鹿児島県枕崎市における節加工産業の現状と課題
原料調達には 3 種類の方法がある。第 1 に枕崎市漁協の入札、第 2 に商社を経由した輸入原料の調達、
第 3 に焼津からの陸送である。その調達の動向をまとめたのが表 8 である。
まず、最も一般的な第1の調達方法は漁協入札である。2009年の節原料 6 万 6 千トンのうち約60%を 占める。加工組合を通さず、経営体自ら枕崎市漁協のセリに参加して競争的に仕入れている。在庫と産 地卸売市場の相場をみながら毎週、毎月など一定期間ごとのタイミングでセリに参加する。中規模な企 業的経営の場合であれば、1 回の購入量は数100トンにもなる。
漁協が入札にかけるカツオの調達ルートにおいて最大のものは、国産の海外まき網漁業である。これ
は輸入原料に比べて品質が高いことから需要が強く5、当該地区の節原料の45%を供給している6。その ため海まき船を他港、特に主要な水揚港である焼津から奪取し、いかに多く誘致できるかが重要となっ てくる。現状では当該地区での需要が強いことから単価は焼津を上回っており、近年は水揚量の増加が みられ原料の安定供給につながっている。図12に、焼津と枕崎の海外まき網によるカツオ水揚量と単価 の推移を示した。枕崎の水揚量は、焼津の約10万トンに対して半分にも満たないが、単価は焼津よりも 高い。
漁協入札のもうひとつの調達先は、台湾船の水揚品でありこの原料が全体の19%を占める。開港指定 以降、このような台湾からの輸入品の水揚量は格段に増え節加工原料の安定供給に貢献してきたが、近 年は世界各国の缶詰需要拡大を背景にその水揚量は減少している(図13)。
第 2 の商社経由の輸入原料は、インドネシアやフィリピン産などである。この原料については、各経 営体が個別に商社と取引する場合と、加工組合が商社から相対で購入した後に組合の冷凍庫に在庫して
表8 枕崎地区におけるカツオ節原料の仕入れ状況(2009年)
5 年によっては海まき物の品質が悪く、インドネシア産などの輸入原料の需要が高まる傾向にあるが、基 本的には国産原料の利用が重視されている。
6 遠洋カツオ一本釣りも含まれるが、これは主に生食用に向けられ節原料となる割合は少ない。
図12 枕崎と焼津における海外まき網のカツオ水揚量と単価
おき、その都度、経営体が組合から原料を買う場合がある。表 8 からその数量は焼津搬入分も含めて全 体の45%となっている。つまり枕崎の節原料のうち輸入原料は、前述した台湾船水揚分と合わせて約 65%となる。輸入品は国産原料に比べて品質が劣るため10円ほど安く、これらを利用する経営体も増え ている。このように経営体が、品質ではなく価格重視の原料選択を行う背景には、量販店など末端にお ける製品の価格訴求の強まりがあると思われる。
第 3 の焼津からの陸送については、前述したようにそれほど多くはない。開港する以前は原料の 6 〜 7 割を焼津産に依存していたが、現在は枕崎での良質原料が不足した時のみ利用されている程度である。
調達は加工組合経由、あるいは経営体が独自に焼津の産地仲買に発注する。前述したA社の場合は、漁 協入札70%、商社経由20%、焼津からの陸送10%となっている。
3)荒節輸入の動向
インドネシアを中心に製品である荒節の輸入が増加している。現在、カツオ節の国内供給量の20%に あたる約8,000トンが輸入されている。枕崎では、輸入荒節を利用している経営体はみられない。これ らは焼津での削り節原料となっているとみられ、枕崎ではこのことが販売価格の低迷につながるのでは ないかと危惧している。液体調味料メーカーが需要を増加させてきたにも関わらず、近年、枕崎からの 節購入量を微増にとどめており、このことも荒節輸入の影響によるものではないかと考えられている。
(2)雇用労働力事情
他の加工業と同様に、枕崎地区の節加工業においても労働力の不足は恒常的な問題となっている。月 給25万円という比較的高い給与水準を条件とした社員募集をかけても応募がないため、外国人労働力な しでは維持していくことが難しく、中国人研修生に依存している状況にある。鹿児島県の節加工業にお いては、約10年前に担い手不足が顕著になったことから千葉県銚子地区の事例を参考に研修生制度を導 入した。現在は、加工組合が窓口の受け入れでは120名を27社で雇用している。さらに、鹿児島中国経 済交流協同組合が窓口の受け入れでは100名を10社で雇用しており、合計220名ほどが枕崎の節加工業で 雇用されている。
図13 枕崎市漁協における輸入カツオ(台湾船を中心とする)の水揚量の推移
(3)節加工品の販路開拓事情
枕崎地区のカツオ節経営体の多くは 2 次製品メーカーと専属取引を行っており、それらの業態に合わ