伊丹儀友 *1 大平整爾 *2 久木田和丘 *3 戸澤修平 *4 上田峻弘 *5
要介護 3 要介護 4
要介護 2
要介護 3 要介護 4
要介護 5 9%
18%
20%
28%
12%
8% 5%
回答:93 施設,1506 人(32%)
表 1 介護度の区分
介護度 心身の状態の目安
非該当(自立) 日常生活を送るうえで特に問題ない状態.
要支援1 歩行などの基本動作はほぼ自立しているが,
調理や掃除,入浴などにおいて,なんらかの 支援が必要な状態.
要支援2 要支援1の状態に加え,歩行や内服管理など において,なんらかの支援が必要な状態.
要介護1 排泄,食事は自分でほぼ行えるが,立ち上が り,歩行が不安定で,金銭管理など部分的に 介護が必要な状態.
要介護2 起き上がりや立ち上がり,歩行,排泄など部 分的に介護が必要な状態.認知面では理解力 の低下が見られる.
要介護3 起き上がりや移動など,日常的な動作にほぼ 全面的に介護が必要な状態.認知面では周辺 症状が時折見られる.
要介護4 排泄や歩行などできず,介護なしに日常生活 を送ることが困難な状態.認知面では理解力 低下が著しい.
要介護5 生活全般において介護なしでは日常生活を送 ることがほぼ不可能な状態.認知面では意思 の伝達困難.
図 4 65 歳以上の非透析日の生活度 50% 以下
53%
50% 以上 起居 47%
回答:102 施設,3795 人
歳が
25%,65
歳未満が20%,85
歳以上が19% であ
った.さらに入院患者の割合を年齢・性別にみてみる と,65歳未満では男女ともに7% 前後,高齢になる
ほど入院患者の割合は増加し,75〜84歳では男性21.4
%,女性
29.3%,85
歳以上では男性34.8%,女性 53.2
% と女性に入院患者の頻度が高かった(図 5)
.
入院期間では3
カ月以上が53%,1〜3
カ月15%,
1
カ月未満が32% であった.3
カ月以上入院していた 患者643
人の理由は,社会的適応が44%,その他が
37%,脳血管障害 12%,心血管障害 4%,悪性新生物
3% の順であった(
図 6).
下肢切断患者は
117
回答施設の総患者数8,071
人中186
人(2.3%)に認められ,その割合は男性糖尿病患者が
62%,女性糖尿病患者が 27%,男性非糖尿病患
者が
8%,女性非糖尿病患者が 3% であった.糖尿病
患者の頻度は非糖尿病患者に比べ約
9
倍高く,男性の 頻度は女性にくらべ2.3
倍高かった(図 7).
2010
年の1
年間に骨折した患者数は,109回答施設の全患者
7,652
人中の176
人(2.3%)に認められ,65 歳未満が31%,65〜74
歳が28%,75〜84
歳が30%,
85
歳以上が11% であった.骨折患者の割合を年齢・
性別にみてみると,65歳未満では男性
11.9%,女性 19.3%,65〜74
歳では男性8.5%,女性 19.9%,75〜
84
歳では男性9.7%,女性 19.9%,85
歳以上では男性4.0%,女性 6.8% と性別では女性が男性に比べ 1.7
倍 から2
倍頻度が高かった(図 8).
認知症と診断されている透析患者は,113回答施設 の全患者数
7,585
人のうち600
人(7.9%)で,そのう ち治療を受けている人は38% であった.睡眠薬連用
患者は107
回答施設の患者のうちに3,795
人(31.2%)おり,65歳未満が
41%,65〜74
歳が30%,75〜84
歳が
23%,85
歳以上が6% であった.睡眠薬連用患者
割合を年齢・性別にみると,図 9のように,男性
85
歳以上の21.5%,女性 65
歳未満の25.2% を除くと各
年齢・性別ともに30% 前後が連用していた.
1
年間に死亡した患者数は989
人(12.8%)であり,図 5 透析患者数に対する入院患者と性別年齢分布(アンケート時)
男 性 女 性
7.2%
7.2%
65〜74 歳 75〜84
歳 85 歳 65 歳 以上
未満 65〜74
歳 75〜84 歳 85 歳 65 歳 以上
未満 10.8%
21.4%
34.8%
6.7%
6.7%
16.5%
16.5%
29.3%
53.2%
(%)60
40
20
0
回答:91施設,1160人
図 6 3 カ月以上入院している患者の原因疾患 脳血管障害
心血管障害 悪性新生物 その他
37%
社会的 44%
回答:78 施設,643 人 3%
4%
3%
12% 4%
図 7 下肢切断者 非糖尿病
(女性)
糖尿病
(男性)
62%
糖尿病
(女性)
27%
非糖尿病
(男性) 3%3%
8%
回答:117 施設,186/8071 人(2.3%)
北海道における高齢透析患者の実態 129
その年齢分布は
65
歳未満が18%,65〜74
歳が24%,
75〜84
歳が38%,85
歳以上が20% であり,75〜84
歳が一番多い頻度を占めていた.性別と年齢に分けて その比率を検討してみると,男性では65
歳未満6.2%,
65〜74
歳が11.9%,75〜84
歳が20.9%,85
歳以上が41.4%,女性では 65
歳未満3.6%,65〜74
歳が7.8%,
75〜84
歳が21.6%,85
歳以上が34.8% と,男女共加
齢とともに死亡率が高くなっていた(図 10)
.
3 考 案今回の調査で北海道内に
65
歳以上(高齢者)のHD
患者は57% おり,ほぼ全国と同じ割合となって
いた.透析医療は高齢者を対象とした医療に今後重点 が置かれるべきであろう.高齢透析患者のうち在宅療
図 8 2010 年 1~12 月の 1 年間で骨折した患者数と性別年齢分布
男 性 女 性
11.9%
65〜74 歳 75〜84
歳 85 歳 以上 65 歳
未満 65〜74
歳 75〜84 歳 85 歳 65 歳 以上
未満 8.5%
8.5% 9.7%
4.0%
4.0%
19.3%
19.3% 19.9% 19.9%
6.8%
30
20
10
0
(%)
図 9 透析患者数に対する睡眠薬服用患者の性別年齢分布
男 性 女 性
29.7%
65〜74 歳 75〜84
歳 85 歳 65 歳 以上
未満 65〜74
歳 75〜84 歳 85 歳 65 歳 以上
未満 28.5%
28.5% 28.8%28.8%
21.5%
25.2%
30.7%
34.1%
32.2%
40
30
20
10
0
(%)
図 10 透析患者数に対するここ 1 年での死亡性別年齢分布
男 性 女 性
7.2%
6.2%
65〜74 歳 75〜84
歳 85 歳 以上 65 歳
未満 65〜74
歳 75〜84 歳 85 歳 65 歳 以上
未満 11.9%
20.9%
41.4%
3.6% 7.8%7.8%
21.6%
34.8%
(%)50
40 30 20 10 0
回答:110 施設/989 人(12.8%)
養患者は
75% おり(図 2) ,透析患者の 3/4
は外来通 院患者であった.これは,ちょうど部分的な介護が必 要とされる要介護1
と2
と,さらに軽度と考えられる 要支援1
と2
と合計した75%(図 3)と一致し,透析
患者では介護保険では軽度の人が多いと考えられた.これは約
10
年前にBrown
5)が,75〜85歳の透析患者の
55% は日常生活ができていたという観察に近いと
考えられた.しかし,高齢者の非透析日の日中
50%
以上起居していた患者が半分程度しかいなかったこと は(図
4) ,外来通院透析患者が必ずしも自立した日
常生活を過ごしていないことを窺わせた.Cook
ら6)は,65
歳以上で完全に自立していた透析患者はたったの5
% であり,52% は入浴,着衣,歩行,通院などに何 らかの支援や介護を必要としたと報告している.
今回,認知症と診断されている患者は
7.9% と少な
かった.認知機能障害の頻度は診断方法や対象年齢に よって異なるが,欧米の16〜38% に比べ低かった
7).
しかし,Murryら8)は,55歳以上のHD
患者におい て重症認知機能障害を37% に認めたが,4% しか過
去に認知症と診断されていなかったと報告した.認知 症については過少評価している可能性もある.高齢透 析患者が増加した今日,透析医が認知機能評価に使用 すべき方法について感度および有効性について検討さ れるべきである.また,介護保険を受けている患者は
32% と透析患
者の約1/3
しか受けておらず,介護保険を受けなくて よい患者が多いのか,それとも介護保険を知らない患 者が多いのかは不明である.今後,詳細な検討が必要 である.アンケート調査当時,全
HD
患者の14% が入院し
ていたが,PD患者では0.2% しか入院していなかっ
た.これはPD
患者のほうが入院機会は少ないのか,PD
患者のほうがHD
患者より若く,より合併症の少 ない患者に選択されているなどのバイアスがないのか などの検討も必要である.調査時,入院患者の80%
は高齢者で,その頻度は高齢になるほど高くなった
(図
5) .また,3
カ月以上入院していた患者は53% お
り,その理由の44% は社会的な理由であった(図 6) .
入院治療が必要なくなった状態でも退院できない患者 が多いことを窺わせた.北海道では冬期間は雪や寒さ で遠方からの通院が難しくなる患者が,越冬入院とい う形で入院することがある.今回は初夏の時期の調査であり,越冬入院が含まれている割合は少ないと考え られた.原因を明確にはできなかったが,Loらは,
高齢患者の多くが入院をきっかけに弱り(frail)
,自
立性を失うことを観察している9).高齢透析患者は入
院により自立性や自宅で生活する能力が急速に低下し,入院が長期に渡った可能性も考えられる.
脳血管障害が
12% の比率で存在し,その予防とし
ての高血圧対策も重要と考えられた10).また,リハビ
リなどに時間を要し,入院期間が長くなる下肢切断患者は
2.3% に認められ,頻度は糖尿病患者では非糖尿
病患者に比べ約
9
倍高く,男性は女性の2.3
倍高かっ た(図7) .近年,我が国の透析導入患者の約 40% は
糖尿病患者である1).今後,下肢切断透析患者は増加
するとも予想される.フットケアなどによる下肢病変 の早期診断と治療開始による切断回避の試みや,透析 患者への禁煙の勧めおよびその徹底も必要であろう.同様にリハビリなどに時間を要する骨折患者も
2.3
% に認められ,その頻度は女性が男性に比べ
1.7
倍か ら2
倍頻度が高かった(図8) .これは閉経後の骨粗
鬆症の影響が大きいと思われる.今後,透析患者の骨 塩量低下を防ぐ研究なども必要である.睡眠薬連用患者割合を年齢・性別にみると,図
9
の ように,男性85
歳以上の21.5%,女性 65
歳未満の25.2% を除くと各年齢・性別ともに 30% 前後が連用
していた.透析患者における睡眠障害の頻度は報告者 によってばらつきがあるが,30〜70% 以上とされて いる11)
.今回,この 30% は必ずしも高い頻度ではな
いかもしれない.睡眠薬連用が日中傾眠傾向を生じ,ふらつきによる転倒,骨折の原因となっている可能性 もある12)
.
高齢者は若年者より,近親者,友人,配偶者の死亡 や体力の低下など「喪失」体験が多く,うつ状態に陥 りやすいことが知られている13)
.不眠症の原因として
透析不足やうつ状態,睡眠時無呼吸症候群,restlessleg syndrome
なども考えられる.その原因を探り治療 を行い,安易に抗不眠薬を投与しないことも医療者に とって必要であろう.年間死亡率は