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一136.

第3飾 授業モデルの成果

 前節では,理解説明型授業構成原理に基づいた社会科授業モデル「産業と貿 易(貿易から日本が・世界が見える)」を提案した。

 本節では,本研究のテーマである理解説明型授業構成原理を組み込んだ授業 は,法則的知識の獲得という観点から,社会科学的認識形成において,どのよ

うに具現化できたのか明らかにすることに目的がある。

 具現化する視点として,社会科学的認識形成における理解説明型授業構成原 理の目標原理である「法則的知識」と「人問の行為の意味理解」を設定する。

1.法則的知識とr行為の意味理解」の理念型の設定

 ここでは,法則的知識と行為の意味理解における理念型の内容を吟味し,そ の成果を考察する。

(1)法則的知識について

 本授業モデルでは,大きく分けると2っの法則的知識,すなわち,産業間貿 易理論と産業内貿易理論の獲得を目指した。

①産業間貿易理論

 各国は,比較優位な産業分野を特化し,その製品を輸出し,不得意な分 野の製品(財,サービス)を輸入することで相互に利益を得ている。

②産業内貿易理論

ア.製品のプロダ外サイクルに即応したものを輸出入することで,消費者のニーズ  に応じ,生産コスト下げ,利益を得ている。

イ.所得水準のに通った国相互で,製品を輸出入することで,消費者のニー  ズに応じ,利益を得ている。

ウ.消費者の多様なニーズのもと,多くの種類の製品を少しずつ輸出入す  ることで,利益を得ている。

 以上が,本授業モデルで提示した法則的知識である。①はヘクシャー=オリーンの貿 易理論,②ア,はハ㌧ノンのプロダ外サイクル理論,イ,はりンダーの所得水準決定型貿易理 論,ウ.はクルーグマンの消費の多様性理論をベースに作成したものである。

 したがって,本授業モデルにおける法則的知識(概念的説明的知識)は,経 済学の研究成果に依拠したものとなっており,現時点では,より間違いの少な い,説明力の大きい知識となっている。

 このように社会諸科学の成果である理論を教育内容に組み込んでいくこと は,法則的知識の獲i得という観点から,社会科学的認識形成において効果的で ある,といえる。

(2)行為の意味理解の理念型

本授業モデルでは,次のような理念型を設定した。

各国は,国際協調・国際理解を図りながらも,自国の利益を最優先する。

 上記の理念型の設定は,貿易という行為,すなわち輸出したり,輸入したり する行為の背景にある動機を示している。

 社会:事象は,社会的行為の軌跡である。したがって,社会事象に内在してい る意味(動機,目的,願い)を明らかにすることが,当該社会事象をより深く 追求する上で不可欠である。

 その意味において,この理念型の設定は,実際の社会的行為がどれくらい理 念型と逸脱しているか,基準,物差しを提供するものとなっている。

 以上のことから,上記のような理念型を教育内容に組み込んでいくことは,

行為の意味理解という観点から,社会科学的認識形成において効果的である,

といえる。

2.単元の構造

 法則的知識と行為の意味理解を単元レベルで,どのように構造化すれば獲得で きるのか,その成果をここでは明らかにする。

(1)「(1)産業と貿易」の構造

 「①得意な貿易品目」において,産業間貿易におけるオクシャー=オリーンの貿易理 論と「行為の意味理解」の理念型「各国は,比較優位な産業分野を特化し,そ の製品を輸出し,不得意な分野のものを輸入する。各国は,このことにより自 国の得意な分野に集中でき,相互に利益を得る。」を獲得できるように設定さ

一138一

小単元名 単元の主な内容

①得意な貿易 i目

〈行為の意味・理論の習得〉・各国は比較優位な産業分野のものを輸出,それ以外の

K要なものを輸入する。・比較優位をつくることにより,相互に利益を得ている。

ω 産業と貿易

②貿易の移り

マわり

〈適用〉・日本の1960,70,80年代を①の理論と行為の意味で説明 キる。

③現代の貿易 ・「現代の貿易構造の把握」→矛盾「製品輸入率59.1㌫

@もある。なぜ製品を輸出,輸入もするのか。」

q新たな行為の意味・理論の獲得>

̀.・製品のフ.ロダクト舅クルの各過程に即したものを輸出入

@ する。

@。製品開発段階では大消費地から輸出し,製品標準化の段

@ 階では海外から輸出すること労働力の安い国から輸出する

@ ことによって,消費者のニーズに応じつつ低コスト化を図り,

@ 利益を得ている。

a.・所得水準の似通った国相互で,ものを輸出入する。

@・所得水準は,需要条件に影響を与える。その結果,需要条

@ 件の似通った国どうしで,輸出入することによって,各国

@ の需要に応じることで利益を得ている。

b.・多様な製品を少しつつ輸出入する。

@・消費の多様性に即したものを輸出入することで利益

@ を得ている。

③貿易相手国 〈深化〉・目本の貿易相手国を②の理論と行為の意味で説明す 驕B

⑦ 産業と貿易擦

①貿易摩擦の

竭閾

A貿易摩擦の

レり変わり

〈行為の意味・理論の獲得→適用〉・貿易摩擦は,産業構造変化に連動する。貿易摩擦によ

髣A出抑制は,集中豪雨的な大量輸出によっておこる。・〈原因〉:貿易摩擦の原因が輸出の急激な増加による。〈要求〉

@:外国の 要求が輸出の学制。〈行為〉:日本の行為で輸出自 蜍K制。結果は,次のより高い技術を使う産業に移行してい 驕B現地生産に切り替えている。

③現代の貿易

?C

→矛盾「あれ一,おかしいな!輸出抑制でなく,市場開 冾 求めている。」

q新たな行為の意味・理論の獲得〉・貿易摩擦は,産業製品間の量的問題から,当事国の基

?C制度などの質的問題ヘシフトする。・1990年代魎:円高の背景のもと,昌本の一人あたりの所得の拡大=β本の市場規模の拡大。國:日本のメ吻一は産業保護政策により保護を受けているため,他国のメー

Jーは不公平を受けている。だから,もっと市場を開放しろ。日 {は市場規模が大きいので,もっと輸入をしてほしい。もっと

(3)これからの貿易

早く輸出したい。日本の行、:輸入自主 拡大,海外でに現地 生産。基準,制度を欧米並にする。国際協調を図りながらも自 国産業を守りたい。第3者的的公的機関であるWTOに提訴す る。害の少ない分野から,規制緩和をする

〈獲得した行為の意味・理論に基づく未来予測〉

【図V−3−1:単元の構造】

れている。

 「②貿易摩擦の移り変わり」では,「(1)産業と貿易②貿易の移り変わり」

と「(2)①貿易摩擦の問題」で獲得した理論と行為の意味の理念型を統合し て,説明できるように設定されている。

 「③現代の貿易摩擦」では,従来の理論・行為の意味の理念型では説明でき ない事象・出来事と直面できるよう設定されている。したがって,学習者は,

矛盾を感じ,新たな理論と行為の意味理解の理念型の設定を欲するように構成 されている。

 そこで,新たな,摩擦理論と行為の意味の必要性を実感し,獲得できるよう 構成され,現代の貿易摩擦は,輸出抑制から輸入拡大,市場開放へと向かって いることを発見できるよう設定されている。

(3)「(3)これからの貿易」

 「(1)産業と貿易」「(2)産業と貿易摩擦」の内容(理論と行為の意味)

を整理して踏まえられており,これからの展望を討論するための,根拠となっ

ている。

 以上,単元内容の構造を考察してきたが,「法則的知識・行為の意味理解に おける理念型の獲得→法則的知識・行為の意味理解における理念型の応用→矛 盾・新たな法則的知識・行為の意味理解における理念型の必要性→新たな法則

的知識・行為の鰍理解における三型の獲得→1循環1一新たに獲得した理

論・行為の意味理解における理念型に基づく未来予測」という単元の構造は,

理論(法則的知識)と「行為の意味理解」の反証過程となっており,社会科学 的認識形成において効果的である,といえる。

3.授業構成

 「理解」とは,社会事象に内在している行為の意味,すなわち目的一手段の 連関の理解を意味するわけである。「説明」とは,社会事象における原因と結

一140一

果が明示された説明力ある法則的知識をもとに,社会事象について,反証可能 な説明をすることである。

 ここでは,授業構成を明らかにする。授業例として,授業モデルから,小単 元「現在の貿易」の第4−5時の内容を簡略化して取り上げる。

① 貝 標

 ・日本は,より高い技術力を使う加工組立型製品を輸出することによって,

  大きな利益を得てきたことを理解する。

 ・現代の貿易は,産業間貿易と産業内貿易で成り立っていることを説明でき

  る。

②授業構成

構 学習活 ○主な癸問,・指示 予想される

・内容: 助言, ※留意点 児童の反応

1.今まで .rS:身 ・旧本はさらに利益を得るために,今ま の学習成果 でのように,繊維,鉄鋼,家電,自動車

と,生活感 P「「β 「 一ラ リ

@  〆「 と変えてきているから,もっと組立が細

覚・経験を ,「    / 「 かいコンピゴターみたいなものを得意にして,

生かして, れなな畿だち1う 輸出し,さらに利益をている。輸入は,

現代の輸出 魎乏・ やっぱり日本にはない原料が多いと思う。

入品醤を予 ※予想,予想理由 ・ぼくは,日本の得意な自動車をまだま 理 想する. を明確にする。 だたくさん輸出していると思うな。輸入 念

2.予想

※予想は,カード上 は,食料品が多いと思う。なぜなら,197◎

型 を帯グラ にして,輸出と輸 年の時,食:料品の輸出がL2%でだんだん

フに表現

入に分け,構造図 減っていたから,今は,食料晶をたくさ 設 する。 (帯グラフ)の形 ん輸入していると思う。

定 3.各自の にする. ・日本の得意なものは,だんだん省エネ 予想 をお それぞれ各自 型になってきたから,原材料の輸入は減

互いに説

がつくった輸出入 っていると思う。ますますもうけている。

明し合う 構造図をだして,

4.現在

説明し合おう。

の輸出晶

の構造を

・現在の輸出品 ・輸出では,機械類が一番多い。その中

見て,予

闘を提示する。 で,事務用機器が多い。・自動車や電気製 証

想と比べ

品も輸出している。・半導体もたくさん輸