3.動
第2節 分析結果と考察
るような構成であったが,その人々に対する思い,工夫の内容は,表面的で深 まりが見られなかった。その理由として,次の2点が指摘できる。
ア.目的「何のために」という追求が,不十分なうちに,手段(工夫)「どう するか(どうしているか)という追求に移行してしまうため,人々の英知で ある工夫」が,単なる記述的な事実に陥ってしまっている。
例えば,「できるだけ安定して収入を得たい。」という目的を漠然とつかみ,
手段として品種改良が意識されずに,「品種改良とは何か」という追求にな ってしまっている。
ここでは,本来,次のような連関にある。「できるだけ安定した収入を得 たい」,そのためには,「品質のよいものをつくりたい」あるいは,「できる だけ多く収穫できるようにしたい」,「病気やけがに負けないものにしたい」,
等々が行為の目的となり,その目的を実現するためのひとつの手段が品種改 良である。
イ.目的一手段(工夫)の連関でとらえ,その手段(工夫)が,実際に検証 されていない。すなわち,「原因一結果」の関係に置き換えられ,検証し直 されていないのである。
以上の2点が,人々の行為の意味理解にせまれない原因として指摘できる。
③説明型授業構成
説明型の授業構成の分析結果から次の3点が指摘できる。
ア.法則的知識,すなわち,概念的説明的知識を獲得できる授業構成である。
「なぜ」,「その結果はどうなる」という問いを中核において展開されてい るσ、したがって,問いと答えの距離が長く,それだけ思考を働かすことが できるようになり,学習者が自分なりの法則的知識を獲得できるような授 業構成になっている。
イ.子ども自身が経験と連続しているところでの記述的知識・分析的知識を 十分持っていないと,単なる抽象的なレベルでとどまってしまう危険性が指 摘できる。
ウ.人間の行為の意味,すなわち,「人間の目的・願い・思い」をよりょく 達成しようと選択した行為が手段となるのであるが,その点についての追 求が弱い,ということが指摘できる。
分析の一例,「稲作の盛んな地域」を上げてみる。「なぜ10aの米の取れ 高が増えたのか」,という学習問題のもと,予想を立て,追求した結果,「品 種改良・機械化・耕地の基盤整備」等を調べ,その成果を発表し合い,「稲 作生産は,品種改良,機械化,耕地の基盤整備を行うことにより,取れ高
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を増やしている。」という学習者の発表で授業を終えていた。
ここで,問題となってくるのは,「なぜ米の収穫を増やそうとしたのか」,
「そのためにどんな行為が選択されたのか」,「その結果どうだったのか」
という人間の行為の意味理解まで達することができたかどうかである。
また「品種改良」の持つ意味(目的・願い)を獲得することができたの だろうか。ことばと経験の往復運動はなされたのであろうか。「もし〜し たら〜」等の問いによる状況の置き換えによって,学習の成果を評価する 場が位置づけられていないため,言語主義的思考なのか,内実をともなつ たものなのか判断できない。
しかし,上記の2点の間遮性は残るものの法則的知識の獲得という側面から のアプローチとしては,優れた授業構成原理である。
④理解説明型授業構成
理解説明型授業構成は,説明型授業構成とともに,もっとも割合が低かった 授業構成である。分析結果から指摘できることは,次の2点である。
ア.法則的知識,すなわち概念的説明的知識の獲得が図れる。
イ.人間の行為の意味理解が図れる。
ここでは,まず目標を例に上げて考察してみる。単元は,「織物工場」
である。「豊かな社:会になり,人々は多様な品物を求めている。そのよう な今日において,商品を作り出す工場では,利潤追求のために,効率的な 少品種大量生産ではなく,人々の求めに応じた品物を生産するために多品 種少量生産を行っている。」
この目標では,「工業生産は,消費者ニーズに応じて少品種大量生産から 多品種少量生産へ移行する」という法則的知識と,同時に,「人々は豊か になると,多様なものを求める。」「工場は絶えず,利潤追求を目指してい る。」という人間の行為の意味が明示されている。したがって,法則的知 識と人間の行為の意味理解の獲得を目指した授業構成である,といえる。
次に,授業展開についてみてみる。
(1)どんな製品が主に作られていますか。(2)品物の流れを見よう(見学,
体験活動)。(3)織物問屋では,どんな苦労,工夫があるのだろう。(4)な ぜ多品種少量生産をおこなっているのだろう。以上の問いが,問題把握,
予想,仮説,検証というプロセスによって展開されている。
この展開から明らかなように,目的(何のために)一手段(苦労,工夫)
の連関で予想,仮説が設定され,その後,原因一結果に置き換えて,検証
活動がなされている。したがって,人間の行為の意味理解と,法則的知識 の獲得が可能となる授業構成である,といえる。
(2)分析視点2の結果「教育内容抽出論理」について 【表W−2−4:教育内容抽出論理】
教育内容抽出の類型 事例数・割合 情報網晶晶
6 (24%)
構造分析型
13 (52%)
概念分析型
6 (24%)
上記の分析結果から明らかなように,構造分析型の割合が52%と半分以上 を占め,情報豪富型と概念分析型が24%である。
以下,構造分析型,情報網羅型,構造分析型の順に,その内容を考察してい くことにする。
① 構造分析型
構造分析型が半分以上を占めた主たる要因は,単元目標にある。なぜなら,
構造分析型におけるほとんどの目標は,産業の実態を構造的に分析した分析的 知識になっているからである。
例えば,稲作生産ならどうであろうか。次のような論理になっている。「稲 作生産は,気候,位置,農事暦,品種改良,土と水の管理,機械化,減反政策._.
等々の要素から成り立っている。そこで,工夫・努力を中核に置き,それらの 要素を内容毎に分類して,構成する。」という論理になっている。
したがって,内容と内容ごとの関係は並列的で,全ての学習が終了しないと,
その全体構造は把握できない,というようになっている。
② 情報網羅型
情報網羅型の目的原理は,より詳しい最新のトピック的な情報をいかに効率的 に伝達するか,ということにある。そのため,今日のめまぐるしい情報量,情 報の質的変化に追いつけず,結果的に授業設計者の個人的主観により,教育内 容が抽出されてしまっている。したがって,知識と知識の関係は相互独立的で,
結びつけることができない。
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③ 概念分析型
概念分析型は,原因と結果が明示された概念的説明的知識によって,単元の 員標が設定されている。すなわち,「なぜ」,「どうなるのか」という問いの答 えが知識化されるのである。したがって,知識と知識の関係は結びつきの強 い因果的関係であるため,知識と知識は相互に,系統化され,結びつくことが
できる。
その反面,目的一手段の目的論的連関が意識されず,原因一結果の因果的関 係においてのみ概念分析された教育内容では,人間の行為の意味をとらえるこ
とができていなかった。
以上のことから,原因一結果の因果的関係と目的一手段の目的論的連関を念 頭に置いて,教育内容を抽出しないと,法則的知識の獲得と人間の行為の意味 理解を図ることが困難になる,と指摘できる。
【表W−2−5:授業構成論理と教育内容抽出論理】
分折1 析2 情報網羅型 構造分析型 概念分析型 構成論理(数・96)
叙述型 3
0
7(28%)理解型 2 1
10(40%)
説明型 0 4(16%)
理解説明型
0
1 4(16%)抽出論理(数・%》 6(2496) 13(5296) 6(2496) 計25(100%)
上記の表は,授業構成論理の分析結果と教育内容抽出論理の分析結果をひと つにまとめたものである。
縦の欄は,授業構成の類型を示し,横の欄は,教育内容抽出の類型を示して
いる。
懸の部分に着目すると,叙述型の授業構成では情報網羅型が一番多く,理解 型の授業構成では構造分析型が多い。説明型は構造分析型と概念分析型と同数 であるが,理解説明型は,概念分析型が圧倒的に多い。
このことは,授業構成原理と教育内容抽出論理が密接に関係しており,相互 に影響を及ぼしている,ということが指摘できる。
さらにいえば,叙述型授業構成原理に基づく教育内容抽出論理は,情報網羅
型に,理解型授業構成原理に基づく教育内容抽出論理は,構造分析型に対応し ている。説明型授業構成原理に基づく教育内容抽出論理は,構造分析型,或い は概念分析型に,理解説明型授業構成原理に基づく教育内容抽出論理は,概念 分析型に対応している。
(3)分析視点3の結果「行為(動機)の理念型」について 【表IV−2−6:行為(動機)の理念型】
理念型・事例数(%) 有 無
理念型の有無
13(52%〉
利害状況のみ
12
i48%)
思想(ゲィジョン)のみ
13(100%)噛 一 雪 冒 一 雪 一 ■ 辱 胴 轍 闘 嘘 櫓 伽 一 ■ 一 一 辱
@ 2(15%), 曹 一 一 一 一 一 一 一 騨 , 一 騨 一 一 曽 一 一 一 一
@ 8(62%)一 零 一 一 騨 層 一 一 一 曹 一 一 ■ 一 一 r 一 扁 一 一
@ 3(23%)
利害・思想
「理念型」とは,第H章2節で説明したように,人間の社会的行為の意味理 解にあたって,行為を突き動かすもの,すなわち動機の「モデル」を示すもの
である。利害とは,利益を最大限追求し,損害を最小限にするという行為を突 き動かす,いわば原動力である。思想とは,展望を持ち,行為の方向性を示唆 する社会や人生に対するヴィジョンである。
分析視点2において,工夫・努力を中核においている構造分析型がもっとも 多かったにもかかわらず,48%,約半分は,動機について追及されていない。
また,理念型を設定している授業においても,62%は,思想のみで,利害 についてはふれられていない。
このように,人間の社会的行為の動機(利害・思想)を明確に位置づけてい ない内容では,人間の社会的行為の意味理解にという面において,どうしても,
その理解は,浅くならざるを得なくなる,ということが指摘できる。
(4)分析視点4の結果「産業をとらえる基本概念(視点)」について
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