CQ
:
CPR中の高度な気道確保器具の使用で、
BVMよりも良好な転帰が得られ るか?
P:あらゆる状況下の成人の心停止患者
I:高度な気道確保器具(気管チューブもしくは声門上気道デバイス)の使用 C:基本的な気道確保(BVM±口咽頭エアウェイ)
O:退院時、30 日後、60 日後、180 日後、1 年後の神経学的転帰および生存、ROSC、CPR 中 のパラメータ、誤嚥性肺炎の発症
推奨と提案
あらゆる状況下の心停止患者への CPR 中に高度な気道確保器具もしくは BVM を使用するこ とを提案する(弱い推奨、非常に低いエビデンス)。
エビデンスの評価に関する科学的コンセンサス
心停止中の気道管理のための最適なアプローチは現時点では明らかでない。近年のいくつ かの観察研究は、高度な気道確保器具が基本的な気道確保法に比して優れているという仮説 に挑んでいる。
1) すべての高度な気道確保器具 vs BVM
重大なアウトカムとしての 1 年後の生命予後について、1 件の報告があった(非常に低い エビデンス:非常に深刻なバイアスのリスク、非直接性、不精確さ、深刻な非一貫性により グレードダウン)。1,278 名の院外心停止患者を対象とした観察研究では、高度な気道確保器 具[気管チューブもしくは食道閉鎖式エアウェイ(esophageal obturator airway:EOA)や ラリンゲアルマスクエアウェイ(laryngeal mask airway;LMA)]使用群と BVM 群の 1 年後の 非調整生存率が同等(3.7% vs 5.6%, OR 0.65, 95%CI 0.4~1.1)であった。
重大なアウトカムとしての 1 ヶ月後の神経学的転帰について、1 件の報告があった(非常 に低いエビデンス:非常に深刻なバイアスのリスク、非直接性、深刻な非一貫性によりグレー ドダウン)。648,549 名の院外心停止患者を対象とした観察研究では、高度な気道確保器具[気 管チューブもしくは LMA、ラリンゲアルチューブ(laryngeal tube:LT)、コンビチューブ]
使用群における 1 ヶ月後の神経学的転帰良好の非調整比率が BVM 群と比較して低いことが示 されていた(1.1% vs 2.9%, OR 0.38, 95%CI 0.36~0.39)。得られたすべての変数を調整 した OR は 0.32 (95%CI 0.30~0.33)であった。
重大なアウトカムとしての退院時の神経学的転帰について、1 件の報告があった(非常に 低いエビデンス:非常に深刻なバイアスのリスク、非直接性、深刻な非一貫性によりグレー ドダウン)。10,691 名の院外心停止患者を対象とした観察研究では、高度な気道確保器具(気 管チューブもしくは LMA、LT、コンビチューブ)使用群における退院時の良好な神経学的予後 の非調整下比率が BVM 群と比較して低いことが示されていた(5.3% vs 18.6%, OR 0.25, 95%CI 0.2~0.3)。同報告における 3,398 名の傾向スコア-マッチング解析では、全ての変数 を調整した退院時の神経学的予後良好に対する OR(BVM vs 高度な気道確保器具)は 4.19 (95%CI 3.09~5.70)であった。
重大なアウトカムとしての退院時の生命予後に対する検討では、2 件の報告があった(非 常に低いエビデンス:非常に深刻なバイアスのリスク、非直接性、深刻な非一貫性によりグ レードダウン)。10,691 名の院外心停止患者を対象とした観察研究では、高度な気道確保器 具(気管チューブもしくは LMA)使用群における退院時の非調整下生存率が BVM 群と比較して 低いことが示されていた(7.7% vs 21.9%; OR 0.30,95% CI 0.3~0.3)。また、5,278 名 の院外心停止患者を対象とした観察研究では、高度な気道確保器具(気管チューブもしくは LMA)使用群における退院時の非調整下生存率は BVM 群と同等であった(6.6% vs 7.0%; OR 0.94,95% CI 0.7~1.3)。
2) 気管チューブ vs BVM
重大なアウトカムとしての 1 ヶ月後の神経学的転帰について、1 件の報告があった(非常 に低いエビデンス:非常に深刻なバイアスのリスク、非直接性、深刻な非一貫性によりグレー ドダウン)。409,809 名の院外心停止患者を対象とした観察研究で、気管チューブ群における 1 ヶ月後の神経学的予後良好の非調整下比率が BVM 群と比較して低いことが示されていた (1.0% vs 2.9%, OR 0.35, 95%CI 0.31~0.38)。同じ報告における、357,228 名の傾向ス コア-マッチング解析では、全ての変数を調整した 1 ヶ月後の良好な神経学的予後に対する OR(気管挿管 vs BVM)は 0.42(95%CI 0.34~0.53)であった。
重大なアウトカムとしての 1 ヶ月後の生命予後について、2 件の報告があった(非常に低 いエビデンス:非常に深刻なバイアスのリスク、非直接性、深刻な非一貫性によりグレード ダウン)。409,809 名の院外心停止患者を対象とした観察研究で、気管チューブ群における 1 ヶ 月後の非調整下生存率が BVM 群と比較して低いことが示されていた(4.2% vs 5.3%, OR 0.77, 95%CI 0.74~0.81)。同じ報告における、357,228 名の傾向スコア-マッチング解析で は、全ての変数を調整した 1 ヶ月後生存に対する OR(気管チューブ vs BVM)は 0.88(95%CI 0.79~0.98)であった。別の 10,783 名の院外心停止患者を対象とした観察研究でも、気管 チューブ群における 1 ヶ月後の非調整下生存率が BVM 群と比較して低いことが示されていた (3.6% vs 6.4%, OR 0.54, 95%CI 0.5~0.7)。
重大なアウトカムとしての退院時の神経学的転帰に対する検討では、1 件の報告があった
(非常に低いエビデンス:非常に深刻なバイアスのリスク、非直接性、深刻な非一貫性により グレードダウン)。7,520 名の院外心停止患者を対象とした観察研究で、気管チューブ群にお ける退院時の神経学的予後良好の非調整下比率が BVM 群と比較して低いことが示された (5.4% vs 18.6%, OR 0.25, 95%CI 0.2~0.3)。
重大なアウトカムとしての退院時の生命転帰について、6 件の報告があった(非常に低い エビデンス:非常に深刻なバイアスのリスク、非直接性、不精確さ、深刻な非一貫性により グレードダウン)。7,520 名の院外心停止患者を対象とした観察研究では、気管チューブ群の 退院時の非調整下生存率は BVM 群と比較して低いことが示されていた(8.3% vs 21.9%, OR 0.25, 95%CI 0.2~0.3)。4,887 名の院外心停止患者を対象とした観察研究では、気管挿管 群と BVM 群における非調整下生存率が同等であることが示されていた(8.0% vs 7.0%, OR 1.16, 95%CI 0.7~1.9)。同じ報告における、496 名の傾向スコア-マッチング解析では、生 存退院の OR(気管チューブ vs BVM)は、1.44 (95%CI 0.66~3.15)であった。1,158 名の院外 心停止患者を対象とした観察研究では、気管チューブ群の退院時の非調整下生存率は BVM 群 と比較して低いことが示されていた(3.7% vs 10.8%, OR 0.32, 95%CI 0.2~0.6)。8,651 名の院外心停止患者を対象とした観察研究でも、気管チューブ群の退院時の非調整下生存率 は BVM 群と比較して低いことが示されていた(3.7% vs 9.1%, OR 0.41, 95%CI 0.3~0.5)。
1,142 名の院外心停止患者を対象とした観察研究でも、気管チューブ群の退院時の非調整下 生存率は BVM 群と比較して低いことが示されていた(6.3% vs 28.6%, OR 0.17, 95%CI 0.1~
0.2)。
3) 声門上気道デバイス vs BVM
重大なアウトカムとしての 1 ヶ月後の神経学的転帰について、1 件の報告があった(非常 に低いエビデンス:非常に深刻なバイアスのリスク、非直接性、深刻な非一貫性によりグレー ドダウン)。607,387 名の院外心停止患者を対象とした観察研究では、声門上気道デバイス(LMA もしくは LT、コンビチューブ)を使用した群の 1 ヶ月後の非調整下生存率は BVM 群と比較し て低いことが示された(1.1% vs 2.9%, OR 0.38, 95%CI 0.37~0.40) 。同じ報告における、
357,228 名の傾向スコア-マッチング解析では、全ての変数を調整した 1 ヶ月後の良好な神経 学的予後に対する OR(声門上気道デバイス vs BVM)は 0.36(95%CI 0.33~0.40)であった。
重大なアウトカムとしての退院時の神経学的転帰について、1 件の報告があった(非常に 低いエビデンス:非常に深刻なバイアスのリスク、非直接性、深刻な非一貫性によりグレー ドダウン)。5,039 名の院外心停止患者を対象とした観察研究では、声門上気道デバイス群の 1 ヶ月後の神経学的転帰良好の非調整下比率は BVM 群と比較して低いことが示された(5.2%
vs 18.6%, OR 0.24, 95%CI 0.2~0.3)。
重大なアウトカムとしての退院時の生命転帰について、2 件の報告があった(非常に低い エビデンス:非常に深刻なバイアスのリスク、非直接性、不精確さ、深刻な非一貫性により グレードダウン)。5,039 名の院外心停止患者を対象とした観察研究では、声門上気道デバイ ス群の退院時の非調整下生存率は BVM 群と比較して低いことが示された(6.7% vs 21.9%, OR 0.26, 95%CI 0.2~0.3)。別の 262 名の院外心停止患者を対象とした観察研究でも同様に、
声門上気道デバイス群の退院時の非調整下生存率は BVM 群と比較して低かった(0.0% vs 10.7%)。
4) ラリンゲアルマスクエアウェイ(LMA) vs BVM
重大なアウトカムとしての退院時の生命転帰について、1 件の報告があった(非常に低い エビデンス:非常に深刻なバイアスのリスク、非直接性、不精確さ、深刻な非一貫性により グレードダウン)。5,028 名の院外心停止患者を対象とした観察研究では、LMA 群の退院時の 非調整下生存率は BVM 群と比較して低いことが示された(5.6% vs 7.0%, OR 0.80, 95%CI 0.5~1.2)。同じ報告における、772 名の傾向スコア-マッチング解析では、退院時生存に対 する OR(LMA vs BVM)は 0.45(95%CI 0.25~0.82)であった。
推奨と提案
あらゆる状況下の心停止患者への CPR 中に高度な気道確保器具もしくは BVM を使用するこ とを提案する(弱い推奨、非常に低いエビデンス)。
患者にとっての価値と
ILCORの見解
院内心停止の研究による十分なデータが無いため、院外心停止から得られたデータを外挿 する必要がある。
使用されるエアウエイの種類は医療従事者の技量や訓練に依存する可能性がある。気管挿 管は、声門上気道デバイスや BVM と比較して、気づかれない食道挿管の頻度や胸骨圧迫の中 断時間を増加させる可能性がある。BVM や高度な気道確保器具は、同一の患者に対して、し ばしば段階的に使用されるが、正式に評価されていない。
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Knowledge Gaps(今後の課題)
・ 心停止に対する最初の気道管理に関する RCT はない。
・ それぞれの気道確保器具に対し必要とされる訓練の方法や期間は不明である。
・ 心停止中の気道管理に対する段階的アプローチは一般的に行われているのか? この 疑問をどのように厳密に研究するかは明らかではない。