• 検索結果がありません。

位 と上位の長崎県であるが、水産物加

ドキュメント内 ドキュメント1 (ページ 174-179)

長崎県長崎市周辺におけるねり製品加工業の現状と課題

漁業生産量においては全国第 3 位 と上位の長崎県であるが、水産物加

工品の生産量は煮干しの 1 位を除い て上位に位置する品目は少なく、ね り製品の生産量においても長崎県は 全国17位であり全国的な知名度は高 くない(表 6 )。

表5 漁港品目別用途別出荷の割合(2007年)

表6 水産加工品の生産(2006年)

(2)長崎市内の加工種類別の水産加工場数

長崎市内の加工種類別の水産加工場数は、ねり製品が50と最も多く、塩干品が26、煮干し品が24でね り製品に続く。地区別に水産加工場数をみると市街地である「長崎港」が47、新港のある「長崎三重」

が26、「長崎東部」が22であった。そのなかでねり製品の水産加工場は「長崎港」に30と集中しており、

長崎市の市街地にねり製品加工場が存在していることがわかる(表 7 )。

(3)ねり製品業者の経営規模・類型について 1)生産金額規模

後述する長崎蒲鉾水産加工業協同組合の組合員であるねり製品の加工業者約30社のうち、比較的、生 産金額の規模が大きいのは2009年現在、7 社である。生産金額を上位からみると約19億円が 1 業者、約 10億円が 1 社、7 〜 8 億円が 2 社、4 〜 5 億円が 3 社である。このうち生産金額が 4 位までの業者は近年、

生産金額が伸張したという特徴を示している。これらはいずれも1950〜60年代に揚げ物を中心にして創 業した、長崎のねり製品業者としては後発の業者である。残りの20余りの業者は従業員規模が 5 人以下 の主に家族経営の業者であり、上位 7 社との生産金額の差は大きい。長崎蒲鉾水産加工業協同組合のス リミ生産の内容については後述するが、上位 7 社で組合が生産する組合員向けのスリミ供給量の約80%

を使用し、残り20数社で約20%を使用している。将来的には、長崎蒲鉾水産加工業協同組合の業者数は 小規模なところが廃業して20業者程度に減少するのではないかと予想されているものの、現在まで比較 的小規模経営が生き残っている点が注目される。

2)ねり製品加工業者の類型と歴史的経緯

かつて、個別業者がそれぞれスリミを生産していた時代は、伝統的なスリミ技術を持った老舗業者が もっぱら竹輪や板付き蒲鉾の生産を行っていたが、戦後に創業した後発のねり製品業者は竹輪や板付き 蒲鉾に利用できる高度なスリミ製造の技術を有していなかったため、商品はもっぱら揚げ物であったと いう。

しかしながら、現在、かつて 5 〜 6 社あった竹輪専門業者が 2 社に減少するなど、伝統的な竹輪専門 及び板付け蒲鉾業者が減少する一方で、揚げ物を得意とする後発業者の生産金額が伸びている。伝統的 な長崎ちくわは、量販店で一般的な 5 本袋入りの竹輪よりもサイズが大きく、原料もエソなど板付き蒲

表7 長崎市の水産加工場数と従業員(2003年)

鉾よりも高品質なものを使うため、約250円/本と 1 本あたりの単価が高く販売量が伸びないという。

生産金額が伸びている会社を中心として、近年、社長の世代交代が図られ、主に衛生基準を満たすた めの新工場の建設や増設が行われている。このような会社には若年者の応募があり、従業員も若い傾向 にあるという。

3)特徴のある業者

長崎蒲鉾水産加工業協同組合の組合員であるねり製品の加工業者約30社のうち、特徴のある業者とし ては、第一に近年、主に関東市場を開拓して生産金額を増加させ現在、生産金額上位に位置する揚げ物 中心の業者である( 2 社)。第二に1920年代から中華街がある新地地区で古くから生産を続けてきた老 舗業者( 1 社)である。第三に無リン(リン酸塩無添加)でもっぱら生協向け商品を製造する業者( 1 社)であり、第四に後述する長崎県が推進している平成「長崎俵物」登録業者( 4 社)である。そのほ かに無農薬野菜の使用など農業と連携していることを強調している業者( 2 社)もある。

4)長崎のねり製品業者の強み

先に触れた長崎蒲鉾水産加工業協同組合によるスリミ生産と組合員に対するスリミの安定供給を支え るのは、長崎が有数の水産物の水揚げ地であり、新鮮な国産原料を安定的に供給できることである。か つての以西底曳き網漁業による白身魚(エソ・グチ・タチウオなど)が多く漁獲されていた時代から、

まき網漁業によって漁獲される赤身魚(アジ・イワシなど)の時代に変わったものの、スリミ製造技術 の向上によって赤身魚の利用が活発に行われるようになった。また、長崎市民がコンスタントにねり物 を消費していることも強みである。

3.ねり製品業者の組合〜長崎蒲鉾水産加工業協同組合〜

(1)長崎蒲鉾水産加工業協同組合の概要 1)組合員数

長崎では市内を中心にねり製品業者が長崎蒲鉾水産加工業協同組合を組織しており、現在の組合員数 は約30社である。業者数は1972年の開始当初の47社から徐々に減少したものの、現在でも多数の業者が 存在している。現在、長崎市外の業者からの加入の希望があるが、これまでの既存組合員の出資金の負 担や組合事業が安定軌道に乗るまでの組合員の苦労に配慮して基本的に断っている。

2)組合によるスリミ生産

1972年に組合が創設され、1974年には組合のスリミ工場が稼働するようになった。もともとは各業者 が個別にスリミを生産していたが、長崎市の市街地でのスリミ生産は1970年にできた水質汚濁防止法の 規制により、排水処理施設を有した施設での生産が必要になったため、組合での共同生産の開始が決定 された。この時期、県外他地域でも同様にスリミの共同生産が開始されたが、組合員が安価なスリミ問 屋のスリミに惹かれて組合の共同生産によるスリミを買わないことなどの理由でスリミ生産事業が成立 せず途中でやめてしまうところが少なくなかったが、長崎蒲鉾水産加工業協同組合では現在まで約35年 間スリミ生産を継続させてきた。

このような主に国産魚を原料としたスリミ原料の安定供給と組合員内での平等的配分が、長崎におい

て小規模業者も含めて多数のねり製品業者が存在している背景にあると考えられる。特に2008年にスリ ミ価格の高騰とそれによる原料確保の困難が生じ、このことがあらためて組合員の間で認識された。

3)スリミ生産以外の組合事業

組合ではスリミ生産の事業以外に、輸入スリミを組合員に販売する購買事業と冷凍食品の製造を行っ ている。冷凍食品の製造では、組合員の製品と競合しない生協向けのスリミの冷凍ボールと切り身等を 対象としている。組合員の商品の販売についてはフェアなどで組合がブースを借りることはあるが、販 売自体を組合が行うことはない。

組合施設としては、加工場と冷蔵庫、排水処理施設がある。排水処理施設の処理量は500トン/日でコ ストは6,000万円/年である。国・県の補助を得て組合のスリミ加工場で発生する残滓を利用した製品も 生産している。頭と内臓はフィッシュミールにし、魚油は養殖用に用いられている。骨・皮エキスも販 売している。

4)年間売り上げ金額

近年の長崎蒲鉾水産加工業協同組合の年間の売り上げ金額は、スリミ生産が 6 〜 7 億円、輸入スリミ の購買事業が約 8 億円、冷凍食品生産が約 1 億円で、合計約15〜16億円であった。しかしながら、2008 年度は輸入スリミの価格が高騰した影響で、輸入スリミの購買事業の売上金額が膨らみ、全体で20億円 となった。1972年の組合創設以降の出資金総額は 1 億 4 千万円で、配当総額は約 3 億円である。組合の 経営状況が良好であった1990年前後の数年間は年間約3,000万円の利益が出て、そのうちの約1,000万円 を配当としていたが、現在は無配である。

5)長崎蒲鉾水産加工業協同組合の時代区分

長崎蒲鉾水産加工業協同組合は1972年に創設され、1974年にスリミ生産が開始された。1974年時点で 新漁港の移転計画があり、組合の場所を排水処理が容易であるという点からだけでなく原料供給の点か らも新漁港予定地近くの加工団地としたが、実際に新漁港が整備されたのは1991年と遅かった。

組合の状況を時代別に分けると3期に分けることができる。第 1 期は組合創立後の10年間(1972〜

1981年)である。以西底曳き網漁業の漁獲物であるグチ・エソ・タチウオが多く水揚げされ、生鮮原料 が利用できた時期である。第二期はその次の10年(1982〜1991年)である。まき網漁業によるイワシの 漁獲量が増加し、それを原料に年間 3 〜 4 ヶ月間、スリミ工場を稼働させれば組合の経営が成立するく らい収入が多かった時期であった。第三期は1992年以降、現在までで、国内冷凍原料と輸入原料の利用 が増加した時期であった。

(2)スリミ工場について 1)スリミ生産量

2008年度の長崎蒲鉾水産加工業協同組合のスリミ生産量は2,140トンであった。主な魚種別の内訳は まき網漁業で漁獲されるイワシが530トン(24.8%)、アジが600トン(28.0%)、トビウオが100トン

(4.7%)で、以西底曳き網漁業で漁獲されるエソが50トン(2.4%)、タチウオが50トン(2.4%)、グチ が50トン(2.4%)であった。その他にはコノシロ(300トン(14.0%))などがある。このように組合の

ドキュメント内 ドキュメント1 (ページ 174-179)

Outline

関連したドキュメント