Ⅰ.湖州市の現況 1.湖州市の概要
(1)地理、人口および気候
湖州市は中国浙江省の北部、上海市から南 西約130kmに位置している。東側は嘉興市、
江蘇省蘇州市、西側は安徽省宣城市、南側は 杭州市と境を接し、北側には太湖が広がって いる。
全市の面積は5,818km2(三重県とほぼ同じ 大きさ)、08年末の戸籍人口は258.5万人で、
うち7割の178万人が農業戸籍者である。市 外からの定住者を合わせた常住人口は281万 人である。
気候は亜熱帯季節風気候で、四季がはっき りしている。年間平均気温は17.4℃、年間降 雨量は1,195ミリである。
(2)行政
湖州市は、浙江省に11都市ある地区級市 の1つである。市内の行政区画は、2つの区
(呉興、南潯)、3つの県(徳清県、長興県、
安吉県)から構成されている(図表2、3)。
(3)経済動向
湖州市の経済は、工業総生産額の順調な増 加、消費の拡大、好調な輸出等に支えられ、
01年から毎年10%を超える成長を、また04 年からは14%を超える成長を続けてきた。
しかしながら、07年から始まった中国政府 による景気過熱抑制策、人民元高誘導政策や 08年後半からの世界的な金融危機の影響に 図表2 湖州市の行政区画の概要(08年末)
面積
(km2) 人口
(万人)
GDP
(億元)
外資実行額
(百万ドル)
名称
区部計 1,567 108 483 367
呉興 860 59 297 295
南潯 706 49 186 72
県部計 4,252 151 556 423
徳清 936 43 190 150
長興 1,430 62 224 171
安吉 1,886 46 142 102
総計 5,818 259 ※1,039 ※790
※市全体の計数とは一致していない。
(備考)湖州統計局HPにもとづき作成
(出所)福井県庁HP
図表1 湖州市の位置
図表3 湖州市の行政区画
湖州市
より、08年には中国全体の成長率が前年度 の13%から9%まで、浙江省の成長率が前年 度の14.5%から10.1%まで低下する中で、湖 州市の成長率も10.6%まで低下した。09年第 1四半期の成長率はさらに低下し前年同期比 5.3%まで低下したものの、上半期は同7.2%
まで回復している。GDPの絶対額では省全 体の4.8%を占め、省内の11の地区級市の中 では8番目の規模である。
GDPを 産 業 分 野 別 に 見 る と、 第1次 産 業 8.0%、第2次産業57.3%(うち工業が51.7%)、 第3次 産 業34.7% と、 第2次 産 業 の 割 合 が 高 い。過去8年間の推移を見ると、第1次産業 の比率が低下する中で、第2次産業の比率が 高まっている(図表4)。
また、浙江省内の他の都市と同様、湖州市 では民営企業が発達している。08年の年間 販売額500万元以上の企業および国有企業の 工業総生産額(以下「工業総生産額」と言 う。)の類型別割合では、民営企業が74%を 占め、外資系企業の18%を大きく上回って いる。
主要産業は、①伝統産業である絹織物を中 心とした紡績、②鋼材を中心とした金属加 工・ 製 品、 ③ 電 動 自 転 車 用 充 電 池、 電 線・
ケーブルを中心とした電気・電子製品で、工
業総生産額の約半分を占める。これらに、④ 木材加工、⑤セメント・建材、⑥機械設備、
⑦化学原料・製品、⑧医薬品、⑨家具を加え た9大 産 業 で 同8割 を 占 め て い る(図 表5)。
湖州市政府は、上記主要産業の高度化と電子 情報、環境・省エネ等のハイテク産業の育成 を進めていく方針である。
地域別では、呉興区は紡績、金属加工、南 潯区は紡績、電気・電子製品、徳清県は化学 原料・製品、紡績、医薬品、長興県は電気・
電子製品、建材、安吉県は家具、木材加工が 主要産業となっている。また、呉興区にはオ フィス街や商業エリア等の都市機能が集中し ており、同区における第3次産業のGDPに占 める割合は、44%と比較的高くなっている。
図表4 GDP成長率・産業別構成比の推移 (単位:億元、%)
年 01 02 03 04 05 06 07 08
GDP 363 397 460 550 644 761 892 1,035
GDP 成長率
浙江省 10.6 12.6 14.7 14.5 12.8 13.9 14.5 10.1 湖州市 10.7 11.6 13.8 14.9 14.4 14.0 14.4 10.6 GDP
構成比
第1次産業 12.9 11.9 11.0 10.6 9.8 8.6 7.8 8.0 第2次産業 54.2 54.3 53.4 54.8 54.8 57.2 57.3 57.3 第3次産業 32.9 33.8 35.6 34.6 35.4 34.2 34.9 34.7
(備考)08年湖州統計年鑑、08年統計公報にもとづき作成
(備考)08年12月湖州統計月報にもとづき作成
図表5 工業総生産額の業種別割合(08年)
紡績 20%
金属加工
・製品 16%
電気・電子製品 木材加工 13%
8%
セメント・建材 7%
機械設備6%
化学原料
・製品4%
医薬品 4%
家具3%
その他 19%
(4)外資直接投資、輸出の動向
湖州市は、85年の経済開放区指定により対 外開放され、92年の湖州経済開発区の設立等 により外資直接投資が本格化した。その後 01年から03年にかけて香港・欧米・台湾等 から紡績、機械設備、電気・電子製品等の製 造 業 の 外 資 直 接 投 資 が 急 増 し た(図 表6)。
その後、新規企業設立許可件数は減少し、契 約 額、 実 行 額 の 増 加 率 は 低 下 し た も の の、
07年まで継続して増加した。
08年は、新規企業設立許可件数が173件と 引き続き減少(前年比82件減)した他、契 約額は18億ドル、実行額は8億ドルで、各々 前年比9%減、5%減といずれも減少に転じ ている。09年上半期の実行額は2.9億ドルで 前年同期比38%減となっている。
08年の新規投資の産業別内訳では、第2次 産業が件数・契約額とも7割を占めている。第 2次産業内での業種内訳では、件数・契約額 とも設備機械の割合が一番高く、他には紡績、
電気・電子製品、化学・医薬品の割合が比較 的高い。直接投資を行った国・地域では、香 港が件数・契約額とも最も多く、日本は台 湾、米国に続き第4位である(図表7、8)。
08年末までの進出済外資系企業は1,546社 で、うち日系企業は130社である。代表的な 日系進出企業としては、アサヒビール、日本 化薬、ブルボン、三菱商事等がある。
輸出額は毎年3割以上増加しており、08年 の輸出額は、前年比33%増の49億ドルに達 している。輸出額の49%が民営企業、37%
が外資系企業によるものである。主要輸出品
(備考)08年湖州統計年鑑、08年統計公報にもとづき作成
図表6 外資直接投資件数・額の推移
0 500 1,000 1,500 2,000 2,500
00 01 02 03 04 05 06 07 08
(百万ドル)
0 50 100 150 200 250 300 350 400
(件数)
(年)
契約額 実行額 設立件数
図表7 外 資 直 接 投 資 の 産 業・ 業 種 別 内 訳
(08年)
産業・業種 新規企業設立件数 契約額(百万ドル)
比率(%) 比率(%)
第1次産業 13 8 82 6
第2次産業 127 73 959 70
設備機械 42 24 394 29
紡績 15 9 46 3
電気・電子 13 7 158 12
化学・医薬品 11 6 106 8
その他 46 27 255 18
第3次産業 33 19 320 24
合計 173 100 ※1,361 100
※新規企業設立投資分のみ(増資分は含んでいない)。
(備考 ) 湖州市対外経済貿易合作局提供データーにもとづき 作成
図表8 国・地域別の投資件数・契約額(08年)
国・地域 新規企業設立件数 契約額(百万ドル)
比率(%) 比率(%)
香港 74 43 892 49
台湾 16 9 113 6
米国 13 8 120 7
日本 13 8 92 5
韓国 9 5 44 2
シンガポール 8 5 66 4
その他 40 22 476 27
合計 173 100 1,803 100
(備考 )湖州市対外経済貿易合作局提供データーにもとづ き作成
は、 紡 績・ ア パ レ ル 製 品(輸 出 額 全 体 の 32%)、 機 械・ 電 気 製 品(同25%)、 輸 出 先 別では21%を占めるアメリカが第1位で、日 本は5%で第2位となっている(図表9)。
しかしながら、09年度上半期には、金融 危機による輸出先各国の需要減退の影響によ り前年同期比23%減と減少に転じている。
(5 ) 蘇 南 地 域(蘇 州 市・ 無 錫 市・ 常 州 市 ) との比較
湖州市と太湖を挟み北岸に位置する江蘇省 南部(蘇南地域)の蘇州市、無錫市、常州市 の3都市を比較すると、いずれも行政的位置 づけでは地域の中核となる地区級市である点 では共通している。
また、各都市とも沿海経済開放区に指定さ れた85年と直近(08年)のGDP、外資直接
投資契約額を比較すると、飛躍的に増大して いる点も共通している。しかしながら、上海 市に一番近い蘇州市が経済規模、一人当たり のGDP額、外資導入額の点で抜きんでてお り、無錫市、常州市と続いている。湖州市は 常州市の約半分の経済的規模となっている
(図表10)。
最近でこそ格差が縮小しているものの、外
(備考)各年12月の湖州市統計月報にもとづき作成
図表9 輸出額の推移
0 2,000 3,000
1,000 4,500 5,000 6,000
その他向け 米国向け 日本向け
05 06 07 08
(百万ドル)
(年)
図表10 蘇州市・無錫市・常州市との主要計数比較(08年)
湖州市 蘇州市 無錫市 常州市
面積(km2) 5,815 8,488 4,788 4,375
戸籍人口(万人) 259 630 464 359
GDP(億元) 1,035 6,701 4,420 2,202
第一次産業 82 109 63 68
第二次産業 593 4,156 2,545 1,298
第三次産業 359 2,437 1,810 836
GDP成長率(%) 10.6 12.5 12.4 12.4
一人あたりGDP(元) 40,034 106,412 95,207 61,394 工業総生産額(億元) 2,139 18,630 10,282 5,200
外資系企業分 277 12,497 N.A. 1,766
外資依存度(%) 18 67 N.A. 34
消費小売総額(億元) 382 1,551 1,391 758
都市住民一人あたり年間可
処分所得(元) 21,604 23,867 23,605 21,592 工業用地法定最低譲渡価格
(各都市最高地点)(元/m2) 252 480 480 480
輸出高(億ドル) 72 1,317 358 132
外資系企業分 49 1,143 155 67
外資依存度(%) 37 87 72 51
直接投資契約額(億ドル) 18 163 51 34
(備考)各市政府のHPにもとづき作成
資直接投資実績で大きく差をつけられていた ことが要因であると思われる(図表11)。こ れは、工業総生産額や輸出高における外資依 存度にも現れている。
外資直接投資額にこれほど大きな差がつい たのは、90年代から00年代初めにかけての 江蘇省と浙江省の外資導入政策の違い(江蘇 省は積極的であったが、浙江省はそれ程積極 的ではなかった)、上海からの高速道路によ るアクセスの整備・発展状況の差に起因する ものであろう。反面、湖州市では民営企業が 盛んなこともあり、都市住民一人当たりの可 処分所得では、他の3都市と比較し遜色ない 水準となっている点に特徴がある。