いエビデンス)。
患者にとっての価値と
ILCORの見解
これらの推奨を行うにあたり、重要なアウトカムとしての生存入院に対するアミオダロン の有益性を考慮した。しかし抗不整脈薬が、重大なアウトカムとしての生存退院率あるいは 神経学的転帰良好に対して、有益であるか有害であるかの検証には不確実さが残ることに留 意した。アミオダロンの代替としてリドカインやニフェカラントを使用することの推奨にあ たり、これを支持するエビデンスは乏しいものの、一部の国においてアミオダロンが使用で きないあるいは使用されていないことに ILCOR ALS タスクフォースは留意した。新たなデー タが少なかったことから、タスクフォースは現在の臨床行為を変更しないことが重要である と判断した。
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Knowledge Gaps(今後の課題)
・ 生存退院や神経学的転帰良好の差を検証するために、十分な検出力を有する RCT が必要 である。
・ これまでのアミオダロンの試験の信頼性を低減させる潜在的な要因は、ポリソルベート 溶媒を使用していたことである。この溶媒は血圧を低下させることが知られており、こ れをプラセボとして使用した対照群では、これが転帰を悪化させるバイアスとして作用 していたかも知れない。今後の研究では、この作用を考慮するかあるいは他の溶媒を使 用すべきである。
・ アミオダロンをリドカインないしプラセボと比較して機能的転帰を評価する試験が進 行中である。
・ VF/VT が最初の薬物に抵抗性であった場合、次の薬物をどのように選択するかについて のデータはない。
エビデンスの評価に関する科学的コンセンサス
CPR 中のメチルプレドニゾロン、ハイドロコルチゾン、デキサメサゾン使用を評価した研 究があり、ステロイドが他の血管作動薬と組み合わせて使用されていた。どの研究も、院内 心停止または院外心停止を調べていた。院内心停止、院外心停止の病態生理、疫学はそれぞ れで大きく異なるので、これらを別々に扱った。
1)院内心停止
重大なアウトカムとしての神経学的機能良好な生存退院について、院内心停止患者 268 人 の 1 件の RCT があった(低いエビデンス:非直接性、不精確さによりグレードダウン)。そ の研究では、心停止中にメチルプレドニゾロン、バソプレシン、アドレナリンを使用しさら に ROSC 後ショックの場合にハイドロコルチゾンを使用した群では、アドレナリン+プラセボ 使用群に比べて転帰の改善が示された[18/130 (13.9%) vs 7/138 (5.1%), RR 2.94, 95%
CI 1.16~6.50]。言い換えると、1000 人の神経学的機能良好な生存退院数に対し、98 人の増 加が認められた(95% CI 8/1000~279/1000)。
重大なアウトカムとしての生存退院について、院内心停止患者 100 人の 1 件の RCT があっ た(低いエビデンス:非直接性、不精確さによりグレードダウン)。その研究によると、院内 心停止患者において心停止中にメチルプレドニゾロン、バソプレシン、アドレナリンを使用 し、さらに ROSC 後にショックである患者にハイドロコルチゾンを使用した群では、アドレナ リン+プラセボ使用の群に比べ転帰が改善したことが示された [9/48(19%)vs 2/52(4%), RR 4.87, 95%CI 1.17~13.79, 言い換えると 1000 人の生存退院数に対し、149 人の増加が 認められ、95%CI で 7/1000~492/1000 の生存退院]。
重要なアウトカムとしての ROSC について、院内心停止患者計 368 人での 2 件の RCT が報告 された(低いエビデンス:非直接性、不精確さによりグレードダウン)。それらの報告では、
院内心停止患者において、心停止中にアドレナリンに加えメチルプレドニゾロンとバソプレ シンとを使用した群は、アドレナリン+プラセボ使用の群に比べて有効な結果が示された(併 用での RR 1.34, 95%CI 1.21~1.43)。言い換えると心停止時に、アドレナリンに加えメチ ルプレドニゾロンとバソプレシンとを併用した群は、アドレナリンとプラセボ使用の群に比 べて 130~267 人多い ROSC 数であった(95%CI 130~267 人)。
2)院外心停止
重大なアウトカムとしての生存退院について、RCT と観察研究が各々1 件あり、ステロイド 使用の有益性との関連は示されなかった(非常に低いエビデンス:深刻なバイアスのリスク、
非直接性、不精確さによりグレードダウン)。Paris らの研究では長期生存がなく、Tsai らの 研究ではプラセボを投与された患者の生存退院が 10% (6/61)であったのに対し、ハイドロ コルチゾンを受けた患者の生存退院は 8% (3/36)であった(p=0.805)。
重大なアウトカムとしての ROSC について、RCT と観察研究で、患者総数あわせて 183 人の 結果が報告されている(非常に低いエビデンス)。心停止中のデキサメサゾン投与群とプラセ ボ投与群とを比較した RCT では、ROSC(ICU 入院)[5.4% (2/37) vs 8.7% (4/46)] の改善 は示されなかった。しかし、観察研究ではハイドロコルチゾン投与群で ROSC の改善が示され た(58% vs 38%, p=0.049)。
推奨と提案
院内心停止について、ステロイド投与の賛否に関する推奨に至ることはできなかった。
院外心停止について、CPR 中にステロイドをルーチンには投与しないことを提案する(弱い 推奨、非常に低いエビデンス)。
患者にとっての価値と
ILCORの見解
院内心停止の推奨を作成するにあたって、院内心停止に対する標準的治療にステロイドの みを追加する治療の効果を評価する研究はなかった。また、3 剤のレジメン治療はアウトカ ム改善との関連性を示唆するようにみえるが、研究対象はきわめて迅速に ALS が行われてお り、心静止の割合が高く、他の院内心停止研究に比較し生存率のベースラインが低いので、
観測された結果は研究対象に特異的なものである可能性がある。
院外心停止の推奨を作成するに当たって、われわれはコストを考察し、効果に関してきわ めて信頼性の低い治療はその追加を考慮しなかった。院外心停止と院内心停止との間で推奨 が異なるのは、両者において、敗血症、重症病態による副腎不全、心血管系病因の発症頻度 などの生理学的差異が影響していた。
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Knowledge Gaps(今後の課題)
・ アドレナリン、バソプレシン、ステロイドのバンドル治療のどの部分が観察された効果 に関連しているのかは不明確である。別の可能性はバンドル治療に相乗効果があるかも しれないことである。なぜならそれぞれの薬物(バソプレシンとステロイド)での研究 では同様の効果はみられなかったからである。
・ さらなる研究により確認されれば、バンドル治療の治療効果における信頼性は上がるで あろう。
2
) 炭酸水素ナトリウム
2 件の研究でCPR中の緩衝液が評価された。両研究とも制約があったが、転帰の改善は認めなかった。
3 件の後ろ向きコホート研究では、CPR中の緩衝液の有用性は認められなかった。2 件の研究では炭酸水 素ナトリウムの使用によってROSC率、入院率、生存退院率が増加した。4 件のコホート研究では、炭酸 水素ナトリウムの使用は短期および長期の転帰の悪化と関連していた。
院内および院外心停止患者の治療として炭酸水素ナトリウムをルーチンに投与することは支持され ない。
3
) カルシウム
3 件の研究のRCT、を含む複数の研究では、院内・院外心停止におけるカルシウム投与は生存率に影 響を与えなかった。成人における 2 件の研究では心停止に対するカルシウム投与が生存退院率を低下さ せた。
VFによる心停止の場合、カルシウム投与はROSC率を改善しなかった。PEAによる心停止では、長期的 転帰を検討した報告はないが、広いQRS幅を呈するサブグループ群でカルシウム投与によってROSC率が 改善したとする研究がある。その他、ROSC率と生存入院率の改善を示す研究はあるが、生存率に関して は著明な効果はない。その他、カルシウム投与群でROSC率が低下するという研究がある。2 件の研究で
は心静止に対するカルシウム投与はROSC率、生存退院率を改善させていない。1 件の研究でカルシウム 投与群はROSC率を低下させた。
院内および院外心停止患者に対してカルシウムをルーチンに投与することは支持されない。
4
) アトロピン
成人における院内および院外の心停止(心静止、PEA,無脈性VT、VF)に際して、アトロピン単独あ るいは他の薬物との併用がROSC率、生存率などの転帰を改善させるかについては以下の研究がある。
3 件の研究で心静止に対するアトロピン投与により生存率が改善した。2 件はアドレナリンとともに 投与した研究で 1 件はスキサメトニウムとフェンタニル導入後の心静止にアトロピンを単独投与した 研究である。
院外心停止の心静止に対してアドレナリンと炭酸水素ナトリウムが投与された患者においては、ア トロピン投与はROSC率と関連していたが、アトロピン投与群に生存退院例はなかった。
1 件の研究および 2 件の研究では、心停止時にアトロピンを投与しても生存率に影響はなかった。
4 件の臨床研究ではアトロピンの使用は生存率の低下と関連していた。
わが国では院外心停止例でPEAと心静止に対するアトロピン投与の影響を検討した研究があり、心静 止ではROSCと生存入院率の増加に関連していたが、PEAに対するアトロピン投与は 30 日生存率の低下と 関連していた。
心停止に対するアトロピンはPEAと心静止いずれにもルーチンには使用しない。なお、心静止でアド レナリン投与が無効な場合には考慮してもよい。