地」として落札されない場合が多いのが実態 である。さらに、処分(売買)には時間を要 するため、利用権のみを移転し農業者に利用 してもらうことも考えられるが、農業者の ネットワークを有していない信用金庫にとっ ては、利用希望者を見付けるのも容易ではな い。新規参入希望者に利用してもらおうに も、誰でも自由に農地を利用できるわけでは ない。農地利用にも制限があり、農業委員会 が許可し、一定の要件を満たす者・企業にし か利用権は認められない(注)23。加えて、信用 金庫が利用料を徴収するためには法定処分に 基づいて差し押さえる必要がある。実態とし ては、利用権の移転も困難である。
そもそも、担保は市場性があってこそ担保 価値があると言える。農地は所有権の取得が 限定されており、また、農業委員会がそれに 関与するなど、売買において自由な市場性を 有しているとは言い難い。信用金庫におい て、農地を担保として検討する場合には、農 業分野の実態を踏まえ、担保としての適性を 充分に見極める必要があろう。
減少傾向にあるなか、スーパーL資金は残高 および新規実行額ともに増加傾向にある。
スーパーL資金は、農協系統において、ま たは、日本政策金融公庫と業務協力契約を締 結している銀行・信用金庫において転貸(注)25 も し く は 代 理 貸 付 も 可 能 で あ り、07年 の スーパーL資金の新規実行の内訳は、公庫直 貸が448億円(44.9%)、農協系統が410億円
(41.2%)、 銀 行・ 信 金 が138億 円 (13.9%)
となっている(注)26。
しかし、そもそも、政策金融の存在意義は 民業の補完にあり、民間金融機関がサポート できない資金を政策金融がサポートするのが 本来の姿である。現在の農業分野においては 民間金融機関の参入が促されているものの、
現時点において民間金融機関が農業を金融面 からサポートできる範囲は未知数であると言 わざるを得ない。多数の参入事例が生まれる ことで、民間金融機関がどこまで農業金融に 取り組むことができるか、その範囲も自ずか ら明確になるであろう。
ただし、今後民間金融機関が参入を図ろう とする段階で、スーパーL資金のような好条 件の公的融資制度が存在し、それを拡大させ ていては、民間金融機関が自らのリスクで農 業金融に向かい合う機会を奪ってしまうこと になりかねない。いわゆる民業圧迫がなされ ている状況にあるとも言えよう。
政策金融改革は停滞状態にあるが、民間部 門の自由かつ自発的な活動を最大限引き出す という基本スタンスに変更はなく、農業金融 においてもその基本スタンスは踏襲されるも のと考える。少なくとも、09年度までの特 別措置とされているスーパーL資金の実質無 利子化については、モラルハザードを引き起 こす可能性もあることから、有利子化するこ とが必要であろう。
(2)農業信用保証保険制度の運用
農業信用保証保険制度は、農業者が必要と する資金の円滑な供給を促すために、農業者 の信用力を補完する制度であり、中小企業信
(注)25 .公庫が資金を金融機関に貸し付け、金融機関が当該資金を申込者(この場合は農業者)に貸し付ける貸出。主に農協系統 が利用
26 .日本政策金融公庫『業務統計年報』より。
図表6 農業制度資金の残高・新規実行額の推移
(単位:億円)
残高 新規実行額
年度末 公庫資金 うちスーパー 公庫資金 うちスーパー
(農業資金) L資金 (農業資金) L資金
01 20,656 3,719 2,028 574
02 19,336 3,914 1,922 633
03 17,897 4,026 1,672 601
04 16,855 4,172 1,493 595
05 15,956 4,351 1,418 646
06 14,994 4,392 1,110 522
07 14,534 4,878 1,498 996
(備考)日本政策金融公庫『業務統計年報』をもとに信金中金総合研究所作成
用保証制度の農業版であると言える。
制度の仕組みは、農協や都道府県等の出資 により設立された農業信用基金協会(以下
「基金協会」と言う。)が、融資機関から貸付 けを受ける農業者等の債務を保証し、この保 証について、独立行政法人農林漁業信用基金 が行う保証保険により補完するものとなって おり、対象融資機関には農協系統のみなら ず、銀行や信用金庫も認められている。農水 省では、農業金融の円滑化に向けて、銀行や 信用金庫に対して農業信用保証保険制度を周 知させるべく、保証内容の変更・充実等に関 する情報提供も積極的に行っている。
しかしながら、農業信用保証保険制度の運 用は各地域の基金協会によって異なっている のが実態である。地域によっては、基金協会 が求める債務保証条件に銀行や信用金庫が対 応できず、農協系統以外の制度利用が行われ ていない地域もある。
具体的には、銀行や信用金庫は基金協会の 出資機関ではないことから、信用金庫等が制 度を利用するに当たり拠出金(注)27を求める ケースがある。拠出金額は基金協会によって 異なっており、融資実行額(債務保証依頼 額)に対して一定割合が求められる場合もあ れば、融資残高(債務保証総額)に対して一 定割合が求められる場合もある。拠出金割合 も基金協会によって異なっており(注)28、拠出 金割合が高いために銀行や信用金庫の制度利 用に至っていないケースもある。
また、基金協会によっては、営農指導の実 施を債務保証条件としている場合がある(注)29。 営農指導とは農業全般にかかる技術・経営指 導のことであり、農協系統が事業として行っ ているものであるが、保険制度上、融資機関 に営農指導の実施は求められていない。しか し、基金協会によっては、債務保証条件とし て融資機関、すなわち信用金庫等に営農指導 の実施を求めているケースもある。
農業信用保証保険制度は農業金融のセーフ ティネットであり、本来は、どの金融機関も 遍く利用できる制度であるが、実態としては 農協系統がもっぱら利用していると言わざる を得ない。今後、信用金庫が農業金融に取り 組むに当たり、保証制度を利用する機会も増 えてくると考えられる。その際、場合によっ ては、過度な負担や条件を求められる可能性 もあろうが、そのことをもって制度の利用を 諦めるのではなく、まず、交渉を行うべきで ある。農水省も基金協会に対して、制度の目 的に沿った適正な運用を求めており、交渉次 第では負担軽減や条件緩和がなされる可能性 もある。地区協会等を通じて業界として交渉 することも有効であろう。
おわりに
信用金庫が農業金融に取り組むに当たって は、本稿で示した農業金融の注意点以外に も、多々課題や障害があると考えられる。
そこで、当研究所では、今後、農業金融の
(注)27 .拠出額は、原則、債務者から元利金(保証料を含む。)が返済された時に返還される。
28 .内閣府規制改革推進室の調査結果より。現時点でヒアリングしたところ、おおむね1.5%〜6%であった。
29 .内閣府規制改革推進室の調査結果より。
〈参考文献〉
㈳中小企業診断協会「農業経営診断・事業計画策定事例集」
内閣府「規制改革推進のための第3次答申および規制改革推進のための3か年計画(再改定)」
農林水産省『食料・農業・農村白書』(2007年版)
円滑化に向けた調査・研究を継続的に実施す る予定としている。これは、信用金庫におけ る農業金融の取組み課題を抽出するだけでな く、改善策を検討することも目的としている。
なお、調査・研究結果については、産業企 業情報として随時レポート化していく予定で ある。