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時間以上と言うこともあり、首都圏への販路は問屋や卸売市場を介した販売が 行われている。GMSや生協などと直接取引を行う業者も増えているが、他の地区と比較して、特段多

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宮城県気仙沼市における水産加工業の現状と課題

東京へのアクセスが 6 時間以上と言うこともあり、首都圏への販路は問屋や卸売市場を介した販売が 行われている。GMSや生協などと直接取引を行う業者も増えているが、他の地区と比較して、特段多

いわけではない。消費地において販売営業を独自で展開できる業者は限られているものと思われる。

図 2 − 1 に気仙沼地区における輸出量の推移を示した。2007年、2008年に激増したことが見て取れる。

輸出品目の90%以上は冷凍魚介類丸物である。

1998年 2003年 2008年

1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008

表2−5 冷凍水産物生産量

表3−1 冷凍工場の状況

(5)産地内連携・産地間競合事情

地域内の取組としては地域HACCPが特筆すべき事柄であろう。これは、気仙沼水産加工業振興協議 会が2003年 8 月に「気仙沼地域HACCP認定工場基準」を策定したことに始まる。当初、この立ち上げ に関わったのはカツオを取り扱う業者が中心であった。これに合格した品質・衛生管理の優れた水産加 工場は「気仙沼地域HACCP工場」となる。「気仙沼ブランド商品認証審査委員会」を設置し、認定作業 を行った。認定工場は、当初14工場であったが、現在、19工場にまで達している。

一方、市場では、カツオの「タンク取り方式( 1 トンのタンク)」を導入した。そのことで、かつて 一日にカツオを300トン程度しか取り扱えなかったが、1,000トン取り扱えるようになった。このことで、

大中型旋網の誘致を促進させることになる。その際、それまで行われていた仲買人の市場での荷造りが 禁止されることになった。それを受けて、仲買人は荷造り工場を各社設置した。

こうした地域的な取組を通して、ブランド化の推進が図られた。まず、脂が乗っている「戻りガツオ」

からブランド化が始められた。最初のブランド製品は「戻りカツオタタキ」「カツオなまり節」である。

現在では「さんま甘露煮」「さんま味醂干し」「さんま南蛮漬け」「メカジキの燻製」などもブランド化 しており、多品目に亘っている。

当地域では、こうして新たな加工製品が開発されてきた。そのため、よりよい原料を安定的に確保し なくてはならなくなっていることから、カツオ、サンマなどの原魚の確保を巡り、地域として、大中型 旋網漁船、カツオ一本釣り船、近海マグロ、サンマ棒受網漁船の誘致策を強化している。2009年には気 仙沼市漁船誘致緊急対策事業が施されるようになった。カツオ、マグロ、サンマは、三陸あるいは常磐、

千葉などの各産地と競合している。価格形成力を如何に発揮するのかという課題も重要であるがその他 として、漁船へのサービス力の向上も重要な課題となっている。ちなみに、当地域は、地域HACCPに よるブランド化や「タンク取り方式」が他産地との差別化に繋がっている。

5.まとめ

当地域の水産加工業は、かつての600億円産業から400億円産業へと低落した。しかし、当地域の生産 力は、従来の生産力の基軸を弱めながらも、輸出対応と地域HACCPという新基軸の芽が育ち、それに より挽回が図られようとしている。地域の内発的な体制作り、地域内の再投資項目として注目すべき点 は、以上の 2 点であろう。熾烈な産地間競争により、こうした方向性が形成されてきたものと考えられる。

図2−1 気仙沼地区からの水産物輸出量の推移 1999年 2000年 2001年 2002年 2003年 2004年 2005年 2006年 2007年 2008年

リーマンショック以後、輸出あるいは水産物マーケット自体が低調気味になったので、現時点では伸 び悩んでいる。今後の世界経済の回復と国内の水産物市場の再編の中で、以上の取組がどのように展開 するか、今後も着目していきたい。

注 1 気仙沼市役所発行「気仙沼の水産 平成20年版」

1.はじめに

千葉県銚子市および茨城県神栖市波崎は、首都圏への最短距離に位置する水産加工産地の一つであり、

北部太平洋巻網漁業から供給されるサバ類、イワシ類、棒受網漁業等によるサンマなど、いずれも青物 類を主原料として発展してきた日本最大規模の水産加工業の集積地である。当地の特徴は、旺盛な水揚 げ量に対応した冷凍冷蔵庫業の立地、また原料調達と巨大市場近郊に位置する有利性に支えられた水産 加工業経営の集積、そして水産加工原料の輸出入拠点としての成長性という三点にある。

報告はこの三点を縦軸として、(1)当該地における水産加工業集積の構造について推定値を加えなが らその変化を整理する。(2)漁獲対象魚種の構成変化と代替材としての輸入原料の利用からくる資本展 開を意識しつつ産地構成の変化にかかる考察を行う。(3)近年、特に顕著となってきた輸出市場の拡大 にともなう水産加工業集積への影響について考察を行う。特に、漁業資源変動下の水産加工業集積の動 態に注目しながら産地構造の現状について整理を行うこととしたい。

2.水産加工業の概況の把握

(1)調査の方法

銚子・九十九里地区は、2008年に120,395tの水揚げ実績があり、銚子港のサバ類の漁獲比率はうち 35.0%(68,212t)、サンマ19.2%(37,385t)、カタクチイワシ27.4%(53,316t)と81.6%を超えるこ とから当該 3 魚種について整理を行うこととする(千葉県農林水産統計年報)。また後述するが銚子・

波崎地区は輸入鮭鱒加工の集積地でもあることから使用する銀・紅ザケ、トラウトに関する整理も併せ て行う。使用する統計は、仕向け・利用配分については農林水産省水産物流通統計年報、漁業生産にか かわるものとして農林水産省漁業・養殖業生産統計年報、関東農政局千葉県農林水産統計年報、同茨城 県農林水産統計年報、銚子信用金庫景況リポート(2004〜2010年各月版)。輸出入統計に関しては財務 省貿易統計を用いた。補足として公的機関公開の統計データの閲覧のため銚子市役所への在否確認を行 った(東京水産振興会協力)。

また、水産加工業者および冷凍業者(原料問屋機能)、鮮魚出荷業者(生屋)の取り扱い品目・魚種 比率や年商等のデータは、主にセフティー2009企業情報(株式会社食品速報)記載のものを使用した。

2009年版に未記載の企業情報は2008年版により補足した。流通段階における水産加工製品の卸売価格に ついては、東京都中央卸売市場月報(HP版)からの検索データを利用した。

個別企業への聞き取り調査は、東京水産振興会及び全国水産加工業協同組合連合会の協力を得て、全 銚子市水産加工業協同組合の斡旋を受けることにより行った。また、サンフード株式会社の協力により 横浜冷凍株式会社銚子営業所の協力と紹介を受け個別企業への聞き取り調査を行った。さらに他産地に 所在する水産加工業者からの紹介や調査員のネットワークを利用し情報を得るとともに調査に対する協 力を依頼した。

聞き取り調査において、千葉県水産加工業協同組合連合会名簿、市況情報日報(横浜冷凍株式会社銚 子営業所、鹿島木村冷蔵株式会社作成)の提供を受け、市況情報日報については継続収受することとし

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