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成人における ROSC 後の酸素投与量

CQ: ROSC

後の酸素量の調整は転帰を変えるか?

P: ROSC 後のあらゆる状況下の成人

I:正常な酸素飽和度もしくは酸素分圧になるように調整した吸入酸素濃度の使用 C:100 %吸入酸素濃度の使用

O:退院時、30 日後、1年後の神経学的転帰および生存、集中治療室退室時、退院時、30 日後の生存

推奨と提案

ROSC 後のあらゆる状況下の成人において、低酸素症の回避を推奨する(強い推奨、非常に 低いエビデンス)。

ROSC 後のあらゆる状況下の成人において、高酸素症の回避を提案する (弱い推奨、非常に 低いエビデンス)。

ROSC 後のあらゆる状況下の成人で、動脈血酸素飽和度または PaO2が確実に測定されるまで 100 %吸入酸素濃度の使用を提案する(弱い推奨、非常に低いエビデンス)。

エビデンスの評価に関する科学的コンセンサス

従来の基礎研究は、高酸素症が心停止後有害である可能性を示唆している。しかし、これ が人でも同様であるかは不明確のままである。この PICO は、心停止後患者における酸素の調 整が転帰を変えるかどうかを評価した。

1) ROSC60分間における30 %と100 %吸入酸素濃度の比較

重大なアウトカムとしての神経学的転帰良好な生存退院について、32 人(そのうちの 4 人 は除く)の院外心停止患者を登録したある RCT(非常に低いエビデンス:深刻なバイアスの リスク、非直接性、不精確さによりグレードダウン)は、ROSC 後 60 分間の 30%と 100%吸 入酸素濃度の間で転帰の差がないことを示した(8/14 vs 6/14, 生存率についての未調整 RR 1.33, 95%CI 0.63~2.84)。

重大なアウトカムとしての生存退院について、ある RCT(非常に低いエビデンス:少人数 での検討、盲検化の欠如、非直接性、患者の不適正な割付によりグレードダウン)は、ROSC 後 60 分間の 30%と 100%吸入酸素濃度の間に転帰の差がないことを示した(10/14 vs 10/14, 生存率についての未調整 RR 1.33, 95%CI 0.63~1.60)。

2) 高酸素症 vs 正常酸素症

重大なアウトカムとしての 12 ヶ月後の神経学的転帰良好な生存について、ある研究(非常 に低いエビデンス:非常に深刻なバイアスのリスク、非直接性によりグレードダウン)は、

最初の 24 時間の集中治療室における高酸素症と、それに関連した有害な影響はないことを示 した。

重大なアウトカムとしての退院時の神経学的転帰良好な生存について、5 件の観察研究(低 いエビデンス:非常に深刻なバイアスのリスク、深刻な非一貫性、非直接性、交絡因子によ りグレードダウン)は、矛盾する結果を示した。2 件の研究では高酸素症が正常酸素症より 転帰が不良であった。

3 件の研究は神経学的転帰良好を CPC1~2 として報告した。低体温療法を施行された 170 人の集中治療患者の単一施設における研究(非常に低いエビデンス:非常に深刻なバイアス のリスク、深刻な非一貫性、非直接性、交絡因子によりグレードダウン)は、心停止後最初 の 24 時間における PaO2最高値が退院時の神経学的転帰不良に関連していることを示した(調 整後 OR 1.485, 95%CI 1.032~2.136)。193 人の集中治療患者の単一施設における研究(非 常に低いエビデンス: 非常に深刻なバイアスのリスク、深刻な非一貫性、非直接性、交絡因 子によりグレードダウン)は、ROSC 後の最初の PaO2が転帰に関連していないことを示した(神 経学的転帰不良に対する高酸素症による調整後 OR 1.05, 95%CI 0.45~2.42)。184 人の集中 治療患者の単一施設研究における研究(非常に低いエビデンス:非常に深刻なバイアスのリ スク、深刻な非一貫性、非直接性、交絡因子によりグレードダウン)は、最初の人工呼吸 24 時間以上の酸素曝露が(非調整後解析および調整後解析ともに)転帰に関連していないこと を示した(効果の程度「effect size」はこのデータから推測できない)。

2 件の研究は神経学的転帰を他の方法で報告した。ある観察研究(非常に低いエビデンス:

非常に深刻なバイアスのリスク、深刻な非一貫性、非直接性、交絡因子によりグレードダウ ン)は、高酸素症群が退院時の自立度がより低いことを報告した(高酸素症群 124/1156 29%

vs 正常酸素症群 245/1171 38%, 未調整 OR 0.45, 95%CI 0.36~0.58)。ある観察研究(非 常に低いエビデンス:非常に深刻なバイアスのリスク、深刻な非一貫性、非直接性、交絡因 子によりグレードダウン)は、高酸素症群と正常酸素症群で自宅退院率に差がないことを報 告した(高酸素症群 27% vs 正常酸素症群 34%、効果の程度「effect size」はこのデータ から推測できない)。

重大なアウトカムとしての生存退院(または 30 日生存)について、7 件の観察研究(非常 に低いエビデンス:非常に深刻なバイアスのリスク、深刻な非一貫性、非直接性、交絡因子 によりグレードダウン)は、矛盾する結果を示した。7 件のうち 4 件の研究では高酸素症が 正常酸素症より転帰が不良であった。

ある研究は、集中治療室入室後最初の PaO2に基づき高酸素症が正常酸素症と比較してより 転帰が不良であることを示した (院内死亡率 63 vs 45%,高酸素症曝露による調整後 OR 1.8, 95%CI 1.5~2.2)。他のある研究は PaO2が 100mmHg 増加すると死亡率が 24%増加することを 示した (OR 1.24, 95%CI 1.18~1.31)。

ある研究は高酸素症もしくは正常酸素症が院内死亡率と関連していないことを示した (集 中治療室入室 24 時間以内の PaO2最低値に基づく;院内死亡率に関する調整後 OR 1.2, 95%

CI 1.0~1.5)。低体温療法を施行された 170 人の集中治療患者の単一施設における研究は、

心停止後最初の 24 時間における PaO2最高値がより不良な転帰に関連していることを示した。

この研究では生存者の PaO2最高値(198 mmHg, IQR 152.5~282) は、非生存者 (254 mmHg, IQR 172~363) よりも低値であった(PaO2高値と院内死亡率増加に関する調整後 OR 1.439, 95%

CI 1.028~2.015)。集中治療の最初の 24 時間における PaO2最大異常値(最高値/最低値)と 病院前レジストリデータをリンクさせた研究は、高酸素症が院内死亡率と関連していないこ とを示した (高酸素症 47% vs 正常酸素症 41%, 調整後 OR 1.2, 95%CI 0.51~2.82)。122 例の集中治療患者についての別の研究は、高酸素症群 (心停止後最初の 24 時間の PaO2 > 300mmHg) と正常酸素症群の間で、生存退院(20/49 vs 24/70, 未調整 OR 0.76, 95%CI 0.36~

1.61)、および 30 日生存(22/49 vs 25/70, 未調整 OR 0.68, 95%CI 0.32~1.44)に関して差 がないことを示した。184 例の集中治療患者についての別の研究は、36 %の患者が著明な高 酸素症に曝露され死亡率は 54%であり、著明な高酸素症が生存率低下に関連していた(非調 整後解析および調整後解析ともに) (生存率に関する曝露 1 時間あたりの調整後 OR 0.83, 95%CI 0.69~0.99)。

重要なアウトカムとしての集中治療室生存退室について、2 件の観察研究 (非常に低いエ ビデンス:非常に深刻なバイアスのリスク、深刻な非直接性、交絡因子によりグレードダウ ン)は、高酸素症に関連する有害事象を示していない。集中治療の最初の 24 時間における PaO2 最大異常値(最高値/最低値)と病院前レジストリデータをリンクさせた研究は、高酸素症が 集中治療室死亡率と関連していないことを示した(高酸素症 35% vs 正常酸素症 32%, 未調 整 OR 1.16, 95%CI 0.56~2.40)。122 人の集中治療患者を登録した観察研究は、高酸素症群 (心停止後最初の 24 時間の動脈血酸素分圧 > 300mmHg) と正常酸素症群の間で、集中治療室 生存退室率に差がないことを示した(53% vs 46%, 調整後 OR 0.75, 95%CI 0.36~1.55)。

3) 低酸素症 vs 正常酸素症

重大なアウトカムとしての生存退院(または 30 日後生存)について、3 件のうち 2 件の観

察研究(非常に低いエビデンス:非常に深刻なバイアスのリスク、深刻な非直接性、交絡因 子によりグレードダウン)は、低酸素症でより転帰が不良であることを示した。ある研究は、

集中治療室入室後の PaO2初期値に基づく低酸素症が正常酸素症と比較してより転帰不良であ ることを示した (57% vs 45%, 酸素曝露に関する調整後 OR 1.3, 95%CI 1.1~1.5)。また 別の研究は、集中治療室入室後 24 時間以内の PaO2最低値に基づく低酸素症が正常酸素症と比 較してより高い院内死亡率(60% vs 47%、OR 1.2, 95%CI 1.1~1.4)と関連していること を示したが、自宅退院率(26% vs 24%)には差がなかった。集中治療の最初 24 時間におけ る PaO2最大異常値(最高値/最低値)と病院前レジストリデータをリンクさせた研究は、低酸 素症と正常酸素症との間で院内死亡率に差がないことを示した(51% vs 41%、調整後 OR 0.93, 95%CI 0.47~1.87)。

重要なアウトカムとしての集中治療室からの生存退出について、ある観察研究(非常に低い エビデンス:非常に深刻なバイアスのリスク、深刻な非直接性、交絡因子によりグレードダ ウン)は、低酸素症が転帰不良に関連していることを示した。この研究は集中治療における最 初の 24 時間の PaO2最大異常値(最高値/最低値)が、集中治療室死亡率に関連していることを 示した(低酸素症 49% vs 正常酸素症 32%, 未調整 OR 2.15, 95%CI 1.23~3.77)(RR 0.74, 95%CI 0.56~0.96)。

推奨と提案

ROSC 後のあらゆる状況下の成人において、低酸素症の回避を推奨する(強い推奨、非常に 低いエビデンス)。

ROSC 後のあらゆる状況下の成人において、高酸素症の回避を提案する (弱い推奨、非常に 低いエビデンス)。

ROSC 後のあらゆる状況下の成人で、動脈血酸素飽和度または PaO2が確実に測定されるまで 100 %吸入酸素濃度の使用を提案する(弱い推奨、非常に低いエビデンス)。

患者にとっての価値と

ILCOR

の見解

これらの推奨の作成にあたり、非常に低いエビデンスではあるが、低酸素症ははるかに大 きな実害をもたらすと考え、低酸素症を避けるべきであると強く推奨する。高酸素症に関連 した有害事象のエビデンスの質は非常に低く、また非一貫性があるため、弱い推奨となった。

Knowledge Gaps

(今後の課題)

・ ROSC 後の酸素の調整方法を評価するための臨床検討が不足している。

・ 観察研究のデータは高酸素症の定義、測定の最適なタイミングあるいは測定方法(PaO2 か動脈血酸素飽和度か)によりかなり異なる。

・ 測定のタイミングや期間と同時に、測定方法を考慮した上で、ROSC 後患者における酸 素投与量を調節する最適なアプローチを決定する今後の研究が必要である。