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静岡県浜名湖、その他県内地区におけるウナギ加工業の現状と課題

ドキュメント内 ドキュメント1 (ページ 112-120)

滋賀県立大学 塚本礼仁

図2 日本および静岡県における養鰻経営体数の推移

資料 漁業センサス、静岡県農林水産統計年報(水産編)。

注  静岡県農林水産統計年報(水産編)では2006年以降の市町別養鰻経営体数が公表されていない。

図1 日本および静岡県における養鰻生産量の推移 資料 漁業・養殖業生産統計年報、静岡県農林水産統計年報(水産編)。

注  静岡県農林水産統計年報(水産編)では2007年以降の市町別養鰻生産量が公表されていない。

表1 静岡県の水産加工業におけるウナギ加工業の位置づけ

資料 静岡県水産累年統計。

注  1 )2006年以降、ウナギ蒲焼きは調査対象品目となっていない。

2 )焼・味付のりは集計単位が異なるため除く。

図3 日本および静岡県におけるウナギ加工量の推移

資料 静岡県水産累年統計、関東農政局静岡農政事務所提供データ:水産加工品(陸上加工)―冷凍食品―水産物調 理品―ウナギ蒲焼き、日本養殖新聞。

注  1 )重量は活鰻換算値。国内加工量は日本養殖新聞の推定値であり、輸入原料分も含まれる。

2 )2006年以降、ウナギ蒲焼きは調査対象品目となっていない。

図4 消費市場におけるウナギの供給量と価格(過去10年間)

資料 漁業・養殖業生産統計年報、財務省貿易統計。

注  輸入加工品の重量は活鰻換算値。

表2 食料の安全・安心に関わるウナギ産業界の動き

資料 日本養殖新聞、厚生労働省報道発表資料(医薬食品局食品安全部監視安全課 輸入食品安全対策室)。

(3)2002年以降も、産地偽装や薬品残留といった輸入ウナギにまつわる不祥事が頻発した。2006年に は日本国内で基準が定められていない農薬等が一定量以上含まれる食品の流通を原則禁じるポジテ ィブリスト制度の運用も始まり、品質検査体制の抜本的な見直しを迫られた中国、台湾のウナギ産 業界で再編が進む。このことによって、中国の蒲焼き対日輸出は大幅に縮小した。

(4)日本のウナギ業界では、消費者の国産信仰の盛り上がりを背景として、 数量も価格も安定した販 路を求める 養鰻業者と 表示の点で国産、地場原料が欲しい 加工場の連結が強まった。養鰻産 地では、問屋やメーカーの投資による養鰻場の増・新設、休止養鰻場の再稼働、既存加工場のリニ ューアル、最新設備を持つ大型加工場の建設といった動きが見られる。なお、こうした傾向は東海 産地より南九州産地で活発であり、鹿児島県の場合、活鰻生産量1,500〜3,000トンの養鰻グループが 次々と現れ、地域に複数ある大型工場で加工されている(図 6 )。

図 1 ・図 2 から明らかなように、現在、国内の養鰻生産は愛知県の最大産地・一色と鹿児島県の大隅 地区へ二極化している。一方、静岡県では各産地における養鰻業の縮小が進み、ウナギ王国としての立 場はもはや風前の灯火である。ウナギ加工業に関しても、 静岡 浜名湖 といった地域ブランド はいまだ健在であり、各メーカーもそれを戦略的に使っているが、(1)〜(4)で概説した状況下で、静 岡県のウナギ加工業は産地の加工力に活鰻(=産地表示が可能な地場原料)生産力が対応していないと いう構造的な問題を抱えている(表 3 )。

4.静岡県のウナギ加工業(業界)における新たな取り組み

データと資料をもとにこれまでに述べた業界の動きを受けて、静岡県のウナギ産業は図 5 に示したよ うな形に再編された。その要点を整理して、本報告のまとめとする。

(1)ウナギ加工品の原料原産地表示が義務化されたことと、産地偽装や薬品残留などの不祥事が多発 したことを機に、 行政関係機関と連携し、食品関係法令の周知や行政との連絡調整を図るとともに、

加工業者間で原料を融通し合える体制を作ること を目的として静岡県うなぎ加工業者連絡協議会 が結成された。

図5 静岡県におけるウナギ産業界の再編(筆者作成)

図6 東海産地および南九州産地におけるウナギ加工場の分布 資料 日本養殖新聞『日本の鰻 2009 データ&ダイアリー』。

表3 静岡県のウナギ加工場 基本情報

国内産地でこのような業界団体(静岡県内の養鰻漁協、加工メーカー、活鰻問屋から構成される)

が設立されたのは静岡県が始めてであり、かつ、2002年結成という対応の素早さも注目に値する。

(2)2008年 4 月 1 日、静岡県内の 5 つの養鰻漁協のうち、浜名湖を除く丸榛吉田、焼津、大井川、中 遠の 4 単協が合併し、「静岡うなぎ漁業協同組合」として新たなスタートを切った。消費市場が国産 ウナギブームに沸くなか、 老舗 養鰻産地・吉田の活鰻を技術に定評のある旧 4 単協で加工し、

静岡うなぎ の統一ラベルを付けて販売できる体制になったということで、その後の動向にも注目 が集まった。

しかし、平成21年度(2008年 9 月 1 日から2009年 8 月31日までの ウナギ年度 )において、新漁 協は大幅な赤字を計上した。『事業報告書』によると、活鰻販売と加工の両方で不振に見舞われたこ とが原因だとされている。養鰻漁協による活鰻販売と加工は、組合員の生産活動(≒産地)を回転 させる 車の両輪 でなければならない。それゆえに、これら二部門の業績悪化は、新漁協の存在 意義を揺るがす事態だと言えるだろう。

新漁協の加工事業に対して、近年の国産ウナギブームは負の影響を及ぼした。具体的には、産地 の養鰻業者はただでさえ高い国産活鰻(=吉田の活鰻)を相場が最も上がる夏の「土用の丑」の時 期に一気に売りたいという意向であるため、漁協(加工)側は 1 )年間を通して一定のサイズ・量 の活鰻を集めにくく、工場の周年稼働に支障が出る、2 )国産(地場)原料の加工品でなければ消費 者に受け入れられないが、それを使うと明らかに原価高であり、利益が圧縮されるといった矛盾を 抱えたのである。

(3)浜名湖養魚漁協は合併をせず、単独運営の道を選択した。現行の制度下で「静岡うなぎ漁業協同 組合」に加わると、商品のロゴやラベルが 静岡うなぎ に統一されてしまう。国内他産地の追随 を許さない 浜名湖うなぎ のブランドが 静岡うなぎ に埋没してしまうことは、産地にとって デメリットでしかなかったと考えられる。浜名湖の場合、商品のローカル性、希少性、そして安全 性を強調し、さらには保証することで、生産量の減少をカバーする産地システムを組み立てている と言えよう。具体的には、ホームページで商品のロットナンバーを入力すると、原料になったウナ ギの生産履歴(生産者の氏名・写真、シラスウナギの採捕場所、飼料・添加物、使用した薬品・量、

残留薬品検査の結果など)を確認できるトレーサビリティの仕組みを作った。また、残留薬品検査

(≒品質検査体制)は、系統出荷以外も含めて全量検査が義務づけられている。

1.地域漁業の動向

琵琶湖漁業は、1990年代初めまで、漁獲量約5,000トン、漁業生産金額約50億円で推移していたが、

1990年代以降、漁獲量・生産金額ともに急減し、2000年代には漁獲量2,000トン前後、漁業生産金額15 億円前後で推移している。漁業衰退の主な要因として、1991年のアユ冷水病発生によるアユ苗(活魚種 苗)価格の下落、外来魚の繁殖、水草の大量繁茂、湖岸開発等による生息環境の悪化などが挙げられて いる。

2.水産加工業の動向

(1)琵琶湖における水産物の流通構造

水産物の流通経路は、鮮魚と活魚に大別される。鮮魚の場合、卸売業者や加工業者が直接漁業者から 仕入れる場合と、産地市場・卸売業者を通して仕入れる場合があり、その後、加工製品・鮮魚は小売 店・卸売市場・大手加工業者・料亭・旅館・ホテルへ出荷される。一方、活魚は、主にエリ(定置網)

で漁獲された稚アユが養殖業者へ出荷され、蓄養された後、活魚・鮮魚・冷凍で卸売業者、加工業者、

養殖業者、漁協へ出荷される。

図 2 に、琵琶湖における水産物の流通経路を示した。流通構造自体はこの20年間では大きく変化はし ておらず、琵琶湖外からの原料調達や、新規販路開拓などの大々的な動きは見られない。琵琶湖の加工 業者の事業形態は多様であるが、その中でも、加工業を主とするもの、加工業と鮮魚卸売業を行うもの、

アユ養殖業と加工業を行うものに大きくわけられる。

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