• 検索結果がありません。

社会科学的認識形成のための授業設計の理論と展開 : 理解説明型授業構成原理に基づく教育内容の抽出

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "社会科学的認識形成のための授業設計の理論と展開 : 理解説明型授業構成原理に基づく教育内容の抽出"

Copied!
194
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)研究題目. 社会科学的認識形成のための 授業設計の理論と展開 一理解説明型授業構成原理に基づく教育内容の抽出一一. 兵庫教育大学. 大学院. 教科・領域教育専攻. 学校教育研究科. 社会系コース. M97510J小瀬和彦 1998年12月21日. 指導教官 岩田一彦.

(2) 研 究 題 目. 社会科学的認識形成のための 授業設計の理論と展開 理解説明型授業構成原理に基づく教育内容の抽出一. 兵庫教育大学 大学院 教科・領域教育専攻. M97510J. 学校教育研究科 社会系コース. 小 瀬 和 彦.

(3) 目 次. 序論一…一一一一…一一一一一一一一…一…………一一一一…一一……一一…一一一一1. 第1章 社会科授業の典型と社会認識観…一一…一一…一…一一一一…一一一一・5 第1節 叙述型授業と社会認識観 …一一…一一一……層曽一…一一一…一冒一5. 1.社会科授業の典型例とその問題点 ………一一…一…一一……一5 2.叙述型授業が基づく社会認識観 一一一…一…一…一一一一一一…一一一一一7. 第2節 説明型授業と社会認識観 ……一一一一一…一…一一…一一一。一…8 1.社会科授業の典型例とその問題点 一一……一一一……一一一一一一一一・8. 2.説明型授業が基づく社会認識観 一…………一……一…一……10 第3節 理解解釈型授業と社会認識観 一一一一…一…一一一…一一…一一一一…ll. 1.社会科授業の典型例とその問題点 一一一一……一一一一一…一一……一12 2.理解解釈型授業が基づく社会認識観 …一一一一一一一一…一一一一一一一13. 第H章 理解説明型授業構成の原理 ………一一一……一一……一……一18 第1節 社会認識観 ……一一。…一……一一…一一……一一一一一一…一一一18. 第2節 理解説明型授業構成における「理解」の原理 一…一一…一…一19 1.理解説明型授業構成における「理解』 ……………一一一一一一一…19. 2.理解説明型授業構成における「理解」の原理 一……一……一20 第3節 理解説明型授業構成における「説明」の原理 第4節 理解説明型授業構成の原理 …一一…一一一一……一一一一…一一一25 1.社会的行為の意味理解 ……一………一一…一一一一…薗一一『一’一一層26. 2.社会的行為・社会事象の因果的説明 一一一…一…一一…一一一一一26 3.「理解」から「説明」へ ……一…一一…一…一……一…一一一一一一一27. 第皿章 理解説明型授業構成原理における教育内容の抽出論理 一……一29 第1節 教育内容:の抽出論理 一一一一…一…一一……一一…一一一一一一…一一q’冒一−29. 22.

(4) 1..単元の設定 一…一一………一一一一一一一一一…一一一……一一一一一……29. 2.法則的知識の確定 …一一…一一…. R4. 一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一. 3.行為の意味の抽出・理念型の設定 4。教育内容構造の設定 一……一一一. 一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一・35. R7. 一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一. 第2節 教育内容構造の意味 …一一一……一……一一………一一……41 1.教育内容構造の意義 ……一一一一………一………一一……一一一・41. 2.教育内容構造の意味 …………一一…一一一一一……………一…・42 第IV章 理解説明型授業構成原理に基づく社会科授業分析 一……一一一…45 第1節 研究仮説と分析視点 一一一 1.研究仮説 一一一一一…一……一. 2.分析視点と分析方法 一…一. 幽. 一. 一. 一. 一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一. @45. 騨. 噛. 一. 一. 一一一一一一一一一 宙鼈鼈鼈鼈鼈鼈鼈鼈鼈鼈鼈鼈鼈鼈鼈鼈鼈鼈鼈鼈黶E. S5. 一. 畠. 一. 一. 一一一一一一一一一一雪一一■一一一一一一一一一一一一一一一一一・. S5. 第2飾 分析結果と考察 一一…一一………一一……………一…一一…49 1.授業実践・教科書記述分析結果 …………一…一…一一一一一……49 2.分析結果と考察 …一…一一………一……一……一…一一一一一一4g 第3節 分析のまとめ …………一…一一一一一一一一一一…一………一一一一一60. 第V章 理解説明型授業構成に基づいた社会科授業の設計一…一…一一一74 第1節 授業設計の視点 一一一…一…………一一一一一一一一一…………一一74. 1.学習指導要領における「産業と貿易」. の内容的位置づけ 一………一一…74 2.教育内容について一「産業学習と貿易」 ………一一一…一…一一一一79. 3.研究理論との関連 一一…………一一…一一一……一…………一一一90 第2節 授業設計 一一一一一……一一一一……一………一…一……一……92. 1.知識の構造 …一一…………一一一一………………一一……一一92 2.単元の構造 一……一一一一………一……一一一一一………一…一一…96. 3.理論モデルにおける単元の「問いと答え」の過程一一一………一98. 4.授業モデル ……一……一……一…………一……一一…一一…llO 《授業モデル関連資料》 …………一……一…一……………一一121 第3節 授業モデルの成果. 雪一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一・. @137.

(5) 1.法則的知識と「行為の意味理解」の理念型 一一…一一一……一一一一一一139. 2.単元の構造 …一…一一…一…一…一一………一…一…一一……一一138 3.授業構成 一………一一…一一一一一一一………一一一…一一一一一………一・141. 結. 論. 一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一ψ一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一・146. 1.社会科授業の典型と社会認識観 ……一一………一一一…一一一一…茎46 2。理解説明型授業構成原理 一一一一一…………一一一一…一一……一一一147. 3.理解説明型授業構成原理における教育内容抽出論理 一一………148 4.理解説明型授業構成原理に基づく社会科授業の分析 一一一一一一一一一一一148. 5.理解説明型授業構成原理に基づいた社会科授業の設計 ……一一149 附記……一……一一…一一…………一一一一一一一一…一一……一…一一一一一一一一150. 要旨一…一一一一一一………一…一…一…………一一…一…一一……一一…152 授業実践の分析フレームワーク …一一一………一一一一一………一…一一一一155 教科書記述の分析フレームワーク …一…一一……一一一一……一一一一一一一一一180.

(6) 序 論 ここでは,問題の所在,研究の目的,研究の方法を示し,研究の概要を明ら かにする。. 1.問題の所在 平成元年度学習指導要領をかわきりに,学習指導の面では,いわゆる新学力 観のもと「関心・意欲・態度」,「技能・表現」,「思考・判断」,「知識・理解」. という資質,能力の育成及び教育内容における基礎・基本が重視されている。 最近では,「自ら学ぶ意欲の育成」,「学び方を育てる」,「表現力の育成」,等. の研究と実践がさかんに行われている。この傾向は,新学習指導要領の告示に より,さらに拍車がかかる,と考えられる。. これからの変化の激しい社会をより力強く,より豊かに生きていくためには, どのような「生きて働く力」を形成していかなければならないのであろうか。. この問いは,いつの時代が来ようとも,教育という営みが存在する限り,絶 えず繰り返される問いである。. このことを踏まえ,新学習指導要領で強調されている「意欲」,「学び方」に ついて考察する。. 「意欲」や「学び方」は,それ自身,そのものだけでは存立できないもので ある。必ず「○○への意欲をもつ」,「○○する学び方,○○する技能」という ように,○○,すなわち内容をともなうのである。この内容を軽視すると,単 なる抽象論となり,実態のない言葉だけの形式主義に陥る。 例えば,「自動車:産業」の学習において,ある子どもは,「自動車の部品って. どれくらいあるのか,調べよう!」という意欲をもったとする。またさらに意 欲が高まり,「なぜこんなに速く,自動車がつくれるのか,そのひみつを探ろ う!」という意欲をもったとする。. この一連の意欲の高まりは,いったい何によるのであろうか。このことが解 明されなければ,この「意欲」は生きる力のひとつとして,とらえることはで きない。. この意欲の高まりは,自動車部品を調べ,その多さに驚くとともに,「その 部品を組み合わせ,自動車工場で組立ラインにのせ,1台75秒の速さで,自動車 く. がつくられる」という知識を獲得したが故に,その事実に驚き,生じたのであ. 一1.

(7) る。. すなわち,「意欲」は知識の獲得を媒介として生じ,さらなる知識獲得の欲 求が意欲を喚起させた(高めた)のである。知識の質1が高まれば,当然,閤 い一答えの距離が長くなり,思考が生じ,意欲の持続,関心の高さが必要とな ってくる。. 「学び方」にしても,しかりである。学び方を獲得するためには,内容,す なわち知識の獲得を媒介とする。獲得した知識の質が高ければ,高いほど,よ り幅の広い,質の深い学び方を獲得できる。. 内容と切り離した「学び方」は,質の低い学び方に陥るか,抽象的,形式的 なものに過ぎなくなる。 なぜ「自ら学ぶ意欲」,「学び方,技能」,「表現」を知識から引き離し,「知. 識」を軽視する傾向が生じているのであろうか。 その原因の第1点目は,カテゴリーの間違えである。「関心・意欲・態度」,「思 考・判断」,「表現・技能」,「知識・理解」が学習指導要領では,並置されてい. るため,あたかもそれぞれが,相互に独立して存在するような錯覚に陥ってし まったのである。これらは本来,相互に関連づけられながら機能するものであ る。. 第2点目は,知識の静的側面にしか目を向けていないことが上げられる。知 識は,本来静的なものではなく,動的な性格を持つものである。 ’静的側面とは,知識の質には,階層化があるにもかかわらず,その階層性を 意識せず,記述的知識η(転移のきかない1回性の知識)のみを知識としてと らえたためである。この記述的知識だけに着目すると,現代の情報化の時代に は,際限がなく,確かに,軽視する傾向が起こってきても不思議はない。. しかし,知識とは,本来,成長するものである。1回性の知識の獲得は,さ らに他の事象を説明できる知識の獲得へ,さらに広い範囲の事象を説明できる 知識へ,より間違いの少ない,より説明力の大きい知識へ,人間の知識は成長 しようとするのである。その成長の援助をするのが教育の営みのひとつである。. 本研究は,上記のことを踏まえ,「社会認識形成にとって生きて働く力とは 何か,教師はどう教育内容化し,どう授業構成をしたらよいのか。」,その原理 と,具体化を追求するものである。. 一2一.

(8) 2.研究の目的 本研究の目的は,次の5点である。 社会科学的認識形成を目指した授業設計の理論とその実際を明らかにす る。. (1)社会科授業の典型と,その授業が基づく社会認識観と問題点を明ら かにする。. (2>法則的知識(概念的説明的知識)の獲得と人間の行為の意味理解を はかる授業構成の原理を明らかにする。. (3)法則的知識(概念的説明的知識)の獲得と尋問の行為の意味理解を はかるための教育内容の抽出論理を明らかにする。 (4)「(2),(3)」の有効性を明らかにする。. (5)「(2),(3)」の成果を組み込んだ社会科授業モデルを構想する。. 3.研究仮説 本研究の仮説は,次の通りである。. (1)「理解」と「説明」の原理を統合し,連続的・重層的にとらえる授. 業構成(理解説明型授業構成)にすることにより,社会科学的認識を 深めることができる。 (2)法則的知識と,動機の理念型を結びつけ,目的論的連関と因果的関 係を結合統一することより,社会科学的認識を深める教育内容の抽出 論理が設定ができる。. 4.研究の方法 上記の研究目的を達成するために,以下の方法で研究を進める。. (1)社会科授業の典型を分析し,その授業が基づく社会認識観を解明し,そ の問題点を明らかにする。 (2)マックス・ウ“エーハ㌧の「理解的方法(verstehende Methode)」を援用し,『理解』. 一3一.

(9) と『説明』の原理を分析・統合し,理解説明型授業構成の原理を明らかに する。. (3)法則的知識と動機の理念型を結びつけ,目的論的連関と因果関係を結合 統一することにより,教育内容の抽出論理を明らかにする。 (4)研究成果に基づいて分析フレームワークを作成し,社会科授業実践と教 科書記述を分析し,理論の有効性を明らかにする。. (5)「(1)∼(4)」の研究成果をもとに,理解説明型授業構成原理に基づ いた社会科授業を設計する。. 註. *1知識の質・階層・構造についての詳細は,岩田一彦編著『地理教科書を活 用したわかる授業の創造』明治図書1985.6,pp.11−18.を参照のこと。. *2前掲書,p.ll.. 一4一.

(10) 第1章 社会科授業の典型と社会認識観. 我々,教師は,子どもの社会認識を深め,広げようと,教育内容を抽出・構 成し,教材を作り,授業を行い,またその評価を行っている。この一連の過程 の進行を方向づけているのは何であろうか。それは,意識的にせよ,無意識的 にせよ,教師自身の社会認識観にほかならない。どのような社会認識観を基礎 にするかで,その授業設計の内容及び形態は,自ずと異なってくる。この社会 認識観は,教師の意識の中や現実の授業の中に,暗黙知的に入り込んでおり,大 きな影響を与えている。. したがって,我々はどのような社会認識観をもち,どのような授業設計をした らよいのか,吟味・検討していくことが重要な課題である。. このことを踏まえ,今日,どのような社会認識観に基づく授業が行われ,その 授業の問題点は何か,その所在を明確にすることに,本章の目的がある。. 第1節 叙述型授業と社会認識観 本節では,「叙述型社会科授業の典型例とその問題点」,その背景にある授業 構成原理,すなわち社会認識観を明らかにする。 1.社会科授業の典型例とその序題点. ここでは,藤岡信勝編『1時間の授業技術』(日本書籍:1993.4L)に掲載さ れている敷地博氏の小学校5年『トヨタ自動車』81を取り上げる。 授業目標,授:業構成の概要は,以下の通りである。 〈授業目標〉. ①豊田市がトヨタ自動車の繁栄に押されて,挙母という古い市の名前から 変わって現在の市の名前になった。. ②豊田市における人口急増の原因は,トヨタ自動車工場の進出による。 ③ トヨタ自動車:の年間台数,売上高を身近な数値に置き換えることにより, 会社規模をつかむ。. 一5一.

(11) 〈授業構成の概要〉. ①豊田市がトヨタ自動車の繁栄に押されて,挙母市という古い名前からか わって現在の市の名前になった事実をクイズ形式で,提示している。 はい,ではクイズを出します。ある人が会社を作りました。自分の名前を 会社の名前に付けました。その会社はどんどん大きくなり,有名になってい きました。そして,20年後。その会社の本社のある市も有名になりました。. そこでとうとう一前からあった市の名前をかえて,その会社の名前を新し い市の名前にしてしまいました。市の名前ぶ会社の名前に変わったのです。 この市はどこでしょう。η. ②トヨタ自動車の工場進出により,豊:田市の人口が何人になったかという ことをグラフの提示と教師の発言によってを押さえている。 ③ トヨタ自動車の年間台数と売上高の事実をクイズ形式で提示している。 『このような大きなトヨタ自動車は,日本一の自動車会社です。世界のすべ ての自動車会社の中で,第2位の自動車生産台数を上げています』. では,クイズの第3問。このように大きなト白タ自動車は,昭 和61年の1年間で霜融の自動車を生産したと思いますか。 「1,000万台」 「100万台」. 「30万台」. 「1万台」. 「50万台」. 口ぐちに思い思いの数宇をいっている。. 考える根拠がないので,てきとうである。 では,答えをいいます(板書しながら話す)。. トヨタ自動車が,昭和61年の1年問に生産したすべての自動車の数 は,366万台の自動車を生産していると考えられます。. これを単純に,1年を365日で計算すると,1日に約1万台。. 1日24時間で,1時間に416台。 1分間で約6,9台。. 1秒間で約α1台。 つまり,10秒あたりの1台の自動車を作っている計算:になるんです。. 【図1−1−1:授業の実際の一部】℃. 一6一.

(12) ④③と同じクイズ形式で,トヨタ自動車の1年間の売上高を提示している。 その後,当時の予告をして,終了。. 以上の授業目標,構成の概要から明らかなように,本授業構成でとらえられ る知識は,次の3点になる。「市の名称の変更,工場の進出に伴う人口の変化,. 年間台数と売上高」である。また③の例で明らかなように,クイズ形式の問い を発するわけであるが,その問いに対する予想をもっための資料が提示されて いない。そのため,学習者はあてずっぽうで答えるしかない。. これらの知識は,それぞれ記述幽幽謝で構成され,例えば,「なぜそれだ けの生産が可能になったのか」,その原因等の追求がなされていない。学習者 にとっては,情報を知るだけであり,単なる一回性の知識にすぎないのである。. また一見,クイズという手法により,学習者がよく発言し,能動的に活動し ているように映るが,その内実は,自己の経験と照応させるのでもなく,単に 反射的に答える,という受動的な形態,すなわち一方的な情報伝達に終始して いる。. このような授業構成の背景には,どのような社会認識観があるのか。その背 景について,次に見ていくことにする。. 2.叙述型授業が基づく社会認識観 この叙述型社会科授業構成原理は,意識的にせよ,無意識的にせよ,ロックや. ヒュームら経験主義者5たちの論理が礎になっている。では,まずどのような論 理になっているのか見ていくことにする。. われわれの知識・経験は,生まれながらの状態では無である。したがって,「世 界について何事かを知ったり,言ったり,できるためには,それ以前にわれわれは. まず知覚一感覚的経験をしなければならない。」%すなわち,我々の知識,我々 の経験は,集積された知覚から成り立っている,という論理である。 この論理について,カール・R・ホ.パーは,批判的に次のように論じている。. ギリシアの原始論者たちは,この過程についてのいささか素朴な観念を持ってい た。彼らは,原始がわれわれの知覚する対象から抜け出て,われわれの感覚器官に 進入し,そこで知覚となり,これらの知覚から,時の経過につれて,外的世界につ いてのわれわれの知識が[自分を組み上げていくはめ絵のように]継ぎ合わされて 作り上げられる,と推定した。したがって,この見方によれば,われわれの心(精 神)は知覚や知識を集積する容器一一一種のバケツーに似たものである。(べ一コ ンは知覚を,われわれが辛抱強くせっせと集めなければならない「熟して頃合いの ブドウ」だといい,それを圧縮すれば知識の純粋な美酒が流れ出してくるという)。’7. すなわち,人間の能動的な「観察」という行為より,受動的な「知覚」が重. 一7一.

(13) 要な役割を演じる,という立場である。 この立場に立つと,教育の目的は,「学習者に,いかなる知識を集積させるか」,. ということに関心が向けられ,その方法原理は,「知識の伝達をいかに効率的にお こなうか」,ということになる。噛まさに上記の授業構成である。. この型の問題点として,次のことがあげられる。知識の質は,知覚・感覚的経験 が可能な範囲に限られてしまうため,記述的知識に終始してしまう。したがって,. 獲得される知識の質が記述的知識によって構成されているため,1回性のものと なり,知識の適用(転移)ができない,という点が指摘できる。. 第2節 説明型授業と社会認識観 本節では,ゼ説明型社会科授業の典型碗とその問題点」,その背景にある授業 構成原理,すなわち社会認識観を明らかにする。 1.社会科授業の典型例とその問題点 ここでは,広島市中学校社会科授業研究会『授業研究』(第四号1990.)に掲. 載されている青木典子氏の申学校1年地理的分野『なぜメキシコは借金が多い か』りを取り上げる。. ’授業目標,授業構成は,以下の通りである。 〈授業目標〉. ①一次産品は,工業製品よりやすい。 ② ラテンアメリカ諸国は開発のため資金を借り,多国籍企業を誘致し,工 業生産を伸ばした。. ③ 工業生産が伸びても技術移転がなければ,発展は難しい。. 以上の目標から明らかなように,ラテンアメリカ諸国(メキシコ)の現状と それを説明する理論の習得が目指されている。 〈授業構成の概要〉. ①. 「なぜラテンアメリカの国々は,こんなに借金を抱えるのだろうか」,. という学習課題の設定。. ② 「国が借金を抱えるということは,輸出より輸入の方が多いということ」. を説明し,「ラテンアメリカの国々がなぜ借金が多いかを考えるとき,輸 出と輸入に注目してみよう!」と呼びかけ,学習問題の焦点化をはかる。. 一8一.

(14) ③メキシコはラテンアメリカの典型的な借金国であり,日本は世界一の債 務国であると説明し,「メキシコは原料を輸出して,工業製品を輸入して いる。日本は工業製品を輸出して原料を輸入している。」という事実をと らえさせる。. ④「工業製品を輸出する方が原料を輸出するより,もうかる」ということ をおさえ,教師は,「ラテンアメリカの国々にお金がないのは,原料を輸 出して製品を輸入しているからと考えられる」と一般化し,ここまでの学 習をまとめる。. ⑤「メキシコ政府は借金したお金を何に使ったのだろう」と問いかけ,予 想させる。資料から,「メキシコ政府は自動車工業を起こした」事実をと らえさせている。そして「なぜ地下資源を掘らずに工場を建てたのか」と 問いかけ,「資源より工業製品を輸出したほうがもうかるから」という答 えを引き出し,事実を確認させている。. ⑥ 事実を確認すると,「自動車生産が伸びれば伸びるほど,借金は減って いるはずなのに,逆に借金は増えている。」という矛盾に気づき,子ども たちの既に持っていた考えが揺さぶられている。. ⑦その後,メキシコの自動車工場は部品を組み立てる工場であること,部 品は輸入に頼っていること,製品を開発する技術がメキシコにはないこと,. そして技術がないと工業の進展にはつながらないことを,教師が説明して いる。. 以上の授業目標,授業構成の概要から明らかなように,「工業製品を輸入し て原料を輸出するともうからない」という理論をつかませ,その理論でメキシ コの例を説明させ,その理論だけでは説明できない,ということに気づかせる。. そして,新たに「工業製品を開発・製造する技術がないと,工業製品を輸出し てももうからない」という理論をとらえせようとする授業である。. 残念なのは,④・⑦の過程を子ども自身で獲得できなかったことである。. 本授業で習得される知識は,質の高い説明力のある概念的・説明的知識であ る。ここでの問題点として,次のことがあげられる。確かに,「工業製品を開. 発・製造する技術がないと,工業製品を輸出してももうからない」という法則 的知識を獲得できる反面,人間の行為の成果である社会:事象としての視点,す なわち,人間の社会的行為の意味理解という視点が弱いということである。 すなわち,なぜメキシコ政府はそのような行為をとったのか,どのような目. 的・願いを持っていたのか,他に選択肢はなかったのか,という点についての 追求が弱い,ということである。. このような授業構成の基づく原理はどのようなものであろうか,いかなる社. 一9一.

(15) 会認識観に基づいているのであろうか。その背景について,次に見ていくこと にする。. 2.説明型授業が基づく社会認識観 この説明型社会科授業構成原理は,ヘンペルに代表される論理実証主義学派の 論理を礎にしたものである。またこの論を地理学の立場から展開した論者にハー ヴェイがいる。この立場は科学一元論を前提に,自然事象同様,社会事象につい ても満足のいく合理的説明に,その目的をおいている。. 言い換えるなら,説明の目的は「予期せぬ出来事を予期される出来事につくり かえること,奇妙な事象を自然で正常な事象に改めること」寧10にある。先の叙述. 型のような「感覚経験をする一知覚」するように観察するのでなく,観察には常 に,理論的なもの(人により質は異なるが,ある種の期待・問い・仮説のような もの)が先行するという立場である。. この理論は固定的なものでなく,絶えず反証されるべきものとして,考えられ ている。その性格は,まだ反証されていないので,今のところそれを放棄する理 由がないものとして暫定的に受け入れられている,というものである。したがっ て,理論は絶えず厳しいテストにかけられなければならない。. この立場の論理構造は,以下の通りである。. ある事象Eが一定の空間と時間で起こった(occur),ということを 説明することは__..Eの原因(cause)を指摘することか, Eの要因 (factors)を規定することである。それゆえ,一組の事象一たとえば,. C黒,C・,_.._, C。一がその説明されるべき事象を引き起こした (cause),と断言することは,その一組の事象がある法則に従って,. 常に事象Eを随伴する(be ac◎omp田ntied by),と述べることに等し い。. 【図1−2−1:演繹的説明の基本形式】働u ハーウ“エイは上記の論理構造をもとに,科学的探求の過程を次のように設定して. 一10一.

(16) いる。. 知覚経験. 現実世界の構造のイメージ 先天的モデル(イメージの形式的表現). 消. 極 的. 仮. ブ. 積 極. 説. イ. 1. 的. 実験計画(定義・分類・測定). ド. ブ イ. ノ、. 1. ツ ク. データ. じ ノ、. 失敗. ツ. 検証手続き(統計的検定など). ク. 成功. 法則と理論の構成 説. 明. 【図1−2−2:科学的探求のかトri2. この授業構成原理は,社会事象を自然事象同様に対象化し,法則的知識の獲 得に,その中核を置く。この型の問題点として,説明力のある法則的知識(概念 的・説明的知識)を獲得することができる反面,社会事象を人間の社会的行為の 成果であるという視点が欠如しているため,人間の行為の意味をとらえることが できない,という点が指摘できる。. 第3節理解解釈型授業と社会認識観 本節では,「理解解釈型社会科授業の典型例とその間題点」,その背景にあ る授業構成原理,すなわち社会認識観を明らかにする。. lI一.

(17) 1.七会科授業の典型例とその問題点 ここでは,安井俊夫氏の『スパルタクスの反乱』’13を取り上げる。. 授業目標,授業構成は,以下の通りである。 〈授業目標〉. ○ 古代ローマ帝国の様子をとらえる。. ○ 古代ローマの奴隷たちの自由開放の願いをとらえる。 〈授業構成の概要〉. ①ローマの奴隷は,どんな生活をしていたのか。. ②いつどうやって奴隷にされたのか。 ③ローマ軍はそんなに強力だったのか。 以上の基本的な問いのもと,奴隷の立場からローマ帝国の状況を捉えさせて いる[外的状況の把握]。以下の内容は,土井正興の著作である『スパルタクスの蜂. 起』(青木書店董973.)をもとに,安井氏が再構成し,問いが構成されている。. ④蜂起はいっ,誰が,どうやって起こしたのか。. ⑤奴隷たちはまず何を目指したのか。 ⑥奴隷たちは戦いをどうやって拡大したか。 ⑦奴隷軍が拡大され,10万に至ったとき戦略目標をどうすべきか。(「ロ 、 一マ進軍か,アルプス越えによる自由解放か」) ・以上の基本的な問いのもと,学習者の対象への感情移入(奴隷たちの悩み,. 苦しみ,悲しみの発表),自己投入(自分が奴隷だったら,立場の置き換え). がなされ,その中で,学習者は,奴隷たちの行為(目的一手段)に没入してい る。. ⑧アルプスの麓へ。しかし既に10月。どうすべきか。 ⑨ローマ軍との決戦。奴隷たちはどうなるか。 ⑩ 奴隷軍の敗北。しかし,それをどう見たらよいか。. 以上の授業目標,構成の概要から明らかなように,本授業構成でとらえられ. る知識は,次の2点になる。「ローマ帝国時代における奴隷たちの状況,奴隷 たちの願い」という分析的知識と価値的知識である。. 本授業構成は,人間の行為の意味理解を共感によってとらえさせるものとな っている。しかし,その反面,科学性に問題がある。『スパルタクスの蜂起』の著者. である土井正興は,このことについて次のように述べている。 当時のローマ帝国権力と奴隷大衆との力関係からするならば,ローマ権力の打倒 による奴隷の解放などということは,実現不可能のことであり,たとえ,蜂起の初 期に,ローマ進軍という考え方が奴隷の一部にあったとしても,次々に派遣される. 一12一.

(18) ローマ軍どの対決の中で,一奴隷軍は絶えず防禦的戦略を強いられゲリラ的戦闘 によって,ローマの舞台を打破するのであるが一ローマの力を認識すればするほ ど,そうでない,より実現可能な解放の道を求めざるを得ないのである。 事監4. 史実と照らすと,現実にはあり得ない「奴隷の行為の選択」を設定してしま っているのである。したがって,共感は得られるものの,その共感に基づく主 観的願望を歴史の中に投影することに終始してしまうのである。. 整理するならば,共感は得られるものの法則的知識を得ることはできず,科 学的な認識を得ることができないのである。. このような授業構成の基づく原理はどのようなものであろうか,いかなる社 会認識観に基づいているのであろうか。その背景について,次に見ていくこと にする。. 2.理解解釈型授業が基づく社会認識観 この理解解釈型社会科授業構成原理の礎になっているのは,ディルタイに代表され. る歴史学派の論理である。ディルタイの生きた19世紀の半ばは,ヘーゲル哲学が崩. 壊し,「自然科学の支配」が時代の趨勢となり,「実証主義」が旺盛を極めた時 代であった。. そこでは「窟然科学的精神」が「哲学」となり,精神は「自然の産物」とし てとらえられてしまった。その結果,学問の基礎はすべて「外的知覚」に求め られ,「歴史的世界」「精神的世界」は見失われていった。. このような時代状況においてディルタイは,「歴史的世界の中にいっそう深く踏. みいり,いわばその魂を聞き取るゴ15ことこそ,重要であると考えたのである。. したがって,その対象は,自由意志をもつ人間に向けられ,その人間の中で も「あるべき価値を求めて『意志』に基づき行為し生きているというこの『意 識の統一』」‘!6そのものの中にある,としたのである。すなわち,自然事象と は異なる社会:事象の独自性,すなわち人間の行為の成果としての社会事象を強調 したのである。. ディ砂イによれば,精神科学固有の方法は,「体験・表現・了解」の関係に基 づく了解(理解)によるという。ディルタイのいう了解(理解)とは何であろうか。. 理解とは,外的,感性的に与えられた記号から内的な精神,構造連関における生 を追体験し把握する過程である。ディルタイによれば,言語,身振り,音楽,彫刻,制. 度その他いっさいの文化,歴史的世界は生の表現,生の客観化されたものである。. それらの表現と表現された内的なものとは規則的な関係を持ち,その関係は共同的 な歴史世界の内部に成立している。したがって,この共同性を媒介にして,自己体 験から他の個々の表現の表現している内的な精神を把握しうる。これが理解の基本. 13一.

(19) 形式である。一〈中略〉一 自己の体験のうちにある連関を媒介として自己を与えられた生の表現の総体へと 転置する自己移入Selbsthineinversetz㎝,さらには出来事の進行に沿った創造たる追 構成Nachkonstruk廿on,追体験Nacher嚢ebenが理解の高次の形式である。. 疇17. この立場の方法原理の構造は,次のようになる。. 記号の認知. 自己投入・感情移入〈生の共有化〉. 追体験〈何を願い,意図したのか〉. 意味の把握. 【図1−3−1:理解解釈型における方法原理の構造】’18. この授業構成原理は,社会事象を自然事象と同様に対象化する説明型社会認 識観と異なり,社会事象の独自性,すなわち人間行為の意味理解に主眼を置く。. この型の問題点として,人間の行為の意味理解に迫ることができる反面,主観 的な理解に止まる,という点が指摘できる。竈19. 以上,3類型の社会認識観に基づく授業の問題点を整理し,課題をあげると するならば,次の2点に集約できる。. (1)説明力ある法則的知識の獲得をいかに保証するか。 噸ゆ. (2)行為の意味理解をいかに図るか。. (1)(2)の課題は,それぞれの認識観の立場から,従来,相反するもの としてとらえられてきた。それは,社会認識の対象とする社会事象のとらえ方 に,その問題の根源がある。. すなわち,一方の考え方は,「社会事象は自然事象と何らかわるものではな い,したがって自然科学(認識)同様,社会事象の科学的説明,法則的知識の. 14一.

(20) 獲得に目的を置く」,というものである。. 他方,「社会事象は自然事象と異なり,人間の行為の軌跡である。したがっ て,社会事象を認識するためには,人間の行為の意味理解を目的とする」,と いうものである。. この2つの点は,相反するものなのであろうか。. 結論を先取りしていえば,社会科学的認識形成において,科学的説明も,行 為の意味理解も相反するものではなく,相補的・連続的・重層的な性質をもつ ものである。この立場の社会認識観を代表する社会科学者として,マックスザェーバ ーがいる。. 以下,マックス・ウ“エハ㌧の「理解的方法(verstehende Methode)」を援用しっっ,. 社会科学的認識を深めるための授業構成の原理,教育内容の抽出論理を明らか にする。. 本節の内容を整理して図示すると,次のようになる。. 轍羅. 難 述 型 説 明. 型. 社会認識観 ・ロックやヒュームら経験主義. 果たちの原理。. ・われわれの知識は集積 された知覚から成り立. ・ヘンペルに代表される論. 理実証主義学派の原 理。. ・社会事象も自然事象同 様に科学的に説明す. ・いかに知. ・1回性の知. 識を集積 させるか。. :角皐. ・社会事象の独自性を主 張し,自由意志をもつ. 史学派の原理。. 人間の中に没入する。. 識。. ・一 ハ性を持. たない記述. 方 法. ・伝達及び 伝達を媒介 とするも の。. 的知識。. ・社会事象 をいかに. ・転移できる. 合理的に 説明する. ・より説明力. か。. 知識。. ・演繹的説明 方式。. ・仮説検証。. ある概念的 説明的知 識。. る。. ・ディルタイに代表される歴. 釈 型. 内 容. っている。. 理. 角奉. 目 的. ・人間の行. 為の意味 をいかに 理解する か。. ・主観的願 望。. ・共感。. ・自己投入,. 感情移入, 追体験。. ・価値習知 識。. 【図1−3−2:授業構成原理と社会認識観】. 註. *1藤;岡信勝編『1時間の授業技術』日本書籍1993.41.. *2前掲書,p.82.. 15一.

(21) *3前掲書,PP.86−87. *4 知識の分類,構造についての詳細は岩田一彦『社会科の授業設計』東京書 籍1991,pp.39−44.を参照のこと。. *5 ロック:John Locke l632−1704イギリス経験論の代表的哲学者。知 識論の特色は,知識の起源をもっぱら感覚的経験に求める点にある。ロック によれば,人間は本来,白紙(タブラ・ラサ)であって,デカルト学派の説 くのと反対に何の性格も生得的観念も持っていない。人間に知識と推理の材 料である観念を与えるのは経験だけである,という知識論である。『哲学事 典』平凡社1995,p.1521.. ヒュームをはじめ,経験主義者たちの基本的な知識論の詳細は,カール・R ・ホ.バー著,森博訳『客観的知識』木鐸社1974,pp.5−9.を参照のこと。. *6 カール・R・ポパ戯著,森博訳『客観的知識』木鐸社1974.8,p.379.. *7前掲書,pp,379−380。 *8ベーコンやロックの論理を前向きにとらえ,科学的説明するためのプロセス を展開した論者にD・ハーゲェイがいる。ハザェイは科学的説明の第1ルートと名づ け,探求過程を設定している。詳細は,ハーゲェイ著,松本正美訳『地理学基礎. 選一地理学における説明一』古今書院1979,p.35.を参照のこと。叙述型授 業構成は,ノ・一ゲェイのように前向きに,科学的にとらえるようとしたのではな. く,知識は与えることによって集積され,自動的に内部において知識化され るという面の影響を受けた。 *9 青木典子「研究授業2なぜメキシコは借金が多いのか」広島市中学校社会科授. 業研究会『授業研究』第四号,1990年 *10 ハーゲェイ著,松本正美訳『地理学基礎論一地理学における説明一』古今書. 院1979.9,p■5.. *ll前掲書, P52. *12前掲書,p.35。 *13 安井俊夫「『スパ陣似の反乱遍の授業」『歴史地理教育盤1983.3月号. *14 土井正興「歴史研究と歴史教育について」歴史学研究会『歴史学研究555 号』三省堂1983。. *15渡邊二郎著『構造と解釈』放送大学教育振興会 昭和63年,p.125. *16前 掲 書,P」28. *17 『哲学事典』平凡社 1995年,p」455. *18 森本直人「社会科における理解」社会認識教育学会心『社会科教育学ハン ドブック』明治図書1995年,p.182. *19 この問題点の解決の手だてとして,伊東亮三氏は,シュフ.ランカ㌧の理論をあ. 一16一.

(22) げている。詳細に関しては,伊東亮三「社会認識教育の理論的基礎i内海 巌編著『社会認識教育の理論と実践』葵書房,1971年を参照のこと。 *20 上記の問題点にかかわるテーマとして,「人間科学の方法論争」がある。方 法論争の詳細に関しては,丸山高司著『人間科学の方法論争』勤草書房,1985 を参照のこと。. 一17一.

(23) 第H章 理解説明型授業構成の原理. 本章の目的は,「マックスザェーノ・㌧の『理解的方法』を援用し,『理解』と『説明』. を統合し,連続的・重層的にとらえる授業構成にすることにより社会科学的認 識を深めることができる。」という仮説を検証することにある。. 第1節 社会認識観 本節では,『理解』と『説明』を統合し,連続的・重層的にとらえる授業構 成の原理を設定する上で,どのような社会認識観にたつのか,その立場を明確 にする。. マックス・ゲェーハ㌧によれば,社会科学と自然科学の区別は原理的には何もない。. 社会科学は自然科学と同様に,その目的は法則的知識の探究にある,というの である。ここで注意しなければならないのは,ゲ・一ハ㌧のいう法則は,けっし て決定論的な法則ではなく,あくまでも暫定的なものであり,反証可能性を持 つものである。これは,自然事象と社会事象の同一性の指摘である。 .しかし,ゲェーノ・㌧は社会事象と,自然事象とを単純に同一視したわけではな. い。社会:事象には,自然事象にないものがある,と主張する。この主張の内容 は,次の通りである。. 社会事象とは「自由な意志を持って行動する人間諸個人が,どこまで意識的 であるかは別として,とにかく絶えず様々な目的を設定し,その手段を選択し て,決断をしつつ行動するのであり,社会事象はそういう生きた人間諸個人の 社会的行動の軌跡ゴ1にほかならない。したがって,社会事象の中には,自然 事象とちがって,人間の行為の意味連関が奥深く含まれている,というのであ る。端的に言うなら,自然事象にはない,「目的一手段」の連関吃が社会事象 には内在しているのである。 グェーハ㌧の主張とは,すなわち社会科学は,「理解」という人間,文化に関わ. る特有な内容と方法を生かしつつ,自然科学が求めているような普遍性・客観 性を目指さなければならない,というものである。 グェーハ㌧は,この社会事象のもつ二つの性質の統合を試み,その結論として, 次のような社会認識観をうち立てた。. 一18一.

(24) 社会科学とは,「社会的行為を解明しつつ理解し,これによってその経過と,. その結果とを因果的に説明しようとするひとつの科学である」嚇という,社会 認識観である。. すなわち,社会事象に内在する「行為の意味理解」を図りつつ,またそれを 手だて(主要因)として,自然科学と同様,因果的説明をすることにより,一 層,深い社会科学的認識を得ることができる,というものである。. このように杜会科学に内包している二つの性質(自然事象と同様に対象とし ての社会事象・人間の行為の軌跡としての社会事象)を統合し,認識の連続性 としてとらえ,生かしたのである。. 筆者は,この社会認識観に立った方法原理を理解説明型授業構成の原理とし て設定し,以下,その内容を明らかにする。理解説明型授業構成とは,理解と 説明が分断されているものではないが,説明上,「社会的行為を解明しつつ理 解」するとはどういうことか,その次に,「その経過と,その結果とを因果的 に説明」するとはどういうことか,順次,考察していく。. 第2節 理解説明型授業構成における「理解」の原理 本節では,まず「理解」とは何か,概念規定を図る。次に,理解説明型授業 構成における「理解」の原理を明らかにする。 1.理解説明型授業構成における「理解」. ここでいう「理解」とは,何か内面世界だけの神秘的な精神作用を示すもの ではなく,また追体験そのものでもない。結論を先取りすれば,「理解」とは, 因果関係の説明へと連続する「目的一手段の連関」の意味理解を示している。 このことについて,中野敏男氏は,『マックズザ・一ハ㌧と現代』の中で,次のよう に説明している。 当人にとってのみ確実であるとされた固有の体験世界,あるいは「体験流」,リッフ.. スの言葉で言えば,「体験された自我」とは,内容豊かである反面,対象認識から見. れば,概念的把握一この場合,動機とは何か自覚的にとらえる一がなければ, 常に漠とした,曖昧なものに他ならない。このような意味での体験であれば,むし ろ概念的把握の欠如に他ならない。. 章4. すなわち,社会的行為の理解は,感覚的,全体的な「体験世界」それ自体に とどまるものではなく,体験を通して,その行為の「目的一手段」の連関を,. 一19一.

(25) その対象としたとき,解明的に理解可能となるのである。ゲェ一瓢㌧自身,『ロッシャ ーとクニース』の中で,次のように語っている。. 実際,体験されたところのものについては,「体験」の段階そのものが去り,体 験されたものが判断の「客体(ob垂ekt)」にされた後になって,はじめて,「解明的」. 解釈がそれをとらえることができる。5. したがって,理解説明型授業構成における「理解」とは,「社会事象を主観 的な意味連関(目的一手段の連関)からとらえる」,ことを意味する。. では,どのような方法を用いることにより,r社会事象を主観的な意味連関 (目的一手段の連関)からとらえる」,ことが可能となるのだろうか。. 2.理解説明型授業構成における「理解」の原理 社:会事象とは,自由な意志を持って行動する人間諸個人が,目的を設定し, その手段を選択・決断した社会的行動の軌跡にほかならない。したがって,社 会事象の中には,自然事象とちがって,人間の行為「目的一手段」の連関が内 在しているわけである。. では,この「社会事象に内在している意味連関(目的一手段の連関)をとら える」ためには,どのような方法を用いたらよいのだろうか,この点がここで のテーマである。. 結論を先取りするならば,「社会事象に内在している意味連関(目的一手段 の連関)をとらえる」ためには,まず行為の「理念(型)」%を設定する必要 がある。. 理念型とは,言ってみれば,「分析のための発見的な手段(heudstisches Mi賃el)」\ηにほかならない。この「理念型」は,行為の意味理解にあたって,. いわば「理解」の基準を提供するものである。 この「理念型(行為における目的一手段の仮説)」を設定することにより,「現 実の多様な,様々な行為の経過を解釈するにあたり,実際の行為(目的一手段). がどれくらい,それから逸脱しているか」,とらえることができるのである。. さらに言うなら,自己が既に持っている経験的知識や法則的知識を用いて, 当該社会事象の行為主体である人間の「目的一手段」の連関を仮説的に(理念. 型を)設定し,その仮説〔目的一手段3の連関が,実際の行為主体の行動とど れくらい,逸脱しているかとらえ,「理解」する,ということである。. 例えば,みかんの農家の概要をつかみ,あるみかん農家に社会科見学に実際 に行ったとしよう。. みかん農家の人が,どのような目的をもち,どのような手段をもちいている か,について次のような「理念型」,仮説を設定したとする。. 一20一.

(26) 「農家の人は,みかんをたくさん収穫したい,と思っているだろうから,で きるだけみかんの木に,実をならそうと努力しているはずだ!」 しかし,実際に見てみると,農家の人は,みかんの木に,せっかくたくさん の実がなっているのに,どんどん実を落としている,という行為の事実をとら えたとしよう。. ここでは,子どもが設定した「理念型」と,実際の行為との間にずれが生じ ることになる。そこで,子どもは,「もったいないな,なぜ,実をおとしてし まうのだろう,.__」と,新たな「理念型」における「目的一手段」の連関を. 築くための行為(学習)へと転換されていくのである。そして,「みかんをた. くさん収穫したいのだろう1」という理念型は,摘果という事実を追求するこ とを通して,より切実感,内容をともなった「おいしい品質のよいみかんを収 穫したい!」という理念型へと深まることができるのである。. 言うまでもなく,このような「理念型」(仮説)を設定しなければ,体験の 渦に巻き込まれ,結果的に漠然としたものになってしまう。 ウ“エーハ㌧は,さらに,この「理念型」の基本的な視点,すなわち人間の行為. を突き動かす「理念型」の視点として,「思想」と「利害(状況)」をあげてい る。. 「思想」と「利害」では,かなり意味合いが異なるが,これら「思想」と「利. 害」の関係とはどのようなものであろうか,その点について,次に考察してい くことにする。. 人間の行為を直接的に支配するものは,思想でなく利害である。しかし思想によ ってつくられた『世界像』は,きわめてしばしば転轍手一機関車の進行方向を変え るあの転轍手です一として軌道を決定し,その軌道に沿って利害のダイナミックスが人間. の行為を押し動かしてきた。⑱. このことについて,例をあげるならば,次のようになる。 同じ金儲けをしても,・金儲け自体を人生の究極目的と考えるような人々は,. 他人の困窮もかまわずに買い占めをして暴利を得たり,高利貸しをおこない,. 借り手がどんなに困っているといっても「証文通りに願います」と言って残酷 に取り立てるかもしれない。あるいはもっと人道的な考えを持っていて,他人 が必要とするものを作り,それを売って,その結果として金をもうける。そう した金儲けに専心する人もあるだろう。あるいはまた,もうけた金の使途につ いても,自分でもうけたんだから,何に使おうと自分の勝手だというわけで, ばかばかしいことに浪費する人もあるだろう。あるいはもっと立派な思想(ウ“イ ジョン)を持っていて,寄付をして学校をつくる,図書館をつくる,様々な有益 な事業のための財団をつくる人もいるであろう。. 一21一.

(27) 人問諸個人は,誰も自分の利害状況に反して行動するわけではない。ただ,その 利害状況に基づいて,どのようなウ“イジョンを作り上げるか,その違いが彼らの行動の. 目指す方向に大きく影響する。そしてそのヴィジョンの違いは,それぞれの諸個人が知. っている,或いは,自分の内的状況として抱いている理念のいかんに由来する。と いうのは,様々な利害を組み合わせて,ゲィジョンを作り上げるのは絶えずそうした思. 想或いは理念に照らして,おこなわれる他ないからである。. り. すなわち,「利害」と「思想」とは,行為を突き動かす原動力・起爆剤とし ての「利害状況」と,その方向性を示唆する「思想」,という関係にある。端 的に言うなら,「利害」と偲想」とは,人間の社会的行為を突き動かす「(原 動力としての)エンジンと(その方向性を指し示す)舵取り」という役割を果た すものである。. このように,人間の社会的行為の軌跡である社会事象には,「利害」と「思 想」が内在しているわけである。したがって,この社会事象の意味理解を図る ために理念型を設定する際には,当然,「利害」・「思想」という両側面の視点 から行う必要がある。. 以上のことから,理解説明型授業構成における「理解」の方法原理として, 「理念型」の設定を,その内容原理として,動機の「理念型」,すなわち,「利 害状況」と「思想」を位置づける。. 第3節 理解説明型授業構成における「説明」の原理 本節の目的は,主観的な「社会事象に内在する行為の意味理解(目的一手段 の連関)」=「理解」をどのような論理的手だてを用いて,科学的な説明へと 連続させるかを明らかにすることである。. まず,その前提として,この目的をより確実に達成するため,「人間の意志 の自由に基づく行為」と「因果的認識」をめぐる争点について考察することに する。. 「理解」と「説明」の連続・結合は,難問とされてきた。その理由は,次の とおりである。. ここで「説明」とは,因果的説明を意味するわけであるが,従来,「理解」. 一22一.

(28) と「説明」を対立させるということは,実は「理解」の対象である「人格性に よる自由な行為」が,因果的認識において捉えきれない対象である,というこ とを前提として含意していたに他ならない。しかし,このことについて,ゲ・一 ハ㌧は真っ向から反対する。. すなわち,人間の意志の自由の領域が,拡大されればされるほど,かえって 人間の行為は合理的目的的に行為をするようになる。したがって社会事象にお ける因果関係の追求はかえって容易になるにとどまらず,一般に自然事象の場 合よりも,社会事象の方が因果関係を一層確実に,認識できるのである,とい う主張である。. さらに言えば,自然事象の場合には,科学者がその意味(動機)を問うよう なことは,あり得ないが,人間の営みについては,人々がどういう目的(理由) で,そういう行動をとるか,その動機の持つ意味をとらえることができる。こ のことによって,単なる経験的規則性によるよりも,確実に原因一結果の関係 をたどり,また将来を予測することが可能となる,というのである。. 合理的・目的的行為とは,言うまでもなく明確な目的のもと手段を選択し, 行為することである。この行為と因果関係は,どのように結びつくのであろう か。. このことについてのゲェーハ㌧の論を大塚久雄氏は,次のように説明している。 ある目的を設定し,そのための手段を選び,そして決断しつつ行動することによ って一定の結果をもたらすということは,我々の主観においては,確かに目的一手 段の連関として,意識されていますが,それを客観的な過程の中においてみますと,. それはそうした行動を引き起こした少なくとも原因の一つとして働いているわけで すね。つまり,客観的には,それは一つの原因一結果の関係となっている。ともか くこうして,目的一手段の連関を絶えず原因一結果の関係に組みかえていけば,社 会過程における客観的な因果関係が逐一たどっていけることになるわけです。 ‘10. すなわち,グェ一己㌧は,目的論的連関を人間諸個人を行動にまで押し動かす. 一つの原因として見ることにより,それを客観的な因果関係の中に移しかえ, 因果性の範疇を用いて,社会事象を対象的にとらえていく,社会科学の方法を 構築したのである。. この方法について,大塚久雄氏は,『社会科学の方法』の中で,「目的論的関 連の因果関係への組みかえ」亀1’と表現している。. この方法について,「目的一手段」の連関と「原因一結果」の関係について, 例をもとに図化すると,次のようになる。. 一23一.

(29) 生産ラインをべ跡コンベアで結び,. 品質が一定した自動車を短 時間で,大量に生産したい。. 流れ作業にする。. 匠亘] /! 品質が一定で,短時間に,. 生産ラインがベルトコンベアで結ば. れ,流れ作業になった。. 大量に生産された。. 【図H−3−1:哨的一手段」と「原因一結果」の連関図】. 上記の図を説明すると次のようになる。. 「目的一手段の連関」は,「品質が一定した自動車を短時間で大量に生産し たいく目的〉」,この目的を達成するために,「生産ラインをベルトコンベアで結び,流. れ作業にしてみるく手段〉」という連関になっている。. この「目的一手段の連関」を〈手段→原因〉に,〈目的→結果〉に置き換え ると次のようになる。. 「生産ラインがベルトコンベアで結ばれ,流れ作業になったことにより,品質が. 一定で,短時間に大量に生産された」。この事象相互の関係は,「目的論的連関. の因果関係への組みかえ」により,「目的一手段:目的論的連関」から「原因 一結果:因果関係」へ転換されたのである。当然,原因と結果を明示すること ができれば,果たして,この関係が妥当かどうか検討することができるわけで ある。. このように,目的論的連関を因果関係に転換することにより,その事象間の 関係が検証でき,科学的説明が可能となるのである。 つまり,「目的一手段」の連関で設定された理念型が,「原因一結果」の関係 に置き換えられることにより,検証可能な仮説へと転化するのである。 したがって,「目的と手段の連関」を「因果関係」に組みかえることにより,. その事象間の関係を検証することが可能となるわけである。 以上のことから,理解説明型授業構成における「説明」の方法原理として, 「目的論的連関の因果関係への組みかえ」を位置づける。. また,内容原理として,社会諸科学の研究成果である理論(条件と,原因一. 一24一.

(30) 結果が明示)を設定する。. なぜなら,理論は現段階において人類の持つ,より間違いの少ない,より説 明力のある法則的知識だからである。. 教師は,予め社会事象を説明できる理論(条件一原因・結果を明示)を持っ ている必要がある。言うまでもなく,この理論とは決定論的なものではなく, 反証可能性を十分に持ったものである。. 第4節 理解説明型授業構成の原理 本節の目的は,第1節から第3節まで「理解説明型授業構成の原理」を順次, 考察してきた内容を踏まえ,その全体像を明らかにすることである。. 第1節から第3節までの原理を図化すると,次のようになる。. 理 目標. 原理 中核的 な. 問 い. 方法 原理. 解. →. 社会的行為の意味 〈目的一手段〉理解. →. ・理念型の設定. 原理. 動機の理念型とし て,「利害」と「思 想(理念〉」を設定. ・∼ キるとどうなる. を「因果関係」に置. →. 人間の行為を突き 動かしているもの,. 内容. ・なぜ∼. 「目的一手段の連関」. 社会事象を主観的 な意味連関(目的一手 える。. 社会的行為,社会 的事象の因果的説明. 温し,説明する問い. →. 段の連関)からとら. 明. 〈原因一結果〉を追. 〈目的一手段〉を追 求する問い ・何のために∼ ・どのように∼. 説. →. き換える。. ・「目的論的連関の因 果関係への組みかえ」. 社会的行為,社会 事象を説明する反証 可能な理論を設定す る。. する。. 【図U−4−1:理解説明型授業構成の原理】. 一25。.

(31) 1.社会的行為の意味理解. この過程は,次のような段階を経る。社会事象を人間の社会的行為の軌跡と してとらえ,①動機(目的)の推定,②動機から予想される手段〈工夫・努力〉 を仮説的に構成する〈「理念型」の設定〉。その際,学習者は,自己が持つ経験. 的知識,法則的知識を総動員して,類似の多くのケースと比較検討した上で設 定する。. 中核となる問いは,「何のために?」「どのようにしたか(しているのか)?」. という「目的一手段」の連関をとう問いである。学習指導のポイントは,以下 の4点である。. ① 学習者がもつ認識(理念型)の経験妥当性について矛盾が生じる社会的 行為を学習対象とする。事実の確認と確定。 ②. 「理念型」を設定するときに,「利害(状況)」「思想(グィジョン)」とい. う両側面の視点から設定できるようにする。. ③教師の問いかけ,子どもどうしの問いかけ(学び合い)を通じて,「目 的一手段」の連関を絶えず往復運動をさせ,その内容を吟味できるように する。. ④ある一定の条件を付加したり,除去したり,変化させた場合に,「目的 一手段」がどう変わるか,という点についても内容を吟味できるようにす る。その時の有効な柔いとして,「もしこの場合なら,どうなる」,「こう なったらどうなる」,等がある。. 2。社会的行為,社会事象の因果的説明 この過程では,まず「理念型」として構成された「目的一手段の連関」を「目. 的論的連関の因果関係への組みかえ」を行う(客観的な過程に置き換える)こ とにより,因果的説明を試みる。そして,この説明を,現実に生起した「結果」 から検証するのである。. 中核となる問いは,「なぜ?」「∼になるとどうなるか?」「ほんとうにそう. なったのか」という「原因一結果」の関係をとう問いである。学習指導のポイ ントは,以下の2点である。. ①「原因一結果の関係」が,その社会事象が生起した主要因であるかどう か,教師は予め探究しておくことが重要である。言い換えるなら,その社 会事象を説明する理論を踏まえておく必要がある。 ② 検証方法及び,内容を把握しておく。. .26一.

(32) 3.(社会的行為の状況・状態の把握)理解から説明へ さらに,この検証「(2)」を通じて,先の「理念型」は,より精密で,確か さの具わった「第二次理念型」へと発展し,そこからまた「説明」が開始され るようになるのである。. これらのことを学習過程に即してみれば,次のようになるであろう。 説明. 理解. 1.社会 的行為の 状況・状 態の把握. 2.社会. 3.社会. 的行為の 意味理解 理念型の. 的行為・. 設定. 説明. 社会事象 の因果的. 4. ≡…. 5.理. 説明. 解・深 化した 理念型 ・理論. 【図3:理解説明型授業構成における学習過程の基本型】. 以上,考察してきたように,社会事象を探究するにあたり,「理解」(行為の. 意味理解)と「説明」(因果的説明)は,相互に不可欠な要件となっており, これらは相互に連続的・重層的に構造化されていくわけである。. すなわち,「理解」と「説明」を統合し,連続的・重層的にとらえる授業構 成(理解説明型)にすることにより,社会科学的認識を深めることができるの である。. それと同時に,学習者は,社会事象を「自然事象と同様に対象化する視点」 と「人問の社会的行為の軌跡としてとらえる視点」を持つことができる。また 「人間の行為を突き動かす要因」として,「利害状況」という視点と,「思想(ゲ. ィジョン)」という視点をもつことができ,複眼的思考をすることが可能となるの である。. 註 *1大塚久雄著『社:会科学の方法』岩波書店1997,4」5,pp.58−5g.. *2 「連関」とは,[独]Zusamlnenhangを意味し,関係に比べて,「個々の事. 物が結合して,必然的統一を形作っているとき,その統一をそれらの事物の 連関という」ように事物と事物の独立性を問題にすることより,統一性を重 亡した概念である。. それに対して,「関係」とは,[英]relat{onを意味し,「xとyの間にある. 関係があるとき,その関係をRで表せば,xとyの間にその関係があるとい. 一27..

(33) うことはxRyと表現される」ように,事物と事物の相互の独立性を重視す る。. 以上ことを踏まえ,目的と手段の関連を表すときは,「連関」という概念 を用い,原因と結果の関連を表すときは,「関係」という概念を用いること にする。. *3マックス・ウ“エーハ㌧著『社会学の基礎概念』阿閉吉男,内藤莞雨訳,恒星社厚生 閣19879, pp.6−7. *4 中野敏男著『マックスザェーハ㌧と現代』三一書房1983.8,p.82. *5マックス・ウ“・一ノ・㌧著『ロッシャーとクニース(一)(二)』松井秀親訳,未来社:,1955.. *6 マックス・ヴェーバー著『社会科学と社会政策にかかわる認識の客観性』富永祐治,. 立野保男,折原浩補訳,岩波書店1998,8,p.33.(型)は筆者による。 *7 富永健一「社会学とゲェーハ㌧」大塚久雄編『マックス・ゲェーハ㌧研究』東京大学 出版会1976.12,P.32。. *8 大塚久雄著『社会科学の方法』岩波書店1997.4.15,p。82.. *9前掲書,P89. *10前掲書,P60. *11前掲書,p.60.. 一28一.

(34) 第皿章. 理解説明型授業構成における 教育内容の抽出論理. 本章の目的は,「法則的知識と行為の理念型を結びつけ,目的論的連関と因. 果的関係を統合し,問いの連鎖により,社会科学的認識を深める教育内容の抽 出論理が設定できる」,という仮説を検証することにある。. まず,教育内容の抽出論理を明らかにし,その重要性と意義を明確にした上 で,教育内容抽出の方略を具体的に考察していく。 抽出論理は,基本的には,H章で,考察した「理解説明型授業構成の原理」 に基づく「学習過程の論理」と,同じプロセスをたどる。. 第1節 教育内容の抽出論理 本節の目的は,理解説明型授業構成における教育内容の抽出論理と,その過 程及び内容を明らかにすることである。. 1.単元の設定 単元寧1とは,教育実践の歴史において様々な意義を担ってきた射程の長い概. 念であるが,ここでの単元とは,ひとつのu謡,主題教科内容の中にある一 つのまとまりという意味において用いる。. 社会科学的認識形成を担う社会科において,単元を設定するにあたり,どの ような条件を考慮に入れ,社会事象を取り上げたらよいだろうか。その条件と して,次の3点を提示する。η (1)理論と「行為の意味」の明示. 単元として,取り上げる社会事象の基本的条件の第1点目は,理論と行為の 意味が明示されているものを選択することである。 まず理論の明示について,説明していくことにする。. ① 理論の明示 単元として,取り上げる社会事象は,理論が明示されているものであること が重要である。. 一29一.

参照

関連したドキュメント

授業科目の名称 講義等の内容 備考

□ ゼミに関することですが、ゼ ミシンポの説明ではプレゼ ンの練習を主にするとのこ とで、教授もプレゼンの練習

支えあう思いやりのある地域社会の実現をめざします。.. 事業名 事業内容説明 担当課等 重点 住宅改修・福祉用.

高齢福祉課.. 事業名 事業内容説明 担当課等 重点 事業 認知症への理解.