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デスティネーション・マーケティングにおけるソーシャルメディアデ

ドキュメント内 Twitter データを用いた観光対象に対する (ページ 54-58)

第 2 章 先行研究

2.3. 観光情報としてのソーシャルメディアデータ

2.3.3. デスティネーション・マーケティングにおけるソーシャルメディアデ

佐野(2017)は,ソーシャルメディアを企業の事業活動に活用しようとする研究を,観 光学分野の主要ジャーナル(4)をもとに整理した結果,そのような研究は,近年注目され始 め,2012 年以降毎年増加し,特に2013 年から急増傾向が見られるとしている.したがっ て,ソーシャルメディアデータのマーケティングへの活用は,学術的にも注目されている 領域であると考えられる.ただし佐野(2017)においては,観光関連企業のマーケティン グにおけるソーシャルメディアデータの活用についてのみ論じられており,デスティネー ション・マーケティングに関しては論じられていない.以下では,デスティネーション・

マーケティングに向けてソーシャルメディアデータを分析した研究のレビューを行い,そ の動向を把握する.また,Leung et al.(2013)は,観光・ホスピタリティとソーシャルメデ ィアに関する研究には,消費者の視点からの三つ(観光前,観光中,観光後)の研究領域 と,サプライヤの視点からの五つ(プロモーション,流通,コミュニケーション,管理,

リサーチ)の研究が存在するとし,過去の論文を分類している.以下では,ソーシャルメ ディアを情報源としたリサーチに関する先行研究のレビューを行う.ただし,Leung et al.

(2013)では各分類における論文には重複が見られることから,これらは明確に区分され るものではなく,複数の領域にまたがる研究が存在することを前提とする.

Leung et al.(2013)は,ソーシャルメディア上のUCGは,市場調査や社内外の環境分析

の新しい情報源として注目されているとしている.Marine-Roig & Clavé(2015)は観光客 によってインターネット上に生成された UGC をコンテンツ分析することで,バルセロナ に対する観光者のイメージや誘因を明らかにした.一方で,バルセロナは「バルセロナ,

スマートシティ('Barcelona, smart city')」というコンセプトを複数のメディアを通じて発信 しているにも関わらず,ソーシャルメディア上では観光者はこれについて一切言及してい ないという課題も明らかにした.Hawelka et al.(2014)は世界中の約10億件に及ぶ位置情 報付きツイートを分析することで,海外旅行者の移動パターンや国ごとの目的地の多様性 などを明らかにした.また,国間での出入国者のバランスを明らかにし,他の著者によっ て提供されたグローバル観光統計とモビリティモデルを使用した結果と比較したところ,

Twitterによる国際的な移動パターンの理解が有用であると主張している.Stepchenkova &

Zhan(2013)はDMOがプロモーションのために投稿した写真と観光者がソーシャルメデ ィアに投稿した写真の違いを分析することで,DMO と観光者のデスティネーションの認 識の違いを探った.その結果,両者に明らかな違いが確認され,DMOが発信している写真 の撮影場所に観光者が行くことが困難であることが影響していると考察している.Jabreel

et al.(2017)は,ヨーロッパの10の観光都市を対象にそれぞれ6,000ツイートを収集し,

ツイート内で使用される形容詞から各観光地にどのような感情が関連付けられているかを 分析した結果,ツイートによって関連付けられる感情に観光地間の差はなかったと報告し ている.デスティネーション・マーケティングにおけるリサーチ研究において,最も多面 的な試みを行ったのはMiah et al.(2017)であると考えられる.Miah et al.(2017)は,ソ ーシャルメディアデータを意思決定の支援のために分析する方法が,特に観光分野で発展 していないことを指摘し,新たなフレームワークとしてFlickrデータのテキスト分析,位 置情報分析,視覚的コンテンツ分析,時系列データモデリングの四つを提案した.これら の分析により,観光者の関心を示す場所や対象,またはその場所を代表する写真を抽出し,

観光需要予測モデルの構築にも成功している.Kurashima et al.(2013)は,Flickr(5)に投稿 された写真の位置情報から観光者の行動を分析し,観光者の行動モデルに基づいた,ユー ザの嗜好や空き時間,交通手段を考慮した旅程推薦を可能にした.このように,ソーシャ ルメディアデータのリサーチによって得られた結果は,意思決定の支援に留まらず,新た な観光サービスの創出に繋がった.

ユーザの投稿を分析することでデスティネーション・マーケティングを支援する様々な 情報を生み出すことが可能であることが示唆されている一方で,Law et al.(2014)はソー シャルメディアの持つ双方向性が戦略に影響を与えるとしている.双方向性とはつまり,

DMOが発信した情報は一方的なものではなく,その情報に対する閲覧者の返信,共有,拡 散といったリアクションがあるということであり,このデータを分析することでもデステ ィネーション・マーケティングを助ける示唆が得られると考えられる.Mariani et al.(2016)

は,DMOのFacebookアカウントの投稿に対するエンゲージメントに影響を与える要因を,

投稿の内容,投稿の長さ,投稿時間などの観点から分析し,エンゲージメントを増加させ るための示唆を得ている.また,DMO によって発信された情報ではないが,Cheng &

Edwards(2015)は北京大学によって開発されたWeiboの分析ツールを使用し,観光関連ニ

ュースに対するWeiboユーザの反応をユーザの性別や投稿地域別,投稿の時系列などから 分析し可視化した.これらの研究のように,日常的なユーザの投稿を分析するだけでなく,

特定の情報に対するリアクションに調査対象を絞り込むことで,因果的リサーチに近い分 析も可能となるだろう.

世界中でDMOやデスティネーション・マーケティングに関する研究が行われる一方で,

日本ではデスティネーション・マーケティングという概念自体が新しく,観光振興に向け てソーシャルメディアデータを分析したという研究は少ない.その中でもいくつかの研究

(徳久ら 2011;宮野 2017)が行われているが,現状としては,この分野における研究は 企業等で積極的に行われている.例えば,東京海上日動火災保険株式会社(2017)は,Twitter の英語投稿や Weibo の中国語投稿をもとに外国人の日本の観光に関する話題を分析した.

この分析では,日本の地域ごと,あるいは観光者の国籍別に,月ごとの投稿件数の推移,

嗜好,注目スポットなどをまとめている.ナイトレイ・RJCリサーチ(2017)は,訪日外 国人観光者が,TwitterやWeiboで日本国内滞在中に発信した投稿を分析し,投稿の発信地 点となった全国の観光スポットを,独自の指標により順位付けした.その結果,最も人気 のスポットとして,USJ(Universal Studios Japan)と東京ディズニーランドが抽出され,両 施設ともオールシーズン型であることや,思わずSNSに投稿したくなるような多様な感動 を提供していることが年間総量を押し上げたと考察している.最後に観光庁(2016a)は,

TwitterやWeibo,Plurk等を対象に,特定のキーワードを含む投稿を収集し,国籍別の投稿

数や,言及された数の多い地域や観光スポット,食べ物などを明らかにした.

ここまで述べてきた研究で示された多くの方法論は DMOがデスティネーション・マー ケティングにおける意思決定を行う一助になるだろう.しかしながら,これらの方法論を デスティネーション・マーケティングに活用しようとした場合いくつかの課題がある.

まず使用するメディアに関する課題である.例えば,先行研究(Kurashima et al. 2013;

Miah et al. 2017)では,Flickrのデータを用いた分析が行われていたが,Flickrは写真共有

が前提のメディアであり,投稿の多くに位置情報が付加され,投稿に対して他のユーザが タグを付与できる等の特性がある.上記の研究で示された方法論はこの特性に依存してい るため,世界的にユーザの多いFacebook,Instagram,Twitterなどへの応用は難しい.特に,

日本国内ではFlickrのユーザは少数であるため,分析対象は訪日外国人旅行者向けに限定 されると考えられる.また,メディアごとにデータの取得に関する制約も異なり,Facebook は世界で最もユーザの多いメディアである一方,非公開のデータが多く,一般の企業や研

究者がFacebookの投稿データ等を扱うことは難しい(鳥海 2015).このようにメディアご

とに課題がある中で,観光におけるソーシャルメディアに関する既存研究の多くは単一の メディアを対象にしており(Uşaklı et al. 2017),メディアの選定理由についても議論され ていない.

次に情報量とユーザ数に関する制約である.例えば,ブログのように情報量の多いデー タを分析すれば感情やトピックの推定が容易である.しかし,FacebookやTwitterのような メディアと比較すると分析できるユーザ数は少なくなる.また,ユーザ数の多いメディア の中でも写真付きの投稿や位置情報付きの投稿など,情報量の多い投稿を取得しようとし た場合,対象となるユーザは大幅に減少する.このように情報量とユーザ数はトレードオ フの関係にあり(図 2-8),分析の目的に応じてどちらを優先すべきかの議論が必要である と考えられる.

以上のように,ソーシャルメディアデータをデスティネーション・マーケティングに活

ドキュメント内 Twitter データを用いた観光対象に対する (ページ 54-58)