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CQ

CPR

の質に関するリアルタイムのフィードバック装置を使うことで患者 の転帰が改善するか?

P:あらゆる状況での成人および小児の心停止

I:CPR の機械的要素(胸骨圧迫や人工呼吸のテンポや深さなど)を評価するリアルタイム のフィードバック装置

C:フィードバック装置を使わない CPR

O:退院時、30 日後、60 日後、180 日後、1 年後の神経学的転帰および生存、自己心拍再開

(return of spontaneous circulation;ROSC)、バイスタンダーCPR の施行、最初の胸骨圧迫 までの時間、初回電気ショックまでの時間、CPR の質

推奨と提案

臨床における CPR では、リアルタイムの視聴覚フィードバック装置は、心停止患者に対す

る包括的治療体制の一環として用いることを提案する(弱い推奨、非常に低いエビデンス)。 包括的治療体制の枠組み外で、単独の方策としてリアルタイムの視聴覚フィードバック装 置を使用しないことを提案する(弱い推奨、非常に低いエビデンス)(「第 8 章 普及教育のた めの方策」参照)。

エビデンスの評価に関する科学的コンセンサス

臨床やトレーニングにおける CPR において、CPR のフィードバック装置は、CPR の質を改善 して、ROSC 率や生存率を改善させることを目的として使用されている。CPR のフィードバッ ク装置としては、音声による指示、メトロノーム、目に見えるダイアル、数字の表示、波形、

言語による指示やアラーム灯のような視聴覚的な方式がある。ディスプレイがある場合は、

胸骨圧迫の深さやテンポなど、胸骨圧迫ごとの質に関するパラメーターを救助者がリアルタ イムに確認できる。音声による指示は CPR のテンポ(メトロノームなど)を指示したり、救 助者に対する注意を喚起したりする(例えば、「もっと強く」や「しっかり押せています」な ど)。

CPR のフィードバック装置を使うことは、個々の手技というより、むしろ総合的な CPR の 質を改善させる戦略を含む、より大きなケアシステムの一部とみなすべきである(「第 8 章 普及教育のための方策」参照)。

このレビューでは、RCT 2 件と前後比較の観察研究 10 件、計 12 件の研究が見いだされた。

これらの研究のうち、9 件は計 3,716 名の成人が対象で、3 件は計 34 名の小児が対象であっ た。4 件は院内心停止が対象で、7 件は院外心停止、1 件は院内・院外の心停止が対象であっ た。

検討の対象となったフィードバック装置としては、加速度計内蔵の機器と録音音声による 指示があった。2010 年に行われたエビデンス・レビューと比べ、今回のレビューでは、あら たに 8 件の研究が特定された。これらすべての研究には、フィードバック装置を使用するこ とに起因する施行バイアスおよび検出バイアスがつきまとう。医療従事者が介入(フィード バック装置の有無)について盲検化されていないからである。

重大なアウトカムとしての神経学的転帰について、1586 名の患者を対象としたクラスター RCT(中等度のエビデンス:バイアスのリスクによりグレードダウン)、計 670 名の成人患者 を対象とした観察研究 2 件(非常に低いエビデンス:バイアスのリスクによりグレードダウ ン)があった。RCT では、良好な神経学的結果を達成した患者の割合に差はなかった(対照 群 0.1% vs 使用群 10.3%, p=0.855)。CPR フィードバックの使用の有無による良好な神 経学的転帰の有意差を報告した研究はなかった。良好な神経学的転帰を伴う生存に対する CPR フィードバックの効果は、-0.8~5.8%であった。

重大なアウトカムとしての生存退院に関して、1,586 名の患者を対象としたクラスター・

RCT 1 件(中等度のエビデンス:バイアスのリスクによりグレードダウン)、計 670 名の成人 患者を対象とした観察研究 4 件と 1,192 名の小児を対象とした観察研究 1 件(非常に低いエ ビデンス:バイアスのリスクによりグレードダウン)があった。RCT では、生存退院を達成 した患者の割合に差がなかった(対照群 44.7% vs 使用群 44.3%, p=0.962)。CPR フィー ドバックの使用の有無による生存退院率の統計学的有意差を示した研究はなかった。生存退 院に対する CPR フィードバックの効果は、−0.9~5.2%であった。

重大なアウトカムとしての ROSC に関して、計 1,886 名の患者を対象とした RCT 2 件(中等

度のエビデンス:バイアスのリスクによりグレードダウン)、成人を対象とした観察研究 7 件 と 3,447 名の小児を対象とした観察研究 1 件(非常に低いエビデンス:バイアスのリスクに よりグレードダウン)があった。RCT では、ROSC を達成できた患者の割合に差はなかった(対 照群 44.7% vs 使用群 44.3%, p=0.962)。フィードバックを使うことによる ROSC 率の統 計学的有意差を示した研究が 1 件あった。しかし、この研究ではフィードバックは医師の裁 量によって使用され、フィードバックを使用するか否かの意思決定に関する詳細は示されて いない。ROSC に対する CPR フィードバックの効果は、-4.4~17.5%であった。CPR フィード バックにより ROSC 率が 50%増加したとする研究が 1 件あるが、この小規模な研究の被験者 は、各群4名ずつのみであった。

重要なアウトカムとしての胸骨圧迫のテンポに関して、計 1474 名の患者を対象とした RCT 2 件(中等度のエビデンス:バイアスのリスクによりグレードダウン)、および計 777 名の成 人を対象とした観察研究 3 件と 8 名の小児を対象とした観察研究 1 件(非常に低いエビデン ス:バイアスのリスクによりグレードダウン)があった。クラスターRCT ではフィードバッ クが使われた場合は、1 分間当たりの胸骨圧迫回数が 4.7 回(95%CI 3.0~6.4 回)、有意に 減少したが、前向き RCT ではフィードバックの有無に関わらず、胸骨圧迫のテンポに有意差 はなかった。どちらの RCT においも、胸骨圧迫のテンポは、国際的に推奨されているテンポ である 100 回/分に近かった。観察研究 1 件では、フィードバックの有無に関わらず、胸骨 圧迫のテンポに差がなく、そのテンポは国際的に推奨されている 100 回/分に近かった。さ らに、他の観察研究 2 件では、CPR フィードバックを用いると胸骨圧迫のテンポが 128 回/

分から 106 回/分(-23 回, 95%CI −26~−19 回)に減少した。小児の研究では、フィード バックを用いると、胸骨圧迫のテンポは平均で 1 分間当たり 10 回少なく、コントロール群で は 1 分間当たり 120 回を超えていた。CPR のフィードバック装置を用いると胸骨圧迫のテン ポをあまり早すぎないようにする効果があるかもしれない。

重要なアウトカムとしての胸骨圧迫の深さに関し、計 1296 人の患者を対象とした RCT 2 件

(中等度のエビデンス:バイアスのリスクによりグレードダウン)、および計 777 人の成人患 者を対象とした観察研究 3 件と 8 人の小児患者を対象とした観察研究 1 件(非常に低いエビ デンス:バイアスのリスクによりグレードダウン)があった。クラスターRCT では、フィー ドバックを用いた場合には胸骨圧迫の深さに 1.6 ㎜(95%CI 0.5~2.7mm)(クラスター調整 後の有意な差が認められた。しかし、この差が臨床的に意味を持つか否かは疑わしく、いず れの群も胸骨圧迫の深さの平均は成人で国際的に推奨されている深さである 5 ㎝に満たな かった。前向き RCT では、フィードバックを用いても用いなくても、胸骨圧迫の深さに有意 差はなく、全ての胸骨圧迫の深さは、成人に対して国際的に推奨されている 5cm にわずかに 及ばなかった(4.4 cm と 4.3 cm)。成人を対象とした観察研究 2 件では、CPR フィードバック を用いた場合に胸骨圧迫が有意に深かった。Bobrow らによればフィードバックを用いた場合 には、胸骨圧迫が 1.06cm 深かった。(5.46 ㎝ vs 4.52 ㎝, MD 0.97cm, 95%CI 0.71~1.19cm) が、Kramer-Johansen らの報告では、この差はわずかであった(3.4 cm vs 3.88 cm, MD 0.4cm, 95%CI 0.2~0.6 cm)。小児を対象とした研究では、胸骨圧迫の深さの平均に有意差はなかっ た。フィードバック装置の使用によって、胸骨圧迫の深さに関して意味のあるような差が生 じるとは思えない。

重要なアウトカムとしての胸骨圧迫比率に関して、RCT 1 件(中等度のエビデンス:バイ アスのリスクによりグレードダウン)、および成人を対象とした観察研究 3 件と小児を対象と した観察研究 1 件(非常に低いエビデンス:バイアスのリスクによりグレードダウン)があっ

た。RCT によると、CPR フィードバック装置を使った場合、クラスター調整後の差は 1.9%で あった。この差は統計学的には有意であるが、その臨床的重要性は疑わしい。成人を対象と した研究では群間に有意差はなく、小児の研究ではサンプルサイズが小さすぎて、統計学的 検討はできなかった。フィードバック装置の使用によって、胸骨圧迫比率に意味のあるよう な差が生じるとは思えない。

重要なアウトカムとしての換気回数に関して、計 532 人の成人患者を対象とした観察研究 3 件(非常に低いエビデンス:バイアスのリスクによりグレードダウン)を得た。CPR フィー ドバックの有無に関わらず、換気回数に有意差を示した研究はなかった。

重要なアウトカムとしての呼気終末 CO2分圧に関して計 131 名の患者を対象とした観察研 究 2 件(非常に低いエビデンス:バイアスのリスクによりグレードダウン)があった。Kern によれば、CPR フィードバック装置を用いると、呼気終末 CO2分圧は有意に増加する(1 分間 当たり 120 回の胸骨圧迫を指示した場合+6.3mmHg、1 分間当たり 80 回の胸骨圧迫を指示 した場合+4.3mmHg)。Bobrow によれば、CPR フィードバックによって呼気終末 CO2分圧が 4.7mmHg 増加したが、その差の臨床的重要性は疑わしい。

重要なアウトカムとしての胸骨圧迫の際に患者に寄りかかる力に関して、20 名の小児患者 を対象とした観察研究 1 件(非常に低いエビデンス:バイアスのリスクによりグレードダウ ン)があった。CPR フィードバックを使うことで、患者に寄りかかる力が 0.9 ㎏減少した。

推奨と提案

臨床における CPR では、リアルタイムの視聴覚フィードバック装置は、心停止患者に対す る包括的治療体制の一環として用いることを提案する(弱い推奨、非常に低いエビデンス)。

包括的治療体制の枠組み外で、単独の方策としてリアルタイムの視聴覚フィードバック装 置を使用しないことを提案する(弱い推奨、非常に低いエビデンス)(「第 8 章 普及教育のた めの方策」参照)。

患者にとっての価値と

ILCOR

の見解

この推奨にあたっては、治療の質に関する継続的な質改善システムの開発の意義を、その コストよりも重視した。医療資源に乏しい地域では、このテクノロジーを採用することより も、他のシステム開発に資源を分配することを優先するかもしれない。リアルタイムに CPR をフィードバックする装置は、CPR の質に関する指標を記録することによって、CPR の質の改 善に向けて振り返りを行ったり、戦略を立てたりすることにも利用できる。現在の視聴覚 フィードバック装置を使えば、胸骨圧迫や換気など、CPR の鍵となる指標に関する情報が得 られる。しかし、これらの指標の最適な数値目標、あるいは異なる数値目標間の関係は明確 には定義されていない。

Knowledge Gaps

(今後の課題)

・ 病院内外における成人や小児の心停止において、1 分間当たり 100~120 回という胸骨 圧迫のテンポが、100 未満や 120 以上に比べ、CPR の質の改善のための取り組みにどの ような影響を与えるか?また、そのような取り組みがない場合の生存率その他の臨床的 転帰や経済的効果にどう影響するか?