 。

平 成 16 年 版 科 学技 術白 書 では 、 科学 者等 に求 めら れ る社 会的 役割 と して 、次の よう に書 い てあ る。「 科 学技 術が 社会 全体 に とっ て望 まし い方 向で 発展 して いく た めに は 、科 学 技術 それ 自体 や科 学 者等 の活 動が 国民 に正 しく 理解 され る こと 、信 頼さ れる こと 、支 持 され るこ とが 必要 不可 欠と 言 え る。こ のた めに 、科 学 者 等は 自ら が社 会の 一 員で ある とい う認 識を 持っ て 、自ら 得た 知識 や 知見 を国 民に 語り かけ 、ま た 、 科学 者 等が 国民 の意 見を くみ 取 って いく こと は 、科学 者 等に 求め られ てい る 社 会的 役割 であ ると 考え ら れる」。その 上で、「 公開 講義 のよ う な一 方的 な情 報 発信 では なく 、双方 向的 なコ ミ ュ ニケ ーシ ョン を実 現 する アウ トリ ーチ

(outreach)活 動」が求 めら れる と 書か れた 。ま た、科学 者 が 自ら の 研究 を説 明 す る 場 所と し て、 所属 機関 の公 開、シン ポ ジウ ム、専門 誌 、一般 の雑 誌、 イン ター ネ ット があ げら れた 。

この 科学 技術 白書 以 降、科 学者 が 市民 と対 話す る 科 学 技術 コミ ュニ ケ ーシ ョン の試 みが 盛 んに 行わ れる よう にな った 。その なか でも 顕 著 な広 がり を見 せた のは サ イエ ンス カフ ェ で ある 。サ イ エン スカ フェ は 、一般 的に は、飲 み物 を片 手に 科学 者 と 市民 が話 すと いう コ ミュ ニケ ーシ ョン の形 態で ある 。平成 16 年版 科 学技 術白 書で の紹 介 記 事 を契 機に 、数 十人 の規 模か ら 100 名 以上 まで 、様 々な スタ イル で広 ま りを 見せ た ( 中村、

2008)。現 在で は シ ンポ ジウ ム や研 究所 等の 公開 とと も に 、科 学技 術 コミ ュニ ケー ショ ン の 代 表的 なス タイ ルと して 定着 し た と 考え られ る 。ま た、

前述 のよ うに 、コン セン サス 会議 など の 、市民 参 加を 目指 した 科学 者と

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市民 との 対話 が い く つか 実施 され た 。これ らは 、科学 技術 社会 論 の 研究 者な ど、コー デ ィネ ート を行 う人 間 が 主体 にな って 実 施さ れて おり 、要 請を 受け た科 学者 が 参加 する とい う形 をと る。 た だ、科学 者が 市 民 と直 接的 に対 話す る機 会 とし ては 、講 演や サイ エン スカ フ ェ の 方が より 一般 的で ある と考 えら れ る。2013 年 に 実施 さ れ た研 究者 に よる 科学 技術 コミ ュニ ケー ショ ン 活 動 に関 する アン ケー ト調 査に よる と 、科 学技 術 コ ミュ ニケ ーシ ョン の経 験 者は 回収 数の 64%(5769)で あ り 、そ の活 動内 容 は、

教育・啓 蒙 型で ある 「 一般 向け の 公開 講座・ 講演 会・シ ンポ ジウ ム ・セ ミナ ー」が 77.4%、「 小中 高等 学校 での 出前 授業 、講演 会 」が 52.0%、市 民参 加型 であ る「 タウ ンミ ー ティ ング・市 民会 議・市 民 陪審 等へ の 情報 提供・参加 」は 9.4%、「市 民と の 協働 調査・研 究」は 8.9%であ った 。こ の調 査は 、ReaD & Researchmap に 登録 され た研 究者 の メー ルア ドレ スに アン ケー トを 送付 し た も ので あり 、回 収数は 8964(7.3%)、 有 効 回 答数

7908(6.5%)で ある(独 立行 政 法 人科 学技 術振 興機 構 科学 コミ ュニ ケー

ショ ンセ ンタ ー 、2013b)。科 学 技 術コ ミュ ニケ ーシ ョ ン に 関心 のな い層 は返 答し なか った と いう こと を考 える と、教育・啓蒙 型 は、比 較 的 広ま った とは 言え 、全体 に普 及し たと まで は言 えず 、また 市民 参加 型の 活動 につ いて はご く限 ら れた 層の み 参 加し てい る と 考え ら れる 。

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