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第1節  授業設計の視点

、本節では,次の3点を明らかにする。第1点目は,学習指導要領における「産 業と貿易」の内容的位置づけ,第2点目は,「産業学習と貿易」の基礎的理論,

第3点目は本単元と研究理論との関連,以上の3点である。

1.学習指導要領における「産業と貿易」の内容的位置づけ

 学習指導要領における分析視角は様々にあろうが,ここでは内容的視角を持 って「産業と貿易」という観点から考察していく。

(1)昭和22年版

 昭和22年版については,学習内容の問題として例示されており,内容の規 定はなく,アメリカのバージニアプランの色合いが強く,「産業と貿易」とし ての内容が確立されていない。

(2)昭和26年版

昭和26図版では,次のように示されている。

 第5学年 目標

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  ○ 交易の仕方は世の中の進歩とともに変わってきた。

  単元の基底の例[産業の発達と現代の生活]

      奪1   0 手工業から機械生産へ

 この時期の経済社会は,戦後の復興時期であり,繊維・雑貨等の軽工業が軌 道に乗り始め,大量生産体制が始まった時期である。このことを上記の学習指 導要領とあわせてみるならば,当時の経済社会体制が教育内容に色濃く繁栄さ れていることがわかる。

(3)昭和30年版

  第5学年 目標と学習内容

  5 人々の生産の仕方や衣食住の生活は,科学,技術の発達に伴い,運輸交易な    どの働きと関連しあって,次第に改良されてきたことを理解させ,今日のわれ    われの生活が先人の発明発見その他の努力に負うところが大きいことを考えて,

   これからも科学の成果を人々の幸福のために役立てなければならないという気    持ちを育てる。

  (2)手工業と比較して,新しい動力の利用,大量生産,分業の仕組み,原料入     手や製品販路の拡大,大きな資本などの点で特色ある機械生産の普及の結果,

    人々は物資の入手そのほかの点でいろいろな利便を受けた反面,個人の価値     が忘れられたり,人々の安全や健康が脅かされたり,資源が濫費されたりす     る傾向が生じ,みんなでよく考えて解決しなければならない問題に当面して     いる。      η

 この時期の経済社会は,繊維・雑貨等の軽工業から,原油・コークス・鉄鉱 石を輸入して行う重化学工業へ移行し,成長期に向かう時期に位置している。

この時期の内容は,大量生産・分業による貿易の拡大,またその弊害について 多分に意識した内容になっている。

 それと同時に,全体的・網羅的ではあるが,原因と結果が明示された内容が あり,説明力のある知識の獲得が可能となっている。

(4)昭和33年版

昭和33年版については,次のように示されている。

 第5学年 1 目標

  (3)我が国の地理的環境の特性を把握させるとともに,国内各地における生産    活動の条件として重要な役割を果たしている交通,商業,貿易などについて    も目を開かせる。

 2 内容

   (7)わが国の工業は,国民の衣食住や産業の基礎になる資材の生産などの面ば     かりでなく,貿易の上からきわめて重要な役割を果たしている。

   (8)今日の工業は,一部の特殊な手工業をのぞいて大部分が機械生産に移って     いるが,機械生産は手工業生産と比べて新しい動力や機械の利用,分業の仕     組み,大量生産などの点で著しい特色を持ち,我カミ国では明治以降に発達し     たものである。

   (9)明治以後,最初は繊維工業などを中心に発達した我が国の工業は,しだい     に重工業方面にも及び,アジアにおける重要な工業国としての地位を高めて     きたが,この間,新しい技術の導入や改善,発明や発見,その他生産の向上     のために払われた努力はきわめて大きかった。

   (14>わが国の工業は,多くの原料を外国から輸入し,また製品の市場を広く海     外に求める必要があるので,諸外国との貿易が行われており,そこにはいろ     いろな苦心が払われている。       墜3

 昭和33年版における「産業と貿易」についての内容は,従来のものと比べ ると明らかなように,詳細に記されている。この時期の経済社会は,高度経済 成長の最盛期で,重化学工業生産が軌道に乗り,輸出が隆盛を極めた時期であ った。また産業構造の変化とともに,その変化は短時間による著しい成長によ る変化であった。指導要領の内容は,このような経済状況を反映し,経済成長 の自負さえ感じさせる内容となっている。努力・苦心が前面に押し出されては

\いるが,特徴的なのは,次の2点である。

 第1点目は,機械生産の特色及び加工貿易の概念規定がなされていること,

第2点目は,繊維工業から重工業への産業の構造の変化が示されていることで

ある。

(5)昭和43年版学習指導要領

昭和43年版では,次のように示されている。

 第5学年 1 目標

  (1)わが国の地理的環境の特色とともに,国内各地の主要な産業の実態や国民    生活との関係を理解させ,国民の一人として産業の発展や資源の保護利用に    対する関心を深める。

 2 内容

  (1)ア 農水産物を原料とした食料品工業と国民生活との関係,その製品の輸    出などを事例として,国内産業相互の関連,国民生活の立場からみた産業の    意義について考えること。

  (3)イ 産業別人口の推移や農業における兼業農家の増加を示す資料などを利

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    用して,最近におけるわが国の第一次産業の地位について考えたり,農山漁     村の人々が生産物の価格,輸送方法の改善など,流通機構の問題や貿易の条     件などにも大きな関心を払い,政府もこれらの点に力を入れている事実を理     解すること。

  (4)イ 具体的事例にそくして,交通や通信の条件と工業生産との関係,原料     や動力資源の確保,新しい製品の開発や進んだ技術の導入による生産の近代     化,国内・国外市場の開拓など,近代工業の大切な条件について理解すると     ともに,最近の工業生産は,それぞれの土地の条件や環境を積極的に生かし     たり,つくりかえたりして,国内地域で活発に展開されていることに気づく     こと。

     ウ 日本の工業について,繊維,食:料品,金属・機械,化学工業などの工     業生産高から見た特色,中小工業の果たしている役割,貿易の重要性につい     て調べ,その現状や特色について理解すること。       %

 昭和43年版の学習指導要領の特徴として,次の3点が上げられる。第1点 目は,国民生活との関連から貿易をとらえていること,第2点目は貿易にとも なう第1次産業の問題についても触れられていること,第3点目は貿易にとも なう産業構造の特色,以上の点を明示していることである。

 この時期の経済社会は,大量生産にともなう繊維・鉄鋼製品が外国からの圧 力により,輸出自主規制を強いられる状況であり,国内的には,第一次産業の 需要性の見直し,中小工場への政策的配慮,新たな工業への模索の段階であっ

た。

(6)昭和52年版学習指導要領

昭和52年版では,次のように示されている。

 第5学年 1 目標

  (1)我が国の食料生産及び工業生産の特色並びにそれらの生産活動と国民生活    との関連について理解させる。

 2 内容

  (2)ア 我が国の工業について,工業地域の分布の特色を理解するとともに,

   工業の盛んな地域の具体的事例を取り上げ,人々が土地や交通の条件を生か    しながら新しい技術の開発,資源の有効な利用及び確保などにっとめている    こと,国民生活の上で工業製品の生産が大切であること及び各種の公害から    国民の健康や生活環境を守ることがきわめて大切であることを理解すること。

       ・5

上記の内容から明らかなように,「貿易」という用語は,登場してこない。

この時期の経済社会は,第一次石油ショックの後であり,それまで黒字傾向で あった目本の経常収支は一気に大幅な赤字となり,インフレ率も二桁に跳ね上 がった。省エネで銀座や新宿のネオンは消えたし,スーパーなどの店先からは トイレットペーパーや洗剤などの商品が消えた。このような経済状況の時期で

あった。

 この石油ショックを契機に,日本はもとより世界の産業構造が変化した。こ の意味においても,ゼ日本の国民生活と産業活動の関連」を目標と掲げながら も「貿易」に関する内容の欠如という点において,その問題性を指摘すること ができる。

 「貿易」に関する内容の欠如,という要因として次の2点が上げられる。

 第1点目は,この時期は先に考察したように第1次石油ショックの後であり,輸 出入が極端に低迷したため,それまで海外に向けられていた関心が,日本国内 に向けられ,貿易についての意識が低下したためである。第2台目は,戦後の 復興から我が国のめざましい工業の発展にともない,公害問題が表面化し,社 会では大きな問題として,クローズアップされるようになったためである。以 上の2点が本指導要領の特徴として指摘できる。

 (7)平成元年度版学習指導要領

、 平成元年度版では,次のように示されている。

  第5学年 1 目標

   (1)我が国の食料生産,工業生産の特色及び運輸,通信などの産業の様子やこ     れらの産業と国民生活との関連について理解できるようにし,我が国の産業     、の発展に関心を持つようにする。

   2 内容

   (3>ア 我が国の陸上,海上,航空などの運輸業や主な貿易の相手国と輸出入     の品目などについて,地図や地球儀,資料などで調べて,我が国の運輸業の     働きや貿易の特色について理解するとともに,これらの産業に従事している     人々の工夫や努力に気づくこと。       %

  上記の内容から明らかなように運輸業とセットで「貿易」が扱われており,

貿易の輸出入の事実を理解する内容となっている。この目標では,貿易の輸出 入の事実,特色を理解することはできるが,貿易による日本と世界の依存関係,

 貿易と連動した産業構造の変化を説明することはできない。

  このことは貿易に限らず,工夫・努力の側面のみを前面に押し出し,社会を 説明するための理論(概念)内容についての視点が欠如しているため,他の分  野においても同様なことが指摘できる。

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