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年目で帰国してしまい、それ以降、外国人は導入していない。

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長崎県長崎市周辺におけるねり製品加工業の現状と課題

文化の違いから 1 年目で帰国してしまい、それ以降、外国人は導入していない。

(3)施設

創業当時の工場は平和公園近くの住宅街にあったため、排水や騒音の点から住民の反対にあい、1989 年に稲佐橋袂の現在の場所に移転した。ここは1972年頃に先代社長が土地を購入し、倉庫として使用し ていた場所である。当時、長崎の水産物卸売市場が至近であったが、1989年の工場移転年に反対に卸売 市場が新漁港に移ってしまった。

2004年には工場の一部が道路の収用にかかったため、道路と反対側を増設した。その際、施設を完全 にHACCP対応とはしなかったが一般的な安全基準を満たす施設とした。従来の工場では最大可能生産 金額が12億円(実際売り上げ10億円)であったが、増設により20〜30億円の生産が可能な規模に拡大し た。そのことが近年の19億円という生産金額の増加をもたらしたがんばりにつながったという。

(4)原料スリミの仕入れ

スリミの使用量は、1 日あたり約 5 トンで年間操業日数が約300日であるので、年間では約1500トン である。仕入れは長崎蒲鉾水産加工業協同組合と商社からの組み合わせである。他の組合員と比べて仕 入れ量の規模が大きいので、組合からのスリミ原料の購入量は他の組合員に配慮して抑え気味にしてい るという。

(5)ねり製品の販売先

販売先は全国チェーンも含めた居酒屋とその他業務筋が約40%、スーパー(九州中心)が45%、直売 店が約10%、通販が約 5 %である。通販は15年ほど前から開始し、軌道にのるまで約 5 年間かかった。

通販の客は主に関東と新聞広告を入れている長崎市内である。

販売先をエリア別にみると、九州が約 7 割で本州が約 3 割である。現在、本州の仙台以南の卸売市場 にまんべんなく送り、関東地区を中心に取扱量を増加させている。関東地区はフェアなどに出展して知 名度があがると取引が成立することが多く、エネルギーの投入が少なくて済む一方で、関西地区は一度

は対面しないと取引が開始されず手間がかかるという。そのため、まず、エネルギー投入が少なくて取 引が開始できる関東地区から取り組んでいるという。

(6)今後

会社としては第一に人材育成に力を入れていく予定である。これまで利益を機械投資に回してきたが 一巡したので、30歳代の幹部候補生を対象に全国レベルでの人材育成に力を入れたい。第二には安全性 の確保とオンリーワン商品の開発である。長崎の業者としては、長崎のねり製品の知名度の上昇を目指 したい。

昨年のスリミ原料の高騰によりねり製品業者はどこも厳しい状況であるが、長崎の業者は長崎蒲鉾水 産加工業協同組合の存在により安定的な原料確保が可能な条件があり、全国のねり製品業者のなかでは ましな状況であるという。この組合を大事にすることを若手に伝えている。

6.長崎のねり製品水産加工業を巡る状況

(1)施設整備投資

生産金額が高い業者を中心に、衛生管理基準を満たそうと新工場を建設する動きが示されている。

(2)原材料調達事情

長崎は以西底曳き網漁業・まき網漁業の水揚げ地で、もともと原料の調達が容易な立地である。まき 網で漁獲されるマアジなど赤身原料の利用技術を高めてその立地を生かす努力を行ってきた。また、昨 年のスリミ価格の高騰時には、組合によるスリミ生産と組合員への平等的配分が行われ、小規模業者も 原料確保に困ることはなかった。

(3)雇用労働力事情

長崎市内の冷凍水産物などの他の加工種類では外国人研修生・実習生の導入が示されているが、ねり 製品業者ではある程度の従業員数を確保することができていることから、今のところ外国人研修生・実 習生の導入は行われていない。生産金額を増やしたねり製品会社が社会の信頼を得てきたことだけでな く、雇用情勢全体の悪化も関係して、数年前よりいい人材を雇用しやすい環境になってきたという。

(4)販路開拓事情

長崎市内を中心とした市民の日常消費用の安定的なねり製品の需要があることが長崎のねり製品業者 の強みであるが、近年、販売金額を伸ばしている販売金額上位の業者は卸売業者を通じて関東市場を開 拓している。現在、さらなる県外への販路開拓とスター商品作りが課題となっている。長崎市のねり製 品は平均点以上であるが、島原地区の豆腐蒲鉾や五島地区のアジを用いた商品のように特色のある商品 がないという。

(5)産地内連携・産地間競合事情

長崎蒲鉾水産加工業協同組合の組合員の間では、安定的な経営をしていくためには、ねり製品業者が 協力して組合のスリミ生産を重視し、今後も安定的な生産を行うことで意見が一致している。

(6)域内漁業との関係性の変化 

近年、以西底曳漁業の水揚げが減少しているため、漁業生産分野でも曵網する水深を変化させるなど の試験をして、目玉になる水産物加工製品に結びつく原料の模索が行われている。

(7)ねり製品の輸出

長崎県のねり製品の輸出は試行している段階で量的には多くない。伝統的な板付け蒲鉾などはあまり 外国人の食になじまないようであり、ほとんどが現地在住の日本人向けである。これまで韓国に少量を 輸出していたが、2008年秋以降のウォン安で減少した。中国には現在、卸売業者である長崎魚市を通じ てねり製品が上海へ輸出されている。台湾には、ある業者が物産展でフィッシュボールを展示した程度 である。

7.ねり製品水産加工業における新たな取り組み

(1)未利用資源の利用

2008年から長崎蒲鉾水産加工業協同組合では補助事業を利用して未利用魚を使ったスリミの生産に取 り組み始めた。2008年に全国蒲鉾連合会の委託事業としてゴマサバやシイラ・ナルトビエイを利用した スリミを試作した。その結果、第一にゴマサバとシイラはまずまずであったが、シイラについては2009 年が不漁で原料生産の安定化が課題であること、第二にナルトビエイは歩留まりが10%で、スリミ原料 としての実用化がかなり難しいことが分かった。また、サバはアレルゲンとなるため、ねり製品の商品 化においては課題が多いことが予想された。

2009年度は 8 月に水産物安定供給事業国内資源確保実証モデル事業に採択され、ナルトビエイ、シイ ラ、エボダイ、カナガシラ、コノシロを原料としてスリミの試作を行うこととなっている。

(2)ブランド化の推進

長崎のねり製品は大手メーカーの大量生産・安価販売に比べて量や価格では負けるが、長崎の多種の 魚を利用でき調味料には出せない魚の味を生かした商品作りが可能であるとして、今後、ねり製品業者 と長崎市、地元金融機関が連携してブランド化を推進する計画が出てきている。

参考資料

・長崎市水産農林部「長崎市の水産業」2009年 6 月

・長崎県水産部「長崎県水産白書」

http://www.n-suisan.jp/yumetobi/hakusyo/H20hakusho/mokuji.htm

1.枕崎地区における漁業および水産加工業の概要

(1)枕崎地区の漁業

薩摩半島の南端に位置する鹿児島県枕崎市は、広大な東シナ海という好漁場に面している(図 1 )。

そのため全国有数の漁業基地でもあり、水揚量は全国10位の規模を誇る。主な漁業は遠洋漁業と沿岸漁 業である。遠洋漁業では枕崎港所属の約500トンの大型カツオ一本釣り漁船が 5 隻操業しており、海ま き船など員外船の入港も盛んである。また、沖合では員外船含め多くのまき網漁船や近海カツオ一本釣 漁船が枕崎漁港を基地として操業している。沿岸漁業では曳縄漁業や一本釣漁業、定置網漁業などが行 われている。枕崎漁港は、1969年に全国に13港しかない特定第三種漁港の指定を受け、以来、遠洋漁業 及び沖合漁業の拠点港となった。また、93年には荷捌施設や港湾設備などを整備し、保税地域指定を受 け輸入が可能となった。さらに、99年には全国初の漁港単独での開港(貿易港)指定を受け、税関(鹿 児島税関枕崎出張所)が開設された。枕崎港は国際貿易港としての機能をもち、重要な水産物輸入拠点 となっている1

当該地区における漁業種類別水揚量と水揚金額を示したのが図 2 、図 3 である。水揚数量は12万トン 前後で推移しており、中でもカツオ漁業が 8 万トンと最も多い。金額をみてもカツオ漁業が全体の80%

と最も多く、近年のカツオ価格の上昇を反映してその推移は増加基調にある。さらに、枕崎市漁協に水 揚げされるカツオ漁業の内訳を漁業種類別にみたのが表 1 である。ここで言う「カツオ漁業」とは、台

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