第 15 回透析医療費実態調査報告
割合も 14. 3% と前年と同じであり,2008 年改定 による時間区分の復活により,短時間透析の増加
に歯止めがかかったと考えられた.
⑥ 投 薬(20)は,2008年
2,292
点→2009年2,762
点→2010年2,887
点→2011年3,113
点と増加傾向 の継続を認めた.CKD-MBD関連の新しい治療薬 および,透析皮膚瘙痒症関連の新しい治療薬の増 加が原因と考えられた.院内処方のレセプト(5,212件)だけでみると,投薬料は
3,284
点とな り,請求合計41,470
点の7.9% に達する.この比
率も昨年の7.4% から増加を認めた.
⑦ 注射(30)に関しては,2010年の
1,467
点から1,494
点へと増加した.そのうちVit D
3製剤は昨 年に続き1,819
点から1,767
点へと継続して減少 していた.Vit D3製剤の使用比率は33.6% から 37.2% へと継続して増加しているものの,レグパ
ラ使用対象症例の増加によるVit D
3製剤の低容 量投与の増加が増えたものと考えられた.4 病院 1,病院 2 と診療所別集計結果の比較
今年も昨年に続き,病院
1(200
床未満),病院 2
(200床以上)
,診療所を区別し,外来レセプトを分析
した(表 3,
表 4).病院 1
は3,395
件,病院2
は1,164
件,診療所は6,011
件であった.① 患者の平均年齢は,病院
1
が63.7
歳,病院2
が64.1
歳,診療所が63.5
歳であった.透析歴は 病 院1
が9.1
年,病 院2
が9.2
年,診 療 所 が9.6
年であり,3群間に有意差は認められなかった.② 請 求 合 計 は,病 院
1
が40,343
点,病 院2
が39,383
点,診療所が39,903
点で,病院2<診療所
<病院
1
で,昨年と同様に3
群間に有意差を認め た.これは院外処方比率が,病院2:61.7%<診
療所:48.8%<病院1:39.1% となっており,投薬
(20)が全体の請求合計に大きく影響を及ぼした と考えられた.実際に院外処方のみでの請求合計 を比較すると,病院
1:38,621
点,病院2:38,237
点,診療所:38,390点となり差が圧縮された.③ 5時間以上透析の比率は,病院
1:13.8%,病
院2:9.5%,診療所:15.5% となっており,病院 2
と比較して,病院1,診療所がより長時間透析
を実施していた.5 男女別集計結果
男女別集計結果を表 5に示す.
① 毎年のレセプト調査と同様,男性
6,957
件,女性
3,613
件と本年も男性が有意に多い.年齢は男性
62.8
歳,女性65.2
歳と女性が高齢であった.毎年のレセプト調査では,月水金のレセプトを集 計しており,夜間透析比率が男性
34.4%,女性 11.7% と男性の夜間透析比率が高いことから,若
い世代の患者が多く集計されていることが原因と 考えられている.② 請求合計は,男性
40,392
点>女性39,206
点で 有意に男性が高いが,夜間加算を除くと,男性39,173
点>女性38,819
点と差は縮まった.③ 透析時間では
5
時間以上透析の比率は,男性16.0%>女性 10.1% と男性が多かった.Ⅴ型ダイ
アライザー使用の比率も男性30.4%>女性 22.5%
と男性が多い傾向にあった.
④ 注射のうち
Vit D
3使用比率は男性36.7%,女性
第15回透析医療費実態調査報告 93
38.2% であり,投薬のうちレグパラ等の使用比率は男
性20.8%,女性 20.7% と CKD-MBD
関連の治療内容 に関しての差は認められなかった.6 年齢別集計結果
今回の調査での年齢分布は,40歳未満
4.0%(420
件),40〜64
歳48.9%(5,166
件),65〜69
歳14.2%
(1,501件)
,70
歳 以 上33.0%(3,483
件)(う ち75
歳 以上20.4%(2,159
件))であった(表 6).以下 40〜
64
歳を成年,65〜69歳を前期高齢者,70歳以上を中 後期高齢者と呼ぶ① 請求合計は成年
40,578
点,前期高齢者39,841
点,中後期高齢者39,039
点と,加齢とともに有 意に低下傾向を認めた.② しかし,夜間加算の算定割合がそれぞれ,41.1
%,17.1%,6.0% と異なっており,夜間加算が 全体の請求点数合計の差に大きく影響を及ぼして いた.夜間加算を除いた請求合計は,成年
39,130
点,前期高齢者39,236
点,中後期高齢者38,832
点と,中後期高齢者の点数が若干低いことに有意 差がまだ残るものの大きな差は認められなくなっ た.③ 透析時間では,5時間以上透析の比率は,成年
18.3%,前期高齢者 12.4%,中後期高齢者 8.2%
と年齢層が高くなるに従い減少傾向にあった.Ⅴ 型ダイアライザー使用の比率も成年
34.3%,前期
高齢者24.5%,中後期高齢者 18.0% と年齢層が
高くなるに従い減少傾向を認めた.④ 注射のうち
Vit D
3使用比率は,成年40.7%,前
期高齢者37.2%,中後期高齢者 29.8% と中後期
高齢者群が他の群と比較して低かった.投薬のう ちレグパラ等の使用比率は,成年24.7%,前期高
齢者18.7%,中後期高齢者 14.6% と,CKD-MBD
関連の高額薬剤の使用に関しても年齢層が高くな るに従い減少傾向を認めた.7 レグパラ,ホスレノール,レミッチ等の 高額薬剤に関して
一昨年の調査から,新たに使用が始まった高額な薬 剤としてレグパラ,ホスレノール,レミッチの集計を 実施している(表 7)
.
① 投薬(20)のある
5,636
件のうちレグパラ使用頻度は
1,179
件(20.9%),ホスレノールは 1,456
件(25.8%),レミッチは 134
件(2.4%)と,そ れぞれ昨年の18.0%,11.1%,1.2% から増加し
ていた.特にホスレノールおよびレミッチの使用 は2
倍以上に増加した.ただ,今回のデータは震 災後に,セベラマーの流通が混乱していた6
月の レセプトデータのため,ホスレノール使用率の急 激な上昇が今後も継続していくかに関しては注視 していく必要があると思われた.② 使用の平均点数は,レグパラ
2,122
点,ホスレ ノール2,083
点,レミッチ5,551
点と,昨年のデ ータ(レグパラ2,231
点,ホスレノール2,087
点,レミッチ
4,964
点)と比較し,レミッチの増加が目立った.
③ 請求合計に対する比率は,レグパラ
0.59%,ホ
スレノール0.72%,レミッチ 0.18% といまだ大
きくはないものの,院内処方症例でのレグパラ等 の使用比率(41.4%)は昨年の25.9% から大幅に
増加しており,透析単価上昇のかなりの部分を占 めている計算となった.今後もこれら高額薬剤の 使用状況の推移に注目していく必要があると考え られた.④ 特に院内処方を実施している施設のみの集計で は,請求合計に占める投薬料は
7.5% となり,そ
のうちレグパラ,ホスレノール,レミッチ3
剤の 占める割合はその35.5% であった.これは透析
患者に処方されている内服薬剤費の3
分の1
以上 がこの3
剤で占められているということであり,医療経済の観点からは高額薬剤の適正使用が今後 重要となっていくと考えられた.
8 おわりに
――
透析医療経済の参考データに関して日本透析医会がレセプト調査を実施し今年で
15
回 目となった(表1) .毎年,この調査結果は厚生労働
省に対して日本透析医会が診療報酬関連で働きかけを 行っていくさいの貴重な資料として活用されている.透析関連の医療費および透析医療機関の経営状況に関 してのデータは,この調査を除けば大規模な調査はあ まり発表されてこなかった.しかしここ数年,いくつ かのデータが出されてきたため,この場をかりて報告 しておこうと思う.
透析患者の入院医療費に関しては,今までまったく 入手できるデータがなかった.しかし
2010
年12
月末,突然,協会健保が人工透析医療費の分析を公表した.
これは
2010
年4
月から8
月までの協会健保の全透析 レセプトを集計分析したもので,入院医療費の平均が月
814,000
円であったこと,血液透析より腹膜透析のほうがすべての年齢層で高額であったこと,等が報告 された(図 1)
.このデータがなぜ突然出されてきた
のかは不明であるが,透析医療費を考えるさいの貴重 な資料となると思われる.厚生労働省では,中医協の中の診療報酬調査専門組 織・医療機関のコスト調査分科会において,DPC病 院の部門別収支(すなわち診療科別収支)を把握する ために「医療機関の部門別収支に関する調査研究」を 継続的に実施している.2009年
7
月29
日に中医協診 療報酬小委員会に報告された平成20
年度の調査報告 では,調査結果の31
ページに再掲として透析部門,健診部門の収支が記載されており,それによると透析 部門は総収支差額が
27% とされていた(
表 8).
時は
2010
年改定の議論で,診療科別の医療費配分 の見直しに関しても言及されつつあった頃であり,日 本透析医会として調査結果を詳細に分析した.その結 果,この調査にはさまざまな問題点があることが判明 したため,当時の保険局医療課長や調査研究を実施し ている分科会長等に,資料 1のような文書を急遽送 付し対応した.結果,翌年の調査結果からは透析部門 としての調査結果は報告されなくなっている.現在も国家財政が厳しい中,部門別の収支に関して は,さまざま議論が行われている.前回の改定前の民 主党の事業仕分けでは,会議を準備する財務省が作成 した資料の中で,診療科間の収支差が問題とされ,整 形外科,眼科,皮膚科がやり玉にあげられた.また,
今年の中医協の議論の中でも,医療経済実態調査の診 療科別の収支結果に関して議論がなされた.現在,厚 生労働省が改定の資料として
2
年に1
回実施している 医療経済実態調査では,診療科別として内科,小児科,精神科,外科,整形外科,産婦人科,眼科,耳鼻科,
皮膚科が集計されている.
○入院医療費
人工透析患者(入院)の人工透析入院医療費諸率(1)
(平成 22 年 4〜8 月の 1ヶ月平均)
患者1人当たりレセプト件数︵件︶
患者1人当たり医療費︵円︶
2,500,000
2,000,000
1,500,000 1,000,000
500,000
0
1.06 1.05 1.04 1.03 1.02 1.01 1.00
〜
29歳 30〜
34歳 35〜
39歳 40〜
44歳 45〜
49歳 50〜
54歳 55〜
59歳 60〜
64歳 65〜
69歳 70歳〜
・人工透析患者(入院)の 1 月当たりの人工透析入院医療費の平均は 81 万 4 千円であり,29 歳以下が高い
・患者 1 人当たりの入院レセプト件数は平均で 1.035 件
患者1人当たり医療費(平均 813,560 円) 患者1人当たり件数(平均 1,035 件)
図 1 人工透析医療費の分析(全国健康保険協会)
はじめて,透析患者の入院医療費の平均値(813,560円)が公表された.
(http://www.kyoukaikenpo.or.jp/resources/content/66365/20101227-184232.pdfより)