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月 5 日(月曜日) ,各施設は透析液流量節 減,透析時間短縮の制限透析体制で透析療法をスター

ドキュメント内 日本透析医会雑誌Vol. 27,No. 1 (ページ 86-90)

杉田嘉子

明けて 9 月 5 日(月曜日) ,各施設は透析液流量節 減,透析時間短縮の制限透析体制で透析療法をスター

トした.制限程度は各施設により差異があるが,透析 液流量

300〜400 ml/min,

透析時間

2〜3

時間(ECUM で除水は予定通り行う)で施行された.

図 2 平成 23 年台風 12 号経路図         (気象庁資料より)

和歌山県 新宮市 9 月 4 日(日)

午前 9 時

9 月 3 日(土)

午前 9 時

9 月 2 日(金)

午前 9 時

平成23年台風12号豪雨災害における透析医療 83

月曜朝から給水車による給水作業も開始されたが給 水車が

1

台(4 t車)しかなく,給水効率は思うよう に上がらず,貯水量は徐々に減少していった.そのよ うな水供給に不安の出始めた月曜の昼過ぎに,同日夕 方より水道が仮復旧するという情報が入った.仮復旧 の方法は月曜日

18

時から翌火曜日

12

時まで通水し,

火曜

12

時から

18

時まで再度断水させて本復旧を目指 すというものであった.この時点で各施設の月曜日の 透析に必要な水は確保できており,火曜は透析午前

1

サイクルのため夜間の通水時間中に貯水すれば乗り切 れると予想された.しかし実際の仮復旧では,浄水場 に近い新宮市旧市内地域で

18

時から

24

時程度まで弱 い水勢で通水しただけであり,浄水場から遠く高台に ある医療センター周辺はほとんど通水しなかった.結 果として

9

6

日(火曜日)朝の段階で,医療センタ ーの貯水量は

52 t(有効貯水として 22 t)と乏しくな

った.火曜日には災害派遣の陸上自衛隊給水車も給水 活動に参加してくれたのだが,自衛隊給水車の送水口 径と医療センターの受水口径が合わないため,自衛隊 給水車から一旦他の給水車のタンクに水を移してから 医療センターに給水するという非効率な給水方法とな ってしまった.また道路の渋滞や水汲み場の混雑によ り,給水車の

1

往復に必要な時間が

40

分程度から最 大

2

時間程度まで延びてしまい,なかなか貯水量は増 加しなかった.懸命な給水活動が続けられたが,透析 開始後約

3

時間経過した時点で遂に有効貯水が底をつ いてしまった.周辺透析施設は月曜夜間に貯水できた 水と給水車による給水で何とか火曜日の透析を終える ことができた.

2-4 災害拠点病院での透析断念,そして復旧へ

9

7

日(水曜日)以降の水道復旧の目途もなく,

給水活動の増強についても不透明であったため,災害 拠点病院である新宮市立医療センターでの透析療法を 大幅に縮小する決断を行った.安定した外来維持透析 患者

22

人を近隣施設に振り分け,医療センターでの 透析は入院患者中心の

7

人のみとした.月曜・火曜の 給水量と使用量から推定すると,医療センターへの給 水量のうち透析に回っているのは

20% 程度でしかな

いことが推定された.しかし,透析クリニックに水を 回せばそのほぼすべてを透析に用いることができるの である.限られた水資源を有効に透析療法にあてるた

め,本来災害時には周辺の透析患者を受け入れるべき 中核病院の透析患者を周辺施設に分散するという逆転 の行動に出たのである.また新宮地域の給水状況の不 安定性を鑑みて,今後の不測の事態に備えるため,隣 接する和歌山県田辺市医療圏では社会保険紀南病院を 中心に透析患者受け入れ態勢を整え,和歌山県立医科 大学腎臓内科・血液浄化センターからは,新宮市立医 療センターでの勤務経験があり地域事情に通じた医師 が応援として新宮へ派遣された.患者は表

1

に示され る各施設に振り分けて透析を依頼した.

7

日(水曜日)朝,患者の振り分けや移動について は大きな混乱はなかったが,市内

1

施設で夜間の給水 作業が間に合わず,朝の時点で貯水がほぼゼロとなっ てしまった.幸い給水車の緊急手配が間に合い,約

1

時間遅れで透析をスタートさせることができた.水曜 日午後になると海上保安庁の巡視船が水を積載し,医 療センターからほど近い新宮港に入港してくれたおか げで給水効率が一気に改善し,貯水量も増加に転じた.

また自衛隊給水部隊の本格展開や応援自治体の給水車 増加もあり,市民への給水も大幅に改善された.

9

8

日(木曜日)は災害発生後初めて貯水タンク 満水状態で朝を迎えることができ,新宮市立医療セン ターでの透析が可能となった.また給水体制の増強に より綱渡り状態であった各透析施設への給水作業も安 定し,透析医療は徐々に正常化していった.そして木 曜日深夜に浄水場の取水ポンプが復旧し,9月

9

(金曜日)には浄水場に近い地域から徐々に水道が再 開し始めた.最終的に水道の全面再開は

9

12

(月曜)まで待たなければいけなかったが,自衛隊,

海上保安庁,応援自治体,新宮市水道局による給水活 動により,地域内の透析療法は安定して施行すること ができた.

3 今回明らかになった問題点と改善目標

3-1 災害拠点病院新宮市立医療センターの脆弱性 繰り返すようであるが,新宮市立医療センターは

「災害拠点病院」であり,本来災害時には地域を支え る中核となるべき施設であるが,今回の災害では病院 施設本体の被害がほとんどなかったにもかかわらず,

「水」が無いというだけで一時的に病院機能が著しく 制限される事態となった.本項ではなぜこのような事 態になったのかを考察したい.

一つ目の原因として新宮市立医療センターの地理的 要因がある.そもそも新宮市のある和歌山県において 想定される大災害とは「東南海・南海地震」であり,

地震の揺れと津波の脅威を退ける目的を持って病院整 備が進められている.そのため,老朽化した公的病院 は建て直しにあたり海から離れた高台へ移設された.

しかし高台への移設は津波を避けるためには必須であ るが,給水圧不足で断水する危険性が高まり,自家水 源としての井戸を掘るにあたっても掘削深度の増大に よる費用の高騰が予想され,水利としては弱点となる のである.実際,水道復旧にあたり最後まで通水しな かったのは,高台にある新宮市立医療センター周辺地 域であった.

二つ目の原因としては節水態勢の不備がある.新宮 市のある紀伊半島南部は日本有数の降水量を誇る地域 であるため,水不足で困窮した経験がほとんどない.

そのためか,病院としても水不足時に院内のどこから 水使用を制限するかなどの取り決めができていなかっ た.また職員の節水意識についても不十分であった可 能性が否定できない.今後の改善目標としては井戸の 掘削(前述した標高の問題で湧出するかどうかは不明 であるが)

,自衛隊給水車からの給水をスムーズに行

うための口径調節アダプターの設置,院内節水体制の 強化があげられる.貯水タンクの増設も検討したいが 免震構造の建物本体の中には余剰設置スペースがない 状態である.

3-2 透析施設給水作業現場での問題点

新宮市立医療センターにおける自衛隊給水車との口 径不一致については前述したとおりであるが,近隣透 析施設への給水作業において発生した問題について本 項で述べたい.

断水発生後に市役所を直接訪問した時点で,市水道 局としても新宮市立医療センター以外の透析施設への 給水の必要性はすでに認識していてくれたが,実際に 何時にどれだけの給水が必要かという情報が不足して いた.また水道局がポンプの復旧作業や市民への給水 作業で忙殺されている状況で,各施設から個々に給水 要請があると混乱が予想されるため,透析施設への給 水に関しては新宮市立医療センターで要請を取りまと め,水道局へ依頼する形をとった.しかし,市民への 給水業務もあるためなかなか要請通りには給水作業が

進まなかった.また施設によっては給水車の停車位置 からタンクまでの距離が遠く,またタンク形状も縦型 であったために給水作業が難航した.透析施設は実際 の給水作業を想定して,給水車の停車位置,ホースを 通すルート,給水口径,(タンク上部から直接注水す る場合は)タンク形状の確認をすることが必要である と思われる.また可能であれば貯水タンクの増設は検 討するべきである.さらに市民への給水活動を圧迫す ることなく,安定して透析施設への給水を行うために,

自治体給水車以外の給水車を手配し,運用することも 必要であると思われる.

4 より大きな災害への備え

想定される東南海・南海地震が発生した場合,当地 域では甚大な被害が予想されるなか,患者としては当 然地域内に留まって透析医療を受けたいという希望が ある.仮に新宮市立医療センターで地域内の患者の透 析をすべて引き受ける場合,透析

30

床に対して地域 の透析患者

270

人であるので,単純計算では

2

日間で

9

クール行う必要がある.これを遂行するには安定し た水,電力,物資の供給とスタッフの集約が不可欠で ある.

「京都市防災水利構想」では災害時の確保水量の目 安として,透析治療を実施していない医療機関で

20 L/

床/日,透析治療を実施している医療機関で

150 L/透

析患者数/日を示している2)

.これにあてはめると,

入院

304

床,地域内集中透析

120〜150

人/日として約

24〜29 t

の確保水量となるが,実際の状況を考えると

これはかなり厳しい基準と言わざるをえず,少なくと もこの倍量程度の水は必要になると思われる.しかし,

水を必要としているのは医療機関だけではなく被災し た地域住民も同じである.筆者としては自家水源の確 保とともに,病院(特に地域の中核病院)への水道設 備自体の耐震性を強化し,災害時でも十分な水道供給 ができる体制を整えることができれば既存の病院機能 の安定化だけでなく,地域住民への給水拠点としての 機能を獲得できるのではないかと考える.

電力についても供給能力と院内の電力需要,また燃 料の備蓄や調達手段について具体的対策を進める必要 がある.

次に物資輸送手段であるが,陸路孤立状態での水,

燃料,物資の輸送方法として有力なのは海路である3)

ドキュメント内 日本透析医会雑誌Vol. 27,No. 1 (ページ 86-90)