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CQ

:用手胸骨圧迫と機械的

CPR

装置のどちらが良好な転帰をもたらすか?

P:あらゆる状況下の成人の心停止患者 I:機械的 CPR 装置の使用

C:用手胸骨圧迫

O:退院時、30 日後、60 日後、180 日後、1 年後の神経学的転帰および生存、ROSC

推奨と提案

用手胸骨圧迫に代えて機械的 CPR 装置をルーチンには使用しないことを提案する (弱い推 奨、中等度のエビデンス)。

質の高い用手胸骨圧迫の継続が実行不可能な状況や、胸骨圧迫実施者が危険にさらされる ような状況では、質の高い用手胸骨圧迫の理にかなった代替手段として、機械的 CPR 装置を 用いることを提案する(弱い推奨、低いエビデンス)。

エビデンスの評価に関する科学的コンセンサス

高い質の用手的な CPR は疲労により、CPR の質が時間とともに悪化するというエビデンス がある。

機械的 CPR 装置は高い質の CPR を持続期間の間提供できる可能性がある。しかし、2010 の CoSTR 作成時に、アウトカムへのそれらの影響は不明だった。

重大なアウトカムとしての 1 年後の生存率について、Lund University Cardiac Arrest System (LUCAS)を用いた 1 件の RCT の報告があり、用手胸骨圧迫と比較して、有益性も有害 性も示さなかった (5.4%対 6.2%, RR 0.87, 95%CI 0.68~1.11)(中等度のエビデンス:

深刻なバイアスのリスクによりグレードダウン)。

重大なアウトカムとしての 180 日後の生存について、LUCAS を使用し 2,589 人の院外心停 止患者が登録された 1 つの RCT があり、用手胸骨圧迫と比較して有益性も有害性も示さなかっ た(8.5% vs 8.1%, RR 1.06,95 %CI 0.81~1.41)(中等度のエビデンス:強いバイアス のリスクによりグレードダウン)。

重大なアウトカムとしての 180 日後の良好な神経学的転帰および 30 日後の良好な神経学的 転帰について、LUCAS を使用し 2,589 人の院外心停止患者が登録された 1 件の RCT があり、

用手胸骨圧迫と比較して、180 日後(8.5% vs 7.6%, RR 1.11, 95%CI 0.86~1.45)でも、

30 日後(7.3% vs 8.1%, RR 1.11, 95%CI 0.84~1.45)でも、有益性も有害性も示さなかっ た(中等度のエビデンス:深刻なバイアスのリスクによりグレードダウン)。

重大なアウトカムとしての神経学的転帰良好(CPC 1 か 2、または modified Rankin Scale 0~3 で定義される)での生存退院率について、7582 人の院外心停止患者が登録され、様々な 結果を示している 3 件の RCT があった(中等度のエビデンス:深刻なバイアスのリスクによ りグレードダウン)。1 件の研究(n=767)では、load-distributing band(負荷分散バンド)

を用いた機械的 CPR 装置は、用手胸骨圧迫と比較して有害であることが示された(コントロー ル群の患者 7.5% vs 介入群 3.1%, p=0.006, RR 0.41, 95%CI 0.21~0.79)。

他の 2 件の RCT(n=767)では、1 件は load-distributing band(負荷分散バンド)を、

もう 1 件は LUCAS を使用しており、用手胸骨圧迫と比較して、load-distributing band(負 荷分散バンド)研究は介入群の生存率 4.14% vs 用手胸骨圧迫群 5.25% (RR 0.79, 95%CI 0.60~1.03)、LUCAS 研究では介入群 8.31% vs 用手胸骨圧迫群 7.76%(RR 1.07, 95%CI 0.83~1.39)で、有益性も有害性も示さなかった。

重大なアウトカムとしての生存退院率について、7734 人の院外心停止患者と 150 人の院内 心停止患者が登録され、不均一な結果を示している 5 件の RCT があった(中等度のエビデン ス:深刻なバイアスのリスクによりグレードダウン)。院内心停止患者を対象とした 1 件の研 究(n=150)では、ピストン器具を用いると用手胸骨圧迫と比べて有益である事が示された (32.9% vs 14.7%, p=0.02, RR 2.21, 95%CI 1.17~4.17)。他の 2 件の LUCAS を用いた RCT では有益性も有害性も示さなかった(LUCAS 群 9.0% vs 用手胸骨圧迫群 9.15%, RR 0.98, 95%CI 0.77~1.25)(LUCAS 群 8.0% vs 用手胸骨圧迫群 9.72%, RR 0.82, 95%CI 0.29~2.33)。load-distributing band(負荷分散バンド)装置を用いた 1 件の大規模 RCT(n

=4231)では、質の高い用手胸骨圧迫と比べて同等である事が示された(9.34% vs 10.93%, RR 0.85, 95%CI 0.71~1.02)。

重大なアウトカムとしての 30 日後の生存率について、LUCAS を用いた 2 件の RCT(n=7060)

があり、質の評価を受けていない用手胸骨圧迫と比較して、有益性も有害性も示さなかった (6.3% vs 6.85%, RR 0.92, 95%CI 0.73~1.16) (8.82% vs 8.07%, RR 1.02, 95%CI 0.97~

1.31)(中等度のエビデンス:深刻なバイアスのリスクによりグレードダウン)。

重要なアウトカムとしての ROSC について、11638 人の心停止患者(院内及び院外)が登録 された 7 件の RCT があった(低いエビデンス:深刻なバイアスのリスク、深刻な非一貫性に よりグレードダウン)。2 件の研究(n=167)から、用手胸骨圧迫と比較して、それぞれ 14.29%

vs 0%(RR 適用できない)と 55.26% vs 37.84%(RR 1.46, 95%CI 1.02~2.08)で、機械的 CPR 装置の有用性が示された。1 件の研究(n=4231)では、28.59% vs 32.32% (RR 0.88, 95%

CI 0.81~0.97)で、機械的 CPR 装置による有害性が示されたが、中間解析による修正は行わ れていない。4 件の研究(n=7240)では用手胸骨圧迫と比較して、それぞれ 47.06% vs 17.75%

(RR 2.67, 95%CI 0.85~8.37)、31.60% vs 31.39% (RR 1.01, 95%CI 0.92~1.10)、 35.38%

vs 34.60%(RR 1.02, 95%CI 0.92~1.14)、 40.54% vs 31.94%(RR 1.27, 95%CI 0.82~

1.96)と、有益性も有害性も示さなかった。

推奨と提案

用手胸骨圧迫に代えて機械的 CPR 装置をルーチンには使用しないことを提案する (弱い推 奨、中等度のエビデンス)。

質の高い用手胸骨圧迫の継続が実行不可能な状況や、胸骨圧迫実施者が危険にさらされる

ような状況では、質の高い用手胸骨圧迫の理にかなった代替手段として、機械的 CPR 装置を 用いることを提案する(弱い推奨、低いエビデンス)。

患者にとっての価値と

ILCOR

の見解

ILCOR ALS タスクフォースは、機械によるものにせよ人間によるものにせよ、適切な深さ、

速さと中断の最小化を伴った質の高い胸骨圧迫を確実に実施することに重きを置いた。また タスクフォースは、機械的 CPR 装置の適用を考慮するにあたり、圧迫の中断を最小化するこ とや、有害となりうる電気ショックの遅延などには焦点をあてなかった。

機械的 CPR 装置の使用に関する推奨を作成するにあたり、厳格な使用訓練と CPR の質のモ ニタリングのもとに行なわれた大規模の 1 件の RCT(高いエビデンス)での、非常に高い質 の用手胸骨圧迫と負荷分散バンドを用いた機械的胸骨圧迫は同等であるという結果を重視し た。さらに、タスクフォースは、質の高い用手胸骨圧迫の継続が現実には困難な状況が存在 するという事実を認識した。例えば、胸骨圧迫実施者が危険にさらされるような走行中の救 急車内での CPR や、胸骨圧迫実施者の疲労により用手胸骨圧迫の質が保てないような長時間 の CPR (例:低体温による心停止)、特定の手技中の CPR (例:冠動脈造影や体外循環式 CPR の準備)などが挙げられる。

観察研究を除外しても、システマティックレビューを行なうための十分な量のデータが RCT の結果から得られるという合意がタスクフォース内で得られた。用手胸骨圧迫と機械的胸骨 圧迫を比較したいくつかの観察研究が存在はするが、患者の選択やグループの割り当て、そ れに制御不能な交絡因子というバイアスに関連した固有のリスクが存在するため、それらの 研究は CoSTR ステートメントを作成する過程から除外する決断をした。

世界中の文献から、あらゆるタイプの自動機械的 CPR 装置を研究対象とした RCT を検索し た。レビューを開始するに先立ち、解析中に装置に固有な効果が認められるかもしれないた め、装置の種類ごとに分けてデータを構成することを計画した。装置ごとの正式な解析を行 うまでもなく、明らかに装置に特異的な効果は認められなかった。

ILCOR ALS タスクフォースは、エビデンス整理表や CoSTR ステートメントに含まれないい くつかのデータも考慮に入れた。特に PARAMEDIC study では、機械的胸骨圧迫と 3 ヶ月後の 良好な神経学的転帰(CPC 1 か 2)での生存の悪化との関連性が示された (調整後 OR 0.72, 95%

CI 0.52~0.99)。良好な神経学的転帰での 90 日後の生存は、研究グループが事前にアウトカ ムとして設定していなかった項目であるため、この研究結果は科学的コンセンサスに組み込 まれなかった。

エビデンスを評価した後、推奨の最終的な文言を決定するにあたり、多くの議論があった。

自動機械的 CPR 装置を用手胸骨圧迫の理にかなった代替手段として弱い推奨にするのが最も 適切であると考えるメンバーがいる一方で、他のメンバーは自動機械的 CPR 装置をルーチン には使用しないという推奨がより適切であると考えた。レビューしたエビデンスの大部分で は、機械的胸骨圧迫と用手胸骨圧迫には、重大なもしくは重要なアウトカムと関連して有意 差は無いもしくは同等であることが示唆された。という点では、全般的な合意が得られた。

タスクフォースはこの全般的な合意と、いくつかの研究で示唆されている機械的胸骨圧迫と アウトカムの負の相関や、様々な状況下で機械的 CPR 装置を装着する場合の潜在的な影響と を比較検討した。これらの要素を勘案した上でタスクフォースは、入手可能な臨床的エビデ ンスでは、質の高い用手胸骨圧迫が必要とされるすべての臨床現場において、広く普遍的に 機械的 CPR 装置を導入する事への推奨は支持されない、と結論づけた。

ILCOR ALS タスクフォースはオンライン上のパブリックコメントをレビューした。質の高 い用手胸骨圧迫を継続して実施するよりも機械的胸骨圧迫の方がより実用的であると考えら れる特別な状況があることや、状況によっては機械的胸骨圧迫が胸骨圧迫実施者の安全を改 善する可能性があることが示唆された。走行中の救急車内で固定されずに用手胸骨圧迫を実 施していることは、特に安全でない状況として認識された。このような状況下で胸骨圧迫を 継続する上で、機械的 CPR 装置を使用することで実施者はイスに座って固定されることが可 能となる。これらの状況は文献的には直接記載されてはいないが、この技術を用いるのに理 に適った状況であると判断し、推奨と提案に含めることとした。

Knowledge Gaps

(今後の課題)

• 走行中の救急車内や、長時間の CPR、それに冠動脈造影などの手技施行中などの特定の 状況において、機械的 CPR 装置は用手胸骨圧迫よりも優れているか?

• 機械的胸骨圧迫もしくは用手胸骨圧迫により、有意に有用性がある患者サブグループは あるか(例:初期波形がショック適応のグループと非適応のグループ)?

• 重要な臨床アウトカムに関して、あるタイプの機械的 CPR 装置は、他のタイプの装置と 比べて優れているか?