• 検索結果がありません。

日本のデスティネーション・マーケティングの現状

ドキュメント内 Twitter データを用いた観光対象に対する (ページ 34-38)

第 2 章 先行研究

2.1. 観光分野におけるマーケティング

2.1.3. 日本のデスティネーション・マーケティングの現状

にデスティネーション・マーケティングの基本的理解が根付いていないと指摘している.

さらに,三ツ木(2011)は,日本のデスティネーション・マーケティングはプロモーショ ンだけが積極的に行われているのが現状であると指摘している.また,日本政府観光局

(2013)は,観光誘致事業をあくまでマーケティング・ミックス(Product,Price,Place,

Promotion)の一部でしかないプロモーションから,本来の包括的なマーケティングへ発展

させる必要があると指摘し,観光庁(2016b)は,「従来から PR 活動に取り組んできてい るものの,こうした活動の基礎となるべきマーケティングは十分に実施されていないこと が窺われる」と述べている.これらの指摘に対し,実際に日本観光振興協会が各市町村の 観光協会に対して行ったアンケート調査(日本観光振興協会 2012)を見ると,主な取り組 みとして挙げられているのはプロモーションや来訪者への対応である(図 2-2).しかし一 方で,観光イベントや広域観光連携など,マーケティング・ミックスの中でプロモーショ ン以外に該当すると考えられる活動も行われていることがうかがえる.ただし,これらの 活動に関する意思決定の基盤となるべき調査を行っている組織は少なく,データに基づい た活動は行えていないというのが現状であると考えられる.

図 2-2 市町村観光協会が取り組んでいる事業

(日本観光振興協会 2012をもとに筆者作成)

18%

42%

28%

41%

28%

66%

24%

53%

17%

50%

17%

25%

50%

47%

78%

80%

52%

84%

78%

36%

51%

42%

21%

24%

0% 20% 40% 60% 80% 100%

その他 刊行物・資料等の発行 会員の事業等の支援 農商工と連携・特産品開発 住民組織(NPO)との連携 広域観光連携 観光地経営・リーダー養成 接遇スタッフ・ガイド研修等 観光関係者表彰 教育旅行誘致 MICE誘致 フィルムコミッション セールス 観光情報媒体作成・配布 セールス 観光情報媒体作成・配布 旅行商品企画・流通促進 観光案内・ランドオペレーター 観光イベント 観光地域づくりの基盤形成 観光施設の管理・運営 観光地美化・修景 政策提言・戦略立案 マーケティング・各種調査

①政策提言・調査

②観光地域づくり

③旅行商品・

来訪者対応

④国内プロモーション等

⑤海外プロモーション等

⑥特定ターゲットの誘致 等の取り組み

⑦人材育成

⑧連携・受入体制 づくり

⑨会員支援

⑩その他 (n=111)

この現状を整理すると,日本のデスティネーション・マーケティングは,観光者のニー ズや関心を考慮しない,観光地側の視点のみで行われるマーケティング 1.0 の段階に留ま っていると考えられる.かつて多くの企業が,競争環境や消費者の変化によって製品志向 から消費者志向へとマーケティング概念を変化させたように,今後日本や日本の各地域が 競争環境の中で戦略的に誘客を行うには,観光者志向のマーケティングを実現する必要が あるだろう.Pike & Page(2014)は,デスティネーション・マーケティングは,ソーシャ ルメディアなど,新しい技術革新の進展を背景としたユビキタスな活動であるとしている.

つまり,従来のマーケティングと同様に,その進展には ICT(特にソーシャルメディア)

の利活用が強く影響すると考えられ,1 章でも述べたように,ソーシャルメディアデータ の収集分析が重要な活動の一つと位置付けられる.また,多岐にわたるマーケティング活 動の中でも,観光庁(2017a)は,マーケティング・リサーチの必要性を指摘している.

マーケティング・リサーチとは,「企業や団体,政府等の意思決定を支援することを目的 として,統計学および社会科学,行動科学,データサイエンス等の理論または手法を用い て,個人または組織に関する情報を体系的に収集し,分析し,解釈すること.」である(日 本マーケティング・リサーチ協会 2017).なお,上記のマーケティング・リサーチの定義 は2017年に改定されたものであり,日本マーケティング・リサーチ協会(2017)はこの改 定の背景にはICTな急速な進展があるとしている.以下に改定に関する声明の一部を掲載 する.

 ソーシャルメディアとスマートフォンの普及により,誰もが大量の情報にアクセスし,かつ発 信できるという状況が日常的になり,企業と生活者の情報格差はかつてないほど縮小して いる.

 IoT,ビッグデータ,人工知能(AI)といった新たなデジタル・テクノロジーが登場し,社会環境

に大きな変化をもたらそうとしている.

 企業のマーケティング課題とリサーチニーズも変化し,リサーチャーが扱うデータも多様化が 進んだ.

 アンケート調査やグループインタビューなど調査対象者との直接的なコミュニケーションによ って収集されたデータに加え,ソーシャルメディアやスマートフォン,各種センサーによって収 集されるさまざまなデータソースが分析対象に加わった.

 現代のリサーチャーにとって,従来のマーケティング・リサーチ理論にのっとったアプローチ だけでなく,ビッグデータを解析しインサイトを抽出するというデータアナリティクスのアプロー

チも不可欠となっている.

以上のようにICTの進展によってマーケティング・リサーチの可能性が広がったことで,

マーケティング・リサーチの方法や対象,明らかにできることなど,その概念自体が変化 している.ここまで「ICT の進展とともにマーケティング概念が変化してきた」と端的に 述べてきたが,その大部分はICTの進展によってマーケティング・リサーチの可能性が広 がったことによりもたらされたものであると考えられる.日本マーケティング・リサーチ 協会(2017)が述べるように,ソーシャルメディアから取得されるデータはマーケティン グ・リサーチの進展に寄与するものであり,このデータを用いることで,日本のデスティ ネーション・マーケティングに必要なマーケティング・リサーチを実践することが可能に なり,観光庁(2017a)の目指す科学的なアプローチによる観光地域づくりの実現が期待で きる.

Kotler et al.(2003)はマーケティング・リサーチを目的ごとに,探索的リサーチ,記述的

リサーチ,因果的リサーチの三つに分類している.探索的リサーチは,一次データを収集 することによって問題点の明確化と仮説の構築を支援するのが目的である.記述的リサー チは,市場の規模と構成を調査するのが目的である.因果的リサーチは,原因と結果に関 する仮説の検証が目的である.通常は探索的リサーチから開始し,続けて記述的リサーチ や因果的リサーチを実施する(Kotler et al. 2003).これらの中でも,大量のデータが手に入 るソーシャルメディアデータは探索的リサーチに活用可能であると考えられる.

ドキュメント内 Twitter データを用いた観光対象に対する (ページ 34-38)