指導教官 岩田一彦
主任指導教官 岩 田 一 彦
社会科学的認識形成のための授業設計の理論と展開
一理解説明型授業構成原理に基づく教育内容の抽出論理一教科・領域教育専攻
社:会系コース
小 瀬 和 彦
1.研究の同的と方法 1.研究の目的
社会科学的認識形成を目指した授業設計の理 論とその実際を明らかにする。
(1)社会科授業の典型と,その授業が基づく 社会認識観と問題点を明らかにする。
(2)法則的知識(概念的説明的知識)の獲i得 と人間の行為の意味理解をはかる授業構成 の原理を明らかにする。
(3)法則的知識(概念的説明的知識)の獲得 と人間の行為の意味理解をはかるための教 育内容の抽出論理を明らかにする。
(4)「(2),(3)」の有効性を明らかにする。
(5)「(2),(3)」の成果を組み込んだ社会科 授業モデルを構想する。
2.研究の方法
(1)社会科授業の典型を分析し,その授業が 基づく社会認識観を解明し,その問題点を 明らかにする。
(2)マックス・ウ エーハ 一の「理解的方法(verstehende
Me倣対e)」を援用し,『理解』と『説明』の 原理を分析・統合することにより,理解説 明型授業構成の原理を明らかにする。
(3)法則的知識と動機の理念型を結びつけ,
目的論的連関と因果関係を結合統一するこ とにより,教育内容の抽出論理を明らかに する。
(4)研究成果に基づいて分析フレームワーク を作成し,社会科授業実践と教科書記述を 分析し,その有効性を明らかにする。
(5)「(1)〜(4)」の研究成果をもとに,理 解説明型授業構成原理に基づいた社会科授 業を設計する。
n.論文構成 序 論
第1章 社会科授業の典型と社会認識観
第2章 理解説明型授業構成の原理
第3章 理解説明型授業構成原理における教育 内容抽出の論理
第4章 理解説明型授業構成原理に基づく社会 科授業の分析
第5章 理解説明型授業構成原理に基づいた社 会科授業の設計
結 論
皿.研究の概要
1.社会科授業の典型と社会認識観
社会科授業の典型と,その授業が基づく社会 認識観は,次の3類型に大別できる。
(1)叙述型社会科授業と社会認識観,(2)
説明型社会科授業と社会認識観,(3)理解解釈 型授業と社会認識観の3類型である。
以上,3類型の社会認識観に基づく授業の問 題点を整理し,明らかとなった課題をあげると するならば,次の2点に集約できる。
①説明力のある法鋼的知識の獲得をいかに保証 するか。②行為の意味理解をいかに図るか。
「①,②」の課題は,社会科学的認識形成に おいて,相反するものではなく,相補的・連続 的・重層的な性質をもつものである。この立場 の社会認識観に立ち,社会科学的認識を深める ための授業構成の原理,教育内容の抽出論理に ついて明示する。
2.理解説明型授業構成の原理
(1)理解説明型授業構成における理解の原理 「理解する(社会事:象を主観的な意味連関〈目
的一手段の連関〉からとらえる)」ためには,ど うしたらよいだろうか。第1点目は方法原理と して,行為の「理念型(行為を分析するための発 見的手段,目的一手段の仮説)」を設定する。こ のことにより,現実の多様な行為の経過を解釈 するにあたり,実際の行為がどれくらい逸脱し ているかとらえることができる。第2点目は内
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容原理として,理念型の基本的視点,すなわち 動機の理念型を「思想(グィジョン)」と「利害状 況」の2点から設定する。このことにより,行 為の意味をより深く理解することができる。
(2)理解説明型授業構成における説明の原理 動機の意味と因果的認識をどう結びつけらた
らよいか,その方法原理として,「目的論的連 関の因果関係への組みかえ」を設定する。
この方法原理により,目的論的連関を人間諸 個人の行動にまで押し動かす一つの原因と見る ことができ,客観的な因果性の範疇を用いて社 会事象をとらえることができる。
内容原理として,法則的知識(理論)を設定 する。なぜなら,法則的知識(理論)は,より 間違いの少なく,より説明力のある知識だから
である。
3.理解説明型授業構成原理に基づく教育内容 の抽出論理
(1)単元の設定
①理論と行為の明示,②生活と社会の関係,
③興味・関心のもてるもの,以上が単元として 社会事象を取り上げる基本的条件である。
(2)法則的知識の確定
①法則的知識を確定するためには,理想的に は,社会諸科学の成果,である理論を適用するこ とが重要である。②しかし,単元を網羅する理 論が,未だなかったり,発見できなかった場合 は専門誌を読んで,「〜観」「〜論」を作り上 げるしかない。③それもできない場合,単元の 教科書記述,資料を熟読し,法則的知識を設定
していく。
(3)動機の理念型の確定
動機の理念型は,社会諸科学の成果である理 論(原因一回忌の明示)を,「因果関係の目的 論的連関への組みかえ」により,「目的一手段」
の連関を明らかにして確定する。
(4)教育内容構造の設定(教育内容抽出図の作成)
①基本概念の確定(法則的知識と動機の理念型を 構成する基本概念によって確定する。),②具体的 教育内容の確定(法則的知識と動機の理念型を原 因一結果,目的一手段から,問いの連鎖の往復運動 により,確定する。)
4.理解説明型授業構成原理に基づく社会科 授業の分析
授業構成原理では,その殆どが,工夫,努力 を目指した理解型であったが,目的の追求が不 十分なうちに手段追求に移行してしまうため,
人々の英知である行為の意味が,単なる記述的 な事実に陥ってしまった。また説明型は,質の 高い法則的知識は獲得できるものの社会事象に 内在している人間の行為の意味理解にまでは踏 み込んでいなかった。したがって,法則的知識 の獲得と,人間の社会的行為の意味理解を目指 した授業構成原理の必要性が明らかになった。
教育内容の抽出論理では,内容相互の関係は 並列的な構造分析型が殆どで,そのため知識化 された内容を統合することが困難になることが 明らかになった。内容相互の関係が強い因果性 で結ばれている概念分析型は,知識化された内 容が,相互に結びつき,系統化され,その有効 性が明らかになった。その反面,目的一手段の 目的論的連関が意識されず,原因一結果の因果 的関係においてのみ概念分析された教育内容で は,人間の行為の意味をとらえることができて いなかった。以上のことから,理解説明型授業 構成原理に基づく教育内容抽出論理の必要性が 明らかになった。
5.理解説明型授業構成原理に基づいた社会 科授業の設計
理解説明型授業構成原理に基づき,「産業と 貿易」を授業設計した。法則的知識として,国 際経済学の成果である貿易理論を具体化し,動 機の理念型を位置づけ,教育内容構造化を図っ た。単元構造は,理論・行為の意味の獲得→適 用→矛盾→新たなる理論・行為の意味の獲得→
國→獲得した理論・行為の意味による未来 予測,という獲得した理論・「行為の意味」に おける反証過程となるよう設定した。
】V.今後の課題
今後の課題の第1裏目は,本研究で明らかに なった授業設計理論をもとに,授業を行い,分 析を通して研究仮説を検証していくことであ る。第2点目は,他の単元において授業設計を することで,理論の精緻化を図っていくことで
ある。
主任指導教官
指導教官
岩田一彦
岩田一彦
【資料編】
授:業実践の分析フレームワーク
教科書記述の分析フレームワーク
授業実践の分析フレームワーク……一…pp.155−179.
教科書記述分析フレームワークー一一…一…pp.180−189.
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1.社会科授業実践分析フレームワーク
Nα1
学年:5年
単元名:米づくり授業者:荒木 雄之 出典:歴史教育者協議会編『新たのしくわかる社会科5 Nの授業』あゆみ出版1994
【分析1】
@ i叙述型 五理解型 壷説明型 魚理解説明型
授業構成のポイント
@問題をつかむ段階において,長い期間で10a当たりの米の取れ高の推移を調べる活動を位 uづけている。その事実から,「なぜ取れ高が増やせるようになったのか」という学習問題が ン定され,予想(土をよくした,よい品種を選んだ,肥料を工夫した,消毒が発達した,機
? 取り 黷ス,たくさん植えた等)を提示させている。その後,その予想の検証活動へと W開している。
オたがって,事実の把握,その事実から事象相互の関係を追求する説明型になっている,と
「える。
● ・ o ●曹0
P 皿 斑
抽出論理のポイント構造分析型一
@教育内容の構造図は示されていないが,単元目標 yび,指導計画から,次のようなことが指摘できる。
N家の働く姿」を中核に,水田のもつ機能(国土の ロ全と環境),自給自足の原則,農家の実態を柱に構
@ 教育内容抽出論理の類型では,構造分析型 造的に教育内容が構成されている。したがって,
ノ位置づけることができる。
【分析3】 【分析4】
i利害 五思想(グイジョン) i生産(工程)
・あまった時間は別 フ仕事をして少しで 燻茁? 得たい。
り取り入れ時の喜び,
ィいくてよい質の米を スくさんつくる。
董技術
奄磨i社会,自然)条件