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品目に関しても、かつお節、練り物は減少しているが、唯一気を吐くのが冷凍食品、特にカツオ たたきであり、その存在によって焼津市の水産加工品生産量は横ばい傾向を保っている状況にある。ま

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静岡県焼津市における水産加工業の現状と課題

上位 3 品目に関しても、かつお節、練り物は減少しているが、唯一気を吐くのが冷凍食品、特にカツオ たたきであり、その存在によって焼津市の水産加工品生産量は横ばい傾向を保っている状況にある。ま

た、公式統計からは読み取ることができないものの、焼津市においては、水産加工品の製造過程で発生 する煮汁やアラといった残滓を原材料とした機能性食品素材やバイオ医療素材、飼肥料等の製造を手が ける企業が存在し、業績を伸ばしていることも注目される。そこで以下では、焼津における主要品目で あり、地元原材料の使用率が高いかつお節とカツオたたき、そして、主要といえるまでには至っていな いものの、水産加工の新たな可能性を切り開きつつある機能性食品素材に着目し、それらをめぐる状況 と焼津における取り組みの実態について見ていきたい。

4.焼津市における主要水産加工業種をめぐる状況と取り組み実態

(1)かつお節

1)かつお節製造をめぐる状況

主要産地におけるかつお節の生産動向を確認すると、93年までは焼津がトップの地位にあったが、そ れ以降は枕崎がトップ、04年以降は山川がそれに次ぐ形となり、焼津は全国 3 位の地位となった。表 2 に近年の動向を示した。生産量が減少傾向にあることと共に、主要産地の中でも荒節の割合が高いこと が確認できる。また、焼津におけるかつお節加工業者の内、生産金額上位30業者の状況を見ると、上位 2 業者が全体の44%を占め、これに大きく離れて 3 業者が、それ以降は小規模・零細の約25業者が続く という構図になっている。

前掲表 1 に示したように、08年の実績では、海まきによって水揚げされた冷凍カツオの内、約60%が かつお節向けとなっており、原材料となるのは 7 ㎏以下サイズのものである。原材料のほぼ100%が地 元港での水揚げ分となっており、枕崎や山川では20〜60%という水準であることから(3)、焼津における 地元原料使用率の高さが際立つ。但し、周知のようにカツオの相場は国際化しており、価格乱高下の可 能性がある中、安定的な原材料の確保が課題となっている。

表2 主要鰹節産地における生産動向

上位業者における販売規模別の主要取引先状況を表 3 に示した。最も多いのは大手企業への販売であ る。ここでの大手企業とは、味の素、東洋水産、ヤマキ、にんべん、マルトモ等を指し、花かつおや調 味料を最終形態とする加工原料としての販売となっている。これら業者は大手企業の協力工場と位置づ けられており、取引先には棲み分けがなされている。量販店との取引を主とする 3 社は規模こそ小さい ものの、荒節の他、削り節や仕上節の生産も手がけ、削り節を中心に量販店との固定的な取引をおこな っている。問屋を主要取引先とする 2 社は荒節の生産に特化しており、東京や大阪のそば店等を最終需 要先として、問屋を介した取引をおこなう。自社販売は荒節や削り節を自社店舗で販売する形態を中心 とする。6 社中 3 社が削り節の販売もおこなっている他、調味料・だしへの加工までおこなった上での 販売、贈答用としての販売などもある。最後の地域内業者とは荒節の他、だしや調味料の製造販売を手 がけている地元企業を指す。

このように、独自にかつお節・削り節等の販売をおこなっている業者も一定程度存在するものの、大 手企業や地域内業者の高次加工を念頭に置いた、原材料としての販売の比重が高く、それは前掲表 2 に 示した荒節率の高さにも繋がっていよう。また、量販店への販売を含めた現在のような取引体制におい ては、価格の川下規定が働き、価格向上はもとより、先述したようなカツオ価格の乱高下の可能性の高 まりといった条件への対応が困難な状況にある。以下では、焼津のかつお節製造におけるいくつかの取 り組みについて見ていこう。

2)協同組合焼津水産加工センターにおける取り組み

周知のように水産加工業においては、排水や加工残滓の処理が大きな問題となる。排水処理について、

静岡県では国の規定を上回る基準が設けられ、一定量以上の排水をおこなう加工場には処理機の設置が 義務づけられた。これは、処理機のキャパシティが生産量を規定する一大要因になり、その設置・運用 コストが経営を圧迫するという状況を招いた。その中で、国の施策「水産物産地流通加工センター形成 事業」の指定産地として焼津が指定されたことを契機に、1972年、焼津水産加工センターが設立された。

現在の企業数は20社であり、ほぼ半数はかつお節製造業者である。

センター内においては、かつお節等の加工過程で排出される汚水や汚泥・残滓は、共同処理施設で処 理される。また、再利用可能な部分については残滓処理施設や資源開発工場で、機能性食品、魚油やソ リュブル、飼料・肥料に加工されており、残滓の有効活用と環境対応を実現している。共同施設は排水 処理の他、給水やLngガスの供給、さらにはかつお節製造における原材料の解凍から内臓等の除去、煮

表3 かつお節製造業者における販売規模別主要取引先

熟、骨除去に至る一次処理にも亘っており、加入企業におけるコスト削減に結びついている。焼津のか つお節製造における加工団地の地位を確認すると以下のようになっている(4)。焼津全体の生産量に占め る加工センターの割合は、90年・37%、2000年・56%、08年・62%と高まってきている。さらに、08 年度に加工センターで一次処理されたカツオの量は約37,000t、焼津港に水揚げされ、かつお節に仕向 けられた冷凍カツオは約52,000tであるため、その約70%が加工センターで処理されていることになる。

水産加工センターとしての事業収益も安定して推移しており、加入企業数は当初の23から現在の20に 減少したものの、現存企業の規模拡大によって、用地・施設はフル稼働している。焼津のかつお節製造 における位置づけの高さは先に確認したとおりであり、各種の共同施設による加入企業のコスト削減や、

残滓等の有効活用、環境対応を実現している点が注目される。

3)かつお節製造技術の伝承と地域ブランド化への取り組み

焼津のかつお節加工業における近年の取り組みとしては以下のようなものもある。ひとつはかつお節 の製造技術に関する動きである。1983年に発足した「焼津鰹節伝統技術研鑽会」では、古くから伝わる 製造技術を保存・伝承するため、熟練工による若手への技術指導がおこなわれている。また、2007年に は青年会による独自の講習会、「焼津かつお節道場」も開始されており、かつお節の製造技術に関する 取り組みが進んでいる。

いまひとつは地域団体商標への登録である。2006年12月に「焼津鰹節」の商標が登録され、地域ブラ ンド確立に向けた取り組みが進められている。「焼津鰹節」とは、焼津市で生処理・煮熟・煤乾製造し た仕上節・荒仕上節・荒節の内、ブランド認定基準を満たしたものであり、ブランド品審査会における 検査をクリアしたものが認定される。また、「焼津鰹節」を原料とした削り節・粉末調味料・液体調味 料・その他派生商品の表示にもブランドマークを用いることができるとされている。焼津鰹節水産加工 業協同組合においては、今後ブランドかつお節の販売量を増加させる意向を有しており、現在の調味料 等の原材料としてのかつお節生産に傾斜した状況から、より品質を重視しつつ最終製品あるいは原材料 としての地位を高め、焼津の存在を前面に押し出していく狙いが見て取れる。

(2)カツオたたき

1)カツオたたき製造をめぐる状況

カツオたたきは高知県の郷土料理としての知名度が高いが、国内最大規模の産地は焼津である。1970 年代、焼津市内の水産加工会社による加工工程の機械化による量産化の実現を契機に、業者数及び生産 量が増加した経緯がある。カツオたたきの動向に関する公式統計は存在しないが、聞き取りにより把握 した業界推計値は以下の通りである。国内生産量は90年代初頭には約15,000tとなり、2000年まで右肩 上がりに増加したが、最近は横ばい傾向となっている。近年における国内のカツオたたき生産量は約 26,000t、業者数は約20社であり、その内訳は焼津が20,000t・13社、鹿児島が4,000t・3 社、宮城が 1,000〜2,000t・2 社、高知が数百t程度・1 〜 2 社となっている。なお、これは冷凍カツオを原材料と するもののみを指し、いわゆる生たたきは含まれないが、それを含めても最大産地が焼津であることに 変わりはない。

焼津におけるカツオたたき生産量の内、70%強は生産量上位の 5 業者によって占められている。トッ プ業者が約30%を占め、続く 4 業者が10〜15%程度という構図になっている。原材料は、ほぼ全量焼津

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