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DMO と日本版 DMO

ドキュメント内 Twitter データを用いた観光対象に対する (ページ 38-43)

第 2 章 先行研究

2.2. 観光振興組織

2.2.1. DMO と日本版 DMO

を明らかにした.以上のようにDMO に関する研究はDMOに対してアンケートやインタ ビューなどの直接的な調査を行う,あるいは DMOによって公開されている情報を分析す るなどの方法論で行われていた.

図 2-3 ヨーロッパのDMOの構成

(Kamann 2008をもとに筆者作成)

Pike & Page(2014)はDMOが必要とされる理由を,観光関連事業者の大多数が従業員

10人未満の小規模組織であるにも関わらず,これらの組織は他の観光地や,他の消費財と の競争に晒されているため,市場におけるより大きな集団的影響を創出するために,観光 地の資源を管理するための公平なコーディネータが必要であるためと述べている.1 章で 述べたように,競争の中でそれぞれの観光地が影響力を高める必要があるというのは日本 の観光地も同様であり,日本にも競争力を高めるための戦略を策定し実施することができ るDMOの存在が望まれる.しかし,日本においては,欧米における DMO と同様の役割 を果たせる組織が存在しないことが指摘されている(日本政策投資銀行・日本経済研究所

2013;2014).このような問題から,日本型の新たなDMOを形成すべきという指摘もあり,

日本版DMO設立に向けて「日本版DMO候補法人登録制度」が2015年より開始されてい 行政機関

18%

PPP(非営利)

PPP(営利) 46%

6%

民間(非営利)

7%

民間(営利)

3%

その他 10%

不明 10%

n=61

る(観光庁 2015a).2017年11月現在では,41法人が日本版DMOとして登録されている が,133法人は候補法人として登録されている(付録 1;付録 2).

以上のように日本においては,多くの組織が,観光庁主導のもとで戦略策定機能を備え たDMOへの登録を目指しているという発展途上の段階にある(観光庁 2017a).したがっ て,欧米のように既に完成されたDMO を対象にした研究を国内で行うことが難しい.国 内でのDMOに関する研究は,既存の理論や海外の事例に基づき,日本版 DMO に必要な 機能や,実現に向けた課題を整理したものが多い.例えば,内田(2015b)は,競争戦略論 を創始した経営学者Michael E. Porterが主張したCSV(Creating Shared Value)(2)の考え方 に基づき,日本版DMO に必要な機能として,観光の「共有価値」を策定し,それを地域 内に広めることを挙げている.これは,共有価値の創出によってステークホルダからの支 持を得ることで他のマーケティング活動を円滑に行うことが可能になるためであるとして いる.加藤(2017)は,海外の事例を踏まえ,DMOの存在について「地域の観光振興のあ り方を行政主導から,民間の知恵,経営センスを活かした観光地域経営へ変革させるとい う,地域振興のあり方そのものを変えるインパクトをもつ存在である.」と期待を寄せる一 方で,観光に直接関わらない住民や事業者との合意形成,マーケティングやマネジメント に必要な能力を持った人材の不足,DMOという組織に対する自治体の理解不足など,DMO が直面すると考えられる課題を整理している.また,高橋(2017)は,欧米の DMOの組 織運営について調査を行い,以下の七つを今後の日本のDMO の組織づくりとその運営に あたって欠かせないマネジメント特性としている.

 意思決定機関の存在感の発揮

 行政との機能分担の有無

 プロパー職員による運営(専門人材の存在)

 DMOによる人事評価

 多様で安定した財源の存在(一般財源以外の収入)

 多様なステークホルダ(行政,観光事業者,住民)との緊張感のある関係

 確かな評価指標

さらに,高橋(2017)は日本における DMO の先進事例として,田辺市熊野ツーリズム ビューロー,南信州観光公社,下呂温泉観光協会を取り上げ,それぞれの設立経緯や現在 までの取り組みについてまとめている.そして,これらの事例の共通点として,マーケッ トに目を向ける,マーケットに働きかけるための分析と実行ができる専門人材を確保する,

持続可能な活動とするために多様な財源を創りだす,という三点を挙げている.最後に,

観光庁(2017a)は日本版DMOを,「「観光地経営」の視点に立った観光地域づくりの舵取 り役として,関係者と協同しながら,明確なコンセプトに基づいた観光地域づくりを実施 するための戦略を策定するとともに,戦略を着実に実施するための調整機能を備えた法人」

としたうえで,以下の三つを日本版DMOが実施すべき基礎的な役割・機能としている.

① 日本版DMO を中心として観光地域づくりを行うことについての多様な関係者の合意 形成

② 各種データ等の継続的な収集・分析,データ等に基づく明確なコンセプトに基づいた 戦略(ブランディング)の策定,KPIの設定・PDCAサイクルの確立

③ 関係者が実施する観光関連事業と戦略の整合性に関する調整・仕組み作り,プロモー ション

今後の観光振興に向けて,それを主導する組織に関する知見を積み上げるには,特定の 先進事例を分析するだけでなく,数多くのDMO を対象とした横断的な調査に基づく研究 が必要であると考えられる.しかし,現在は2020年までに以上のような機能を備えた世界 基準のDMOを100形成することを目標にしている状況であり,国内のDMOを対象とし た横断的な調査に基づく研究を行うことは難しい.そこで本研究では,日本の各地に存在 する観光協会に着目する.本来,日本の観光協会とDMOは各組織の果たす役割から,大 きく異なる組織であるとされている(加藤 2017).しかし,日本版 DMO 候補法人の一覧

(付録 1)をみると,半数以上が観光協会と名前のつく組織または観光協会に類似した名 称の組織(観光物産協会,観光コンベンション協会,観光まちづくり協会など)である.

つまり,日本において今後多くのDMO を形成するうえで,既存の観光協会がDMO へと 変化することは確実であり,日本の観光協会について分析することで日本版DMOの形成 の一助となる知見が得られると考えられる.したがって本研究では,日本の観光協会を対 象とした横断的な調査と分析を行う(3章にて後述).

なお,観光協会は業務の対象となる範囲ごとに,①全国組織,②複数の都道府県にまた がる組織,③都道府県単位の組織,④複数の市町村にまたがる組織,⑤市町村単位の組織 などに分類される(吉澤 2009).これに対しDMO はマーケティング・マネジメントを行 うエリアごとに①広域連携DMO,②地域連携DMO,③地域DMOの三つに分けられてい る.広域連携DMOは複数の都道府県に跨がる地方ブロックレベルの区域を対象とし,地 域連携DMOは複数の地方公共団体に跨がる区域を,地域DMO は原則として,基礎自治 体である単独市町村の区域を対象としたマーケティングやマネジメント等を行う組織とさ れている(観光庁 2016b).観光庁(2017a)は各DMO の役割の参考資料として UNWTO

(2007)を挙げており,UNWTO(2007)はエリアごとのDMOの役割を表 2-4のようにま とめている.この表を見ると,イベントのマネジメントなど,地域DMOに該当するLocal DMOのみの役割が存在し,全体としてもLocal DMOの果たすべき役割が最も多い.これ

はLocal DMOが,実際に観光者や,観光者に対して商品・サービスを提供する関連事業者

と密接に関わり,観光地内部のことを最もよく知る組織であることに起因すると考えられ る.したがって,本研究では日本の各地における観光振興の中心として,地域DMOと対 応する組織である市町村単位の観光協会(以下,市町村観光協会)を研究対象とする.

表 2-4 各DMOの代表的な役割と責任

(UNWTO 2007をもとに筆者作成)

National Provincial/

regional Local Destination promotion, including branding and

image ○ ○

Campaigns to drive business, particularly to SMMEs ○ ○ ○

Unbiased information services ○ ○ ○

Operation/facilitation of bookings ○

Destination coordination and management ○

Visitor information and reservations ○

Training and education ○ ○

Business advice ○ ○

Product “start-ups” ○ ○

Events development and management ○

Attractions development and management ○

Strategy, research and development ○ ○ ○

ドキュメント内 Twitter データを用いた観光対象に対する (ページ 38-43)