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回くらいとなっている。加工業者は、消費地市場への出荷が中心で あり、自店舗で販売しているものも多い。経営規模の大きい加工業者は、年間原料仕入れ金額が 1 億円

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静岡県駿河湾岸地区におけるシラス加工業の現状と課題

そのような水揚げがあるのは年に 1 回くらいとなっている。加工業者は、消費地市場への出荷が中心で あり、自店舗で販売しているものも多い。経営規模の大きい加工業者は、年間原料仕入れ金額が 1 億円

を超えるものが 2 社ある。加工業者のなかには、シラス船びき漁業を営んでいるものもある。

舞阪地区は、シラス船びき網発祥の地であり、県内では漁業経営体数と水揚げ量が最も多い地区であ る。原料価格は、駿河湾地区に比べて安価となっている。加工業者は16社あり、年間出荷額が 1 億円を 超える業者が 5 社あり、このうち 3 社は御前崎からも原料を調達している。シラス干しの生産が中心で、

経営規模の大きい業者は関東の消費地市場への出荷が多く、小規模な業者は自店舗での販売が多い。以 前は生シラスでの出荷が若干あったが、加工業者と漁業者との話し合いにより、両者の関係を維持する ために原則として生シラスでの出荷を取りやめにしている。

新居地区は、加工業者は10社あり、年間出荷額が 1 億円を超える業者は 1 社となっている。隣の舞阪 地区と比較すると原料価格は20%ほど安価であり、同地区の漁業者からは舞阪地区の加工業者にも買受 人になって入札に参加してほしいという要望があるが実現には至っていない。製品別の生産量割合や出 荷先は舞阪地区とほぼ同様である。

以上のように、地区によって製品別の生産量割合と原料となるシラスの価格には違いがあり、釜揚げ の割合が高い地域はシラスの価格が高いという傾向がある。それは以下の 2 つの要因によるものと考え られる。

第 1 は漁場条件である。船びき網漁業は許可漁業であり、各地区で操業可能な漁場が異なっている。

シラスは、西(遠州灘)から東(駿河湾)へと移動するため、魚体サイズは遠州灘のほうが小さく生シ ラスや釜揚げには向かないものが多く、シラス干しやちりめんが中心となっている。また、駿河湾内で は、北上してきたシラスの魚群は伊豆半島西側(静浦地区)から西(用宗地区)へと移動しつつ湾内の 河川河口部に留まるので、用宗地区では魚体の大きい生シラス・釜揚げに向く原料が水揚げされること になる。また、シラスの価格は、魚体サイズだけでなく、色も重要なファクターになるが、遠州灘のほ うは赤っぽいのに対して(評価が低い)、用宗地先のものは青みがかっている(評価高い)ことから価

格が高くなっている。

第 2 は地元需要条件である。静岡県はシラスの消費が日本で一番多いが、シラス加工品のなかでも釜 揚げが好まれる。釜揚げは、日持ちがしないので(凍結出荷も可能であるが、凍結しないものに比べる と品質が落ちる)、人口の多い静岡市や沼津市近隣の産地が釜揚げ生産および生シラス出荷には優位と なっており、その結果、それらの割合が高くなっている。また、これらの地区は自店舗での直接販売も 多いこともあり、価格は他地区にくらべて高くなっている。

次章では、シラス干しが中心の吉田町地区と釜揚げが中心の用宗地区を取り上げ、地域漁業との関係、

地区内加工業者の経営実態等について明らかにする。

3.静岡県におけるシラス加工産地の現状

(1)吉田町地区 1)シラス漁業の概要

当地区は、船びき網 2 そうびきが主たる漁業種類となっており、網船、手船、運搬船(いずれも8.5 トンクラス・650馬力前後)の 3 隻体制で操業している。1 カ統 8 〜10名体制で操業している。1970年代 には36カ統あったが現在は24カ統にまで減少している。漁場は、駿河湾大井川河口から遠州灘弁財川河 口までとなっており、県内では最も広大な漁場をもっている。現在の水揚げは、駿河湾が 3 割、遠州灘 が7割となっている。近年の 1 カ統あたりの年間水揚げ金額は、多いもので 7 億円程度、平均では4,000 万円程度である。遠州灘に出漁するものほど年間水揚げ金額は多い。操業期間は3/21(遠州灘は4/1)

〜翌年1/14までとなっており、年間の操業日数は130〜140日程度である。操業スケジュールは、朝 5:

30出港し、6:00旗揚げ操業となる。漁獲後、選別した後に30㎏の篭に分けて水揚げする。篭ごとに品 質の差が少ないようであれば、10〜12カゴを単位に並べる。1 カワ(10〜12カゴ)を単位に入札をする。

入札の時間は、7:30〜8:30、9:30〜10:30、11:30〜12:30と決まっている。これは加工業者から の要望によるもので、水揚げ後なるべく早く加工するためであるとともに、加工して製品にしてみて次 ぎの入札をしたいということによる。遠州灘に出漁した場合は、運搬船が帰港するまで時間がかかるの で9:30に出荷することが多い。かつて水揚げが多かった年には 1 日 1 カ統あたり1,500㎏の水揚げ制限 をしていたが、近年は水揚げがそれほどないのでそうした規制はない。価格が安い場合は、水揚げをや めて 3 回目の入札時間には水揚げしないこともある。漁業者は他地区に比べてシラスの価格が安いこと に不満を持っており、一方、加工業者は価格が安くなると水揚げがされないことに不満を持っている。

かつては持ちつ持たれつの関係にあったが、近年はそうした関係が薄れている。漁業者と加工業者の話 し合いはほとんどない。

2)地区加工業者の経営実態

当地区の加工業者は、最盛期には35社ほどあったが、現在は16社となっている。この10年間くらいで 5 社くらい廃業した。現在、後継者がいるのは 6 社ほどである。これらはいずれも自動釜を導入してい る業者であり、そのうちの 5 社は全工程を機械化している。加工業者のシラスの年間購入量を見ると、

1 億円以上のものが 3 社(いずれも自動釜をもっている業者)で当地区の半分以上の量を買い付けてい る。2,000〜5,000万円が 8 社、1,000万円以下が 5 社となっている。当地区の加工業者は、シラス干しの 生産が中心であるものが多く、業者間で製品別の生産割合に違いはあまりない。上層 6 業者は、問屋へ

の出荷を主としており、量販店や生協等へ出荷しているものもある。販路は固定的であり、販路拡大の ために営業をするということは殆どなく(上層加工業者でも営業担当を置いているところは殆どない)、

新規の場合は向こうから話がくることが殆どである。中下層は築地や大阪など中央卸売市場への出荷が 主である。年間売上金額は、4 億円の業者が 1 社、1 億円を超える業者は 2 、3 社で、後は 1 億円未満で ある。上層以外は家族と常勤あるいはパート 2 、3 名で経営している。いずれの階層も経営は比較的安 定しているが、地元原料に規定されており、大きな成長は見込めない状況にある。

3)(株)K水産の経営内容

K水産は、当地区で最大手の加工業者であり、県内でも経営規模は大きいほうである。1913年創業で 現在 3 代目である。1984年に株式会社に改組。資本金1,200万円となっている。現在、従業員は社員10 名、パート15名となっている。水揚げが季節や日によって不安定であるので、パートの数はある程度確 保して柔軟に対応する必要がある。社員・パートの募集をすると10名くらいは集まるが定着率は低く、

特に若い人はあまり残らない。製品としては、シラス干しが50%、釜揚げが30%、ちりめんが 5 %、そ の他にさくらえび加工も手がけている。生シラスは注文があるときだけ出荷する程度である。原料とな るシラスは、吉田町漁協から調達するものが60%で、相良町漁協の買受人にもなっており、そこからの 調達が30%となっている。相良町で買い付けた原料は、相良町の工場(1996年設立5,000万円)で加工 している。販売先は、綜合食品(10%未満)、三光水産、マルイチ産商、ダイワオーシャン、大都魚類 等で、問屋(約200社と取引あり)を主に、生協・量販店にも出荷している。中央卸売市場には出荷し ていない。販路開拓のため営業することもあるが、多くは問屋のほうから取引の申し出がある。水揚げ が少ない時は、突然の引き合いもあるので、常に50トン以上はストックしている(シラス干しであれば 1 年以上保存可能)。3 つの製造ラインがあり(2000年から現体制)、その内訳は自動釜 3 機、乾燥機 2 機、風力選別機 4 台、コンピュータースケール 3 機、その他にたたみいわし形成機、自動包装機、金属 探知機、低温冷蔵庫(−30℃)等の設備がある。1 つのラインの設備投資金額は約 1 億円である。1 日20 トンの原料を処理することが可能であり、12トンの製品が生産可能である。1 つのラインは 5 名くらい で作業している。煮沸は自動釜ではあるが、熟練者が担当する必要がある。製品は、1 〜 2 ㎏詰め(ビ ニルで包装してダンボールに入れる)から30gのパック詰めまで対応している。生産能力は県内でも最 大レベルである。売上高は1990年代後半には 5 億円を超える売上があったが、製品価格の下落により近 年 4 億円前後である(純利益は1,500万円程度)。売上は、地元の水揚げ量に規定されており、今後も地 域漁業の存続なくして、加工経営も成り立たないことから、価格を少し高くつけているが、製品価格の 下落傾向は続いており、遠州灘地区や県外他産地との競争も年々厳しくなってきている(昨年までは問 屋を通してセブンイレブンに出荷していたが、今年から浜松の業者に変わった)。近年、安全かつ混じ りの少ない高品質な製品が求められていることから、現在、色彩選別機、殺菌機の導入を検討しなけれ ばならない状況にある。

(2)用宗地区 1)シラス漁業の概要

当地区は、船びき網 2 そうびきが主たる漁業種類となっており、網船、手船、運搬船の 3 隻体制で操 業している。1 カ統 7 名体制で操業している。最盛期には25カ統あったが現在は18カ統にまで減少して

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