水準を記録
08年度の鉱工業生産は、全国ベースで前 年比12.7%減と07年度(同2.7%増)から大 幅に悪化した。特に、年度下期の落込みは著 し く、08年10〜12月 は 前 期 比11.3% 減、09 年1〜3月は同22.1%減と2四半期連続で2ケタ の減少率を記録した。ただ、大幅な減産実施 で在庫調整が急速に進展したことから、09 年2月を底に生産は回復に転じており、世界 規模の景気刺激策も功を奏して、09年4〜6 月は前期比8.3%増とプラスに転じている。
地域別にみても、総じて08年度下期に生
産 水 準 が 大 幅 に 落 ち 込 ん で お り(図 表2)、
08年度通年では軒並み前年比マイナスとなっ た。特に、東海は16.1%減、東北は13.9%減、
関東は12.8%減、九州は12.0%減と減少率が 大 き い。 一 方、 北 海 道 は7.7% 減、 四 国 は 7.8%減と1ケタのマイナス幅にとどまってお り、自動車や電子部品・デバイスといった輸 出関連産業の集積地で落込みが著しかったこ とが分かる(図表3)。
リーマン・ショック後の落込みが最も大き かったのは、トヨタ自動車・ホンダ、シャー プ・東芝・ソニー、ヤマザキマザック・ジェ イテクト・オークマなどの大手自動車・電 機・工作機械メーカーが集積し、輸出の減少 や企業マインドの悪化の影響が強かった東海 である。東海の生産は、ボトムである09年2 月に前年を46.2%も下回る歴史的な低水準ま で落ち込んだ。2月の前年比の業種別寄与度 をみると、輸送機械が24.1%ポイント、電機 3業種が6.0%ポイント、一般機械が5.8%ポ イ ン ト の マ イ ナ ス 寄 与 と な っ た(図 表6参
(備考)関東は静岡県、近畿は福井県を含み、東海は静岡県を含まない。各経済産業局『鉱工業生産指数』より作成 60
70 80 90 100 110 120
05/1 05/7 06/1 06/7 07/1 07/7 08/1 08/7 09/1
60 70 80 90 100 110 120
(2005年=100) (2005年=100)
近畿 中国 四国 九州 全国 北海道
東北 関東 北陸 東海
05/1 05/7 06/1 06/7 07/1 07/7 08/1 08/7 09/1
図表2 地域別の鉱工業生産指数(季節調整値、四半期平均)
照)。輸送機械は自動車部品・乗用車、電機 3業種は半導体やテレビ向け液晶素子、一般 機械は金属工作機械の不振が目立った。海外 需要の落込みで、日本全体の乗用車(中古を 除く)の輸出台数は09年3月に前年比65.6%
も減少したが、うち東海の寄与度がマイナス 36.8%ポイントにも達しており(図表4)、海 外の乗用車販売の不振が東海を直撃した様子
がうかがえる。ただ、在庫調整の一巡、輸出 の持直し、エコカー減税などの政策効果で、
09年4〜6月は減産緩和の動きが広がり、東 海の生産は前期比8.2%増と6四半期ぶりにプ ラスへ転じた。
また、電子部品・デバイスや自動車関連工 場が集積している九州の減少も顕著だった。
09年2月の生産水準は、前年比40.4%減と東
(備考)1.電機3業種は電気機械、情報通信機械、電子部品・デバイスとした。
2.関東は静岡県、近畿は福井県を含み、東海は静岡県を含まない。
3.各経済産業局『鉱工業生産指数』より作成
九州
(%)
北海道 東北 関東 北陸 東海 近畿 中国 四国 0
10 20 30 40 50 60 70 80 90 100
鉄鋼 非鉄金属 金属製品 一般機械 電機3業種 輸送機械 窯業・土石製品 化学
プラスチック製品 パルプ・紙 食料品・たばこ 繊維
その他
図表3 05年基準の鉱工業生産指数のウエイト
(備考)1.乗用車は中古乗用車を除いてある。港別に地域分類した。
2.北海道、東北、北陸は中古車以外の乗用車の輸出台数が少ないので省略した。
3.財務省『貿易統計』より作成 -70
-60 -50 -40 -30 -20 -10 10 0 20 30
08/1
(%)
九州 中国 近畿 東海 関東 全国
08/4 08/7 08/10 09/1 09/4
図表4 乗用車の輸出台数(前年比・地域別寄与度)
海に次ぐマイナス幅である。そのうち、電機 3業種が13.4%ポイント押し下げており、輸 送機械も10.6%のマイナス寄与となった。電 機3業種は、モス型半導体集積回路(ロジッ ク)やシリコンウエハの落込みが著しく、輸 送機械は、船舶はフル操業状態だったが、輸 出向けの割合が高い自動車が足かせとなっ た。九州のIC(集積回路)生産数量は、08 年10月までは月7億個を超えていたが、08年 11月以降、大幅な減産が順次実施され、09 年2月には月2.2億個と3分の1以下の水準にま で落ち込んだ(図表5)。急速な生産調整に よる在庫の急減や中国の景気刺激策・エコポ イント制度の導入などでIC生産は速いペー スで回復しており、09年6月の生産数量は6 億個に達している。電子部品・デバイスの需 要回復や自動車輸出の持直しから、九州の 09年4〜6月の生産は前期比15.3%増と全地域 で最も高い伸びを記録した。
電子部品・デバイスのウエイトが高い東北 も、生産が一気に落ち込んだが、V字型に回 復している。東北は、デジタルカメラ向けモ ス型半導体集積回路やデジタル製品、工作機 械向け機械工具・半導体製造装置、乗用車や 自動車部品などの落込みが著しかった。しか し、電子部品・デバイスは09年6月時点で09 年2月の約2倍の水準にまで生産が増加して おり、生産調整のテンポが速かった分、回復 も迅速だった。
一方、設備過剰感の高まりから設備投資を 抑制する動きが強まったことから、一般機械 の集積地で生産の落込みが著しく、足元での
回復力も弱い。北陸は、景気の変動に左右さ れにくい医薬品の割合が高く、化学は比較的 底堅かったものの、土木建設用機械・工作機 械などの一般機械、携帯電話の需要減などで 電子部品・デバイス、ビル用アルミサッシな どの金属製品、化学合成繊維織物などの繊維 といった業種の落込みが響いた。また、四国 は、自動車メーカーなどの減産でカーライト 用のLEDや化学原材料、建設工事の低迷で クレーン、広告費の抑制などで塗工紙の生産 が落ち込んだ。関東は、輸送機械は海外向け の乗用車やトラック、一般機械はショベル系 掘削機械・半導体製造装置・FPD製造装置、
電子部品・デバイスではモス型半導体集積回 路・アクティブ型液晶素子などの減少が著し かった。近畿は、景気に敏感な鉄鋼・化学と いった素材型産業やリチウムイオン蓄電池、
エアコンなどの不振で電機3業種が足を引っ 張った。ただ、輸送機械の押下げ度合いが小 さかったことから、相対的に落込みは軽微で あった。足元では、一般機械のウエイトが高 図表5 九州のIC(集積回路)生産数量
(備考)九州経済産業局資料より作成 0
1 2 3 4 5 6 7 8 9
08/1
-70 -60 -50 -40 -30 -20 -10 0 10 20 数量(左目盛)
前年比(右目盛)
(億個) (%)
08/4 08/7 08/10 09/1 09/4
く、設備投資の抑制や建設需要の低迷などの 影響が強いことから、増産ペースは力強さを 欠いている。
中国は、自動車の販売不振でマツダ本社工 場・防府工場や三菱自動車水島製作所などで 減産が実施されたほか、自動車や家電の原材 料に用いられる鉄鋼やエチレンの需要が落ち 込み、JFEスチール西日本製鉄所や三菱化学
水島事業所・旭化成ケミカルズ水島製造所な どで稼働率が引き下げられるなど、素材型産 業の生産も低迷した。電機3業種では、携帯 電話向けの固定コンデンサなどの減少が顕著 だった。足元では、減産緩和が遅れていた鉄 鋼も増産に動いており、今後、生産の拡大に 寄与していくものと見込まれる。
次に、生産の調整圧力がどれほど大きかっ 図表6 地域別の鉱工業生産指数の推移(前年比・業種別寄与度)
-40 -35 -30 -25 -20 -15 -10 -5 0 5 10
08/1 その他 化学 輸送機械 電機3業種 一般機械 鉄鋼 鉱工業 -40
-35 -30 -25 -20 -15 -10 -5 0 5 10
その他 窯業・土石製品 輸送機械 電機3業種 一般機械 鉄鋼 鉱工業
-40 -35 -30 -25 -20 -15 -10 -5 0 5 10
その他 繊維 輸送機械 電機3業種 一般機械 金属製品 鉱工業
-35 -30 -25 -20 -15 -10 -5 0 5 10
その他 化学 輸送機械 電機3業種 一般機械 鉄鋼 鉱工業 -30
-25 -20 -15 -10 -5 0 5 10
その他 パルプ・紙・紙加工品 輸送機械 電機3業種 金属製品 鉄鋼 鉱工業
北海道 東北 関東
東海
北陸 近畿
中国 四国 九州
-50 -40 -30 -20 -10 0 10
その他 プラスチック製品 輸送機械 電機3業種 一般機械 鉄鋼 鉱工業
-40 -35 -30 -25 -20 -15 -10 -5 0 5 10
その他 化学 輸送機械 電機3業種 一般機械 鉄鋼 鉱工業
-30 -25 -20 -15 -10 -5 0 5 10
その他 パルプ・紙・紙加工品 化学 電機3業種 一般機械 金属製品 鉱工業
-45 -40 -35 -30 -25 -20 -15 -10 -5 0 5 10
その他 化学 輸送機械 電機3業種 一般機械 鉄鋼 鉱工業
(%)
(%)
(%)
(%)
(%)
(%)
(%)
(%)
(%)
08/4 08/7 08/10 09/1 09/4 08/1 08/4 08/7 08/10 09/1 09/4
08/1 08/4 08/7 08/10 09/1 09/4
08/1 08/4 08/7 08/10 09/1 09/4 08/1 08/4 08/7 08/10 09/1 09/4
08/1 08/4 08/7 08/10 09/1 09/4
08/1 08/4 08/7 08/10 09/1 09/4 08/1 08/4 08/7 08/10 09/1 09/4
08/1 08/4 08/7 08/10 09/1 09/4
(備考)1.電機3業種は電気機械、情報通信機械、電子部品・デバイスとした。
2.関東は静岡県、近畿は福井県を含み、東海は静岡県を含まない。
3.各経済産業局『鉱工業生産指数』より作成
たのかをみるために、地域別の出荷在庫バラ ンス(出荷の前年比−在庫の前年比)を算出 してみた(図表7)。電子部品・デバイスの 集積地である九州、東北や自動車産業の集積 地である中部は、09年2月に△40%ポイント を超えており、減産圧力が極めて強かったこ とがうかがえる。ただ、足元では、北海道な ど一部地域を除けば、大幅な在庫削減や出荷 の回復を背景に、出荷在庫バランスのマイナ ス幅が急速に縮小している。
08年度の大幅な減産は、輸出の減少によ る と こ ろ が 大 き い。08年 度 の 輸 出 総 額 は、
東海が前年比23.3%減、東北が同21.5%減、
南関東が同17.3%減、九州・沖縄が同13.0%
減、北陸が同12.7%減、近畿が同11.2%減と 軒並み2ケタのマイナスに陥った。自動車や 電子部品・デバイスの生産拠点が多い地域の 輸出が大幅に落ち込んでいることが分かる
(図表8)。特に、09年1〜3月は、ロシアの中 古車輸入関税率引上げの影響を被った北陸の
(備考)関東は静岡県、近畿は福井県を含み、中部はこの両県を含まない。各経済産業局『鉱工業生産指数』より作成 05/1 05/7 06/1 06/7 07/1 07/7 08/1 08/7 09/1 05/1 05/7 06/1 06/7 07/1 07/7 08/1 08/7 09/1
北海道 東北 関東 中部
近畿 中国 四国 九州 全国
(%) (%)
-55 -50 -45 -40 -35 -30 -25 -20 -15 -10 -5 0 5 10 15 20
-55 -50 -45 -40 -35 -30 -25 -20 -15 -10 -5 0 5 10 15 20
図表7 地域別の出荷在庫バランス(出荷の前年比−在庫の前年比)
(備考)1.信金中金総合研究所による季節調整値。港別に地域分類した。
2.財務省『貿易統計』より作成
(2000年=100)
北海道 東北 北関東甲信越 南関東 北陸 東海
近畿 中国 四国 九州沖縄 全国
60 100 140 180 220 260 300
00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 60 100 140 180 220 260 300
00 01 02 03 04 05 06 07 08 09
(2000年=100)
(年)
(年)
図表8 輸出総額の推移(四半期、季節調整値)