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2.担保としての農地の問題点

ドキュメント内 ™…O瘻ムN-帯 (ページ 69-72)

 農地は、不動産であるとともに、農業にお ける経営基盤である。そのため、農協系統の 信用取引においても保全手段として農地を担 保としているとおり、信用金庫の農業金融の 取組みにおいても、農地を担保の対象として 検討することも考えられる。しかし、農地は 非常に特殊な性格を有しており、一般的に示 される農地価格は実態を表したものとはなっ ておらず、権利の移転においても市場性が乏

(注)17 .生乳生産者の約9割は指定団体に属し、生乳生産量の約95%が指定団体を通じて取引されている現状を踏まえれば、アウ トサイダーの生産(供給量)が指定団体の供給量を超えることは不可能と言える。

しいのが実状であり、農地を担保として扱う 場合には慎重な検討が必要である。

(1)農地価格の問題点

 農地相談所のホームページを見ると、08 年の全国の農地の平均売買は、10a当たり田 が144万円、畑が100万円と紹介されており、

この根拠は全国の農業委員会が実施した「田 畑売買価格に関する調査結果」によるものと している。また、農協系統の信用取引におけ る農地の担保設定においても、この平均売買 価格を基準にしていると言われている。実際 に農業経営者に農協系統との信用取引におけ る担保設定の状況を聴取すると、平均売買価 格を基準として評価額を算出していることが うかがえる。

 しかしながら、この平均売買価格と実勢価 格には大きな乖離がある。実際に、農地保有 合理化法人(注)18では「農地の売買において平

均売買価格に基づく農地の売渡し価格と実勢 価格との乖離が深刻な問題となっており、売 渡し希望があっても折り合いが付かない事例 が増加している。」といった事業展開上の課 題を公表している。

 平均売買価格と実勢価格の乖離の理由を聴 取すると、転用期待を挙げる農業者が多い

(図表5)。転用価格が公表されている以上、

農業者において転用期待を持つことは、ある 意味当然であり、それによって農地価格は転 用期待を含んだものとなろう。

 この他、平均売買価格と実勢価格の乖離の 理由に、農協の介在を挙げる農業者もいる。

前述のとおり、農協系統の信用取引において は、平均売買価格を基準として評価額を算出 していることがうかがえる。転用実現性が高 い農地であれば、担保評価額以上の額での処 分も行い得るが、その実現性が乏しければ、

買い手が極度に少ないなか、評価額を大きく

(注)18.農地の売買や賃借などの農地保有の合理化事業を担う営利を目的としない法人(農業公社など)

図表5 農地価格と転用価格

(単位:千円/10a)

90 95 00 05 06 07

比率(A)=1 都市計画区域外

農地価格

農用地区域内(A) 1,873 1,977 1,748 1,553 1,505 1,470 1 農用地区域外 2,369 2,481 2,209 1,951 1,869 1,821 1.2 転用価格 14,771 16,690 16,615 15,856 15,793 15,556 10.6 市街化調整区域内

農地価格

農用地区域内 9,880 10,115 7,990 5,663 5,485 5,119 3.5 農用地区域外 15,452 15,448 11,780 7,722 7,490 7,164 4.9 転用価格 29,669 31,908 28,722 23,151 23,260 22,179 15.1 市街化区域内

農地価格 47,891 51,406 44,683 35,921 34,680 34,411 23.4 転用価格 87,344 90,848 75,403 59,388 59,019 61,137 41.6

(備考)08年農林水産省統計データをもとに信金中金総合研究所作成            

下回る額で処分せざるを得なくなる。その場 合、債権者である農協系統は多額の損失を計 上することとなる。しかし、農業者のコミュ ニティにおいては、非常に情緒的な部分も 残っていることも事実であり、身内である農 協系統であればこそ、経済合理性以外の理由 で平均売買価格による処分を行い売る(担保 処分できる)可能性は否定できない。

 また、収益還元法から捉えても平均売買価 格には疑問が残る。農協が農業者から買い取 る米の価格を見ると、品種や農協によって異 なるものの1俵当たり16,000円から12,000円 となっている(注)19。一方、農水省が公表した 米生産費調査(注)20によると、1俵当たりの米 生産費は全国平均で16,824円となっており、

多くの稲作経営者において収支は赤字となっ ている。現状の平均的な稲作経営において は、平均売買価格である144万円で10aの田 を取得しても、充分な利益を生み出すことは 困難な状況にある。

 一般的な農業者間の農地売買は、農協は介 在せず相対で行われ、農業委員会に対して、

権利移動に関する届出義務はあるものの、売 買価格に関する届出義務はない。そのため、

農地の実勢価格は公表されない。実勢価格 は、平均売買価格に比して相当低いものと なっているのが実態であろう。農地を担保と して検討する場合には、農業者間で取引され

る実勢価格の把握が不可欠である。

(2)権利移動の問題点(注)21

 農地の所有権者は、農地法により農業者お よび農業生産法人に限定されている。そのた め、仮に信用金庫が農地を担保として設定し ても、その処分方法が一般の不動産物件と大 きく異なることとなる。

 信用金庫が担保に設定した農地を処分する 場合、周辺農業者に購入を依頼するなどの任 意処分を行うか、競売による法定処分を行う こととなる。

 しかし、任意処分を行うにも、農業者との ネットワークを有していなければ、農地購入 希望者を見付けることは容易ではない。農業 委員会に依頼し購入希望者を募ることも可能 であろうが、その調整機能には大きな期待は

できない(注)22。また、利用(賃貸)による経

営基盤の拡大がスタンダード化するなかにお いては、農業者にとっても農地を購入すると いうインセンティブは持ちにくい。仮に、農 地の購入希望者に会えたとしても、前述のと おり購入希望価格(農地の実勢価格)は相当 低いことが予想される。

 農業者は作物が育ちにくい農地や買い手が 見つからない農地などに対して「験(げん)

が悪い農地」という言葉をよく使うが、競売 に よ る 法 定 処 分 を 行 う に も、「験 が 悪 い 農

(注)19 .米穀データバンク公表資料等より。

20.06年産調査

21 .農地の権利に関する詳細は、「改正農地法等の概要および今後の課題―農林水産業の活性化に向けて②―」『信金中金月 報』(2009年9月)を参照願いたい。

22 .農業委員会は農地の利用調整機能を担っているが、農地の規模拡大や面的集積は進んでおらず、それが現在の農業経営の 課題となっている。

地」として落札されない場合が多いのが実態 である。さらに、処分(売買)には時間を要 するため、利用権のみを移転し農業者に利用 してもらうことも考えられるが、農業者の ネットワークを有していない信用金庫にとっ ては、利用希望者を見付けるのも容易ではな い。新規参入希望者に利用してもらおうに も、誰でも自由に農地を利用できるわけでは ない。農地利用にも制限があり、農業委員会 が許可し、一定の要件を満たす者・企業にし か利用権は認められない(注)23。加えて、信用 金庫が利用料を徴収するためには法定処分に 基づいて差し押さえる必要がある。実態とし ては、利用権の移転も困難である。

 そもそも、担保は市場性があってこそ担保 価値があると言える。農地は所有権の取得が 限定されており、また、農業委員会がそれに 関与するなど、売買において自由な市場性を 有しているとは言い難い。信用金庫におい て、農地を担保として検討する場合には、農 業分野の実態を踏まえ、担保としての適性を 充分に見極める必要があろう。

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