3.3.注意を払うことばの側面 93 そこで,この章を終えるに当たって,ことばづかいに注意する場合,ことば のどの側面に気をつけるかを尋ねた調査の結果をごく簡単に記しておこう。こ れは,豊岡の調査(二二調査)だけで実施されたもので,設問文は,
「あなたは,ことばづかいに注意をはらう場合,どんな点に注意しますか」
というものである。
この質問は,原則として,自由回答を求めるものであるが,被調査者の側か ら回答が出ない場合には,「方円」「敬語」などが記されたリストを提示するこ とになっている。
結果は,表3−14に掲げるとおりである。
表3−14 ことばづかいに注意する点(豊岡。複数回答有)
注意
オない方言 敬語 アクセ 発音 その他
@ ント
全 体 12.6 24.6 53.8 3,6 豆互,1 7.8
性 剛 男 女
11.0
P3.8
24.1 57,2 4.至 玉3.8 1互.0
Q5.0 51.1 3.2 9.G 5.3
年 齢
10代
94 3.場藤接触態度
問への答えであるので実際はもっと多いとみるべきか,いろいろな見方があろ う。それはともあれ,「注意しない」とする回答を属性別にみると,高無齢屡,
また低学歴層に多くなっていることがわかる。
次に,「注意する」という人の場合をみてみよう。この項霞では,注意する ことばの側面はいくつ答えてもいいことになっている。つまり,複数團答を許 しているわけで,回答率の合計は100%を超えるようになっている。
注意する点で最も多い回答は,「敬語」に関するものであり,これは全体の 過半数を得ている。(注意するという人を母数とすると,61.5%に及ぶ。)
属性別にみると,この回答は,「注意しない」の裏返しに近い状況を塁して いる。つまり,年齢では若い入ほど多く,また学歴では中高学歴が低学歴層に 比べてはるかに高率になっている。
この背景には,高年齢層の場合,話し相手との関係は自分のほうが年長であ り,ことばづかいに注意を払う必要のないケーースが多いという事情があろう。
また,現在の日本社会では,年齢と学歴との間に一定の関係があり,高齢者の 学歴は相対的に低い位置にある。このことが,低学歴層の数値に反映している
といえよう。
第2位にあがっているのは,「方言」であり,全体の4分の1を占めている。
これは,年齢の高いものに,また学歴の低い者に多くなっている。「敬語」の 場合と違って,若い人(相対的学歴も高い)はあまり方言で苦労しなくなって いるのに対して,高齢者においてはそうではないからだろう。
f発音(の明瞭さ)」を上げるものは全体の1割程度であり,若い世代と中高 学歴層に比較的多くなっている。また,「アクセント」はごく少数の者が上げ たに過ぎないが,30代と高学歴者とにおいて,これを上げる者が多いことが 目立つ。「発音」や「アクセント」を取り立てて指摘するには一定の知識を必 要とする面がある。通常は,あまり意識にのぼらない事項であろう。
なお,「その他」(26人。これも複数回答あり)には,
相手を傷つけない20人 相手によって13人
わかりやすく 8 きれいに 5 文末表現 4 乱暴なことば 23.3.注意を払うことばの側藤 95 とする回答が得られている。
以上でみてきたように,人々がことばづかいに注意を払う場合,最も多いの は「敬語」ということに含まれる現象であって,これに次ぐのが「方言」の問 題ということになる。
社会言語学の中心課題は,この二つに「外来語jを加えたものだという意見 があるが,一面の真理をついているということもできようか。
4.
1日の言語生活
我々は日常,話す・聞く・書く・読むという4種類のタイプの言語行動を行 って生活している。これらの言語行動は日常のさまざまな場面で具現化し,
我々の言語生活を形づくっている。ここでは,「相談」,「さしずする」などの 具体的な各種言語行動との接触頻度を,言い換えれば日常どのくらいの頻度で 各種言語行動に接しているのかを,アンケート調査の結果によって見ていくこ
とにする。
調査の方法としては,次にあげるような2種類のものが考えられよう。
一つは,「きのう」という1日の行動に限定してたずねる方法である。通常,
「あなたは,きのうどんなことをしましたか。」といった質問文で,該当する選 択肢にチェックしてもらう方法をとる。この方法を便宜的に「前日行動チェッ ク方式」と呼ぶことにしよう。
もう一つの方法は,ある単位越前に平均何回くらいその場面を経験するのか をたずねるものである。今回の調査では,r平均すると1週間にどのくらい次 の場面を経験しますか。」といった質問文を用いた。この方法を呼均頻度回 答方式」と呼ぶことにする。豊中,宮津の両調査では平均頻度回答方式を採用
し,豊岡調査では弟日行動チェック方式で調査を実施した。
なお,調査票の具体的イメージおよび選択肢については,f9.調査票」の 項を参照されたい。また,取りあげた言語行動場面は,比較のことも考慮して 各調査地域でできるだけ岡じになるように設定したが,いくぶん異なるものも 含まれている。そこで各調査ごとの設定場面の概略と場颪数を以下に示すこと
にする。
豊岡調査では職場と学校との場面の区別をせずに,まとめて質問したのであ るが,属性を参照することによって勤労者と学生とに分けて集計してある。*
印の箇所がその部分である。
98 4. 1臓の言語生活
a.家庭の中で話す b.近所の親しい人と話す
。.近所のあまり親しくない人と話す d。職場で話す
e.学校で話す
£ 喫茶店やレストランで話す g。 電車やバスの中で話す h.その他の場所で話す i. 聞く,書く,ii売む 合 計
豊中調査 14場面 12 12 16 13
6
8
81
宮津調査 豊岡調査 17場面 18場面
15 15 12 12 20 18*
16 18*
9 9 6 6