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(図 1) .

ドキュメント内 日本透析医会雑誌Vol. 27,No. 1 (ページ 197-200)

下する現象は,小胞体ストレス改善薬(20

n M

salubri-nal)によって URP

活性化を抑制することで改善した

(図

1) .

これらのことから,小胞体ストレスシグナル経路は,

HepG 2

において誘導性

EPO

産生経路の活性化に対

して抑制的に働くことが示された.

3-2 EPO 産生経路(低酸素応答経路)転写因子 HIF に 対する小胞体ストレスの影響

上記の小胞体ストレスによる

EPO

産生低下の機序 として,EPO産生経路の主要転写因子である

HIF

の 転写活性への

URP

経路の抑制的関与が推測される.

よって,UPR活性化状態での

HIF

の核内移行や,HIF 転写活性への変化を検討した.

まず,小胞体ストレス誘導存在下での

HIF

の核内 蓄積量はいずれの

HIF

サブユニット

HIF-1 a , HIF-2 a

においても変化は認められず,CoCl2による両

HIF

サ ブユニットの核内移行の亢進は小胞体ストレスによっ て影響されなかった.それと同様に,UPR活性化は 核内における

HIF

の転写活性(transactivation)に変 化を与えず,具体的に

EPO

以外の

HIF

標的遺伝子,

た と え ば

VEGF

GLUT-1

な ど の

mRNA

の 発 現 は

UPR

活性化条件下でも抑制されることはなかった.

さらに,レポーターアッセイによる

HIF

転写活性の 評価によっても,低酸素や

CoCl

2刺激で亢進する

HIF

転写活性は小胞体ストレス存在下,つまり

UPR

活性 化によって変化しないことが確認された(図 2

以上のことから,UPRの活性化は,HIFの核内移行 や

HIF

自身の転写活性には影響を及ぼさないことや,

小胞体ストレスによる

EPO

転写活性抑制は,HIFの 転写活性抑制によるものでないことが明らかにされた.

このことより,小胞体ストレスによる

EPO

産生能低

図 1 小胞体ストレスによる誘導性 EPO 産生経路の抑制

 EPO産生細胞HepG 2は,CoCl2刺激(100nM,16時間)による低酸素応答経路(HIF 経路)活性化によってEPO mRNA発現が亢進する.しかし,小胞体ストレス誘導剤(4 ng/ml tunicamycin; TUN,50 ng/ml tapsigargin; THG)刺激下では,URP活性化(GRP 78 mRNA発現量にて評価,右図)に伴ってEPO mRNA発現が有意に抑制される.さらに小 胞体ストレスによるEPO産生低下は,小胞体ストレス改善薬(20nM salubrinal; SAL)

によってURP活性化を抑制することで改善した.*:p<0.05 v.s. untreated control group,

#:p<0.05 v.s. CoCl2-treated group,$:p<0.05 v.s. TUN or THG-treated group EPO/actin mRNA GRP 78/actin mRNA 2.0

1.5 1.0 0.5 0

12.0 9.0 6.0 3.0

TUN+SAL 0 小胞体ストレス (−)(−) TUN THG

未処理 CoCl2

TUN+SAL

(−)(−) TUN THG 未処理 CoCl2

下のメカニズムは,少なくとも

UPR

経路による

HIF

への直接的な転写抑制作用ではなく,別の経路にて

EPO

産生経路を抑制していることが示唆された.

3-3 EPO 産生経路の制御に関与する UPR 分子の同定 これまでの成果によって,小胞体ストレスは

HIF

活 性化で誘導される

EPO mRNA

発現亢進を抑制するこ とが明らかにされた.それによって,小胞体ストレス シグナル

UPR

EPO

産生系に作用することが示唆さ れた.そこで,URP経路をつかさどるどの分子がこの 現象に関与しているのかを,URP分子群高発現

HepG 2

における誘導性の

EPO

産生能の変化にて検討した.

URP

経路は,主に

IRE 1,ATF 4,ATF 6

などの転写 因子によって制御されているので,それら分子を高発

現させた

HepG 2

における誘導性

EPO

産生能の変化

を検討した.

その結果,ATF 4を高発現された

HepG 2

でのみ,

低酸素や

CoCl

2で誘導される

EPO mRNA

の発現量が 抑制されることが示された(小胞体ストレス下低酸素 刺激;

51.0+4.3% 抑制,小胞体ストレス下 CoCl

2

43.2+4.1% 抑制,p<0.05 v.s. 小胞体ストレス誘導剤

未処理対照群)

.ちなみに ATF 4

高発現は

HepG 2

の 細胞生存率や

transfection

後の細胞増殖(48時間以 内)には影響を及ぼさなかった(いずれの群において も細胞生存率は

90% 以上,p>0.05) .

よって,小胞体ストレス誘導剤処理によって

EPO

産生経路が抑制される機序には,ストレスシグナル

UPR

経路の転写因子

ATF 4

が関与することが示され た.

3-4 EPO 遺伝子エンハンサー領域への UPR 転写因子 ATF 4 の関与

低酸素や

CoCl

2刺激による

EPO

誘導産生経路への

ATF 4

の関与を詳細に検討するために,まず

ATF 4

高 発現が

HIF

の核内移行や転写活性に影響を及ぼすか 否かを検討した.その結果,ATF 4は

HIF

活性に変 化を及ぼさなかった.具体的に,低酸素や

CoCl

2刺激 による

HIF

の核内蓄積量は

ATF 4

発現量に依存しな いし,EPO以外の

HIF

標的遺伝子

VEGF

GLUT-1

の発現にも影響を及ぼさなかった.これは,小胞体ス トレス誘導剤で刺激をした時に見られる現象と同じで あった.

図 2 小胞体ストレスによる EPO 遺伝子エンハンサー活性の抑制

 7回連結させたHIF結合部位(HRE×7),あるいはEPO遺伝子3末端エンハンサー領 域(Enh)をLuciferase(Luc)遺伝子下流に結合させたレポーターベクター(上段図)

HepG 2transfectし,24時間後にCoCl2や小胞体ストレス刺激を加えた.そのさいの

HRE,およびEPO遺伝子エンハンサー活性の変動をレポーター活性にて検討した.その

結果,HIFの転写活性はCoCl2刺激で亢進し,それは小胞体ストレス条件下,つまり

tu-nicamycin(TUN,4ng/ml)刺激,あるいはUPR転写因子ATF 4高発現によって変化を

認めなかった(左図).しかし興味深いことに,EPO遺伝子エンハンサー活性は小胞体ス トレス条件下で著しく低下した.この過剰小胞体ストレスシグナルによるEPO産生低下 は,ATF 4を介したエンハンサー活性の低下に起因することが示された(右図).*:p<

0.05 v.s. untreated control group,#:p<0.05 v.s. CoCl2-treated group.

3.0

2.0

1.0

2.0 1.5 1.0 0.5 HRE-Luc

HRE×7

Luc Luc

EPO 3 enhancer-Luc Enh

レポーター活性 (変化率)

CoCl2 小胞体ストレス(−) (−) TUN ATF 4

未処理 CoCl2

(−) (−) TUN ATF 4 未処理

小胞体ストレスと慢性腎臓病 195

さらに,HREを用いたレポーターアッセイにおい ても,ATF 4高発現は

HIF

の転写活性を低下させるこ とはなかった(図

2) .しかし興味あることに,誘導

EPO

産生経路に重要な

EPO

遺伝子

3

末端領域に位 置するエンハンサー領域を用いたレポーターアッセイ によって,EPOエンハンサー活性に対する

ATF 4

の 関与を検討したところ,ATF 4高発現は低酸素や

CoCl

2で誘導される

EPO

エンハンサー活性を著明に抑 制することが明らかにされた(図

2) .さらに Transfac

data base

を用いた転写因子結合部位予測解析で,そ

EPO

エンハンサー領域内には

ATF 4

結合部位と思 われるモチーフが確認され,EPOエンハンサーに

ATF 4

が結合する可能性が見いだされた.

一連の成果より,小胞体ストレスによる

EPO

産生 経路の抑制メカニズムとして,ATF 4は直接

HIF

の 活性(核移行や

transactivation)には影響を及ぼさな

いが,EPO遺伝子エンハンサー領域に結合して,そ のエンハンサー活性を低下させ,EPO遺伝子の低酸 素応答性を破綻させる可能性が示唆された.

3-5 ラット,マウスにおける CoCl2による腎臓・肝臓 EPO 産生誘導に対する小胞体ストレスの影響 ラット,あるいはマウスは

CoCl

2(60 mg/kg)皮下 注 射

24

時 間 後 に,腎 臓 お よ び 肝 臓 に お い て

EPO

mRNA

発現亢進,および血清

EPO

レベルが上昇する.

このさい,CoCl2と同時に腎臓や肝臓に形態的,機能 的障害を与えない低濃度の

tunicamycin(0.3 mg/kg)

を腹腔内投与すると,小胞体ストレスシグナルが亢進

(GRP 78 mRNA発 現)す る 一 方 で,両 臓 器 の

EPO mRNA

発現が著しく抑制された(図 3

.同時に,血清 EPO

レベルも

CoCl

2単独投与で認められる血中濃度 上昇が小胞体ストレス存在下では抑制された(CoCl2

単 独 投 与:4,890 pg/ml,CoCl2+tunicamycin同 時 投 与:175 pg/ml,p<0.05)

.このときの腎臓における

小胞体ストレスシグナルの活性化程度を,抗

GRP 78

抗体を用いた免疫組織染色にて検討したところ,腎臓 の

EPO

産生細胞が局在する尿細管間質の細胞におい て有意に亢進していることが確認された.

これらの

in vivo

の成果は

in vitro

の実験結果を裏付 けるもので,おそらく腎臓

EPO

産生細胞において小 胞体ストレス,つまりストレスシグナル

UPR

が亢進 すると,CoCl2応答性の

EPO

産生誘導が著明に低下 すると考えられる.

4 考 察

これまでの我々を含めた国内外の研究から,小胞体 ストレスが腎臓病と深く関わることがわかってきた.

特に糸球体・尿細管障害の表現型,たとえば蛋白尿,

図 3 小胞体ストレスによるラット腎臓,肝臓の EPO 発現量の低下

 ラットにCoCl2(HIF安定化剤,60 mg/kg)を投与すると,腎臓や肝臓でEPO mRNA 発現が亢進する.しかし同時に小胞体ストレス誘導剤tunicamycin(0.3 mg/kg)を投与し,

腎臓や肝臓に機能障害を与えない程度の小胞体ストレスシグナルを惹起させると,UPR 経路の活性化(GRP 78 mRNAの発現亢進)に伴って,両臓器のEPO mRNA発現が著しく 抑制された.*:p<0.05 v.s. untreated control group,#:p<0.05 v.s. CoCl2-treated group.

25 20 15 10

0 5

40

30

20

10

0

mRNA発現変動(actin補正)

小胞体ストレス状態

(TUN 投与)

CoCl2

小胞体ストレス状態

(TUN 投与)

GRP 78 EPO

腎臓 肝臓

ドキュメント内 日本透析医会雑誌Vol. 27,No. 1 (ページ 197-200)