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吉田克法

ドキュメント内 日本透析医会雑誌Vol. 27,No. 1 (ページ 182-189)

奈良県立医科大学附属病院泌尿器科透析部

key words:腎移植,アンケート,高齢透析患者,奈良県

The idea for kidney transplantation of elderly dialysis patients ―― Questionnaire investigation in Nara prefecture Unit of dialysis, Department of Urology, Nara Medical University

Katsunori Yoshida

高齢透析患者の腎移植に対する考え 179

名で,全体の

71% を占めていた.この 60

歳以上の透

析患者

2,028

名にアンケート調査の目的を説明し,承

諾が得られた

772

名において,透析施設スタッフより 調査項目を記載したアンケート用紙を配布した.アン ケートの内容は,現在の透析に関する訴えや合併症を 含めた満足度を調査したうえで,腎移植に関する考え や移植を取り巻く家族環境などをアンケート形式で調 査した.

4 結 果

4-1 アンケート回答者の年齢分布および調査内容 アンケートを依頼した

60

歳以上の透析患者

772

名 の年齢は,60〜65歳が

212

名(27.4%)

,66〜70

歳が

187

名(24.2%)

,71〜75

歳 が

201

名(26.0%)

,76〜

80

歳が

108

名(14.0%)

,81

歳以上が

60

名(7.8%)

不明

4

名であった.アンケート内容は表 1のごとくで,

透析療法に関する内容,腎移植に関わる環境,腎移植 に対する情報,希望内容などに関して回答を依頼した.

4-2 透析に関する問題点

透析を受けていて困っているかとの質問には,772 名中

559

名がなんらかの問題点を抱えていた(図 1

そのなかで水分管理の困難さと透析後の倦怠感,ある いは継続透析に関する精神的な負担を持っている患者 がほとんどであった.また,透析で仕事に制限があり,

生活が不安定,将来が不安といった回答もあり,透析 による経済的な面での不安感を持っている患者も多か った.

4-3 腎移植を取りまく家庭環境

透析施設を含め身近に腎移植をした人がいる患者は

126

名おり,なんらかの形で腎移植患者の生活などに ついて身近に感じている患者は多いと判断された( 2

.また,家族と腎移植について話をした経験のある

患者は

269

名おり,さらに家族から生体腎移植を勧め られた人は

85

名いた.このことは,およそ

10% の患

者が家族よりなんらかの形で腎移植を勧められている

表 1 アンケート内容 1. お歳は何歳ですか.

2. 現在の透析を受けていて困っていることはありますか.

3. 身近に腎移植をした人がいますか.

4. 家族と腎移植の話をされたことがありますか.

5. 家族より生体腎移植を勧められたことがありますか.

6. 現在,機会があれば腎移植をしたいと思いますか.

7. 献腎(死体腎)移植希望登録をされていますか.

8. 献腎移植希望登録をして,平均何年で献腎移植ができると思いますか.

9. 移植した腎臓は平均してどれぐらい保つと思いますか.

10. もし,腎移植したら,生活がどのように変わると思いますか.

11. 腎移植を希望しない理由は何ですか.

図 1 透析に関する不安

0 50 100 150 200 250 300 350(名)

不安がある 559 名 ない 213 名

水分・食事管理が大変 半永久的に透析することが精神的な負担 透析後にしんどい 透析中の血圧低下・頭痛・腹痛など 骨病変・貧血・高血圧・心臓病などの合併症 血液透析の時間的制限がある 透析で仕事に制限があり,生活が不安 その他

329 307 298 203

139 115 49

30

回答者数 559 名

(多数回答)

こととなる.

4-4 腎移植希望と献腎登録

生体腎移植あるいは献腎移植に関して,機会があれ ば腎移植を希望している人は

126

名おり,全体の

17

% に認められた(図 3

.しかし,実際に献腎移植登

録をしている人数は

31

名で全体の

4% に過ぎない結

果であった.また,この回答より献腎移植を希望して いないのか,あるいは献腎移植登録の方法が十分周知 されていないのかは今回のアンケート調査では確認す

ることはできなかった.

4-5 献腎移植待機期間と移植腎の生着について

献腎登録した場合の腎移植までの期間について,献 腎登録後何年で腎移植できると思うかとの質問には,

10

年との回答が

187

名(24%)にみられた(図 4

. 2010

年の臓器移植ネットワークの報告では約

14

年で あり,本邦における待機期間は他の国に比較して長い ことは周知されていると判断された.腎移植後の生着 に関しての回答に,約

10

年間は移植腎は保つと回答

図 2 腎移植の環境(n=772)

身近に腎移植をした人がいる

家族と腎移植について話したこと がある

家族から生体腎移植を勧められた ことがある

全体 男性 女性 126

59 67

全体 男性 女性 85

44 40

不明 1

(名)

全体 男性 女性 269

148 120

不明 1 0

20 60 100

40 80 120 140

0 20 40 60 80 100

(名)

(名)

0 50 100 150 200 250 300

図 3 腎移植希望と献腎登録 現在,機会があれば腎移植をしたいと思いますか

献腎(死体腎)移植希望登録をされていますか

思う    126 名 思わない  465 名 わからない 148 名 無回答    33 名

登録している   31 名 登録していない 726 名 無回答      15 名 n=772

n=772 4% 17%

60%

19%

2%4%

94%

高齢透析患者の腎移植に対する考え 181

した人が

231

名(30%)あり,3年,5年しか機能し ないという人を合わせると過半数となった.このこと より,あまり保たないという考えが多いことになる.

4-6 腎移植後の生活について

腎移植後の生活に関しては,透析から解放されるこ とにより時間が自由になるとの回答が多く,ついで水 分制限や食事制限などの解放に関しても日常生活を営 むうえで透析が問題となっている結果であった(

5

.ただしアンケートの回答で,免疫抑制剤などの服

用が現在の透析関連の薬剤よりも複雑になるといった 回答や,移植後の免疫抑制剤による副作用が心配であ るとの意見もあった,このことは,いまだ腎移植に関 する情報が少ないことを意味しているものと考えられ た.

4-7 腎移植を希望しない理由

今回の高齢透析患者に対する調査でもっとも興味の

図 4 腎移植に対する情報 500

100150 200250 300350

無回答

(分からない)

20 年以上 約 15 年

約 10 年 約 5 年

約 1 年

(40%)306

(11%)85

(7%)52

(24%)187

(16%)124

(2%)18

(30%)229

(6%)47

(7%)54

(30%)231

(19%)150

(8%)61

0 50 100 150 200 250

(名)

(名)

無回答

(分からない)

20 年以上 15 年

10 年 5 年

3 年

献腎移植希望登録をして,平均何年で献腎移植ができると思いますか

移植した腎臓は平均してどれぐらい保つと思いますか 772 名全体

772 名全体

図 5 腎移植後の生活について

0 50 100 150 200 250 300 350 400 その他

仕事に就きやすい あまり変わらない 体調がよくなる 免疫抑制剤などの服用で逆に大変 水分・食事がすべて自由となる 時間が自由になる

58 71

115

202 247

271

357

「その他」の主な回答 透析をしなくてすむ    14 名 自由に旅行できる      4 名 全てが不安         2 名 移植後の薬の副作用が心配  2 名 もし,腎移植したら,生活がどのように変わると思いますか?

(名)

回答者数 684 名

(多数回答)

ある質問である「腎移植を希望しない理由」に関して は様々な回答が寄せられた(図 6

.年齢的に移植手

術の適応がないとの回答が

412

名で最も多く,ついで 生体腎移植ならびに献腎移植での提供者がいない,手 術に対する不安感,移植腎の生着率が悪いと考えてい る人が多くを占めていた.また,移植手術にさいして 入院費用,手術費用が高額であるとの理由で希望しな い人も

165

名おり,障害者手帳,障害年金の取り消し などといった誤った情報が認められた.

5 考 察

本邦の一般人口の平均寿命は年々延長し,現在では 世界でも屈指の長寿国となっている.厚生労働省の調 査によると,1945年の平均寿命は女性

54.0

歳,男性

50.6

歳 で あ っ た が,2010年 に は 女 性

86.4

歳,男 性

79.6

歳となり,この約

60

年で男女ともに

30

歳近く平 均寿命が伸びたことになる.透析患者に関しても,導 入患者の高齢化,維持透析患者の高齢化が進み,2010 年末における平均年齢は

67.8

歳と

66.2

歳となってい る.2000年時のそれぞれの年齢と比較すると,維持 透析患者で

5

歳,透析導入患者で

4

歳高齢化したこと になる.最近では若年で透析導入された患者が高齢化 するのみでなく,高齢で透析導入される患者が多く,

このことが透析患者の高齢化に大きな影響を及ぼして いることになり,この傾向は以後も続くものと判断さ れる1)

腎移植においては,2001年の献腎移植レシピエン

ト選定基準の改正により,長期待機者が選択されるこ とが多くなり,さらに長期待機後に早期の

ADL

の改 善を求めて,生体腎移植へ移行する高齢者も増加して いる.2002年の

60

歳以上の高齢腎移植数は生体腎移 植で

634

名中

35

名(5.5%)

,献腎移植で 122

名中

14

名(11.5%)であったが2)

,2010

年では生体腎移植で

1,267

名 中

291

名(22.8%)

,献 腎 移 植 で 208

名 中

42

名(20.2%)と,最近

8

年間で

60

歳以上の高齢腎移 植数は生体腎,献腎ともに著しく増加している3)

高齢者の腎移植患者で生体腎ならびに献腎の占める 割合が増加した原因としては,献腎移植では

2001

年 のレシピエント選択基準の改正により,長期待機透析 患者が選択される傾向になったことが最も大きな誘因 となっていることが推測される.それに加えて,透析 導入年齢の高齢化とともに献腎移植登録年齢も高齢化 したことが献腎移植患者の高齢化に繋がっているもの と判断される.このことは欧米においても同様の傾向 が見られており,50歳以上の献腎移植が増加傾向に あることが報告されている4)

.生体腎移植においては,

定年とともに腎移植を希望する夫婦が多くなっており,

当院でも高齢夫婦間移植が増加していることは実感し ている.さらに,献腎移植登録者において,待機期間 が長いために生体腎移植へ移行する患者も少なからず 存在し,そのために移植年齢が高くなっている可能性 もある.

今回のアンケートより,透析療法に関する身体的,

精神的な訴えは大部分の高齢透析患者が持っているこ

図 6 腎移植を希望しない理由

0 50 100 150 200 250 300 350 400 450 その他

障害者手帳・障害者年金の取り消し 移植手術は入院費用・手術費用が高額 腎移植後の移植腎があまり長い間もたない 手術が怖い.手術が成功しないかもしれない 近親者も含め,提供者がいないため 年齢的に移植手術の適応がないと思う

69 38

165 211

244 249

412

「その他」の主な回答 移植手術はイヤ       15 名 透析がよい         10 名 提供者に迷惑をかけたくない  6 名 他の病気で手術ができない   5 名

(名)

回答者数 669 名

(多数回答)

ドキュメント内 日本透析医会雑誌Vol. 27,No. 1 (ページ 182-189)