ROSC 後の脳への虚血再灌流傷害は、低体温療法によって軽減できる可能性がある。ここで は以下のいくつかの PICO について検討する。A)電気ショック適応の院外心停止の体温管理 療法、B)電気ショック非適応の院外心停止の体温管理療法、C)心電図(ECG)波形にかかわ らず院内心停止についての至適目標体温、体温管理療法の期間、体温管理療法導入のタイミ ング
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)体温管理療法の実施と目標体温
CQ:
体温管理療法の目標体温は何℃が至適か?
P: あらゆる状況下の ROSC 後の患者
I: 32~34℃を目標体温とした軽度低体温療法 C: 正常体温
O: 退院時、30 日後、60 日後、180 日後、1 年後の神経学的転帰および生存、あるいは生存 を変えるか?
推奨と提案
体温管理療法施行時には、32~36℃の間で目標体温を設定し、その温度で一定に維持する ことを推奨する(強い推奨、中等度のエビデンス)。特定の心停止患者において、低い目標体 温(32~34℃)と高い目標体温(36℃)のどちらがより有益であるかは不明であり、今後の 研究でこの点が明らかになるかも知れない。
初期 ECG 波形が電気ショック適応の成人院外心停止で、ROSC 後に反応がない場合は、体温 管理療法を行わないことに反対し、体温管理療法を行うことを推奨する(強い推奨、低いエ ビデンス)。
初期 ECG 波形が電気ショック非適応の成人院外心停止で ROSC 後に反応がない場合は、体温 管理療法を行わないことに反対し、体温管理療法を行うことを提案する(弱い推奨、非常に 低いエビデンス)。
全ての初期 ECG 波形の成人院内心停止で ROSC 後に反応がない場合は、体温管理療法を行わ ないことに反対し、体温管理療法を行うことを提案する(弱い推奨、非常に低いエビデンス)。
エビデンスの評価に関する科学的コンセンサス
この PICO は 2 つのクエスチョンに分けられた。最初のクエスチョンは、ROSC 後患者に低 体温療法を導入すべきかどうかである。エビデンスは、電気ショック適応の院外心停止、電 気ショック非適応の院外心停止で、全ての波形の院内心停止に分けて評価された。もう 1 つ のクエスチョンは、ROSC 後の患者に対する至適目標体温を評価するものである。
1)電気ショック適応の院外心停止
重大なアウトカムとしての神経学的転帰良好での生存について、275 人が登録された RCT および 77 人が登録された準 RCT があり、初期リズムが VF または無脈性 VT の院外心停止患者 に有益であることが示された(低いエビデンス:バイアスのリスク、不精確さによりグレー ドダウン)。これらの研究では、低体温療法(32~34℃)の冷却が体温管理なしと比較し、6 か月後の神経学的転帰良好(RR1.4, 95%CI 1.08~1.81)、生存退院(OR 2.65, 95%CI 1.02~
6.88)に関連していた。
重大なアウトカムとしての生存について、ある研究は、低体温療法が施行された患者に有 益性をみとめた(180 日後の死亡率に対する RR 0.74, 95%CI 0.58~0.95)が、別の研究は、
有意差がなかった (51% vs 68%,院内死亡率;RR 0.76, 95%CI, 0.52~1.10)。
2)電気ショック非適応の院外心停止
初期リズムが PEA あるいは心静止(すなわち電気ショック非適応)の院外心停止患者に対 して、軽度低体温療法(32~34℃)と体温管理なしを比較した RCT は見つからなかった。
重大なアウトカムとしての神経学的転帰良好での生存について、計 1,034 人の電気ショッ ク非適応の院外心停止患者を対象とした 3 つのコホート研究を統合すると、神経学的転帰不 良に有意差がなかった (まとめた調整 OR 0.90,95%CI 0.45~1.82)(非常に低いエビデン ス:バイアスのリスク、不精確さによりグレードダウン)。
さらに、大規模なレジストリを使用した 1,830 人の後方視的研究では、電気ショック非適 応の院外心停止患者について、低体温療法が神経学的転帰不良を増加させていた(調整 OR1.44,95%CI, 1.039~2.006) (非常に低いエビデンス:バイアスのリスク、不精確さによ りグレードダウン)。体温データの欠如や利用できる患者情報に限界があるため、本研究の データは前述の研究のものとは統合しなかった。
重大なアウトカムとしての生存について、ある研究では、低体温療法は 6 か月後の生存と 関連していた(OR 0.56, 95%CI 0.34~0.93) (非常に低いエビデンス: バイアスのリスク、
不精確さによりグレードダウン)。
3)院内心停止
院内心停止に関して、軽度低体温療法(32~34℃)と体温管理なしとを比較した RCT は存 在しない。
重大なアウトカムとしての生存退院について、8,316 人を登録したある後ろ向きコホート 研究は、全ての初期リズムの院内心停止患者に対して体温管理療法と積極的体温管理を行わ ない場合で有意差を認めないことを示した (OR 0.9, 95%CI 0.65~1.23)。(非常に低いエビ デンス:バイアスのリスク、不精確さによりグレードダウン)
重大なアウトカムとしての神経学的転帰良好での生存について、前述の観察研究は、有意 差を認めない(OR 0.93, 95%CI 0.65~1.32) ことを示した(非常に低いエビデンス:バイア スのリスク、不精確さによりグレードダウン)。
体温管理療法を採り入れる前後で比較した数多くの研究はあるが、同時に採り入れられた その他の ROSC 後の治療の変更に影響されるためデータの解釈はきわめて難しく、ROSC 後の 転帰に対する体温管理の効果のみをとりだすことを不可能としている。そのため、体温管理 療法を採り入れる前後で比較した研究はすべて除外した。同時期のコントロール群と比較し
ているその他の観察研究も、残存する交絡因子およびそれ以外の因子により低いエビデンス となっている。以上より、RCT のような高いエビデンスをもつ特殊な患者群を対象とする研 究でないかぎり、これらの観察研究をエビデンス評価には含めなかった。
4)目標体温
重大なアウトカムとしての生存および神経学的転帰良好での生存について、939 人を対象 とした RCT では、目撃のない心静止を除く全ての初期 ECG 波形の院外心停止成人患者につい て、33℃の低体温療法群は 36℃に厳格に体温管理した群と比較して有益性を示さなかった(研 究終了時の死亡率についての HR 1.06, 95%CI 0.89~1.28; 死亡もしくは 6 か月後の神経学 的転帰不良についての RR 1.02, 95%CI 0.88~1.16)(中等度のエビデンス:不精確さによ りグレードダウン)。
重大なアウトカムとしての神経学的転帰良好での生存について、院外心停止の VF/VT もし くは心静止の 36 人を登録した小さな試行的 RCT は、32℃の低体温療法が 34℃と比較して、
少数例で統計学的検出力不足ではあるが、有益性(神経学的転帰良好な生存率 44.4% vs 11.1%,p=0.12)を示せなかった(低いエビデンス:バイアスのリスク、不精確さによりグ レードダウン)。
推奨と提案
体温管理療法施行時には、32~36℃の間で目標体温を設定し、その温度で一定に維持する ことを推奨する(強い推奨、中等度のエビデンス)。特定の心停止患者において、低い目標体 温(32~34℃)と高い目標体温(36℃)のどちらがより有益であるかは不明であり、今後の 研究でこの点が明らかになるかも知れない。
初期 ECG 波形が電気ショック適応の成人院外心停止で、ROSC 後に反応がない場合は、体温 管理療法を行わないことに反対し、体温管理療法を行うことを推奨する(強い推奨、低いエ ビデンス)。
初期 ECG 波形が電気ショック非適応の成人院外心停止で ROSC 後に反応がない場合は、体温 管理療法を行わないことに反対し、体温管理療法を行うことを提案する(弱い推奨、非常に 低いエビデンス)。
全ての初期 ECG 波形の成人院内心停止で ROSC 後に反応がない場合は、体温管理療法を行わ ないことに反対し、体温管理療法を行うことを提案する(弱い推奨、非常に低いエビデンス)。
患者にとっての価値と
ILCORの見解
この推奨を作成するにあたり、体温管理療法に伴う(おそらく非常に小さい)想定される リスクとコストに比べて、神経学的転帰良好な生存が増加する可能性に重きをおいた。ROSC 後の死亡率は高く、治療の選択肢が少ないことを強調する。体温管理なしと比べた体温管理 療法のエビデンスの質は低いが、体温管理療法は神経学的転帰良好な生存が増加することを 確認できた ROSC 後の唯一の治療法である。したがって、低いエビデンスではあるが、強い推 奨とした。
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Knowledge Gaps(今後の課題)
・ 初期 ECG 波形が電気ショック非適応の成人院外心停止、および初期 ECG 波形に関わらず
成人の院内心停止に対して、体温管理療法を支持あるいは否定する高いエビデンスはな い。
・ ROSC 後の傷害の重症度に基づいた個々の症例の目標体温の設定を支持あるいは否定す るエビデンスもない。
・ 転帰決定にあたって、より詳細な認知機能の評価を含むさらに緻密な研究も必要であ る。
2
) 体温管理療法の維持期間
CQ
:体温管理療法の至適な維持期間は何時間か?
P:あらゆる状況下の ROSC 後の患者 I:24 時間以外の維持期間の低体温療法 C:24 時間の維持期間の低体温療法
O:退院時、30 日後、60 日後、180 日後、1 年後の神経学的転帰および生存
推奨と提案
体温管理療法を施行する場合は、過去の 2 件の大規模な RCT と同様に、維持期間を少なく とも 24 時間とすることを提案する(弱い推奨、非常に低いエビデンス)。
エビデンスの評価に関する科学的コンセンサス
2002 年に発表された低体温療法の臨床研究で用いられた 12 時間および 24 時間という低体 温療法の維持期間が、それ以降のガイドラインで採用されている。体温管理療法の至適な維 持期間はいまだ明らかではない。
ROSC 後の体温管理療法について、異なった維持期間を比較した RCT はない。
重大なアウトカムとしての神経学的転帰について、2 件の観察研究は、維持期間による転 帰の差を認めなかった(非常に低いエビデンス:バイアスのリスク、不精確さによりグレー ドダウン)。一方の研究では神経学的転帰良好群と不良群の間で低体温療法の維持期間に差 はなく、もう一方では低体温療法維持期間が24 時間群と 72 時間群との間で死亡率や神経学 的転帰不良率の差は見られなかった。過去の臨床研究試験における体温管理療法の維持期間 は 12~28 時間であった。ある研究では、ROSC 後 72 時間まで厳格な体温管理療法(<37.5ºC) を施行していた。
推奨と提案
体温管理療法を施行する場合は、過去の 2 件の大規模な RCT と同様に、維持期間を少なく とも 24 時間とすることを提案する(弱い推奨、非常に低いエビデンス)。
患者にとっての価値と
ILCORの見解
この推奨を作成するにあたっては、実臨床で一般的に行われている方法を変更しないこと に重きを置き、体温管理療法の維持期間として最も普及している 24 時間とした。また,2 件